「おい、セレネ。寝癖を直したらどうだ?」
こんがり焼けた菓子パンを食べていると、隣に座っていたノットが呆れた感じで話しかけてきた。パンを持っていない空いている方の手で少し髪を触ってみる。ノットの言うとおり、確かに寝癖が出来ていた。後頭部の髪がほんの少しだけ、変な方向に曲がっている。
「別に問題ないだろ。そのうち直る」
「お前、本当に女か?もう少し身だしなみに気を付けないと、今日は特に先生たちに何か言われるぞ」
「べつに私なんか見る人いないだろ?ホグワーツ全校生徒が、何人いると思ってるんだ?」
今日は『三校対抗試合』を開催するため、参加校である『ボーバトン』と『ダームストラング』の代表生徒が来校する日だ。だから、大広間はもちろん、廊下の隅から隅まで清掃され装飾がされていた。
この大広間1つとっても、普段とは様変わりしている。壁には各寮を示す巨大な絹の垂れ幕が掛けられている。スリザリンは緑地に銀の蛇で、グリフィンドールは赤に金の獅子。レイブンクローは青にブロンズの鷲で、ハッフルパフは黄色に黒の穴熊だ。廊下に飾ってあった煤けた肖像画の何枚かが汚れ落としされているし、甲冑も今までにないくらい磨かれ輝いていた。
パンの最後の一欠けらを飲み込み、かぼちゃジュースの瓶に手を伸ばした時…
「セレネ先輩、セレネ先輩!」
ノットと私の間に入り込んでくる少女がいた。いつものように黒い目を輝かせて、甲高い声で私を呼ぶ。
「どうしたんだ、アステリア?」
「先輩は、『三校対抗試合』にエントリーするんですか!?」
「いや、しない」
私が答えると、アステリアは驚いて目を大きく見開いた。
「えぇぇ!!なんでですか!?
だって先輩って唯一ムーディ先生の『服従の呪文』を破った生徒だって聞いていますし学年トップの脳の持ち主ですし私よりずっとスタイルいいですし体力だってそんじょそこらのヘナチョコ男子共よりずっとありますし家柄だって一流ですし他寮からの評判もいいですし友人思いの優しい人ですし勇気だってありますのになんでエントリーしないんですか!!?」
ここまで息継ぎなしで言い切ったアステリアの方が、私は凄いと思う。はぁはぁと荒い息をするアステリアを見て、ダフネの家族はどこで妹を育て間違えたのか、と考えていた。とりあえず、辛そうなので近くにあった水を渡す。
「あ、ありがどうございまず」
ゴブレットになみなみと注がれた水を、一気に飲み干すアステリア。彼女の顔が生き返るのを確認してから、私は口を開いた。
「私は、まだアンタの姉さんと同じ14歳だ。参加可能年齢は17歳以上。したがって参加は不可能。まぁ、もし私が17歳以上でも参加はしないけど」
「なんで!?先輩なら賞金の1000ガリオンを―――」
「命と金。どちらだ大切だ?」
そう言うと、アステリアの口が止まった。私はグラスに『かぼちゃジュース』を注ぎながら、話を続ける。
「命は一度っきりしかないんだ。そんな『夥しい死者』がでる試合に参加して、命を失ったらもったいない」
「まぁ、セレネらしいな」
アステリアの向こう側にいて、すっかり影が薄くなっていたノットがつぶやく。すると、アステリアは物凄い勢いでノットを睨んだ。
「セレネ先輩を呼び捨てにするとは、なんと無礼な!!」
「いや、俺とセレネは同級生――」
「セレネ先輩、この人に近づいてはダメです!男はケダモノです!危険物です!近づいてはいけません!!」
真剣な目で私を見てくるアステリア。どうやら、冗談で言っている雰囲気ではない。私は話題を変えるため、アステリアから視線をずらす。
「ほら、アステリア。友達が向こうでアンタを待ってるぞ」
大広間の入り口で、アステリアの方を向いていたスリザリンの1年生2人組の方を見る。彼らは確か、アステリアといつも一緒にいる男子だったと思う。
「あっ!しまった、待たせているのを忘れていました!では、先輩!これで失礼させてもらいます!」
アステリアはパタパタと音を立ててその場を去っていった。アステリアはまるで、嵐のような子だ。元気がいいのはイイ事だが、加減というのも大事だと思う。
「…あの子の言うとおり、お前なら三校対抗試合を優勝できそうな気がするがな」
ノットが片手で焼き菓子をつまみながら、アステリアと2人の男子が仲良く大広間から出ていくのを見ていた。
「あの子の言うとおり、俺たちの学年でムーディの呪文に抗えたのはお前だけだったのは事実だ。数々の修羅場を潜り抜けているポッターでさえ、ムーディの『服従の呪文』の効果で机の上でタップダンスをしたんだぞ?」
「あれはまぐれだ」
席から立ち上がり、大広間から出る。私は玄関ホールで参加校の到着を待つ人の群れに入り、到着を待ちながら、数日前に行われた『闇の魔術に対する防衛術』の授業を思い出した。
魔法省が禁じている3つの呪文――人を操る『服従の呪文』――拷問に使用する『磔け呪文』――そして人を一瞬で殺す死の呪い『アバタ・ケタブラ』。そのうちの1つ、『服従の呪文』を生徒1人1人にかけて、呪文の力を示し、果たして生徒がその力に抵抗できるかという授業を、ムーディ先生はしたのだ。
先生の『服従の呪文』で支配された生徒は、例えば―――ドラコはマグル界で、私が入学する前に流行っていたヒット曲を歌いながら片足ケンケンで教室を2周し、その子分のクラッブとゴイルは見事としか言えない豚の物真似をし、運動神経がお世辞にもいいとはいえないダフネがオリンピック選手顔負けの体操を立て続けにやってのけていた。
以前、『秘密の部屋』にあったリドルの教科書に『服従の呪文』について書いてあったので存在は知っていたが、まさか、本人の身体能力を遥かに超えたことや、本人が知りえないことまでさせてしまうとは知らなかった。…嫌な呪文だ。
ただ、操られている人は、どことなく普通の人とは違う。眼が『薬』でもしているかのようにトロンと眠たそうな目をしているのだ。
そんなことを考えている間に、私の番になった。もし、本当の実践なら、メガネをはずして『服従の呪文』の『死の線』を斬ることで、操られる前に無効化できると思う。だが、今は授業。他の人の眼がある以上、簡単に眼鏡を外してナイフを持ち出すことなんてしてはいけない。
「『インぺリオ―服従せよ』」
ムーディ先生が私に杖を向けて呪文を唱える。とたんに、すべての思考も悩みも優しく拭い去られ、私の中に幸福感だけが残った。ふわふわっという心地よい気持ちに身を任せたくなる。だが、騙されてはいけない。私は今『服従の呪文』をかけられているのだ。そう思うことで、『幸福』だということしか考えられなかった思考が、徐々にだが戻ってきた。
―ロボットダンスをしろ―
洞穴で響き渡るような声がする。一瞬身体を動かしそうになったが、踏みとどまることが出来た。
―ロボットダンスをしろ―
先程よりも大きい声が、私に命令する。途端にフワフワっとした長閑な春の陽だまりのような感覚が、押し寄せてくる。だが、騙されてはいけない。これは『服従の呪文』。ムーディ先生の命令だ。
―早くしろ!モタモタするな―
「煩い!」
押し寄せる幸福な感情を打ち消すように、杖を鞭の様に振るう。途端にムーディ先生は教室の反対側まで飛ばされていった。冷水を浴びたかのように多少ボンヤリとしていた思考が一気にハッキリした。少しやりすぎたかと思ったが、先生は壁に強打した頭を押さえ、ヨロヨロと立ち上がりながら『見事だ。スリザリンに15点』と言ってくれた。
他のクラスでも行われた授業らしいが、一発で跳ねのけたのは私だけだったそうだ。何回かやるうちに次に跳ね除けたのはハリーだったらしいが、他の人は術を拒めなかったみたいだ。確かに実体験して分かったのだが、あの幸福感にだけ包まれたような状況下で、自分の意志を貫くことは難しいと思う。私は『服従の呪文』にかけられると分かっていて気を引き締めていたから、自分の意志を貫くことが出来た。もし、気が付かない間に『服従の呪文』をやられていたら、どうなるか分からない。
服従の呪文は、麻薬みたいだと思った。一度、使われてしまうと反抗するのは難しくなりそうだ。
それに、本気のムーディ先生には『魔法』では敵わない気がする。
なにせ、ムーディ先生はダンブルドアに認められた人だ。じゃなかったら、彼がどうして私が『賢者の石』を護ったということを知っているのだろう?まさか、ヴォルデモート本人に聞いたとは思えない。だから、ダンブルドアに直々に教えてもらったから、知っているのだろう。大事な秘密を明かせる関係、つまり、ダンブルドアの右腕、それがムーディ先生なのではないか?
今のままの魔法の力では、勝てない気がする。勝とうとも思わないが。
「セレネ?」
ポンポンっと軽く肩を叩かれて振り返る。そこにいたのはバッジを持ったハーマイオニーだった。
「SPEW?」
確か『反吐』という意味だったと思う。なんでハーマイオニーは『反吐』と書かれたバッジを作ったのだろうか?私が頭の上に『?』を浮かべていると、ハーマイオニーが自信満々に話し始めた。
「これは『S・P・E・W』。『しもべ妖精福祉振興協会』の略称よ」
ハキハキと話しはじめるハーマイオニー。『しもべ妖精』というのは、詳しくは知らないが、本で読んだこともあるし、ドラコ達から聞いたことがある。なんでも大きな屋敷に仕える生物らしい。
魔力を持っていて、『姿くらまし』という魔法使いが使う瞬間移動を封じる術が掛けられている場所でも、瞬間移動することが出来るみたいだ。ちなみに、解雇するには洋服を与えるのだとか。
「そんなに悪環境で働かされているのか?」
「そうよ!セレネは知らないと思うけど。ベッドのシーツを替え、暖炉の火をおこし、教室を掃除し、料理をしてくれる魔法生物よ。でもね、彼らは無休で奴隷働きをしているの。年金も病欠も貰っていないのよ」
激しい口調で言うハーマイオニー。アステリアとは違うが、彼女の眼も光り輝いていた。
「セレネはどう思う?」
「…まぁ、確かにほっとけないな」
「でしょ!?協会の目標としては『正当な報酬』と『労働条件』を確保すること。それから『杖の使用禁止法』を改正して、しもべ妖精を1人『魔法生物規制管理部』に参加させることなの。だって私達と同じくらい、いいえ、それ以上に魔法を使えるのに、こうも虐げられているのっておかしいと思わない?可哀そうよ。セレネもそう思うわよね?」
「私もそう思う。
でも、入会は出来ない」
SPEWへの入会をきっぱり断ると、困惑の色がハーマイオニーの顔に浮かぶ。きっと私が断るとは思ってもみなかったのだろう。
「しもべ妖精が奴隷働きをしているっていうのは、嫌な感じがする。ドラコやパンジー達が話していた口ぶりから察するに、まさに『しもべ妖精』は『奴隷』だ。だが、妙だとは思わないか?私達より魔力のある生物が、なんで反旗を翻してこないのか」
「それは、彼らが洗脳されているからよ」
「まぁ、それも一理あるかもな」
私は時計をチラリと見た。時間はもうすぐ6時。そろそろ参加校のボーバトンとダームストロングが到着する時間だ。
「だが、最初はそうではなかったんじゃないか?
例えば『ブラウニー』っていう生物がスコットランドの伝説に存在する。この生物は、人間の人助けをするらしい。主の居ない間に家畜の世話をしたりとか、掃除をしたりとかするみたいなんだ。彼らが働く理由は服が欲しいから。服を貰ったら満足してその家を去るっていう生物らしい。
きっと、しもべ妖精は、ブラウニーの一種だったんじゃないか?服が欲しいから働く。そうしている内に、働くことが生きがいになってきた。だから病欠も年金もいらない。自分たちは主に仕えて働きたいって思うようになったんだと思う」
ハーマイオニーは何も答えなかった。
「だが、ハーマイオニーが言うとおり、しもべ妖精が好きでやっていることとはいえ、扱いが悪いようにも思える。だから、改善したいと思うなら協会を作るんじゃなくて、もっと、しもべ妖精と同じ視点に立って、彼らに気持ちになって考えた方がいい。環境を変えるのではなく、彼らの心を変えないと、ハーマイオニーの考えは実行できないと思う」
話を聞き終わったハーマイオニーは、黙って首を横に振った。私よりも若干背が高い彼女は、まるで憐れむような、どこか悲しそうな目で私を見下ろした。
「違うわ、セレネ。しもべ妖精は、心のどこかで解放を望んでいるのよ。でも、自分たちは気が付いてないの。だから、私達が彼らの環境を整えてあげないといけないのよ」
何でわかってくれないの?という目で訴えかけてくるハーマイオニー。私は彼女に反論しようと思って口を開きかけた時のことだった。
「あそこだ!!」
誰かの声が響く。私とハーマイオニーが声のした方向を見ると、6年生生徒が、森の上空を指差して叫んでいた。見てみると、何か大きなもの…箒よりもずっと…何百倍も大きい何かが、濃紺の空の向こうからどんどんと城に向かって疾走してくる。
「ドラゴンです!!あれはドラゴンに違いありません!!」
アステリアの甲高い声が聞こえた。
「ちがうよ、あれは空を飛ぶ家だ!!」
アステリアの隣にいる小さな少年、グリフィンドールのコリン・クリービーに似た少年がアステリアに負けず劣らずの甲高い声を出している。コリンに似た少年の推測の方が近かった。巨大な黒い影が森の梢をかすめた時、城の窓明かりがその影を捕えた。
大きな屋敷ほどあるパステル・ブルーの馬車が、12頭の黄金の鬣(たてがみ)をした天馬に引かれて飛んで来たのだ。着陸すると、淡い水色のローブを着た少年が馬車から飛び降り、前かがみになって馬車の底をゴソゴソし始めた。金色の踏み台をひっぱり出すと、少年が恭しく飛びのく。すると馬車の中から、子供用のソリ程もあるピカピカの黒いハイヒールを履いた女性が現れた。
……デカい……
ダンブルドア先生も背が高い方だったが、そのダンブルドア先生は女性の胸の位置までしかない。
だが、いくら背が巨人並みにデカいからとはいえ、粗野な感じはしない。振る舞いも上品で、着ている服も高級品だ。ただ、彼女も含めてだが、彼女の連れてきた生徒たちの服は、薄手だ。生徒たちはブルブルと震えながら、不安そうな表情でホグワーツを見上げている。
「きっとあの人がボーバトンの校長先生、マダム・マクシームよ」
ハーマイオニーの斜め横にいた女子生徒がつぶやく声が聞こえる。そういえば、『西洋における魔法教育』という本の中で≪ボーバトンという学校は南フランスの何処かにあり、校長は女性でマダム・マクシーム≫と、読んだことがある気がする。ちなみに、もう1つの参加校…ダームストラングが何処にあるのかは、その本には書いていなかったが、その本に載っていた制服に毛皮が付いていたことから察するに、寒い地域にあるのだと思う。
さて、ボーバトンの生徒たちが、暖を取るために城の中に入っていく。私達ホグワーツ生は、まだダームストラングを迎えなければならないので、外で待たなければならない。
「じゃあ、また今度」
少し離れたところで、ダフネ達が私に向かって『こっちに来い』と手を振っているのが見えたのでハーマイオニーに言った。
「えぇ。また今度。その時には気持ちが変わっていると嬉しいわ」
気持ちが変わっていない可能性の方が高い。だが私は、特に何も言わずに彼女に背を向けた。
「ねぇ、なんであの女と一緒にいたの?」
パンジーが少しムッとした感じで話しかけてきた。パンジーはハーマイオニーが、ハーマイオニーはパンジーが生理的に無理らしい。そんな相手と私が話していたことが、パンジーの気に召さなかったらしい。
「しもべ妖精の話で盛り上がっただけだ」
「しもべ妖精で?」
パンジーが意外そうな顔をした。彼女が話し出す前に、ダフネに話しかける。
「ダームストラングの校長って誰?」
「えっと、たしかカルカロフって人。なんかドラコとかノットのお父さんと仲がいいんだって」
ドラコやノットの父親と仲がいい?つまり、『死喰い人』関係って事か。あの2人は違うが、彼らの父親はヴォルデモートの部下『死喰い人』の一員だったらしい。もっとも、今では、そのような活動は全くしていないらしいが。
「ねぇ、何か聞こえない?」
突然ミリセントが言った。言われて耳をすましてみると、闇の中からこちらに向かって、大きな…言いようのない不気味な音が伝わってきた。くぐもったゴロゴロという音、何かを吸い込む音。
「湖だ!!」
私よりもっと前にいたリー・ジョーダンが指をさして叫ぶ。湖の滑らかな水面が突然乱れた。中心の深いところで何かがざわめいている。ボコボコっと大きな泡が表面に湧きだし、波が岸の泥を洗う。そして、湖の真ん中が渦巻いた。まるで湖底の巨大な栓が抜かれたかのように。ゆっくりとその中心から現れたのは、まるで海賊船のような巨大な船。月明かりを受けたその船は、幽霊船みたいに見えた。どことなく骸骨のような感じがしている。
船はすべるように岸に到着し、碇を下ろすと、中からダームストラング生がぞろぞろと降りてきた。
モコモコの厚い毛皮の制服を着こんでいる生徒たちの中に、1人だけ…制服を着てなくて、際立って質の良い銀のマントを着ている男がいた。
恐らく、彼がカルカロフ校長なのだろう。
カルカロフをよく見ようと少し爪先立ちになりかけた時、パンジーが『信じられない!』という顔をしているのが視界に入った。パンジーは、わなわなと震えている。
「どうしたんだ、パンジー?」
「あ、あの人って」
「あっ!あの人!!」
「嘘、本物!?」
パンジーだけでなく、ミリセントやダフネも驚愕の顔をしていた。ミリセントは夢中でポケットの中をあさり始める。
「あぁ、なんで羽ペンがないの!?セレネは持ってる?」
「持っているが、何に使うんだ?」
鞄の中から羽ペンを一本取りだすと、ミリセントに渡す。ミリセントは顔を真っ赤に上気させて、歌うようにこういった。
「クラムよ!ビクトール・クラム様!!あぁ、まさか学生だったなんて…」
「そう言えば、ファンの雑誌にまだ17歳だって書いてあったわ。まさかダームストラング生だったのね。知らなかった!」
ミリセントやダフネが、数年前、ロックハートにしていた表情と同じ表情を浮かべている。ただ、ロックハートの時とは異なり、ドラコ一筋のパンジーまで頬を赤らめている。
私は頑張って、ダームストラング生徒の顔を視た。その中には、女子たちが色めき立つような美男子はいないように感じた。というより……
そもそも『クラム』って何者なんだ?
だが、それを聞けない空気が漂っている。魔法界ではとっても有名な人、だということは分かるが。仕方ない。あとで、誰かに聞いてみよう。
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10月12日 一部改訂