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No.3378の一覧
[0] 魔導戦艦ユーチャリス(魔法少女リリカルなのはA’sクロス)[奈那志](2008/06/29 14:06)
[1] 魔導戦艦ユーチャリス第二話『新世界』[奈那志](2008/07/17 18:00)
[2] まどちゃ 第三話「接近」[奈那志](2008/07/17 17:57)
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[3378] 魔導戦艦ユーチャリス(魔法少女リリカルなのはA’sクロス)
Name: 奈那志◆62a891c2 ID:7729ce52 次を表示する
Date: 2008/06/29 14:06

「クッ! 大将が捕まったくせにまだ諦めないのか、火星の後継者も語るに落ちたな」


これじゃあ、ただのテロリストだ。

狭いコクピットの中で嘲りを隠そうともせずに男は言う。

顔の半分は視覚補助のヘルメットで隠れている。その中、唯一見えている口元は歪んでいた。

男の名はテンカワ・アキト。ターミナルコロニー5基を落とした史上最大のテロリストだ。


「いや、テロリストですらないか。所詮俺はただの人殺し、来る所まで来てしまったということか」


そう、自分は復讐者だったはずだ。

だが今になっては宿敵は消え、こんな体にした科学者もいない。

復讐が終わる。

それを望んでいたはずなのに、何時の間にか復讐の対象を探してしまう自分に嫌気が差す。

復讐が終われば自分が消えてしまう。存在理由がなくなってしまう。

復讐を願ったあの日から、既にテンカワ・アキトは死んでいたのだ。

此処に残っているのはただの残りかす、亡霊。


「アキト、後はグラビティブラストで終わる。早く帰って来て」


だが、そんな自分を待っている子が居る。

こんな亡霊でも御礼くらいはしてもいいだろう。

長い間自分の復讐を手伝わさせていたのだ。

残り少ないこの命、あの子に捧げよう。


「チィッ!」


急な加速により襲ってくる強烈なG。今まで居た場所を重力の波が襲っていた。

ほんのさっきまでは存在しなかった戦艦。

白亜の、自分に僅かに残った思い出を乗せた船。

ナデシコ。

初代ナデシコ、通称ナデシコA。

遺跡と一緒に消えたはずの、存在しないはずの船。

考えてみれば遺跡が回収されているのだから、別にナデシコが回収されていても不思議ではない。

そう、不思議ではないのだ。

それでもテンカワ・アキトの心は怒り狂っていた。

穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された

穢された穢された
穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された

穢された穢された
穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された

穢された穢された
穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された

穢された穢された
穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された

穢された穢された
穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された

穢された穢された
穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された

穢された穢された
穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された穢された

穢された穢された

ダイジナオモイデヲケガサレタ。

体中に打ち込まれたナノマシンが激しい怒りに反応して光り輝いている。

飽く迄白く輝いているその光、しかしそれが禍々しく見えた。


「アキト!! なんか怖いよ? どうしちゃったの?」


リンクを通じて少女の声が聞こえる。

片言でしか喋る事のできなかった頃と比べれば随分と感情が育ったのだろう。

だが、今のアキトにはそれを感じることができなかった。


「ラピス、最後の戦いだ。あの白い船を、ナデシコを」


潰す。


「――判った。私はアキトの目、アキトの手、アキトの耳、アキトの」


味方。


漆黒の機体が爆発した。

0からMAX、急激に加わるGはアキトの体を痛めつける。

が、そんなものは感じない。とでも言うように無表情のままアキトは接近する。


「殺す」


宣誓。

俺は貴様らを必ず殺すのだと、そんな禍々しくて純粋な誓い。


正面から突撃するように機体を奔らせる。

ナデシコのディストーションフィールドと接触した瞬間にボソンジャンプ。

フィールドの内側、ブリッジの真上に跳んだ。

センサーにはブリッジで逃げ惑う人間の姿が映し出されている。


「あまりナデシコに傷を付けたくない」


そう思うのは甘えだろうか。

ハンドカノンをブリッジに当てる。

慈悲も情けも容赦も無く、零距離で連続して打つ。ブリッジは跡形も残らなかった。


「ナデシコは停止したよ、アキト」

「あぁ、俺が止めた」


会話が途切れる。

周りには既に敵機の反応は無い。


「俺が止めたんだ」


達成感なんて微塵も無い、あるのはただ空虚な心だけ。

戦闘時間は三十分程度しかなかったのに、アキトの顔が一層無表情になっていた。


     ◆


それは一瞬の出来事だった。

これまでの戦いの殆どが、自分よりも上の存在との戦いだった。

集中力は常に張り巡らさせていなければ一瞬で負けてしまう、そんな戦いばかり。

勝つためにできることは何でもやった。

だからこそアキトには判った。

まだ何も無い場所に向けてハンドキャノンを向ける。

その場所は撃破した戦艦の横。

自分なら此処から奇襲をかける。そう思ったからこそ行動に移す。


「アキト、ボース粒子反応」

「了解」


ボソンジャンプには出現までに若干のタイムラグがある。

出現した瞬間に当たるよう、ハンドキャノンを打つ。

着弾。

出てきた瞬間に落ちた機体。

いや、それは機体ではなかった。まるで何かのユニットのようなそれ。

アキトは何度か見たことがあった。

自爆したXエステバリス。

暴走した相転移エンジン。

相転移。


「!? マズイ! ラピス、ジャンプする! サポートを!!」

「判った」


まったく、ラピスのほうがよほど冷静じゃあないか。

そう思いながらジャンプの準備をする。

CCで造られた追加装甲ブラックサレナ。理論的には単体でボソンジャンプができる。

が、ジャンプにはCCを使うのだから勿論、装甲にいいはずが無い。

だが、この場合装甲の劣化など気にしている暇など無かった。


「とりあえず格納庫に跳ぶ、その後とりあえず遠くに跳ぶぞ」


イメージ、ユーチャーリスの格納庫。

何度も行ってきた作業のそれは一瞬で終わる。


「ジャンプ」


目的地に到着。

ラピスに情報を送る。


「恐らくあれは相転移エンジンを暴走させて打ち込んできている。

ジャマーが働いているからなのかどうなのかはわからないが、幸いピンポイントでユーチャーリスを狙えなかったら

しい。

それでちょうどいい場所に残骸があったから使ったんだろう。

あれは即席の相転移砲だ」

「判った。ジャンプ先は?」

「とりあえず火星でいいだろう、細かい所はこっちに合わせてくれ」

「判った」


イメージ。

火星で一番イメージしやすいのは極冠だ。次点でユートピアコロニー。

どちらもアキトにとってあまりいい思い出は無い場所だが、色々と因縁があった場所でもある。


目標、火星極冠遺跡。


「ジャン――――ック!?」


大きな揺れ。

その程度で歪むイメージではなかったが、状況が不味かった。


「ジャンプ、出来ない!?」


ボソンジャンプは遺跡を介して行う。

その遺跡に一度情報を送る事は成功したが、跳ぶ瞬間のタイムラグの途中で道をぶった切られた。

ファイルをダウンロードしていたら途中で接続が切れるのと同じ様な状況である。

結果的にジャンプはキャンセルされてしまった。


「スマン、ラピス。結局何もしてやれなかったな」

「大丈夫、アキトと一緒にいられた。それだけで十分」


二人を乗せたユーチャーリスは光の中へ姿を消した。

光が消えた後に残っているものは何も無かった。















魔導戦艦ユーチャリス

第一話『邂逅』
















アキトは倒れていた自分の体を起こす。

少しの間記憶が混乱していたのかボ~としていたが、覚醒したのか急に慌てだす。


「ラピス、ラピス!! 応答しろ、大丈夫か!!」

「う……ん、大丈夫。問題ない」


アキトは安心したのか少し表情が柔らかくなった。

だが、其れもほんの一瞬。すぐにもとの無表情に戻る。


「そうか、今からそっちに向かう。情報を掴んでいてくれ、此処はどこなのかが一番重要だ。頼んだ」

「了解、まかせて」


オモイカネ?

ユーチャーリスに積まれているAIを呼び出し、ラピスとよばれた少女は動き出す。

アキトの望みは私の望み。

まさに其れを体現しているような少女。

外の光景に一瞬我を忘れたが、頼まれたことを忠実に行う。


「オモイカネ、此処は?」

『不明。予想できるのは何処でもない、という事です』

「どういう意味?」

『私たちは恐らく簡易相転移砲に巻き込まれました。しかしキャンセルされた。

キャンセルです。あくまで止めた、無かった訳ではない』

「うん、それで。相転移された瞬間にジャンプした?」

『可能性は有ります。しかしイメージはその時にはもう止めていた』

「ランダムジャンプ。何処へ行くのか判らない、本当にランダム。故に何処へでもいけると。そう言いたいの?」

『はい、そうなります』


ラピスはもう一度外の様子を見た。

宇宙とは違い、何処か圧迫感を感じさせるその場所。


何かがレーダーに引っかかった。


「これは……人?」


バッタを三機ほど飛ばして映像を入手する。

其処にはカプセルを抱いた一人の女性が写っていた。

同時にアキトが部屋に戻った。


「ラピス、状況は?」

「此処が何処なのかは全く不明。一応オモイカネと仮説を立ててみたんだけど」


ラピスはアキトのほうを向きアキトに返事を促した。

アキトは一度首を縦に振り、


「聞かせてくれ」


と言った。

ラピスは先ほど立てた仮説をアキトに話す。

アキトは困惑した顔で其れを聞いていたが、外の映像を見るとなるほどと頷いた。


そこでラピスが女性のことを話した。


「アキト、外に女の人がいるんだけど」


バッタから送られてくる映像を見せながらどうする? と訊ねた。

アキトは手を顎にやり少し考えた。


「つれてきてくれるか? この場所の情報を貰いたい」

「判った、オモイカネ」


映像でバッタがこっちにつれてくるのを確認して、映像を消した。

アキトはラピスに訊ねる。


「船の状況は?」

「こっちに来る前と同じ、変化は無い」

「CCの残りはどれ位ある?」

「船ごとジャンプするんだったら後三回分」


三回か、と呟きながらまた考えに没頭するアキト。


この空間でジャンプができるのかを試した後に試すしかない、か。

あとで一つ使って自分だけで、ユーチャーリス内だけで試す。これがベストだろうか。


んー。と唸るアキト。

ラピスが言う。


「来た。アキト?」

「ん? あぁ、判った」


アキトは格納庫へと向かう。

五分程度歩いて目的地に到着する。


「まだ起きてないのか」


というか生きているのだろうか。

近くによって話し掛けようとするが、その女性が抱いているものに気が付くと慌ててラピスに連絡を取った。


「カプセルの中に少女がいる、どうする?」

「――助けたい、だけど」

「なんでこうなっているのか判らない、か」


結局は女性が起きなければどうにもならないのだ。

とりあえず話しかける。


「意識はあるか?」


返事が無い。

何度か話かけてみたが反応が無い。

肩を揺らしても起きないのでどうするかと困っていたとき、急に女性は血を吐いた。


「大丈夫か!?」

「ゲホッ……ゲホッ……。えぇ、もう大丈夫」

「ならいいんだが。――あなたを此処に連れてきたのには理由がある」

「逮捕、かしら? よくもまぁ此処まで追ってきたわね。結局アルハザードにも辿り着けなかった、どうにでもすれ

ばいいわ」


女性は笑みを浮かべる。

それは全てを諦めた笑顔だった。


「残念だが違う。俺も追われる身だ、人を突き出す余裕なんて無い」

「そう、なの」

「――訊ねる。此処は何処だ?」

「そうね、虚数空間、世界と世界の狭間。世界になり損なった世界。そんなところじゃないかしら?」

「狭間? 正直意味が分からないんだが」

「いいのよ、どうせ私だってよくわかってない。

妄信して目指した場所に何も無かった、その事実だけで十分。これ以上惨めなのは嫌なの」


会話が途切れる。

お互い何か感じるものがあったのだろうか。

それとも別の可能性の自分を見たのだろうか。

復讐に走った。

取り戻そうとなんでもした。


「――あなたになら、なんとなく死に際を任せれるかな?」

「光栄だが、其処まで付き合う義理は無い。

 こっちの欲しい情報を持っていない以上、今すぐ放り出してもかまわないだぞ?」

「しないでしょう? ――大丈夫、私は長くない。あなたも、みたいだけどね」

「余計な世話だ。――仮眠室がある、付いて来い」


そういって歩き出すアキト。

女性は立ち上がろうとするが立てないようだった。

近くによって肩を貸そうとするアキト。


「大丈夫か? ――ん。そういえば名前聞いてなかったな」

「プレシア、プレシア・テスタロッサ。あなたは?」

「テンカワ、テンカワ・アキトだ。欧米風に言うならアキト・テンカワだが」


アキトは肩を貸そうとするが、プレシアはカプセルを離そうとしないので中々うまくいかなかった。

中には少女といえど人間一人と、何らかの液体がつまっている。

とてもではないが女性に持てる重さではないと思えた。

アキトは先ほどの疑問と共に提案してみた。


「その女の子はどうしたんだ? 何かの病気なのか?」


流石に人体実験でもしていたのか、とは聞けなかった。

プレシアが其れをとても大切にしている事はよくわかったからだ。

プレシアが返事を返した。


「いえ、そうね……。認めたくなかったのだけれど、死んじゃった。のかな」

「死? なら、何故そのカプセルに?」

「生き返らせようと、私のアリシアは死んでいないのだと。たぶん認めたくなかったのよ」

「そう、か」


急に声を上げて笑い出すプレシア。

何かを思い出したように、何かを思い出してしまったように。


「最後まで私を信じてくれるんだから。――突き放すしかないじゃない、道連れは必要ないわ」


最後まで自分を信じてくれた、娘を思う。

時間が有れば自分から謝りたいが、其れが果たされる事はないだろう。

自分の命は持って後三日。

魔法を使えば更に短くなるだろうし、使う元気も無い。

そこでふとプレシアは気付いた。


「そういえば、あなたたちはどうやって此処へ? 相当のロストロギアが無いと来れない筈なんだけど?」

「ん、ロストロギア? 何だ其れは」

「え?」

「は?」


二人は此処でようやく己の勘違いに気が付いた。

自分が来た方法が特殊だったからといって来る方法が一つとは限らない。


『どうやって此処に来た?』


二人の声が格納庫に響いた。


     ◆


先に答えたのはアキトのほうだった。

此処に来るきっかけとなったボソンジャンプのこと。

ラピスが立ててみた仮説の事。

其れを聞いてプレシアは驚いていたが、一人で納得していた。


「科学で魔法技術を使えるところまで持っていったのね。一昔前のミッドチルダ、というところかしら?」


小さな声でそう呟くと今度は自分が来た経緯を話した。

魔法のこと。

アリシアの事。

フェイトの事。

アキトはフェイトのところで反応をしたが、自分も似たようなものだなと自嘲した。

自分の事を思っていてくれていた少女。それを見捨てて復讐に走ったのだから。

最後にプレシアはアルハザードの事を話し、口を閉じた。


「魔法、か」


アキトには信じられない話だった。

あくまで自分たちの世界は科学によって成り立っていた。

ある程度他所から技術を入手したが、解析して使えるようにしたのは人間だ。

そこでさっきの話から手に入れた情報から信じたくない仮説を立ててしまった。


「あなたの話を信じるのなら、遺跡はロストロギアになるのか?」

「えぇ、恐らくは。そのボソンジャンプに必要な条件が魔力の有無という可能性もありえるわ」


だって、あなたが此処に来たときに魔力値がかなり高いから勘違いしちゃったんだから。

とプレシアは続けた。


「つまり、あなたが言う魔法使いなら誰でもあれを使えると?」

「絶対じゃないけど、可能性は高いわ」


そうか、とアキトは呟いた。


「ククク、俺たちはそんな物の為の生贄か!! ハハハハハハハ、冗談じゃない!!!」


憤りを隠そうともせずにアキトは叫ぶ。

もう流れる事は無いと思っていた涙が床に落ちた。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


一頻り叫んだ後、アキトがある程度落ち着いたのを確認してプレシアが訊ねる。


「破壊はしなかったの?」

「――ジャンプ全てのキャンセル。時間が舞い戻り、何が起きるかわからない。

 もしかしたら自分は生きていない、そんな可能性もあった」

「時間軸にも干渉!? S級どころのロストギアじゃないわよ、其れは!!」


今度はプレシアが騒ぎ出した。

研究者だった頃の血が騒ぐのか、色々な仮説を立てては否定している。

アキトは知り合いの説明おばさんを思い出したが、気にしないことにした。

薮蛇はゴメンなのである。

アキトはラピスの意見も必要だろうと、リンクを通して確認する。


「ラピス?」

「大丈夫。モニターでこっちからも見てる」

「なら話は判るか。こっちには来れるか?」

「大丈夫、オモイカネ?」


その間もプレシアは自分の考えに没頭していたが、ドアの開く音で意識を戻した。


「その子は?」

「この船唯一の俺以外の乗組員だ。例外もいるが、とりあえず問題は無い。

名前はラピス、ラピス・ラズリだ。ラピス? 挨拶」

「判った。私はラピス・ラズリ。私はアキトの目、アキトの耳、アキトの手、アキトの――――」


アキトは慌ててラピスが喋るのを止める。

流石に変質者扱いはゴメン被る。鎧を纏っても心までは守れないのだ。


「ちょっとまて、ラピス。そういうことはみだりに他人に話してはいけない。

この前だってルリちゃんにネチネチと言われたんだ」


くるりとアキトはプレシアのほうに振り向くと弁明しだす。


「これは違うぞ? 俺は絶対にロリでもペドでもない」

「判ってる、あなたとその子が繋がっている事くらいは魔力の流れでわかるわ」

「何?」

「其れも魔法みたいなもの、ってことなのかしらね?」


アキトは溜息を吐き、何でもありだなと呟いた。それと同時に勘違いされなかった事に安堵した。

プレシアは二人に感じるものがあったのか、二人を眺めていた。

アキトは何時の間にか魔法の存在を信じている事に気が付き苦笑した。

こういう展開に結構慣れてきたのだろうか。急展開をあまり急展開に感じることができない。

なんか凄い人生だったんだなと自分で感心した。


「元の世界に戻る方法、判るか?」

「判らない。此処に来る方法なら沢山探したけれど、その後のことを考えてなかったの。研究者としては三流ね、こ

れじゃあ」


しかし、もし可能性があるのなら。とプレシアは続ける。


「直接、は無理ね。ミッドチルダか、あなたの世界に近い世界を通さないと」

「なるほど、ラピスは何か無いか?」

「――この場所でボソンジャンプができるかどうか、それでだいぶ変わってくると思う」

「確かに、そうだな。試してみるか」


ラピス? 今もってるか?

うん、これ。

というやり取りの後、アキトは手に持つそれに集中する。

CC。ボソンジャンプのキーとなる存在だ。

其れを見てまたプレシアが反応していたが、アキトは特に何も言わなかった。


「ジャンプ」


薄く光る青い色の光の粒子と共に消えたアキト。

瞬間、粒子はプレシアの背後に集まり形を作る。


「成功だな。この空間内でのジャンプはできる、外に出れるかは判らないが」

「実際に見ると凄いわね、それだけの魔力を一言呟くだけで使役できるのだから」

「正確には喋る必要も無いんだがな。イメージの問題だよ。そのほうがタイミングが掴みやすい、それだけだ」


ボソンジャンプ。ランクをつけるとしたらS、いやレアスキルに分類されるかもしれない。

CCが必要、というだけで他の制約はあまりないように見えたし、本人の魔力は使っていない。

CCもジュエルシードと同じように単体で魔力を持つものなのだろうか、そうプレシアは思った。


「CCか。見せてくれる? それ」

「あぁ、もう一つあるみたいだから。ラピス?」

「判った。これ、はい」


渡されたものを見てプレシアが驚いた。

見た目がジュエルシードにそっくりだったのだ。

持っている魔力もジュエルシードほどではないが結構ある。


「これ、何個持ってるの? これだけじゃあないんでしょ?」

「あぁ、確か三回分。だったな? ラピス」

「うん、間違ってない」


アキトは計算しているのか、無言になる。

そしてアキトが計算し終わる前にラピスが言った。


「この格納庫いっぱいくらいはある。四百キロ位かな」

「そんなに!? ――凄いわね」


今日は驚きっぱなしだなと思いながらも、驚かずにはいられなかった。


「ン!? ゲホッ……。できれば仮眠室に連れて行ってもらえないかしら? 体の調子がよくないの」

「あぁ、其れはわかった。だがその子はどうする? アリシア、といったか」

「連れて来て貰えない? 一人にするのはかわいそうだから」

「――了解、任せろ」


プレシアの事はラピスとバッタに任せ、アキトはアリシアを任された。

持ち上げた時に人の声が聞こえた気がしたが恐らく勘違いだろう。

自分は御礼を言われる身分ではないのだ。


「どういたしまして。――まぁ、流石に御礼の返事をしないほど落ちぶれてはいないさ」


空耳に返事をしてどうするんだ、と苦笑しながらアキトは仮眠室へと向かう。

カプセルはかなり重かったが、伊達に鍛えてはいない。

それなりに梃子摺ったが、ちゃんとつれていった。


仮眠室に付くと、もうプレシアは眠っていた。

残りは明日、ということだろう。

アキトも疲れが出たのか視線が一瞬ぼやける。


「ラピス。俺も休む、ラピスも今日は早めに休んでおけ」

「うん、判った」


アキトは自室に戻りベットの上で横になる。


「ゲホッ……カハッ……」


口を押さえた手には真っ赤な血が付いていた。その血は何処か光っているようにも見える。

過剰投与されたナノマシン。

自分の五感と命を奪ったもの。


このまま死ぬのも仕方が無い。といえば仕方が無いのかもしれない。

復讐の力を手に入れるために無理をやったし、少し前から薬も鎮痛剤位しか飲んでない。

それに、人を殺めすぎた。


テンカワ・アキトという人間は根本が善人なのだろう。

復讐という理由を失った今、己の業の深さを認識してしまう。


「ラピス……」


せめてあの子だけは幸せにしたい。

あの子はもっと広い世界を知るべきなのだ。


     ◆


その頃。

仮眠室では寝ていたはずのプレシアとラピスが話をしていた。


「あなたは彼、アキトっていったわね。アキト君はどれ位大切?」

「私はアキトの目、アキトの耳、アキトの――――」

「ストップ。そういう意味じゃないの、そういう利害関係? じゃ無いけどそういうのを無しにして。あなたからア

キト君はどんな存在?」

「大事。アキトは私を見てくれる。助けてくれたのもアキト。アキトのためなら私は何でもやる。」

「そう、ならそのアキト君がもうすぐ死んでしまう。ということは知ってる?」

「アキトと私は繋がってるから、状況は大体判ってる。でも私には手が出せない。現状維持すら難しくなってきた」

「私が直してあげようか?」

「本当? 嘘だったら――――」

「大丈夫、本当だから。でも、一つ約束して欲しいの」

「何でもする!! だから、アキトを……」

「其れは――――ね? 約束だから。あと、こっちはお願いなんだけど――――――――――かな?」

「任せて。私が責任持って成し遂げる。だから、」


お願い。アキトを助けて。





















あとがき

某所が十二月まで実質閉鎖ということで一時お世話になりに来ました。

最近更新できてなかったけれどそろそろリアルが落ち着いてきたもので。

この一話はあまり修正は無し。誤字修正、簡単な所の手直し。

違いが分かる人はもう一般人じゃないね。もしそれだけ読んでくれていた人がいればありがたいことです。

ではでは。四話までは修正なので比較的早く投稿できるかと。

読んでくれた皆様、これから又よろしくお願いします。


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