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No.33928の一覧
[0] Einmal mehr ~もう一度~(新世紀エヴァンゲリオン・習作)チラ裏より[うにうに](2012/07/17 23:45)
[1] プロローグ アスカ[うにうに](2012/07/08 06:58)
[2] プロローグ シンジ[うにうに](2012/07/08 13:42)
[3] 第1話 もう一度出会いたい[うにうに](2012/07/08 14:55)
[4] 第2話 悲劇の選択[うにうに](2012/07/09 23:16)
[5] 第3話 迫る別れ[うにうに](2012/07/08 17:02)
[6] 第4話 再会の約束[うにうに](2012/07/09 23:35)
[7] 第5話 セカンド・チルドレン誕生[うにうに](2012/07/08 23:28)
[8] 第6話 ドイツへ[うにうに](2012/07/09 23:19)
[9] 第7話 一人じゃない[うにうに](2012/07/09 17:03)
[10] 第8話 電車を降りたら[うにうに](2012/07/09 18:26)
[11] 第9話 使徒襲来!?[うにうに](2012/10/26 16:51)
[12] 第10話 初心者兄妹の出会い[うにうに](2012/10/26 17:36)
[13] 第11話 初心者兄妹の始まり[うにうに](2014/03/12 20:30)
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[33928] プロローグ シンジ
Name: うにうに◆b1370127 ID:71ba60e9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/08 13:42
 僕は誰も助ける事が出来なかった。エヴァのパイロットになって、ようやく自分の居場所を見つけたと思ったのに、全てが僕を裏切って行った様な気がした。エヴァに乗れば、大切な人達を守れると思ってたのに。現実は……



 トウジが死に……


 アスカが壊れ……


 綾波を助けられなくて……


 そして……


 カヲル君を殺した。


 その絶望の前に全てを拒絶していた僕は……


 ミサトさんを死なせ……


 アスカを見殺しにした。


 そのあげく、世界さえ滅ぼしてしまった。



 すべての生き物が解け、LCLの海に還元されたサード・インパクト。

 その中で僕はアスカと出会う事が出来た。おそらくだけど、同じコピー・ロンギヌスの槍にエヴァを通して貫かれた事で、リンクの様な物が出来ていたのかもしれない。

 僕はLCLの海の中で、アスカを求めながらもお互い傷つけ拒絶し合った。

 結果として帰って来れたのは、僕とアスカだけだった。

 どうして僕とアスカだけが帰ってこれたのか考えてみた。

 それは僕が、エヴァの中の擬似LCLの海から帰って来た経験があったからだろう。あの時、僕を外へと導いてくれたミサトさんの声……泣き声は、今でもハッキリと思い出す事が出来る。

 そして何より……アスカと傷つけ拒絶し合った事が、ATフィールドを形成する切っ掛けになったのが要因だと思う。

 最後の戦いの時に受けた傷も残っていたので、LCLから引き出した医療知識と弐号機のエントリープラグの残骸から取り出した医療キットを使い僕が治療した。

 しかし帰って来たアスカは、全く動く事が無かった。……その原因は、LCLから引き出した知識をもってしても全く分からなかった。



 だから僕は待つことしかできなかった。



 僕は今のアスカを、LCLの海に浸すのは危険と判断した。LCLの海には、人類の膨大な経験と知識が詰まっているからだ。その経験と知識をただ漠然と吸収すれば、人間の脳は耐えられない。それは例えるなら、コップにダムの放水で水を注ぐようなものだ。

 かと言って、アスカをこのまま放置すれば、餓死するのは目に見えている。他に摂取できる物が無いなら、LCLに頼らざる得ない。

 僕は妥協案として、LCLを少しずつ飲ませる事にした。

 しかし、僕の手からアスカの口に注いだLCLは、口の端から全て流れ出てしまった。

 外からの刺激に対して反応しているので、心が壊れた時のアスカに逆戻りしただけかもしれない。

(今のアスカは、物を呑みこもうと言う意思が無いんだ)

 そうなると栄養摂取には点滴が一番最適だが、そんな物はここには有ろうはずも無い。ならば今実行可能な方法は、喉の奥にLCLを流し込み反射的に嚥下させるしかない。それには……。

(口移しかないか。……後で殴られるかもしれないな)

 自嘲気味にそう考えたが、それを切望している自分に溜息が出た。

 そうして始まったのは、アスカを生かし続ける為だけの生活だった。



 話しかけても、反応してくれないアスカ。

 思い出話しをしても、ただ空を見つめ続けるアスカ。

 手を握っても、握り返しも払いのけもしないアスカ。

 LCLを呑ませる時に、変な所を触っても何も言わないアスカ。

 悪口を言っているのに、言い返してこないアスカ。

 何度も唇を奪われているのに、反撃してこないアスカ。



 アスカが回復するより早く、僕の心が限界に来たのだろう。次第にアスカの首を絞めてやりたい衝動に駆られるようになった。首を絞めるという行為は、僕とアスカにとって“受け入れて欲しいけど拒絶して欲しい”と言う強いメッセージの様な物だ。

 これはアスカが子供の頃に、母親から首を絞められたトラウマに由来する。一緒に死んで欲しいと言う母の願いに“一緒に死んであげたい”と言う気持ちと“死ぬのは嫌”と言う気持ちの板挟みになった。この最大級のトラウマが、LCLの海から帰還する原動力になったのだ。

 アスカが反応してくれるかもしれない。その誘惑に僕はついに負けてしまった。



 アスカの首に手をかけ、少しずつ力を強くしていく……心算だった。

 わずかに力を込めた所で、僕はそれ以上の事は出来なくなってしまった。

 考えてみれば当然だろう。僕はアスカに応えてもらいたいだけで、死んで欲しいわけではないのだから……。

 しかし、わずかな期待からアスカの首から手を放せなくなっていた。

 浅ましいとは、この事を言うのだろう。



 どれくらいそうしていただろう? 不意に頬を撫でられる感触がした。

 しかしその感触をもたらしたのが、アスカの手である事がすぐに認識できなかった。アスカの表情が全く変わっていなかったからだ。そして僕の頬を一撫でしたアスカの右手は、そのまま力尽きるように砂浜に放り出された。

 僕はアスカが反応してくれた事が、何より嬉しかった。そしてその反応が、僕を肯定し受け入れてくれる物だった事に嬉し涙がこみ上げ、情けない事にアスカの上で号泣してしまった。

 ……そして


「キモチワルイ」


「……え?」

 アスカの視線が、泣きじゃくる僕の顔を捕えていた。

 そして、アスカの体温が急速に失われていくのを知ってしまった。

(……アスカ。そんなに僕の事が憎かったの?)

 その瞬間、アスカが僕をどう思っていたか知ってしまった。一度優しく頬を撫で、僕に希望を持たせて直後全てをひっくり返したのだ。一度希望を与える事により、僕の絶望と孤独を何倍にも大きくしたのだ。しかも、自身の命まで使って……。

 僕はもうアスカの側に居る事は出来なかった。



 どれくらい歩いただろう? アスカの居る砂浜から、ひたすら真っ直ぐ歩き続けた。

 不眠不休で歩き続けた為、足は棒の様になっているし空腹も辛かった。そして何より耐えがたいのは、喉の渇きだった。通りかかった廃墟には、スーパーやコンビニらしきものもあったので、喉の渇きをどうにかしようと思えばできた。しかし僕は、それらを無視して歩き続けた。



 そして僕は、小高い山の頂上で倒れた。

(……僕はここで死ぬんだな)

 漠然とそう思った。

「こんな事なら、LCLの海から帰って来なければ良かった」

 そんな後悔の言葉が僕の口から洩れた。



 どれ位そうしていただろう。視界が霞んでいき、いよいよ終わりと思った時に空から何かが降りて来るのが見えた。

 それが何なのか分からないまま、僕の視界は暗転した。



 気が付くと僕は砂浜に寝ていた。アスカと居た砂浜とは別の砂浜の様だ。

 すぐ隣には、コアが剥き出しの初号機が居た。

「何で初号機が?」

 僕の呟きに反応するように、初号機が僕に手を伸ばして来た。手は僕の手前で、掌を上にするように差し出された。

「この上に乗れって言うの?」

 驚いた事に、初号機は僕の言葉に反応して頷いた。

「初号機が……母さんが僕を助けたの?」

 再び頷く初号機。

「なんで……何で僕なんかを助けたんだよ!!」

 僕はたまらず初号機に怒鳴りつけていた。あのまま死ねれば楽になれたという思考が、僕の頭を支配していた。

 なおも抗議の声を上げる僕に、初号機は差し出した手を浮かせそのまま砂浜に叩きつけた。

 ドスンと言う地味で重い音と共に、僕の口から「ひぃ」という情けない悲鳴が漏れる。(先程まであんなに死にたいと思っていたのに、情けない話だと後になった思った)

 そして初号機は、差し出した手を更に僕に近づけた。

「手の上に乗ればいいの?」

 三度みたび頷く初号機に、これ以上逆らう気力を無くした僕は、大人しく掌の上に乗る。……が、すぐに後悔する事となった。

「わあああぁぁぁぁああぁぁーーーー!!」

 初号機は僕が乗った掌を、自身のコアに叩きつけたのだ。コアにぶつかる瞬間は本気で死ぬかと思ったが、コアはまるで水の様に僕を迎え入れ、僕の体はコアに吸収された。



「シンジ。起きなさい。シンジ」

 誰かが僕を起こそうとしている。

「シンジ。いい加減に起きなさい」

 誰だか分からないけど、お願いだからもう少し寝かせて欲しい。

「シンジ!! 起きなさい!!」

「は はい!!」

 目を覚ました場所は、ある意味懐かしい場所だった。

「ここは、以前初号機に取り込まれた場所か……」

 そう呟くと目の前に誰かが居るのに気付いた。

「か 母さん!!」

 そこに居たのは、以前初号機に取り込まれた時に出会った母さんの姿だった。

「シンジ。……私は情けないわ」

「か 母さん!?」

 そこから母さんの盛大な愚痴が始まった。

 僕の女関係を中心に話が展開し、綾波やマナ……特にアスカの事を言われた時は耳が痛かった。でも、父さんの事まで言及された時は、正直勘弁してほしかった。(……父さん。よりにもよって初号機かあさんの目の前で、リツコさんをレイプするなんて……)しかも関係を持ったのが、リツコさんだけでなく、そのお母さんまで……。おかげで父さんが嫌いになれたよ。とばっちりと言う意味も含めて。

 「ヘタレ!!」や「甲斐性無し!!」等と散々言われた後に、一呼吸間をおいて母さんの表情が真剣なものになった。

「私は世間から天才と言われて来たわ。でも……」

 そこからの母さんの話は、正直言って長かった。

 懸賞金付きの死海文書の一節を解き明かし、ゼーレと言うバックボーンが出来た事。

 ゼーレからの依頼で、死海文書の解読を行った事。

 最初は預言書など馬鹿にしていたが、死海文書に記されていたセカンド・インパクトが起こった事。

 使徒の襲来を予測して、汎用決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオンの開発に尽力した事。

 父さんと母さんの当初の目的は、使徒によるサード・インパクトで人類が滅びるのを回避する事だった。(注 使徒とリリスの接触でもサード・インパクトは発生する)

 母さんがエヴァに取り込まれ、父さんは歪んでしまった。その歪みに冬月副司令も巻き込まれてしまう。

 父さんが周りの者全てを道具とし、結果ゼーレが望むサード・インパクトが起こってしまった。

「母さんは父さんを憎んでいるの?」

 僕が母さんの話の間を利用しそう聞くと、意外な事に母さんは首を横に振り否定した。

「なんで? 父さんは母さんを裏切ったんだよ」

「私はゲンドウさんのそう言う弱いところも好きだったから」

 ……のろけられた。どうやら、ほかの女に手を出した事自体は怒っていないようだ。(信じられない)

「私はゲンドウさんにとって、死んだ人間だったから。

 ……許さないけど(ボソッ)」

 ……怖かった。(母さんって怒らせると怖い人だったんだ)

 母さんはそこでいったん話を切り、改めて口を開いた。表情は先程にも増して真剣だ。険しささえうかがえる。

「シンジはキョウコさんの娘さんとLCLの海から帰って来たわ。二人が“不完全な人間としての幸せ”を示せば、その幸せを求める人達がLCLの海から帰って来たかもしれないの。だから……」

「僕とアスカの所為で、あそこから誰も帰って来ないと言うの!!」

 僕の悲鳴に近い言葉に、母さんは一度眼を閉じ間を取ると話を続けた。

「シンジとキョウコさんの……シンジとアスカちゃんが、LCLの海から帰ってこれた事が既に奇跡なの。そして二人が幸せになり、それに触発されてLCLに海から人が帰ってくる事も奇跡よ」

 母さんは僕の目を見ながら、言い聞かせるように続けた。

「……でも、奇跡は二度も続かなかった」

 そこで母さんが首を横に振り。

「二度も続かないから奇跡と言うの」

 母さんの言葉は、僕にとって何の救いにもならなかった。僕にとってLCLの海から帰って来た事は、救いでも奇跡でもなく絶望だったからだ。アスカの最後の言葉を思い出し、知らず知らずのうちに涙があふれて来た。

 すると母さんは僕の前でしゃがみ、僕の頬を両手で固定すると半ば無理やり視線を合わる。

「私は本当は、死んだ人間としてこの世界に返ってくる気は無かったの。ただ一人の死者として、シンジとアスカちゃんの子供……更にその子供達を、永遠に見守り続けようと思っていたの。その証として永遠に生きたい。何十億年たって地球や太陽がなくなって、一人ぽっちになってどんなにさびしかったとしても、ヒトが存在した証として生き続けたい。私の存在は、人の強さを証明する物だと思ったから」

 何かとんでもない事を言っているような気がするのは、気のせいだろうか?

「母さんは遺跡にでもなるつもりだったの?」

 思わずそう聞くと、母さんは嬉しそうに頷いた。

「そうよ。私はもう死者なんだから、子孫を見守り眠りに着くのが当り前じゃない。遺跡で見つかるミイラみたいなものよ。まあ、人類史上初の生きた遺跡だけどね」

 まるで名誉なことの様に言う母さんに、僕は違和感を覚えた。

「母さん。父さんの事は本当い良かったの?」

 すると母さんは、これまでまっすぐ僕を見ていた視線を初めてそらした。僕は先程の仕返しとばかりに、母さんの頬をつかみ僕の方を向かせた。

 ……そこにあったのは、僕の良く知る目だった。不安と寂しさで怯えるような目、……鏡で良く見る僕の目だった。

「だって、今更私に居場所なんて……」

 今初めて気付いた。僕は母さんに似ていたんだ。

「それに、りっちゃんの扱いに頭来て……つい、初号機でゲンドウさんを齧っちゃたし」

(過激すぎるよ!! 僕は絶対母さんを怒らせないようにしよう)

 この話題は危険と判断した僕は、話題を変えることにした。

「ところで母さんは、僕を助ける為に空から降りて来てくれたの?」

 わざとらしくなってしまったが、話題を変えたかったのは母さんも同じらしく頷いてくれた。

「それもあるけど、それだけじゃないわ」

 そう言うと母さんは僕の頬から手を放し、立ち上がると説明を始めた。何時の間にか、ホワイトボードが出現していた。(この世界って便利なんだな)

「サード・インパクトの終わりは、シンジとアスカちゃんが幸せになって、それに触発された人達が現実世界に帰って来たら終了だったの。自覚しているか分からないけど、それがシンジの描いたサード・インパクトよ」

「違う!! アスカは僕を憎んで……」

「違わないわ!! 本当にアスカちゃんがシンジを憎んでいるなら、LCLの海から二人とも帰って来れないか、シンジだけ帰って来たはずよ」

 母さんの反論に、僕は黙ってしまった。そこには“本当にそうなら良いな”と言う、浅ましい希望があった。(僕は最低だ)

「先ほども言った通り、そこには二つの奇跡が必要だったの。ここで重要になるのは、貴方達に触発されて一人目が帰って来れるかどうかよ。これは“一人帰ってくれば、二人目が……”と言う様に、連鎖するからなの。まあ、赤信号みんなで渡れば怖くない理論ね。もし誰も帰って来れないなら、私は人類に失望していたわ」

 ホワイトボードには、左の“LCLの海”と書いた所から右の“現実”と書かれた所に矢印がひかれた。矢印の上には、物凄く下手な絵で信号?と人?らしき物が書かれている。(母さんって絵が下手だったんだ。しかも下手の横好きっぽい。それとも、前衛芸術のつもりなのかな?)

「でも現実は、一つ目の奇跡は成功したけど二つ目の奇跡を起こす前に、僅かなすれ違いで頓挫してしまったの。だから、サード・インパクトの終わりを考えなけ……って、シンジ!!聞いてる!?」

 僕が失礼な事を考えているのを感じ取ったのか、母さんが怖い顔で聞いて来た。僕は必死に顔を縦に振り肯定する。

「まあ、良いわ。とにかく、LCLも劣化するの。LCLが濁り腐れば、中に取り残された魂も存在出来ず消えて無くなるでしょうね。そうなれば、この星は生命が存在出来ない死の星となるでしょうね」

 僕には母さんが何を言っているのか、良く分からなかった。

「なら、依り代としての権利が残っているシンジが、サード・インパクトを完結させる必要があるの。どんな願いでも、大抵の物はかなえられるわ」

 混乱する僕に、母さんは優しく話しかけて来た。母さんの言葉が、まるで悪魔の囁きの様に聞こえた。

「LCLの海から皆に帰って来て欲しいという願いは、先の失敗により不可能となってしまったけれど、その気になれば神様になってLCLから新しい人類を作り出すことも可能よ」

 続く母さんの言葉に、僕の気持は一気に萎え冷静になった。おそらく母さんは、僕に生きがいの様な物を提示したいのだろう。

「ミサトさん、リツコさん、父さん、綾波、トウジ、委員長、アスカ、加持さん、マナ、カヲルくん。……僕は皆に笑顔でいて欲しかったんだ。だから、どんなに辛くても……逃げ出しても、エヴァに乗り続けたんだと思う」

「やり直したいの?」

 母さんの言葉に僕は頷く。しかし、母さんは首を横に振った。

「やり直しは不可能よ。依り代の力を使っても、時を戻す事は出来ないわ」

 母さんの言葉に、僕は泣きたくなった。それ以外の望みなど僕には無かったのだから。

「でも、別の意味でその願いはかなえられるかもしれない」

 母さんは僕の目を、まっすぐ見ながら説明を続ける。

「“繰り返し存在する宇宙”って言葉を知ってる? その極小版をこの星で行うの。私達が生きた世界を“シンジ生まれるまで”完全に再現すれば、別の可能性を見る事は出来るわ」

 母さんがそこでいったん言葉を切って、僕に言い聞かせるように次の言葉を発した。

「でもそれは、この世界が滅びた後に生まれるかもしれない命を否定する事よ。だからそれを受け入れて、それでも前を見れる独善家になりなさい。それがこの方法を実行する上で、私が出す絶対条件よ」

 母さんの目は何処までも真剣だった。

 僕は母さんの言葉に躊躇したが、結局頷いていた。






 母さんが“独善家になれ”と言った言葉の“本当の意味”に気付いたのは、全てが始まった後の事だった。


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