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No.33878の一覧
[0] 【完結】スリザリンの継承者【ハリポタ×(若干)型月】[寺町 朱穂](2014/02/28 20:08)
[1] [賢者の石編] 1話 深夜の来訪者[寺町 朱穂](2012/10/12 22:58)
[2] 2話 人付き合いは大事[寺町 朱穂](2012/07/08 11:12)
[3] 3話 異文化交流[寺町 朱穂](2012/07/08 11:19)
[4] 4話 9と4分の3番線とホグワーツ特急[寺町 朱穂](2012/07/08 11:24)
[6] 5話 組み分け[寺町 朱穂](2012/07/08 11:26)
[8] 6話 防衛術と魔法薬[寺町 朱穂](2012/07/12 17:37)
[9] 7話 飛行訓練[寺町 朱穂](2012/07/10 10:41)
[10] 8話 私の瞳の色は…?[寺町 朱穂](2012/07/12 17:53)
[11] 9話 ハローウィン[寺町 朱穂](2012/07/10 10:44)
[12] 10話 パーセルタング[寺町 朱穂](2012/07/10 10:48)
[13] 11話 人を呪わば穴2つ[寺町 朱穂](2012/07/10 10:48)
[17] 12話 2つの顔を持つ男[寺町 朱穂](2012/08/12 11:05)
[18] 13話 学期末パーティー[寺町 朱穂](2012/07/15 12:26)
[20] [秘密の部屋編]14話 本は心の栄養 [寺町 朱穂](2012/08/12 11:13)
[21] 15話 休み明け[寺町 朱穂](2012/07/15 12:31)
[22] 16話 吠えメールとナルシスト[寺町 朱穂](2012/08/05 16:10)
[23] 17話 継承者の敵よ、気をつけろ[寺町 朱穂](2012/08/07 18:41)
[24] 18話 メリットとデメリットと怪物[寺町 朱穂](2012/08/16 20:36)
[25] 19話 ポリジュース薬とクリスマス[寺町 朱穂](2012/08/16 20:35)
[26] 20話 バレンタインデー[寺町 朱穂](2012/08/16 20:47)
[28] 21話 珍しい名前[寺町 朱穂](2012/08/30 10:29)
[29] 22話 感謝と対面[寺町 朱穂](2012/08/30 10:26)
[30] 23話 一方的な[寺町 朱穂](2012/08/29 23:54)
[31] 【アズカバンの囚人編】24話 ミライ[寺町 朱穂](2012/08/29 23:55)
[32] 25話 ある夏の日に[寺町 朱穂](2012/08/29 23:57)
[33] 26話 休み明けの一時[寺町 朱穂](2012/09/24 09:47)
[34] 27話 吸魂鬼[寺町 朱穂](2012/09/24 09:49)
[35] 28話 魔法生物飼育学[寺町 朱穂](2012/09/20 10:33)
[36] 29話 まね妖怪[寺町 朱穂](2012/09/24 09:56)
[37] 30話 2度あることは3度ある[寺町 朱穂](2012/09/24 09:53)
[38] 31話 本当の幸せ?[寺町 朱穂](2012/09/24 09:59)
[39] 32話 蛇と獅子になりたかった蛇[寺町 朱穂](2012/09/20 10:57)
[40] 33話 6月のある日に[寺町 朱穂](2012/10/04 16:19)
[41] 32.5話 真夜中の散策[寺町 朱穂](2012/10/04 16:26)
[42] 【炎のゴブレット編】34話 遺産[寺町 朱穂](2012/09/24 10:08)
[43] 35話 土下座する魔女[寺町 朱穂](2012/11/17 09:06)
[44] 36話 魔法の目[寺町 朱穂](2012/10/04 16:35)
[45] 37話 SPEW[寺町 朱穂](2012/10/12 15:15)
[46] 38話 炎のゴブレット[寺町 朱穂](2012/10/12 15:15)
[48] 39話 イレギュラーの代表選手[寺町 朱穂](2012/10/12 15:39)
[49] 40話 鬼の形相[寺町 朱穂](2012/10/24 23:17)
[50] 41話 強みを生かせ![寺町 朱穂](2012/10/24 23:21)
[51] 42話 第一の課題[寺町 朱穂](2012/10/24 23:23)
[52] 43話 予期せぬ課題[寺町 朱穂](2012/10/15 22:38)
[53] 44話 クリスマスの夜[寺町 朱穂](2012/10/18 20:00)
[54] 45話 卵の謎と特ダネ[寺町 朱穂](2012/10/15 23:01)
[55] 46話 第二の課題[寺町 朱穂](2012/10/24 23:26)
[56] 47話 久々の休息[寺町 朱穂](2012/10/15 23:26)
[58] 48話 来訪者[寺町 朱穂](2012/10/24 23:31)
[59] 49話 第三の課題[寺町 朱穂](2012/10/15 23:30)
[60] 50話 骨肉…それと…[寺町 朱穂](2012/10/15 23:31)
[61] 51話 墓場での再会[寺町 朱穂](2012/10/24 23:35)
[62] 52話 終わりの夜に[寺町 朱穂](2012/10/15 23:34)
[63] 【不死鳥の騎士団編】53話 カルカロフ逃亡記[寺町 朱穂](2012/10/25 00:20)
[64] 54話 予期せぬ来訪者[寺町 朱穂](2012/11/10 18:49)
[65] 55話 『P』[寺町 朱穂](2012/11/10 19:04)
[66] 56話 ピンクの皮を着たガマガエル[寺町 朱穂](2012/11/10 19:06)
[67] 57話 叫びの屋敷[寺町 朱穂](2012/11/10 19:08)
[68] 58話 ミンビュラス・ミンブルトニア[寺町 朱穂](2012/11/10 19:12)
[69] 59話 ホッグズ・ヘッド[寺町 朱穂](2012/10/25 00:10)
[70] 番外編 君達がいない夏[寺町 朱穂](2012/11/11 09:35)
[71] 60話 再会[寺町 朱穂](2012/11/18 08:04)
[72] 61話 帰ってきた森番[寺町 朱穂](2012/11/11 09:45)
[73] 62話 価値観の相違[寺町 朱穂](2012/11/11 09:57)
[74] 63話 進路指導[寺町 朱穂](2012/11/18 08:12)
[75] 64話 誰よりも深く……[寺町 朱穂](2012/11/18 08:15)
[76] 65話 OWL試験[寺町 朱穂](2012/11/11 10:05)
[77] 66話 霧の都へ[寺町 朱穂](2012/11/18 08:20)
[78] 67話 神秘部の悪魔[寺町 朱穂](2012/11/18 08:26)
[79] 68話 敵討ちの幕開け[寺町 朱穂](2012/11/18 08:40)
[80] 69話 赤い世界[寺町 朱穂](2012/11/18 08:41)
[81] IF最終話 魔法少女プリズマ☆セレネ!?[寺町 朱穂](2012/11/11 10:59)
[82] 【謎のプリンス編】70話:夏のひと時[寺町 朱穂](2012/11/28 18:35)
[83] 71話 夕暮れ時の訪問者[寺町 朱穂](2012/11/18 08:45)
[84] 72話 夜の闇の横丁[寺町 朱穂](2012/12/03 02:06)
[85] 73話 エディンバラの昼下がり[寺町 朱穂](2012/11/28 18:30)
[86] 74話 フェリックス・フェリシス[寺町 朱穂](2012/11/28 18:49)
[87] 75話 スリザリンの印[寺町 朱穂](2012/12/02 18:51)
[88] 76話 『青』[寺町 朱穂](2012/12/15 16:42)
[89] 77話 …気持ち悪い…[寺町 朱穂](2012/12/16 01:58)
[90] 78話 名前[寺町 朱穂](2013/01/01 11:37)
[91] 78.5話 誓い[寺町 朱穂](2012/12/15 16:58)
[92] 79話 秘密の部屋[寺町 朱穂](2012/12/27 19:05)
[93] 80話 問いと解答[寺町 朱穂](2013/01/01 09:58)
[94] 81話 殺意を抱く者達[寺町 朱穂](2013/01/20 15:00)
[95] 番外編 お願い!アステリア相談室[寺町 朱穂](2013/01/06 16:56)
[96] 82話 どうして?[寺町 朱穂](2013/01/20 15:12)
[97] 83話 分からず屋[寺町 朱穂](2013/03/01 18:38)
[98] 84話 そして2人は夜の闇へ[寺町 朱穂](2013/03/01 19:06)
[99] 【死の秘宝編】85話 『死』を超える[寺町 朱穂](2013/03/01 19:25)
[100] 86話 プリベット通り4番地[寺町 朱穂](2013/04/12 09:32)
[101] 87話 午後のひととき[寺町 朱穂](2013/05/07 00:51)
[102] 88話 空港の攻防[寺町 朱穂](2013/05/22 18:22)
[103] 89話 一時の休息[寺町 朱穂](2013/06/01 22:38)
[104] 90話 それぞれの後悔[寺町 朱穂](2013/06/25 10:58)
[105] 91話 護る戦い[寺町 朱穂](2013/07/16 01:00)
[106] 92話 不死への手がかり[寺町 朱穂](2013/09/20 18:48)
[107] 93話 トテナム・コートの回想[寺町 朱穂](2014/01/09 12:02)
[108] 94話 アステリア・グリーングラス[寺町 朱穂](2014/01/09 12:11)
[109] 95話 19年後…[寺町 朱穂](2014/01/10 21:46)
[110] 96話 19年前の夜[寺町 朱穂](2014/01/10 21:48)
[111] 設定&秘話:『アステリア道場』[寺町 朱穂](2014/01/10 21:52)
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[33878] 45話 卵の謎と特ダネ
Name: 寺町 朱穂◆ef52c802 ID:7dfad7d2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/15 23:01
事前に教えてもらった合言葉を唱えると、ドアが軋みながら開く。
蝋燭のともった豪華なシャンデリアが、白い大理石造りの浴室を照らしている。床の真ん中に埋め込まれた、長方形のプールのような浴槽も白い大理石だ。浴槽の周囲には100本ほどの黄金で作られた蛇口があり、取手の1つ1つに種類の違う宝石が煌いている。

監督生しか使わない浴室に、ここまで金をかける必要があるのだろうか?まぁ、普段…模範生として振る舞わなければならない監督生達の息抜きのため、なのだろう。だからといって、ここまで豪華にする必要があるのだろうか?


『…アルファルド、とりあえず、見張りを頼むぞ』


すぐそばの壁に埋め込まれているパイプにいるであろう、バジリスクのアルファルドに向けて言う。たいして大きな声を出していないのに、壁に当たって反響し浴室中に木霊していた。


『分かっていますよ、主(マスター)。誰かが近づいてきたら、私が殺せばよいのですよね』
『いや、誰かが来るということを私に教えてくれるだけで構わない。一応、許可を得てここにいるんだし』


そう言いながら、金の蛇口をひねる。すると丁度良い温度の湯と一緒に、サッカーボール程もあるピンク色と青色の泡が噴き出してきた。1つの蛇口だけだと湯船は一杯にならないので、次の蛇口もひねる。すると今度は、ラベンダーの香りが強い紫色の気体が湯と一緒に出てきた。

…どうやら、1つ1つの蛇口から出る入浴剤は違うみたいだ。魔法界には『混ぜるな危険』という概念はないのだろうか?いや、混ぜるのが危険なものは入浴剤ではなく洗剤だっただろうか…


とりあえず、臭いがきついので、先程ひねったばかりの蛇口を再度…逆向きにひねり、湯を止める。しばらく最初の蛇口から流れる湯の音だけが、1人で使用するには、あまりにも広い浴室に木霊する。


湯は思っていたよりも早く湯船にたまった。
私は持ってきていた『金の卵』を湯に沈める。風呂に入ろうかとも思ったが、そこまでの許可は、もらっていない。私はスネイプ先生に『第二の課題ヒント解決のため、監督生用浴場を貸してください』と頼み、その許可をもらっただけだ。…だが、せっかく目の前に風呂があるのに入らないのはもったいない。足湯だけでもさせてもらうか。

靴と靴下を脱ぎ、そっと湯に足をつける。……でも、足がつかない。スカートを少しまくりあげ、もう少し足をつけてみるが、底に足がつかない。…どれだけ背の高い人専用なのだろうか。仕方ないので浴槽の縁に腰を下ろすことにした。
そっと眼鏡を外すと、一気に『死の線』が視界にびっしり映ったので、頭が痛くなった。湯に沈めたまま『金の卵』を開ける。そして、浴槽の縁に掴まり、息を思いっきり吸い込んでから、自分の頭を湯に突っ込んだ。泡が、うっとおしいと思うくらい浮いている湯の中で…今までは、開いても叫び声しか聞こえてこなかった卵から、不思議な声のコーラスが聞こえてくる。




『探しにおいで 声を頼りに  地上じゃ歌は 歌えない
 探しながらも 考えよう   我らが捕らえし 大切なもの
 探す時間は 1時間     取り返すべし 大切なもの
 1時間のその後は………もはや望みはありえない
 遅すぎたなら そのモノは もはや2度とは戻らない』



私は泡だらけの水面から顔をだし、目にかかった髪を振り払った。ポタリポタリと髪から滴る湯が床に落ちる。傍に置いておいた白いタオルで濡れた頭を拭きながら、先程聞いた不思議なコーラスを反芻する。


探す…大切なものを……1時間以内に。それが、第二の課題の内容なのだろう……まったく、ダンスパーティは全然関係なかったんだな。本当に他校との交流が目的だったとは…


未だに湯船に入れて開いたままの『金の卵』からは、まだ歌が流れているようで、卵からゴボゴボと音を立てて泡が湧き出ていた。私は卵を閉めると、湯から持ち上げる。これ以上の情報は、手に入れることが出来そうにない。


…湯……というか水の中でしか聞こえない言葉。ということは、戦いの舞台は水中……この学校でそういう舞台に指定されそうな場所は…湖か?…だけど、どうすればいい?泳ぐことは問題ない。幼い時にクイールが、よくプールに連れて行ってもらったものだ。ここ数年ほど泳いでないが、泳ぎは身体が忘れていない、はずだ。問題は、水の中で1時間も息を止めなければいけないのだ。魔法を使うのだろうとは思うが…


いくら魔法といっても、息を止めても生命活動を維持できる魔法なんて聞いたことがない。自分の身体を変身させるという手もあるが、どのような環境で『大切なもの』を探すのか分からない以上……出来る限り普段の状態を維持し続ける方がいい。その場に応じて臨機応変に自分の身体を使えるようにしておかないと、万が一の時に危ない。


……なら、どうする?ここは、空気を確保する魔法『泡頭の呪文』を使うのがいいかもしれない。



『…謎が解けそうですか?私が出来ることなら、手伝いますが…』


壁の中からアルファルドの声が、響いてくる。


『…1つだけ謎が残っているが……アルファルドには手伝ってもらえそうにない。ありがとう、アルファルド』
『そうですか……』


寂しそうな声を出すアルファルド。…悪いが、本当にアルファルドが手伝える謎ではないのだ。

第2の課題の最後の謎。

それは、私の大切な『モノ』がいったい何であるか、ということだ。もちろん1番大切なモノは『平穏』だが、それを1時間以内に助け出す。そういうことの意味が分からない。つまり、取り戻すべき大切なモノというのは……カタチあるモノ。
だが、私の大切なモノとは、いったいなんだろう?

肌身離さず持っている杖?それともナイフ?今の壁の向こう側にいるバジリスクのアルファルドだって大切なモノだし、友達だって大切なモノだ。育ててくれたクイールも大切なモノだ。


まぁ、細かいことは後で考えよう。湯から足をあげると、先程のタオルで簡単に拭きはじめた。












土曜日、今日は久々にホグズミード村へ行くことが許されている日だ。私はミリセントと一緒に、冷たく湿った校庭を横切り、校門の方へと歩いている。いつもならパンジーとダフネがいるのだが、パンジーはドラコと…ダフネはレイブンクローの男子生徒と一緒に行く約束をしていたのだ。要はデートというやつだ。そういう予定が入っていない私とミリセントで、ホグズミードに向かっている。
さっきからずっと、ミリセントがパンジーやダフネに呪詛に限りなく近い独り言を呟いている。正直、気味が悪い。本人にしてみれば、ストレス発散のいい機会かもしれないが。そろそろ止めた方がいいだろうか?


「まったく、なんでアイツらばかり青春を謳歌しやがって、パンジーやダフネなんかに抜かされるなんて――せめて許嫁でもいたら―――いや、そいつがデブで間抜けな奴だったら嫌だし――やっぱり学生時代にイケメンを捕まえるしかないわよね――だからセレネ、男を紹介しなさい!!」

「いきなり私に振るか?」

ミリセントが血走った目で私を見てくる。相当重症だ。

実はミリセントはダンスパーティで、いやいやパートナーになったマーカス・ベルビィという男子生徒と、さっさと別れたあとだ。いい男探しに明け暮れていたみたいだが、結果は見ての通り……惨敗だった。


「別にイケメンを求めなくてもいいんじゃないか?男は顔ではなく中身だろ?」
「違うわ!男は顔なの!!じゃあなに?セレネは、性格さえよければクラッブやゴイルでも付き合っていいっていうの?」
「……」
「ほら、すぐに答えないじゃない!!やっぱり男は顔なのよ!…って……クラム様じゃない!」


荒々しい口調だったが、急に一変して乙女らしい声を出すミリセント。普段のミリセントより、1オクターブは高い声だ。彼女の視線の先には、水泳用のパンツを履いたクラムがいた。ダームストラングの船のデッキの上で準備体操をしている。それから、船の縁によじ登り、両腕を伸ばしたかと思うと、まっすぐ湖に飛び込だのだ。…まだ、ところどころ…湖に氷が張っているにもかかわらず。

「あ~…素晴らしい筋肉。見事に腹が割れてたわ……」


瞳をトロンと潤ませているミリセント。ミリセントから見ると、クラムの行動は奇行ではないようだ。今日は1月の下旬。
耳あてをしマフラーを巻き、お気に入りの真っ赤な革ジャンを羽織り防寒対策をしているが、思わず猫背になってしまうくらい寒い。それなのに、平気で湖の中央を浮き沈みしているクラム。

これは、狂っているというのか。それとも、ここより寒い地方から来ているので、このくらいの寒さは大丈夫ということなのか。それとも、防寒の呪文を体に施してから飛び込んだのか。だが、なんで湖に飛び込んだのだろうか?考えられるのは第2の課題に備えて、泳ぎの練習だということ。そうでなかったら、誰が好き好んで1月の下旬に、ところどころ氷が張っている湖で泳ごうと思うだろうか?

課題と言えば、ハリーは大丈夫なのだろうか?卵のヒントもハリーに解けるかわからないし、それ以前にハリーは泳げるのだろうか?遠目から見ても、クラムは人並み以上に泳いでいる。セドリックやフラーも、私同様、プールに行ったりして泳ぎを習っている可能性が高い。



問題はハリーだ。ハリーは幼いころ、プールに連れて行ってもらえるような機会なんてなかったはずだ。昔、ハリーと手紙のやり取りをしていた頃≪1度も水泳訓練なんか受けたことないや。行きたいなって言ったら『ダメ』って即答されたよ…≫という手紙をもらった気がする。学校でプールの授業があったかもしれないが、それで泳げるようになれる人は稀だと思う。水中の中で呼吸する方法をハリーが見つけたとしても、泳げないと意味がない。あとで、こっそり聞いてみるか。


そう思いながら、雪でぬかるんだ大通りを歩く。歩くたびに、音を立てて泥が跳ねかえり、靴や服に茶色のシミを作っていく。後で洗うのが面倒だ。『秘密の部屋』にこもってリドルが残した本でも読んでいた方が良かったかもしれないということが、頭を横切った。だが、そうするとミリセントが独りぼっちになってしまうから、やめた方がいいと判断した。


「うわぁ~寒いわね。『三本の箒』に行って暖まらない?」


ミリセントは私の返答する前に、私の腕をつかむと物凄い力で引っ張り始めた。あっという間に1年を通して混み合っている人気パブ…『三本の箒』にたどり着く。見渡しても、どの席も楽しそうに言葉を交わしているホグワーツ生で賑わっていた。公衆の面前でいちゃつく男女の姿が見当たらない。パンジーが教えてくれたのだが、そういう男女は『マダム・パディフッド』という喫茶店の方に行っているそうだ。パンジーは、ピンクを基調としたフリルだらけの素敵な店だと言っていたが…正直、そういう店より、混んでいて騒がしくても『三本の箒』の方がいい。


「おい、セレネ……とミリセント!こっちに来い、こっちに!!」


名前を呼ばれたので振り向くと、ザビ二が手招きをしていた。彼と一緒にいたノットはムスッと顔をしかめている。


「あら、ザビ二!!ようやく私の魅力に気が付いてくれたの!?」


空いている椅子に座るや否や、ザビ二の方へ身を乗り出すミリセント。ザビニは失笑した。


「まさか!俺はもっと女らしい体型が好みだ」
「なによ!?私はそういう体型じゃないっていうの!?」
「違う違う。ミリセントは全体的にデカいだけ」
「失礼だぞ、ザビ二」


軽くザビ二を睨みながら、席に着く。冗談冗談といいながら、手を軽く上げて店主のマダム・ロスメルタを呼ぶザビ二。私とミリセントの分のバタービールの注文を受け取り、カウンターの方へ戻っていくロスメルタの後姿を睨みつけるミリセント。ロスメルタは、先程…ザビ二の好みの女性に当てはまるような体型をしている。


「…どうせ、ああいう女の方が男受けがいいのよね……」


そろそろ男関係の話題から離れてほしい。別の話題に変えようと口を開く前に、ザビ二が話し始めた。


「まぁ、万人が万人そうだとは限らないけどな」
「おい、なんで俺の方を見るんだ?」


黙ったまま不機嫌そうに座っていたノットが口を開く。ザビ二の顔が面白いものを見たときのようにニヤリと歪んだ。


「どういう意味か言って欲しいのか、ここで?」
「…お前な…」
「そういえば、この間の授業の話だが…」


張りつめた空気が漂い始めてきたので口を開いたが、その時に視界に入ったもののせいで、言葉を切ってしまった。私が不自然なところで言葉を切ったことが気になったのだろう。3人とも不思議そうな顔をして私の視線の先をたどった。そこにいたのは、大勢の小鬼に囲まれたバグマン。低い声で何かを言い合っているようだ。小鬼たちは全員、腕組みをしてバグマンを睨みつけていた。いつもは少年を思わす無邪気な笑みを浮かべているバグマンも、いつになく緊張した顔をしている。…このテーブルより、ずっと張りつめた雰囲気が漂っていた。


「…あいつ、仕事は平気なのか?」


ノットがつぶやく。
まさに彼の言う通りだ。今日は参考対抗試合関係のイベントがあるわけではない。なのに、なんでロンドンにある魔法省の役人である彼が、雪のせいで外に出るのが億劫に感じるような片田舎のパブにいるのだろうか?そんなバグマンの表情が途端にいつも私たちに見せている無邪気な表情になった。
立ち上がって、そのままハリー、ロン…そしてハーマイオニーのいるテーブルに歩いて行く。


「怪しくない?密談か何かかしら?」


ミリセントが声を低くして言う。ザビ二がコクリと頷いた。


「それしかないだろ?でも妙だな……どうせなら『ホッグズ・ヘッド』でやればいいのに。あそこなら人が少ないから、他の人に気づかれにくいのにな」
「いや『三本の箒』の方が密談向けだ」


そう言うと、バータービールを口に含む。爪先まで冷え切っていた身体中が一口飲むごとに、内側から暖まっていく気がした。


「なんで?こっちの方が盗み聞きされそうだよ?たくさん人いるし」
「ホッグズなんたらっていうパブについては私は知らないが……人が少ないってことは、それだけ声が周りに聞こえるってこと。こっちの方が、みんな互いの話に夢中だし……私たちの席からバグマンの席までそこまで離れていなかったのにもかかわらず、声がハッキリと聞こえなかっただろ?」
「なるほどね。でも、気になるわ。なんで争っていたのかしら?」


ミリセントが好奇心で目を輝かせながら、バグマンがハリーと話し込んでいる様子と、そんなバグマンに対して射殺すような視線を送る小鬼を交互に見るミリセント。


「…あれだろ?小鬼が絡んでくるってことは、金関係じゃないか?ほら、銀行(グリンゴッツ)を取り仕切ってるのは小鬼だし、バグマンって金遣いが荒いって聞いたことがあるしな」


ザビ二がバタービールを啜りながら、ミリセントの問いに答える。


「今の2人、だか3人だか前の親父が金貸しをやってたんだけどな、その取立てでバグマンとトラブったことがあったんだよ。…ま、大ごとになる前に親父は病気で死んだけど」


母親は美人で有名で、現在は母親と2人暮らしのザビ二には……たしか今までに父親が6人いて、全員悲劇的な死を迎えているらしい。ちなみに、その度に莫大の保険金がザビ二の母親のところに転がり込んだため金持ちだ。…何か事件の匂いがする気がするが、突っ込まないでおこう。




「また、誰かを破滅させるつもりか!!」


ハリーが叫ぶ声が聞こえた。

もうすでにバグマンの姿は見当たらない……が、代わりに『日刊預言者新聞』の記者…リータ・スキーターが、腹の出たカメラマンを従えて立っている。リータは黄色というよりバナナのような色をしたローブを着ていて、長い爪をショッキングピンクに塗りあげている。そして、どこかで見たことがあるような形をした眼鏡をかけていた。


「ハリー!」


怒り心頭という顔をしたハリーとは対照的に、リータの顔は物凄く嬉しそうな笑みを浮かべていた。席を立って今にも取材をしたいのだろうか。バッグの中から勝手に羽根ペンと羊皮紙が飛び出てくる。間に挟まるような形になっているロンがオロオロと、2人の顔を交互に見た。


「素敵ざんすわ!こっちに来て一緒に…」
「お前なんか、一切関わりたくない。3mの箒を間に挟んだって嫌だ!
一体何の為にハグリッドにあんな事をしたんだ?」
「読者には真実を知る権利があるのよ。ハリー、あたくしはただ自分の役目を…」
「ハグリッドは何にも悪くないのに!」


先程まで人の楽しげな笑い声で溢れていたパブが、いつの間にか静まり返っていた。店主のロスメルタも注目しているみたいで、カウンターの向こうで目を凝らしている。注いでいる蜂蜜酒がグラスから溢れているのに全く気付いていない。リータは少しだけ動揺したらしく、一瞬、笑顔が消えたが、次の瞬間には何事もなかったかのように笑みを浮かべ続けていた。


「君はハグリッドについてどう思う?『筋肉隆々に隠された顔』なんてのはどうざんす?」


その一言で、ハリーの怒りは頂点に達したようだ。これ以上ないというくらい顔を怒りで赤く染めているハリーを、私は初めて見た。

…数日前、預言者新聞の一面で、ハグリットが巨人の血を引いているという記事が出たのだ。巨人というのは乱暴で人を殺すことしか考えていない生き物なのだそうだ。もっとも、巨人が人を攻撃対象と認識したのは、人が巨人の住処である森や山を、断りもろくに入れずに切り開いていったからだが。だが、魔法界には『巨人=凶悪』というイメージが根強い。
実際にその記事を見た途端、ダフネは椅子から転げ落ちるのではないだろうか?と思うくらい驚いていた。……あの記事が出た日以降、一度もハグリットの姿を見たことがない。授業は代用教員の魔女に任せて、ずっと小屋に閉じこもっている。相当ショックが大きかったのだろう。自分が生まれて50年以上、ずっと隠し続けてきていた秘密が突然、公にされてしまったのだ。
このままハグリットが立ち直れるかどうかは私には分からない…が、幸いなことに、森番を長く務めてきたおかげでハグリットを知る人は多い。『偏見で物を判断する』や『怪物好き』や『騙されやすい』という困った面があるが…本当は非常に優しく、特に、自分が認めた相手に対しては、とことん優しいという利点を知っている人が多いのだ。そんな優しいハグリットを覚えている人たちが、ハグリットが再び元気を取り戻せるように、何かしら行動を起こすと思う。

もっとも……周囲の人たちができることは、ハグリットに対して呼びかけるだけで、殻を破れるのはハグリットだけだが。



「君の意外な友情とその裏の事情についてざんすけど。君はハグリットが父親代わりだと思う?それとも―――」


その先の言葉は、ハーマイオニーが椅子から立ち上がる音で消されてしまった。


「あなたって、最低な女よ!」

歯を食いしばっていうハーマイオニー。握りしめた拳が震えているのが遠目でもわかる。


「記事のためなら、なんにも気にしないのね。誰がどうなろうと。たとえル―ド・バグマンだって―――」
「お座りよ、バカな小娘のくせして。分かりもしないのに、分かったような口をきくんじゃないよ」


ハーマイオニーを睨みつけたリータは冷たく言った。

「バグマンについちゃ、あたしゃね、あんたの髪の毛が縮み上がるようなことをつかんでいるだから。もっとも……もう縮み上がっているようざんすけど」


ハーマイオニーの、あちらこちらに跳ねているボサボサの髪の毛をチラリと見て、苦笑するリータ。


「行きましょう、さぁ…ハリー…ロン…」


席に座っているハリーとロンを促すと、怒りに震えながらパブを出るハーマイオニー。
リータの方はというと、『獲物を見つけた』という顔をしていた。彼女の羽ペンが、テーブルに置かれた羊皮紙の上を、飛ぶように行ったり来たりし始めた。

…嫌な予感がする。ハグリットの次に新聞ネタになる人物は……ハーマイオニーなのではないか?
再び、パブに活気が戻る。何事もなかったかのように………


「あら、たしか…あなたも代表選手でざんすよね?」


リータが気取った感じで私たちの方へ近づいてくる。吐き気がするような作り笑いを浮かべて、私……それから同じテーブルに座っているメンバーの顔を1人1人を品定めするように見てきた。


「何か御用でしょうか?」

ことを荒立てて、今度は自分が新聞ネタにされたら嫌なので、なるべく丁寧で好印象を与えるように話す。ますます笑みを浮かべるリータ。


「ねぇ、たしかスリザリン生だと思うけど…。ハッキリ言って、さっきの子についてどう思う?」


私たちは何も答えなかった。…予想通り、ハーマイオニーの荒捜しをしているみたいだ。


「…人の秘密を話すような真似はしません」
「あら?あなたスリザリン生ではなかったでざんすの?スリザリン生はグリフィンドール生と仲が悪いと思っていたんだけど?」


少し残念そうな笑みを浮かべるリータ。だが、リータはその場を動かない。ジッと私を見てきた。


「そういえば…あなたは同じ代表選手としてハリーのことはどう思っているの?」
「同級生ですよ」
「ハリーの意中の人を知ってる?」
「本人に聞いてください」
「あら、そう。なら次の質問だけど……」


うっとうおしい。さっさと話を切り上げたい。変に記事にされたら嫌だし。でも、ここで無視すると、後でろくなことが起こらない気がする。どうにかして切り抜けなくては。


「すみません。2時から『ハニーデュークス』で新作菓子の限定販売会があるから行こうって、前から言っていたんです」


私がチラリとミリセントたちの方を向いた。彼女たちは私の意図を呼んでくれたらしい。『その通り』という顔をしてリータを見上げる。

…嘘ではない。『今日は、菓子の限定発売会がある』と満面の笑みを浮かべたダフネが、ずいぶん前から言っていた。だから、嘘をついたわけではない。行くという予定はなかったが。リータは、ほんの少し残念そうな顔をしてパチンっとバッグを閉めた。


「そう……また、今度お話を聞かせて欲しいざんす」
「はい、リーターさんも雪道ですが、気を付けてお帰りくださいね」


心にもないことを言って、ミリセントたちと外に出る。外に出ると、今まで暖かい店内にいたからだろう。冷気が身体を、これでもかというくらい突き刺してきた。

そういえば、なんでリータはハグリットが50年以上も隠し続けてきていた秘密を知ったのだろうか?いくらハグリットの口が軽いとはいえ、そう簡単に教えるとは思えないが。

もしかして、盗聴されていたのだろうか?今も、誰かのことをリータは盗聴しているのだろうか?

いったいどうやって盗聴しているのだろうか?盗聴なんて簡単にできることではない。

吐く息が白い……眼鏡が曇る。暖まったはずの身体が、もう冷たくなっていた。


「どうする?」
「もう帰って『爆発スナップ』でもしないか?どうせ『ハニーデュークス』に行っても、混んでいると思うしさ」


私たちはザビ二の案に賛成した。そして、相変わらず雪と水とで作られた、ぬかるんだ地面を城に向かって歩き始めたのだった。

……モヤモヤとした嫌な予感を胸に抱いて……




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10月15日:一部改訂










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