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No.33878の一覧
[0] 【完結】スリザリンの継承者【ハリポタ×(若干)型月】[寺町 朱穂](2014/02/28 20:08)
[1] [賢者の石編] 1話 深夜の来訪者[寺町 朱穂](2012/10/12 22:58)
[2] 2話 人付き合いは大事[寺町 朱穂](2012/07/08 11:12)
[3] 3話 異文化交流[寺町 朱穂](2012/07/08 11:19)
[4] 4話 9と4分の3番線とホグワーツ特急[寺町 朱穂](2012/07/08 11:24)
[6] 5話 組み分け[寺町 朱穂](2012/07/08 11:26)
[8] 6話 防衛術と魔法薬[寺町 朱穂](2012/07/12 17:37)
[9] 7話 飛行訓練[寺町 朱穂](2012/07/10 10:41)
[10] 8話 私の瞳の色は…?[寺町 朱穂](2012/07/12 17:53)
[11] 9話 ハローウィン[寺町 朱穂](2012/07/10 10:44)
[12] 10話 パーセルタング[寺町 朱穂](2012/07/10 10:48)
[13] 11話 人を呪わば穴2つ[寺町 朱穂](2012/07/10 10:48)
[17] 12話 2つの顔を持つ男[寺町 朱穂](2012/08/12 11:05)
[18] 13話 学期末パーティー[寺町 朱穂](2012/07/15 12:26)
[20] [秘密の部屋編]14話 本は心の栄養 [寺町 朱穂](2012/08/12 11:13)
[21] 15話 休み明け[寺町 朱穂](2012/07/15 12:31)
[22] 16話 吠えメールとナルシスト[寺町 朱穂](2012/08/05 16:10)
[23] 17話 継承者の敵よ、気をつけろ[寺町 朱穂](2012/08/07 18:41)
[24] 18話 メリットとデメリットと怪物[寺町 朱穂](2012/08/16 20:36)
[25] 19話 ポリジュース薬とクリスマス[寺町 朱穂](2012/08/16 20:35)
[26] 20話 バレンタインデー[寺町 朱穂](2012/08/16 20:47)
[28] 21話 珍しい名前[寺町 朱穂](2012/08/30 10:29)
[29] 22話 感謝と対面[寺町 朱穂](2012/08/30 10:26)
[30] 23話 一方的な[寺町 朱穂](2012/08/29 23:54)
[31] 【アズカバンの囚人編】24話 ミライ[寺町 朱穂](2012/08/29 23:55)
[32] 25話 ある夏の日に[寺町 朱穂](2012/08/29 23:57)
[33] 26話 休み明けの一時[寺町 朱穂](2012/09/24 09:47)
[34] 27話 吸魂鬼[寺町 朱穂](2012/09/24 09:49)
[35] 28話 魔法生物飼育学[寺町 朱穂](2012/09/20 10:33)
[36] 29話 まね妖怪[寺町 朱穂](2012/09/24 09:56)
[37] 30話 2度あることは3度ある[寺町 朱穂](2012/09/24 09:53)
[38] 31話 本当の幸せ?[寺町 朱穂](2012/09/24 09:59)
[39] 32話 蛇と獅子になりたかった蛇[寺町 朱穂](2012/09/20 10:57)
[40] 33話 6月のある日に[寺町 朱穂](2012/10/04 16:19)
[41] 32.5話 真夜中の散策[寺町 朱穂](2012/10/04 16:26)
[42] 【炎のゴブレット編】34話 遺産[寺町 朱穂](2012/09/24 10:08)
[43] 35話 土下座する魔女[寺町 朱穂](2012/11/17 09:06)
[44] 36話 魔法の目[寺町 朱穂](2012/10/04 16:35)
[45] 37話 SPEW[寺町 朱穂](2012/10/12 15:15)
[46] 38話 炎のゴブレット[寺町 朱穂](2012/10/12 15:15)
[48] 39話 イレギュラーの代表選手[寺町 朱穂](2012/10/12 15:39)
[49] 40話 鬼の形相[寺町 朱穂](2012/10/24 23:17)
[50] 41話 強みを生かせ![寺町 朱穂](2012/10/24 23:21)
[51] 42話 第一の課題[寺町 朱穂](2012/10/24 23:23)
[52] 43話 予期せぬ課題[寺町 朱穂](2012/10/15 22:38)
[53] 44話 クリスマスの夜[寺町 朱穂](2012/10/18 20:00)
[54] 45話 卵の謎と特ダネ[寺町 朱穂](2012/10/15 23:01)
[55] 46話 第二の課題[寺町 朱穂](2012/10/24 23:26)
[56] 47話 久々の休息[寺町 朱穂](2012/10/15 23:26)
[58] 48話 来訪者[寺町 朱穂](2012/10/24 23:31)
[59] 49話 第三の課題[寺町 朱穂](2012/10/15 23:30)
[60] 50話 骨肉…それと…[寺町 朱穂](2012/10/15 23:31)
[61] 51話 墓場での再会[寺町 朱穂](2012/10/24 23:35)
[62] 52話 終わりの夜に[寺町 朱穂](2012/10/15 23:34)
[63] 【不死鳥の騎士団編】53話 カルカロフ逃亡記[寺町 朱穂](2012/10/25 00:20)
[64] 54話 予期せぬ来訪者[寺町 朱穂](2012/11/10 18:49)
[65] 55話 『P』[寺町 朱穂](2012/11/10 19:04)
[66] 56話 ピンクの皮を着たガマガエル[寺町 朱穂](2012/11/10 19:06)
[67] 57話 叫びの屋敷[寺町 朱穂](2012/11/10 19:08)
[68] 58話 ミンビュラス・ミンブルトニア[寺町 朱穂](2012/11/10 19:12)
[69] 59話 ホッグズ・ヘッド[寺町 朱穂](2012/10/25 00:10)
[70] 番外編 君達がいない夏[寺町 朱穂](2012/11/11 09:35)
[71] 60話 再会[寺町 朱穂](2012/11/18 08:04)
[72] 61話 帰ってきた森番[寺町 朱穂](2012/11/11 09:45)
[73] 62話 価値観の相違[寺町 朱穂](2012/11/11 09:57)
[74] 63話 進路指導[寺町 朱穂](2012/11/18 08:12)
[75] 64話 誰よりも深く……[寺町 朱穂](2012/11/18 08:15)
[76] 65話 OWL試験[寺町 朱穂](2012/11/11 10:05)
[77] 66話 霧の都へ[寺町 朱穂](2012/11/18 08:20)
[78] 67話 神秘部の悪魔[寺町 朱穂](2012/11/18 08:26)
[79] 68話 敵討ちの幕開け[寺町 朱穂](2012/11/18 08:40)
[80] 69話 赤い世界[寺町 朱穂](2012/11/18 08:41)
[81] IF最終話 魔法少女プリズマ☆セレネ!?[寺町 朱穂](2012/11/11 10:59)
[82] 【謎のプリンス編】70話:夏のひと時[寺町 朱穂](2012/11/28 18:35)
[83] 71話 夕暮れ時の訪問者[寺町 朱穂](2012/11/18 08:45)
[84] 72話 夜の闇の横丁[寺町 朱穂](2012/12/03 02:06)
[85] 73話 エディンバラの昼下がり[寺町 朱穂](2012/11/28 18:30)
[86] 74話 フェリックス・フェリシス[寺町 朱穂](2012/11/28 18:49)
[87] 75話 スリザリンの印[寺町 朱穂](2012/12/02 18:51)
[88] 76話 『青』[寺町 朱穂](2012/12/15 16:42)
[89] 77話 …気持ち悪い…[寺町 朱穂](2012/12/16 01:58)
[90] 78話 名前[寺町 朱穂](2013/01/01 11:37)
[91] 78.5話 誓い[寺町 朱穂](2012/12/15 16:58)
[92] 79話 秘密の部屋[寺町 朱穂](2012/12/27 19:05)
[93] 80話 問いと解答[寺町 朱穂](2013/01/01 09:58)
[94] 81話 殺意を抱く者達[寺町 朱穂](2013/01/20 15:00)
[95] 番外編 お願い!アステリア相談室[寺町 朱穂](2013/01/06 16:56)
[96] 82話 どうして?[寺町 朱穂](2013/01/20 15:12)
[97] 83話 分からず屋[寺町 朱穂](2013/03/01 18:38)
[98] 84話 そして2人は夜の闇へ[寺町 朱穂](2013/03/01 19:06)
[99] 【死の秘宝編】85話 『死』を超える[寺町 朱穂](2013/03/01 19:25)
[100] 86話 プリベット通り4番地[寺町 朱穂](2013/04/12 09:32)
[101] 87話 午後のひととき[寺町 朱穂](2013/05/07 00:51)
[102] 88話 空港の攻防[寺町 朱穂](2013/05/22 18:22)
[103] 89話 一時の休息[寺町 朱穂](2013/06/01 22:38)
[104] 90話 それぞれの後悔[寺町 朱穂](2013/06/25 10:58)
[105] 91話 護る戦い[寺町 朱穂](2013/07/16 01:00)
[106] 92話 不死への手がかり[寺町 朱穂](2013/09/20 18:48)
[107] 93話 トテナム・コートの回想[寺町 朱穂](2014/01/09 12:02)
[108] 94話 アステリア・グリーングラス[寺町 朱穂](2014/01/09 12:11)
[109] 95話 19年後…[寺町 朱穂](2014/01/10 21:46)
[110] 96話 19年前の夜[寺町 朱穂](2014/01/10 21:48)
[111] 設定&秘話:『アステリア道場』[寺町 朱穂](2014/01/10 21:52)
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[33878] 22話 感謝と対面
Name: 寺町 朱穂◆20127422 ID:7dfad7d2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/30 10:26

「誰なの?」


先程まで泣いていたのだろう。声が少しかすれているゴースト『嘆きのマートル』が私を睨むようにして話しかけてきた。私は、手洗い場より少し高い位置に浮いているマートルに向かって微笑みかける。


「私はセレネ・ゴーント。実は君にしか分からないことがあって来た。力になってくれないか?」
「私にしか分からないこと?」


警戒心丸出しの様子で噛みつくように言うマートル。きっと、前世で嫌なことがあったのかもしれない。マートルがなんだか人が近づくのを怖がって身体を丸めているハリネズミに見えてきた。



「思い出したくないと思うが、どうしても教えて欲しい。君がどのあたりで死んだかということを」


『嫌な事を思い出させないで!』と癇癪を起こすかと思ったが、マートルは反対に『こんなに誇らしく、嬉しい質問されたことがない』という顔をしていた。


「オォォォォォ、怖かったわ。貴方の言う通り、まさにここだったの。
オリーブ・ホーンビーが私の眼鏡のことでからかうものだから、ここに隠れて泣いていたの。そしたら誰かがトイレに入ってきてブツブツ言っているのが聞こえたのよ。誰だかは分からない。外国語をしゃべっているみたいだったし……でも嫌だったのが『男子』の声だったって事。だから、私は扉を開けて思いっきり叫んだの。
『出て行け』って。そしたら……」



マートルは、偉そうにそっくり返ると、顔を輝かせた。今までで、あれほど素晴らしいものはないとでも言いたそうなようにも見える。


「死んだの」
「そうか。もう一つ聞いてもいいか?声はどのあたりから聞こえたんだ?」
「ちょうどアンタが立っている手洗い場のところ」


マートルはそう言うと、半透明な指で手洗い場を指す。私は、手洗い場を調べ始めた。どこから見ても、普通の手洗い場と大差ないように見える。本当に私の読み通り、ここに入り口があるのだろうか。段々と自信が無くなってきたが、それでも調べ続け、銅製の蛇口に手をかけた。


「その蛇口、ずっと壊れっぱなしよ」


私がそれを捻る前に、マートルが教えてくれた。…少し怪しい。私は銅製の蛇口をそっとなでるようにして、何か手がかりがないか探す。すると、蛇口の脇のところに、ひっかいたような小さな蛇の形が彫ってあったのだ。



ホグワーツで蛇と言ったら『スリザリン』だ。


そしてマートルが死んだのは、ここだ。つまり、ここが『秘密の部屋』の入り口だ…たぶん。
私は、蛇の彫り物に向かって『開け』と蛇語で唱える。仕掛けが外れるようなガチャンという音がした。すると、手洗い場が動きだし、沈み始めたのだ。みるみる消え去った後に、大人一人が滑り込めるほどの太さのパイプがむき出しになった。パイプに滑り込む前に、マートルの方を向いた。


「ありがとう、マートル」


礼を言うと、マートルは物凄く驚いた顔をした。あんぐりと口を開けて私を見ている。


「あんた、今私に何て言った?」
「ありがとうと言ったんだ。君が教えてくれなかったら、私はこの入口にたどり着けなかった」
「私…『ありがとう』って言われたの、初めてだわ!!」


マートルが『自分が死んだ』話をしていた時よりも、顔を輝かせて私を見た。


「ねぇ、もしアンタが死んだら…私のトイレに住まわせてあげてもいいわよ」


少し照れた感じでそっぽを向きながら言うマートル。


「私はゴーストにはならないと思う。でも、誘ってくれてありがとう」


そう言うと、パイプの中に入り込む。そこは、ぬるぬるした暗い滑り台みたいだった。曲がりくねりながら、下に向かって急勾配で続いている。そのパイプは学校の地下牢よりも深いところまで落ちて行っているようだった。どこまでもどこまでも、パイプは続いている。
湖の下あたりまで来たのではないだろうかと思ったとき、パイプが平らになり、出口から放り出された。
私はうまく着地できたが、上手く着地できなかったらローブがネトネトになっていただろう。辺りは暗い石のトンネルのようだった。じめじめとしていて足元の土はネトネト湿っている。



「ルーモス―光よ!」


杖を取り出し呪文を唱えると、懐中電灯の様に杖に灯りが灯った。真っ暗なトンネルを、ピシャッピシャっと音をたてながら、慎重に進んでいく。杖灯りがあるとはいえ、目と鼻の先しか見えない。罠が仕掛けてある可能性もあるので、慎重に歩いていく。


しばらく進むと、バリンっと小動物の白骨を踏みつけるようになった。毒々しい鮮やかな緑色の皮が、その側でとぐろを巻いて横たわっている。だが、近づいても全く動かないところから考えると、抜け殻なのだろう。皮から推測すると、脱皮した蛇はゆうに6メートルはあるに違いない。

バジリスクの大きさを推測しながらトンネルを奥へ奥へと進んでいくと、行き止まりだった。

堅い壁に2匹の蛇が絡み合っている彫刻が施してあり、蛇の眼には大粒のエメラルドが輝いている。私は何をすればいいのか分かっていた。



『開け』



手洗い場のときの様に、『蛇語』を使う。すると壁が二つに裂け、絡み合っていた蛇が分かれ、両側の壁が、スルスルと滑るようにして見えなくなった。私は袖に隠してあったナイフを構えると、消えた壁の向こうに足を踏み入れた。






カツン、カツンっと軽快な音をたてながら先に進む。ジニーという子がいる気配はない。ただ、私の足音だけが響き渡っていた。左手に懐中電灯代わりの杖を持ち、右手にナイフを持ち進んでいくと、広い空間にたどり着いた。奥には巨大な、年老いて細長いあごひげを蓄えた顔をした石像がある。


その手前のところに、赤毛の女の子が横たわっていた。確か、決闘クラブの時に見かけた女の子だ。


気配を探るが、周囲に人の気配はない。バジリスクの気配も感じなかった。


おそらく、この子が『ジニー・ウィーズリー』なのだろう。慎重にその子に近づいて、手首の脈を図る。死人のように肌は冷たく、かなりゆっくりとした脈だったが、ジニーは生きていた。


「君は、誰だい?」


背後から声が聞こえたので振り返る。すぐそばの柱にもたれてこちらを見ている、背の高い黒髪の少年がいた。陽気という感じでもなく、かといって陰気という感じではない。どちらかというと、人に好かれそうな顔立ちをしていた。
奇妙なことに、彼は人には見えなかった。曇りガラスの向こうにいるかのように、輪郭がぼやけている。だが、ゴーストみたいに向こうが透き通って見えるようなことはなかった。
アレは、なんだ?不愉快な感じが、胸をよぎる。そんな気持ちを心に封じ込めると、あくまで平静を保ちながら口を開いた。


「アンタの方こそ何者だ?人に名前を聞く前に、まずは自分から名乗るのが礼儀だろ」


私がいる場所は十分に明るいので、魔力温存のため杖灯りを消す。だが、杖は構えたままで、左手を下ろすことはなかった。


「それもそうだね。僕の名前は『トム・リドル』。君は誰だい?てっきりジニーのおチビさんを助けに来るのは『ハリー・ポッター』かと思っていたんだが」


トムが興味深そうな目で私を見てきた。私の頭の中で、ピースがカチリっと全てはまり、パズルが完成した気がした。

ハリーを『スリザリンの継承者』に仕立て上げようとしていたのは、単なる通過点だった。その『誤解』を解くためにも、絶対にハリーは『秘密の部屋』について調べる。ハリーの親友の『ハーマイオニー』を石にさせたのは、彼女が石になったことで、『スリザリンの継承者』に対する敵意を増させるため。

そうすることで、絶対にハリーが『秘密の部屋』まで辿りつけるように、目の前の男は考えて1年間…行動していたのだろう。

この人は自分の手で、ハリーを『秘密の部屋』で殺したかったのだ。




「なるほどな、だからハリーの周りの人ばかり狙っていたのか」


ジニーの足元に転がっている、以前ハリーが持っていた古びた日記をチラリと見た。


「私はセレネ。スリザリンの2年生だ」
「そうか、じゃあ僕の後輩ということだね。僕もスリザリン生だからね。
それにしても、セレネは怯えないのかい?ここには『スリザリンの怪物』がいるのに…」
「怯えるか。私の所有物(バジリスク)に怯える理由がどこにある」
「どういう意味だい?」


私を見てくる目が、興味深い目から、探るような目に変わった。チラチラっと赤い光がその眼に混ざっているのが見えた気がした。


「その言葉の通り、私の祖先はサラザール・スリザリンだ。祖先が残したものを私が相続するのは当然のこと。
先程の君の言葉から察するに、ハリーを『秘密の部屋』に招待したんだろ?『魂』だけの存在が、本来の主を無視して客(ハリー)を招こうとは、少し度が過ぎると思ってね。そう思わないかい、トム・リドル。いや、未来の『闇の帝王』ヴォルデモート」


迷うことなく彼の名を口にすると案の定、驚いたのだろう。わずかに眉を上げるトム・リドル。だが、その驚きはすぐに感嘆する表情へと変化した。


「なぜ、そう考えたんだい?」
「色々と調べているうちに、たまたま君の名前を並び替えたら、ヴォルデモートの名前が出てきた。それだけのこと。さすがに、名前が文体になっているとは分からなかったから、少し時間がかかったけどな。

さてと、次は私が質問しようか。アンタの姿はどう見ても少年。だが、たしか帝王は、そろそろ70近い年齢だったはずだ」


ニタリっと笑うヴォルデモート、いや、この場合だとトム・リドルと言ったほうがいいのだろうか。彼は私から全く目を離さないで口を開いた。


「正解だ、セレネ。僕は前回、この秘密の部屋を開けた。その際にバジリスクを操り『穢れた血』を1人殺してハグリットを犯人に仕立て上げた。誰もがハグリットを有罪だと考えた。だが、変身術のダンブルドア先生だけが違った。

ハグリットの無実を訴え、僕をしつこく監視するようになった。だから在学中に『秘密の部屋』をもう一度開けることは不可能だと考え、16歳の僕をそこの日記の中に保存しようと考えたんだ」


なるほど、だから若かりし頃の姿というわけか。だけど、そんな呪文聞いたことない。つまり、魂を物体、この場合は日記に付着させたわけだが、そのためには魂を最低でも2つにわけないといけない。片方は普段通りに生活し、片方は日記に宿らせる。だが、そんな方法あるのだろうか。だが、現実には存在する。私はまだ2年生。きっと、高学年になったらそういう方法を習うのかもしれない。そういう結論に達すると、私は再び口を開いた。


「本体が日記にくくりつけられているということは、自由な行動は出来ない。
だから、どういう経緯か知らないが、日記の持ち主になった『ジニー・ウィーズリー』を媒介として活動をしていたのか」



私もリドルから目を離さずに、杖をまっすぐリドルの胸に向けたまま尋ねる。すると、リドルは乾いた拍手をした。どこか、上から人を見下ろすような視線を、私に向ける。


「またしても正解だ。
ちょっとした苦労もあったが、ジニーに僕をカウンセラーの様に頼らせることで、彼女の魂を手に入れた。ジニーのおチビさんが、僕に秘密を打ち明けてくれた。……バカバカしい小娘の話に同情するのはうんざりだったよ。とんだ茶番劇みたいだった。でも、その代わりにジニーの魂が手に入ったから僕は文句を言わないよ。僕は少しずつ強くなっていった。ジニーが弱るのと引き換えにね」

「つまりジニーが死ねば、アンタは完全に復活する。そして完全に復活を果たした頃、のこのことジニーを助けにやって来たハリーを殺そうという寸法か」


彼の顔には微笑が浮かんでいる。次に彼の口から出た言葉は、賞賛の言葉だった。


「2年生だというのによくそこまで推論できるね。君は『スリザリン』より『レイブンクロー』のほうが向いているんじゃないかい?」
「さぁな。どの寮が一番合っているなんて私の知った事じゃない。選ばれた寮で、出来る限り楽しく生きていくことが一番大事なことだ。去年に増して、お前のせいでこの1年、スリザリン生の間で『継承者』と言われ畏れ敬われる毎日。それに、毎晩毎晩バジリスクの独り言がうるさかった。

だから、これから少しでも落ち着いた毎日を送るため、私の所有物(バジリスク)を返してもらうため――

ここで『過去の産物』には消えてもらう」


私は殺気を放ちながら、ナイフの先端をトムに向けた。トムの微笑が崩れ、私をあざ笑うような顔に変化する。


「ナイフ一本で僕に挑もうと思っているのかい?」
「見たところ、アンタは杖を持っていないみたいじゃないか。こう見えても、私は運動能力には自信があってね」
「杖なくても僕にはバジリスクがいる。真の継承者は君ではない。―――この僕だ」


リドルは赤い双眸を私に向けたまま、一対の高い柱の側まで来た。ずっと上の方に、半分暗闇で覆われているスリザリンの石像の頭を見上げて、蛇語を唱え始める。


『スリザリンよ、ホグワーツ四強の中で最強のモノよ、われに話したまえ』


まるで、異議を許さないというような口調で、トムは命令する。すると、スリザリンの石像の口がゆっくり開着始めた。おそらく、あの口からバジリスクが出てくるのだろう。


「君ではバジリスクを操れない。万が一のために、僕しか操れない様に魔法をかけてあるからね。2年生が学ぶ程度の呪文と、どうみてもマグル製品のナイフで、バジリスクを倒せると思うのか?君はここで、愚かなジニーや、後でのこのこやってくるハリー・ポッターと一緒に、この『秘密の部屋』で永遠に横たえる運命にあるのだ」


トムは少し歪んだ笑みを浮かべて私を見る。勝ち誇ったようにも見えるし、私を馬鹿にしているようにも見える。まぁ、当たり前かもしれない。彼が言った通り、私の知っている呪文は2年生が学ぶ程度の奴と予習で覚えた+α。それと、武器はマグル製品のナイフ。なんの魔力も込められていない、ただのナイフだ。私は軽く舌打ちをした。

バジリスクなら何とか倒せるかもしれない。だが、バジリスクを倒すのには時間がかかると思う。なにせ、目を閉じたまま戦わないといけないのだ。その間に、私の手の内を教えて、対策を考える時間を与えてしまう。それに、バジリスクを傷つけるのは本望ではない。なにせ、アレは私が相続する生き物なのだ。生かしておけば、何かに使えるかもしれない。となると…
私はバジリスクが出てくるであろう穴の少し上に、杖をまっすぐ向けた。


「コンフリンゴ―爆発しろ!」


すると、黄色の閃光が杖先を走り出した。閃光は見事、バジリスクが出てくるであろう穴の少し上に激突し、ガラガラと壮大な音を立てながら大きな岩が崩れ落ちる。その無数の巨岩が出口を塞いだ。必死に予習で使った呪文集を思い返しながら、再び杖を振るう。


「デューロ―固まれ!」


再び閃光が奔り、バジリスクの出口を塞いでいる巨岩に当たった。当たったところから透明な液体のようなモノが巨岩に広がる。その様子を見たトム・リドルは、苦虫を潰したような表情を浮かべていた。


「なるほど。爆発呪文で崩落を起こし、凍結呪文で鉄壁の壁に仕立て上げたということか。2年生にしては見事だね。でも、君は勘違いをしている」


トム・リドルは狂ったように、勝ち誇った笑みを浮かべた。


「バジリスクの出入り口が、あそこだけだと思うのかい?少し距離は離れているが、あと何か所か存在する。バジリスクが到着するまで時間の分だけ、君の命の残量が少しだけ増えただけだ」
「…っち」


私は舌打ちをした。やはり、他にも出入り口があったか。となると、早急に手を打たなければならない。私はいったん目を閉じると、『眼』を開ける。その時、私は内心驚いてしまった。


こいつ…視えない


今まで気を許しただけで視えてしまった『線』が、どこにもない。人間の身体には、いや、床や壁と言った無機物にも、なぞるだけ、その個所の活動を停止させてしまう『線』がある。それが、生命のほころびなのか分子か何かなのか、私にはわからない。でも、誰ひとり…例外なく存在した『線』。それが…目の前の男には存在しない。
バジリスクを倒すのではなく、杖すら持っていない青年を倒して勝利しようという考えが、これでは成り立たない。冷静になれ、冷静になれと言い聞かせながら、次の策を必死で考え始める。


一方、トム・リドルの方も驚いているみたいだ。彼の赤い眼は、私の瞳を凝視している。今まで浮かんでいなかった若干…未知のモノに対する類の恐怖が、赤い瞳の中にチラリと見えたような気がした。


「なんだ、その蒼い瞳は。いや…なんだ、その紫の瞳は!?」


紫?てっきり蒼色の瞳だとばかり思っていたが、どうやら違ったらしい。おそらく、魔眼の『蒼』と、普段怒った時に出る『赤』が混ざり合って『紫』になったのかもしれない。まぁ、紫でも効果は変わらない。


「さぁな。色なんて、どうでもいいだろ?アンタの眼が赤くなるみたいなものさ」


実際、色なんてどうでもいい。肝心なのは効能だ。トム・リドル以外の『線』は今まで通り、普通に視ることが出来る。壁も空気にも、そこに転がっているジニーやトム・リドルが宿っている日記帳にも…


そう考えた時、私は思わず笑い出したくなった。なんで、気が付かなかったんだろう。こうすれば、簡単じゃないか。その考えに至った私は、早足にトム・リドルの方へ近づいた。トム・リドルは先程よりも余裕のない引きつった笑みを浮かべながら、鼓膜が破れるくらい大声で素早く叫んだ。


『早くしろ、バジリスク!』


異議を言わせない命令が、秘密の部屋中に木霊する。


「安心しろ、アンタは殺せない」


私はトム・リドルの少し手前で立ち止まった。そう、そこはジニーが転がっている所。正確に言えば、ジニーと『日記帳』が転がっている所だ。私はジニーの足元に落ちている日記の側で片膝をつくと、ナイフを素早く持ち直した。


「その程度のナイフで、何をしようとしているんだ?まさか、日記帳をナイフで壊したくらいで、僕が倒せるとでも?」


私の無知をあざ笑うかのように、高圧的な様子で口を開くトム・リドル。私は問いには答えない。ただ、彼が言うには『紫色』をした『眼』を使い、日記を凝視する。そして、日記に纏わりついている禍々しい『死の線』をなぞるようにして真っ二つに切った。すると、日記からまるで血が溢れだすかのように、インクがあふれ出てきた。トムの笑みが固まる。ゴブッという音を立て、彼の口から血が滴り落ちた。


「な、なにをし、た」


私の読みは当たったみたいだ。トム・リドルの魂を壊すことが出来ないのなら、その『器』である『日記』を破壊すればいい。日記には『線』があったのだから。あと、この世に残留する時間がわずかとなった『トム・リドル』の方を視ずに、口を開いた。


「あぁ、ナイフは『その程度』のモノだが、私の眼は見ての通り、少々特別なんでね。私は、この世に存在する限りのあるモノを、全て壊すことができるのさ」



淡々とした口調で、トム・リドルに話しかける。そして、とどめとばかりに日記に奔る全ての『線』を解体した。ぐずぐずしていられない。だんだんと何か滑りながら近づいてくる音が、近づいてきているからだ。そろそろ、バジリスクが到着するのだろう。それまでに、終わらせないと面倒なことになる。


「やめろ!」


最後の力を振り絞るように、トム・リドルが叫ぶ。叫んでいる間にもトム・リドルの身体は、ずたずたに切り刻んだ日記に呼応するかのように、切り刻まれいていく。そんなトムに向かって、私はハッキリと言い放った。


「お前は、『やめろ』といわれて攻撃を『やめた』事があったか?」


かつて、日記帳を器としていたトム・リドルが立っていた場所を凝視する。トム・リドルがいたという痕跡は、跡形もない。ただ、私がいて気絶したかのように眠っているジニーがいて、そして…


『バジリスク…』


背後に気配を感じた。恐らく、バジリスクだろう。主人として認識していたトム・リドルがいなくなった今、バジリスクにかかってあった魔法も解け、私の言うことを聞くかもしれない。言うことを聞かなかったら、もう一度、『魔眼』に働いてもらわないと。


『安心してください。あの人がいなくなった今、私の主(マスター)は貴方です』


後ろでバジリスクが頭を垂れている気配がした。どうやら、私に従ってくれるみたいだが、騙しているのかもしれない。私は、後ろを振り向かなかった。


『ずいぶんと丁寧な言葉づかいじゃないか』
『普段の私はこの口調なのです。ですが、たまに空腹になると少々乱暴な言葉遣いになってしまいます。
ですので通常は“八つ裂きにしてやる”だの“殺してやる”だの言いません』


なるほど。つまり、この1年、何千年もの眠りから解き放たれて空腹だったから、あんな言葉づかいだったのか。


『なら、なんで今は普通の言葉づかいなんだ?』
『元主(もとマスター)に呼び出される前まで、そこら辺の小動物を捕まえて食事をしていたので』


だが、入り口で見た6メートル程ある抜け殻から察するに、私の後ろにいるバジリスクは相当大きいのだろう。少なくとも6メートル以上あるはずだ。
その巨体を維持するために、いったいどれだけのマウスを食さなければならないのだろうか。


『とりあえず、先程の場所に戻ってろ。そろそろジニー・ウィーズリーが目覚める』
『分かりました、主(マスター)』


スルスルっといわれたとおり、穴の中に戻っていくバジリスク。そろそろ戻ったかと思い振り返ると、丁度、穴の中にバジリスクの尻尾の先端が消えていくところだった。


「誰…?」


小さな声がした。振り返ると、ジニー・ウィーズリーが目を覚ましていた。ぼんやりした目であたりを見わたしている。


「私はセレネ・ゴーント。さっさとここを出るぞ」


そういいながら彼女の足元に落ちている真っ二つになった日記を拾った。それを見た瞬間、ガクガク震えだすジニー。


「そ、その日記。わ、私は、壊せなかったのに、どうやって」
「秘密だ」


そう言ってごまかす。感情が高ぶっているのだろう。ジニーは顔を手で覆って、ざめざめと泣き出してしまった。


「ぜ、全部私がやったの。リドルが、リドルが私を操って、コリンを襲ったのも、ミセス・ノリスを襲ったのも、みんな私が」
「いつまでも泣いていたら解決するのか?」


そう言うと、ジニーは顔を上げて私を見た。リドルの気持ちが分からなくもない。同情したり、慰めるのは必要な時もあるが大変だ。正直、うんざりする時だってある。
相手が悩んでいる時に必要なことは、同情をかけることだけではないと思う。ただ同情や慰めるだけで、その場にとどまり続けていると、ジニーみたいに操り人形になってしまう。


だから、その『悩み』を乗り越えていける手伝いをすることが1番大切なのだ。


「反省する気持ちがあるなら、それを行動で示したらいい。反省する気持ちを持っていることはとても大切なことだ。だが、それを次に生かせないと何も始まらない」
「じ、じゃあ、私は何を」
「自分の道は自分で考えな。
ただ、そう簡単に『道』は見つけられない。焦らずに自分のペースで探せばいいんじゃないか?」


ポンッと軽くジニーの頭の上に手を置いた。


「さてと、とっくに昼は過ぎている。早く帰って何か食べようか」


そう言うと、こっくりジニーはうなずいた。まだ少し涙を流していたが、先程よりはましになっていた。
先程『蛇語』を使って開けた『秘密の部屋』の入り口から外に出る。しばらく暗いトンネルの中を歩く音だけが木霊していた。

そのうち、前方の方で何か言い争うような声が聞こえてきた。


「オブリビエイト―忘れろ!」


幻聴だろうか?ロックハート先生の声が聞こえた。ジニーにも聞こえたか確かめる前に、またも前方で雷が落ちるような音が聞こえた。だが、こんなところで雷が落ちるわけがない。状況から考えて、何かの崩落音と考えるのが妥当だろう。


私は再び震えだしたジニーを一緒に慎重に先に進むことにする。


「ロン!」


また幻聴だろうか。ハリーの叫び声が聞こえた気がした。だが、これは幻聴ではないのだろう。


「い、今の声って、ハリー?」


とジニーが小さな声で呟いていたからだ。


「僕は大丈夫!でも、こいつはダメだ。呪文が逆噴射したみたい。そっちには行けそうにないよ、何年もかかっちゃう」


ロンらしき声が聞こえる。

まったく、呼び合うのは結構なことだが、ここが敵陣だということを忘れたのだろうか。私がリドルだったら、ああして呼び合っている間に、この状況を利用した策をねっていると思う。あとで注意しておくか。


「ロン!ロックハートと一緒にいて!僕は先に進む!」
「分かった!じゃあ僕は少しでもここを崩しておくよ!」
「それじゃあまt」


不自然なところで、聞こえてきたハリーの言葉が途切れる。何かあったのだろうか?
私は一度しまったナイフと杖を取り出した。ジニーに目配せして杖を出すように促す。ジニーは何が起きたのか分からず混乱しているようだったが、杖を取り出した。


もう、2人の声は聞こえない。誰の足音も聞こえない。誰もいなかったかのように、しんと静まり返っていた。しばらく様子見ということで、そのままじっと杖を構えていた。だが、耐え切れなくなったのだろう。自分の兄の声と、その親友の声がパタリと聞こえなくなったのだから、心配しないわけがない。ジニーは、私の制止する前に走り出した。

だが、トンネルの角をジニーが曲がっで見えなくなった瞬間、ジニーの足音が消えた。


ジニーに何かあったのだ。ジニーだけでなく、ハリーやロンにも。
私は音をたてないようにしながら、ゆっくりと気を引き締めながら歩く。右手でナイフをしっかり握り、左手で杖を握る。

あと一歩でジニーが消えた曲がり角まで辿りつく。深呼吸を何回かやり、気持ちを整えるとそっと何があったのかのぞいてみた。


私は目を丸くさせてしまった。


そこには湿っている地面に、ジニーやハリー。少し離れたところにロンとロックハートが眠るようにして転がっていた。


「なんだ、これ」


敵らしい影は見当たらない。一体何が起こったのだろうか。

予想外の事態がおこり、冷静に対処しようと頭をフル回転させていたからだろう。私は背後への注意を怠ってしまっていた。







だから、冷たい男の手が肩に置かれるまで、私は背後を取られたことに気が付く事が出来なかった




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8月30日…一部改訂&誤字訂正





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