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No.33650の一覧
[0] ある男のガンダム戦記 八月下旬にこちらの作品を全部削除します[ヘイケバンザイ](2016/07/27 21:00)
[1] ある男のガンダム戦記 第二話「暗殺の余波」[ヘイケバンザイ](2012/07/10 11:59)
[2] ある男のガンダム戦記 第三話『地球の内情』[ヘイケバンザイ](2012/07/15 19:52)
[3] ある男のガンダム戦記 第四話『ジオンの決断』[ヘイケバンザイ](2012/07/14 10:24)
[5] ある男のガンダム戦記 第五話『開戦への序曲』[ヘイケバンザイ](2013/05/11 22:06)
[6] ある男のガンダム戦記 第六話「狼狽する虚像」[ヘイケバンザイ](2013/04/24 13:34)
[8] ある男のガンダム戦記 第七話「諸君、歴史を作れ」[ヘイケバンザイ](2012/08/02 01:59)
[9] ある男のガンダム戦記 第八話『謀多きこと、かくの如し』[ヘイケバンザイ](2012/08/02 09:55)
[10] ある男のガンダム戦記 第九話『舞台裏の喜劇』[ヘイケバンザイ](2012/08/04 12:21)
[11] ある男のガンダム戦記 第十話『伝説との邂逅』[ヘイケバンザイ](2012/08/06 09:58)
[12] ある男のガンダム戦記 第十一話『しばしの休息と準備』[ヘイケバンザイ](2012/08/07 15:41)
[13] ある男のガンダム戦機 第十二話『眠れる獅子の咆哮』[ヘイケバンザイ](2012/08/09 20:31)
[14] ある男のガンダム戦記 第十三話『暗い情熱の篝火』[ヘイケバンザイ](2012/08/14 13:28)
[15] ある男のガンダム戦記 第十四話『終戦へと続く航路』[ヘイケバンザイ](2012/08/18 10:41)
[17] ある男のガンダム戦記 第十五話『それぞれの決戦の地へ』[ヘイケバンザイ](2012/08/25 16:04)
[18] ある男のガンダム戦記 第十六話『一つの舞曲の終わり』 第一章最終話[ヘイケバンザイ](2013/04/24 22:22)
[19] ある男のガンダム戦記 第十七話『星屑の狭間で』 第二章開始[ヘイケバンザイ](2013/04/24 16:55)
[21] ある男のガンダム戦記 第十八話『狂った愛情、親と子と』[ヘイケバンザイ](2012/11/17 22:22)
[22] ある男のガンダム戦記 第十九話『主演俳優の裏事情』[ヘイケバンザイ](2013/01/02 22:40)
[23] ある男のガンダム戦記 第二十話『旅路と決断を背負う時』[ヘイケバンザイ](2013/04/06 18:29)
[24] ある男のガンダム戦記 第二十一話『水の一滴はやがて大河にならん』 第二章最終話[ヘイケバンザイ](2013/04/24 16:55)
[25] ある男のガンダム戦記 第二十二話『平穏と言われた日々』 第三章開始[ヘイケバンザイ](2013/04/25 16:39)
[26] ある男のガンダム戦記 第二十三話『終焉と言う名を持つ王手への一手』[ヘイケバンザイ](2013/04/30 22:39)
[27] ある男のガンダム戦記 第二十四話『過去を見る者、未来を目指す者、現在を生きる者』[ヘイケバンザイ](2013/05/06 16:20)
[28] ある男のガンダム戦記 第二十五話『手札は配られ、配役は揃う』[ヘイケバンザイ](2013/05/12 16:29)
[29] ある男のガンダム戦記 第二十六話『流血を伴う一手』[ヘイケバンザイ](2013/05/22 10:42)
[30] ある男のガンダム戦記 第二十七話『戦争と言う階段の踊り場にて』[ヘイケバンザイ](2013/05/22 20:23)
[31] ある男のガンダム戦記 第二十八話『姫君らの成長、ジオンの国章を懸けて』[ヘイケバンザイ](2013/05/26 13:31)
[32] ある男のガンダム戦記 第二十九話『冷酷なる神の無慈悲なる一撃』[ヘイケバンザイ](2013/06/02 15:59)
[33] ある男のガンダム戦記 第三十話『叛逆者達の宴、裏切りか忠誠か』[ヘイケバンザイ](2013/06/09 23:53)
[35] ある男のガンダム戦記 第三十一話『明けぬ夜は無くも、闇夜は全てを覆う』[ヘイケバンザイ](2015/07/10 19:15)
[36] ある男のガンダム戦記 最終話 『ある男のガンダム戦記』[ヘイケバンザイ](2013/12/23 18:19)
[37] ある男のガンダム戦記 外伝 『 英雄と共に生きた群雄たちの肖像01 』[ヘイケバンザイ](2014/02/12 19:18)
[38] ある男のガンダム戦記 外伝 『 英雄と共に生きた群雄たちの肖像02 』[ヘイケバンザイ](2014/02/12 19:16)
[39] ある男のガンダム戦記 外伝 『 英雄と共に生きた群雄たちの肖像03 』[ヘイケバンザイ](2015/06/29 13:54)
[40] ある男のガンダム戦記 外伝 『 英雄と共に生きた群雄たちの肖像04 』[ヘイケバンザイ](2015/07/11 10:54)
[41] ある男のガンダム戦記 外伝 『 英雄と共に生きた群雄たちの肖像05 』[ヘイケバンザイ](2015/07/13 13:52)
[42] ある女のガンダム奮闘記、ならび、この作品ついてご報告いたします[ヘイケバンザイ](2016/07/27 21:00)
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[33650] ある男のガンダム戦記 第二十一話『水の一滴はやがて大河にならん』 第二章最終話
Name: ヘイケバンザイ◆7f1086f7 ID:e51a1e56 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/24 16:55
ある男のガンダム戦記21

<水の一滴はやがて大河にならん>





交差する光。爆発する光。それが誰の命を奪ったのか、誰の命を救ったのかは分からない。
ただ一つ言える事は、その光の代償が誰かの命であり、人生の終焉であり、その結果もたらされるのが誰かにとっての怒り、憎しみ、悲しみであると言う事であろう。
第13次地球軌道会戦、或はダカール上空攻防戦と後に言われる戦いは終局へ向かいつつある。
第12艦隊を再編した第2艦隊は一気に攻勢に転じてアクシズ艦隊を壊滅に追いやりつつあった。
方や第1艦隊のクランシー提督も指揮下の艦隊をスライドさせ、ロンド・ベルのネモ部隊と貴下の艦隊所属のハイザック部隊を合流させる。
総数300機を超すMSの大軍で、地球連邦軍宇宙艦隊が、ティターンズが残存するエゥーゴ、アクシズ艦隊、ジオン反乱軍の後背に襲い掛かる。
それを見るネェル・アーガマ艦橋のエイパー・シナプス。
前衛部隊である第5艦隊旗艦ドゴス・ギアが半壊(というよりも大破、半分漂流)している今、第5艦隊の残存する戦闘可能部隊の指揮権はロンド・ベルに委ねられた。

「第4から第8小隊までは現状維持、第5艦隊所属の第3連隊と第4連隊は防壁陣を形成して迎撃。
こちらのネェル・アーガマ第5小隊とブランリヴァルの護衛隊はロンド・ベル護衛を優先。
その他の機体は強行突破をする機体を迎撃せよ。特に戦闘艦を優先的に攻撃するように!」

戦闘艦の離脱を許せばまたゲリラ戦を行われる。そうすればせっかくの大規模囮作戦が無駄足になる。
逆にMSだけなら例え包囲網を突破しても漂流するしかない。
故に脅威となるのは艦隊であり、MS隊ではなかった。その判断を即座にするあたり、現状で最良の連邦軍の提督と秘かに期待されているエイパー・シナプスだけの事はあった。

(無駄足とは言えないが、大きく意味を減じる。ゲリラ戦をする余力を持った艦艇を敵に残せばそれだけでゲリラにとっては優位だ。
ここは心を鬼にしてでも、敵残存艦艇の撃滅を命令しなければならん!)

そうロンド・ベルは判断した。それは皮肉な事に指揮系統の一本化につながり、バスク・オム以上の統率を会戦終盤にて見せつける。
これがバスク・オム失脚を加速させるのだから、それを見越した第1艦隊クランシー中将、第2艦隊オオオカ中将、第12艦隊セルジューク中将の狡猾さが出ている。
正確にはそのメンバーに密命を与えたブライアン前北米州大統領と彼の事実上の後継者であるジャミトフ・ハイマン退役少将の恐ろしさ、か。
その戦場で、二機のガンダムとギャプランと言う妙な部隊編成の小隊がいた。それは不死身の第四小隊隊長サウス・バニング少佐とコウ・ウラキ中尉、チャック・キース中尉の機体だ。

「ウラキ、キース、お前たちは今日が初陣だ。逸って敵機を落とそうなんて考えるな。
良いか、お前たちは自分が生き残る事だけを考えろ。それと無駄玉を撃つな。正確に、慎重に、焦らずに撃て。
お前たちの乗っているガンダム試作1号機とガンダム試作3号機はドムやザクより高性能なのは分かるな!?
敵機のビームライフルにさえ気を付ければ生き残れる、安心しろ、お前らは死にはせん。俺の部下は一年戦争以来誰一人死んじゃいないからな」

バニングの的確な判断。その間にも二挺のビームライフルでガザDを落とすギャプラン。
ガンダムMk2専用のビームライフルを用意された事で肩の大型シールドを併用した戦い方が可能になったギャプラン。
その結果が射撃角度の不便さを補い尚且つ防御力の向上につながった。
センサー類も新型のモノ(元々は高高度迎撃用、弾道弾迎撃用)を搭載している為、その迎撃能力は高く、ロック・オンするスピードも速い。

「やれやれ、おれもロートルなんだが・・・・そこだ!」

リニア・シートと新型ノーマルスーツの開発でジム・クゥエル程の戦闘発生時のGを経験しなくて済んだ為か彼はまだまだ現役。
更に二機のザクⅡC型を撃破する。

「キース! 一機行ったぞ!! ウラキ、キースを援護しろ!! 卑怯だろうが何だろうが構うな!!
後ろからそのドムを撃て!!」

一瞬の隙を突いたベテランの駆るジオン反乱軍のリック・ドムⅡがキースの乗るガンダム試作三号機に照準を合わせる。
ジャイアント・バズが発射される。
慌てて回避する。そこに隠れていたもう一機のザクⅡF2がザクマシンガンの嵐を叩きつける。

「あああああ」

キースの悲鳴が聞こえる。必死に盾をキープして自機を守る。
そこに閃光が走った。
リック・ドムⅡが後方からウラキ中尉のガンサム試作1号機宇宙戦使用の放ったビームライフルに胸部を貫通された。
その一撃で反転するザクⅡF2を更なる一撃を加える。

「キース!! 無事か!?」

「コ、コウか!? はは、参っちゃうよな、て、て、敵がザ、ザクとドムなんて。宇宙戦闘なんて研修以来だってのに」

何とか軽口で返すキース。実際は殺気立った攻撃と初陣(本来であればグリプスに居残る筈だった)で精神的に限界だったのだがそれを何とか抑え込む。
その間にも、バニングが一機のグリーン塗装のジムⅡをメガ粒子砲で落とすと一旦、ギャプランを下がらせる。

「キース、ウラキ。残弾報告。特にキースはシールドの強度と各種装甲版のチェックだ。旧式とはいえザクのマシンガンで撃たれたんだ。
・・・・・・一応外から見た限りでは問題が無いが念入りに機体をチェックするんだ。何か問題があればウラキの護衛の元、ネェル・アーガマに帰還しろ」

それは有無を言わせぬ命令。

「しかし、バニング少佐、それでは迎撃網が?」

ウラキの進言に苦笑いするバニング。
ひよこが一人前の口をきくもんじゃない、そう思いながら。

「ウラキ、キース、お前らが心配する事じゃないさ。それに、お前ら新米たちを守る為に俺たちベテランがいる。
少しはお前らの隊長を信用しろ。逆にだ、俺たちの帰る場所を落とさせるなよ、いいな?」

分かりました。
了解です。

その後の機体チェックで、ガンダム試作三号機のバックパックに数発の120mmマシンガンの直撃があったため、一時的に二機のガンダムは戦場を離脱した。

方や、鬼神の如き戦闘を繰り広げる二機の機体がある。一機がノイエ・ジールⅡ。もう一機はガンダムMk4である。
すでに近寄った第5艦隊所属の12機のジムⅡが赤い彗星に撃墜されており、一方で白い悪魔もまた、ガザDとガザC8機を落としている。
双方ともにビームを放ち、それを寸前で回避する。今また、ビームライフルの閃光がノイエ・ジールⅡの巨体に直撃するもIフィールドで弾かれた。

「またか!」

ザクマシンガン改を使いたいがこの高速機動戦では有効弾にはならないだろう。それが分かっている。
だからあえて不利を承知でビームライフルを使っている。
だが、その成果はあった。ア・バオア・クー会戦で戦った『とんがり帽子』の付録の改良型と思わしきものを二機とも撃墜した。
これはニュータイプと政治家が定義した先読み技能、それを白い悪魔の方が赤い彗星を凌駕した証拠であろう。
実際に切り札を失ったノイエ・ジールⅡは精彩を欠いている。どうすれば撃墜できるか、どうすれば落とせるかで困惑している。

「落ちろ!」

シャアが叫び、赤い大型MAのビームサーベルが近場のサラミス改を沈める。
第12艦隊所属のサラミス改は不運な事にこの一撃で轟沈した。残念ながら脱出者は存在し無い様だ。
だが最大の標的であるガンダムはそれを、死角からの攻撃だった筈の一撃を優雅に避ける。
ビーム砲を向けるもその小回りと機動性でシャアの攻撃を避ける。更に一気に加速して密接。右手のビームサーベル内臓インコムをビームライフルで撃破した。

「これだけ密集すれば!!」

「冗談では無い!!」

ガンダムがコクピット周辺にロック・オンしたのを悟ったシャアは、ノイエ・ジールⅡを急加速し、アムロは振り切られる。
更にシャアの牽制攻撃、拡散メガ粒子砲を受け一時後退するガンダムMk4。だが、牽制のビームライフルを忘れない。
更にはザクマシンガン改をばら撒いた。
ノイエ・ジールⅡの装甲に弾かれたが、それでも一方的に撃たれると言うのは気持ちが良いものでは無いからノイエ・ジールⅡも反撃に出る。
ビームが交差する。
思わずシャアは接触通信をはかった。
衝突する二機。シールドで耐え切るガンダムMk4。これがMk2や他の量産型MSならその時点で戦闘の決着はついただろう。

「アムロ!! 貴様もニュータイプなら何故私の邪魔をする!? ザビ家独裁とティターンズの地球圏支配は打倒されねばならんのだ!!」

シャアの声が聞こえる。
それはエゴだ。

「エゴだよ、それは!!」

シャアに反論するアムロ。
アムロはこう思う。

(そうだ。ザビ家独裁を打倒したいならジオン本国でやれば良い。ジオン反乱軍と共同してサイド3で革命なりなんなり起こせばよい。
他国になった地球連邦で騒乱を引き起こす必要はない。少なくとも30000名もの犠牲を出したニューヤーク市空爆は必要なかった筈だ)

と。
それはアムロにとって、いや大多数の地球連邦市民にとっての見方であり真理だろう。そもそもティターンズを歓迎しているのだ。
ティターンズ独裁が始まってもおらず、ザビ家は国家ジオンを巧みに統治している。それを覆したいならジオン本国でやれば良い。
他のスペースコロニーや月面都市群、地球の各州を巻き込む必要性はどこにも無い筈だ。

「ウィリアム・ケンブリッジやギレン・ザビらにその才能を利用されていると何故わからん!?」

シャアの苛立ちに、アムロも答える。

「知った風な口をきく!! ギレン・ザビはともかく、俺は俺の意思でティターンズに入った!!
セイラさんに相応しい男になる為に、一介の兵士で終わらない為の道を歩む為にティターンズの学校を受けた!!
それは俺が俺自身で選んだ道だ!! それを批難できる資格は貴方には無い!! 少なくとも、俺は認めない!!
だいたい、俺が、ウィリアムさんが地球圏の復興に尽力していたその間、赤い彗星と呼ばれた貴方はどこで何をしていた!?
火星圏で隠遁とし、謀略を巡り、そして今まさに数万人を独善とエゴで一方的に殺しているだけじゃないのか!?」

ウィリアム・ケンブリッジが示した道を歩んだ事で、アムロ・レイは佐官の地位を得た。そして彼の実績から将来の将官の道はほぼ確実視されている。
無論、出世の速度はこれから落ちるだろうが。
それでも社会に対して、あの一年戦争終盤のア・バオア・クー戦直後の無力さを克服する原動力となるだろう。
しかるに、自分のライバルと持て囃される男の反応はどうだ? まるで子供だ。
ニュータイプだ、ギレン・ザビだ、革命だと、いい歳をした大人の言う台詞だろうか?

「そんなに戦いたければ一人で戦え!! 自分以外の誰かを巻き込むな!!」

怒りに任せたビームサーベルがノイエ・ジールⅡの左肩を貫通、斬撃する。
更にザクマシンガン改を全弾、胸部に叩き込む。空薬莢が宇宙空間に排出される。

(ああ、またケンブリッジさんの仕事が増えるな・・・・この戦闘のデブリの回収作業、どうするつもりなんだろう?)

と、一瞬だけ柄にもない事を考えながら。
一方でその全弾を受けたノイエ・ジールⅡ。流石の装甲も崩壊寸前であった。更に追撃するべくビームライフルが下部スラスターを撃ち抜く。
が、流石は赤い彗星と言うべきか、残った左手のビームサーベルでガンダムの左手をシールド毎、切り落とす。更にビーム砲で右足の太ももを貫通。

「これで互角だな!」

シャアの声がアムロの耳に響く。
だが、その点ではアムロも変わらない。とっさの判断でビームライフルをコクピット上部の、つまりモノアイ頭部に撃ち込む。
メインモニターが殺されるノイエ・ジールⅡ。一方でバランスを失ったガンダムMk4。
シャアが苛立つ。

「ええい、どこまでも邪魔をする!!」

「赤い彗星とまで呼ばれた男が・・・・情けない奴!!」

一方、アムロはその発言に怒り心頭となった。

(キャスバル・レム・ダイクンという血統を持った貴人がこの様では!! ランバ・ラルさんが報われない!!!)

そう言った時、ダカールから声明が入った。

また別の戦場ではヤザン・ケーブルの乗ったギャプランが奪取されたガンダムMk2の一号機(ジオン系列のグリーン塗装)を相手に熾烈な戦いを繰り広げていた。
だが、この戦いは機体性能差からか、一気にヤザン少佐に優位に立つ。
可変機構を最大限に利用した一撃離脱戦法で攪乱するヤザン機。メガ粒子砲を撃つ。
撃った直後に最大出力で戦場を離脱する。その繰り返し。さらに戦場経験もエリク・ブランケより上。
伊達にルウム戦役から一年戦争各地の激戦区を生き残ってはいない。つまり戦場でモノを言う駆け引きも彼が圧倒していた。

「さてぼちぼち決めるか!」

MAから急加速して距離を詰める。さらにメガ粒子砲で牽制。ガンダムMk2のシールドに穴を四つほど開ける。
一瞬だがビームへのエネルギー供給を安全値ギリギリまで上げた。
心なしかビームサーベルの威力が上がった気がする。いや、実際に上がっている。

「0距離からのビームサーベル。耐えきれるか!?」

ヤザンの駆るギャプランのビームサーベルがエリクのガンダムMk2に向かって振り下ろされる。
そしてガンダムMk2の頭部を抉り、そのまま右肩を切断した時、アムロ・レイと同様、ダカールからの放送が入った。
それは最後のマラサイを撃墜したユウ・カジマにも、残敵掃討段階に移行したホワイト・ディンゴやデルタチーム、対艦攻撃の真っ最中で、今もまたエンドラ級巡洋艦を沈めた第4小隊にも聞こえた。

『私は、第二代ティターンズ長官として、そして地球圏に住む一人の地球市民として今まさに騒乱を起こしているテロリズム集団を、エゥーゴと、アクシズ、そしてジオン反乱軍を断罪する』




「カムナ大尉!」

マーフィー大尉の援護射撃で最後のジムⅡが砂漠地帯に墜落する。
数機が市街地に侵入したが、それもパミルとシャーリーがマーフィー小隊のエリアルドとカールらが接近戦で仕留めた為大事には至って無い。
まあ、ゲルググ4機とジムⅡ2機がダカール市街地に入った時は流石に肝が冷えたが。

「マーフィー大尉、ありがとうございます。そちらの小隊はご無事ですか?」

余裕だろう。水を口に含む。
各地から発進してきた航空機部隊は何重もの早期警戒網を形成しており、現在ダカールは完全に地球連邦軍とティターンズが制空権を握っている。
ダカール郊外の防空大隊と防空飛行師団のコア・ブースター隊も新たに第3次迎撃部隊が高度8000mまで上昇して待機している。
これだけ上がればダカールの守りは鉄壁と言って良かった。
そこに放送が入る。

「カムナ隊長、こちらエレンです。ウィリアムさんの演説が始まります」

何とも間の抜けた声だな。マーフィーはそう思うが口にはしない。女は怒らすと怖いのは自分の部下とのコミュニケーションで良く知っているのだから。

「演説?」

そう言ってカムナ・タチバナ大尉は自身のアッシマーの音声チャンネルを合わせる。
ミノフスキー粒子のノイズなどものともしない、副長官らしからぬ極めて強い言葉で彼の弾劾演説が始まる。

『私は、第二代ティターンズ長官として、そして地球圏に住む一人の地球市民として今まさに騒乱を起こしているテロリズム集団を、エゥーゴと、アクシズ、そしてジオン反乱軍を断罪する』

その様子を観客席にしてフリージャーナリストのカイ・シデンは聞いていた。傍らにはセイラ・マスとミライ・ノア、そして息子と娘のハサウェイ・ノアとチェーン・ノアがいる。

「あれがウィリアム・ケンブリッジ」

知らずに声が漏れる。
議場には興奮とざわめきが色取り取りを形成していた。
そしてその中で。

「セイラさん、今回はお招きいただいてありがとうございます。宇宙にいると地球連邦を悪しざまに言う人ばかりで。
下手をしたら一年戦争前のジオンと変わらないと思っておりました。
この機会に何故ティターンズが存在するのか、今後の地球圏はどうあるべきなのかしる絶好の機会と思い、聞かせてもらいます」

カイ言葉にセイラが微笑む。
当局から重要参考人扱いされているカイ・シデンをこの議事堂にいれられたのもマス家とアムロ・レイの個人的な伝手が大きい。
あと、妻、リム・ケンブリッジの戦友達だからというウィリアム・ケンブリッジの甘さもある。

「あのウィリアム・ケンブリッジさんは大したものよ。決して凡人では無い。彼自身は凡人でありたいと願っていても、ね。
私には分かった。あの人は父と同じ、或はそれ以上の不幸を背負ってしまった人。
それでも立ち止まらない、いえ、立ち止まれない可哀想な人なのよ。
偉そうな言い方をしているのは分かっているわ。それでもあの人の背負っているモノの重さを考えたら・・・・何も言えなくなる。
カイなら知っているわね。私の秘密。それを知っても尚、あの人は怯まなかった。寧ろ私を導いた。
驕り高ぶった言い方をすれば、あの人は英雄だったのよ。ジオン独立戦争を終わらせ、その後の戦災復興も成功させた英雄。
そして今もまた英雄足らんとしている。いえ、英雄になるように強制されていると言って良いわね。
そんな事を、世界史に残る様な偉人の列に加わる様な偉業を成す人物となる事をウィリアムさんはほんの少したりとも望んでないのに。」

なるほど。
カイはボイスレコーダーを向ける。議事堂周辺には超有名TV局のカメラや有名ジャーナリストが陣取っていた。
彼の、新ティターンズ長官、ウィリアム・ケンブリッジの言葉を聞き逃す事の無い様に。
それはカイ・シデンにとっても新鮮な驚きだった。
セイラ・マス弁護士から正式な依頼としてフリージャーナリストとしてウィリアム・ケンブリッジ新ティターンズ長官を取材してほしい。
その時点では政府トップの極秘情報を漏らした女史。下手をすればエゥーゴへの内通罪で逮捕されたかもしれない。
その危険性を敢えて冒してまで彼女はカイという戦友に頼んだ。嘗て、サイド7で『軟弱者』と軽蔑し、ある女性の死を切っ掛けに大化けし、その後の戦災復興の最前線でティターンズや地球連邦の暗部を暴き続けた男。
それ故にエコーズからエゥーゴ支持者と思われ監視されている男、カイ・シデン。その男に敢えて頼んだ事がこれ。

『ウィリアム・ケンブリッジという男の晴れ舞台を見て、その真実の姿を、感じたありのままの姿を伝える』

という仕事。
ジャーナリスト冥利に尽きると言うモノだ。

(さて、断罪するとは大きく出たね。一体何と言うのやら・・・・おっと、レコーダーは・・・ちゃんと機能している。カメラも万端。さあ聞かせてくれ。
新しいティターンズ長官の素顔とその声と、信念を。この地球圏全体に、な)

カイの心の言葉と共にアムステルダムで散った徴兵された女兵士、ミハルの姿がよぎった。
あの後、ミハルらはティターンズの養親育成プログラムにより、戦争で子供を亡くした老夫妻に引き取られたと言う。
毎月、ミハルが死んだ日には必ずあの坊やらと一緒に顔を見せる。そして献花する。

(俺はもう悲しまない。お前の様な女を作らない為にこの世界の矛盾を一つでも多く暴き出す。そして徹底的に権力者と戦う。それが俺の贖罪だから)

そう思う。
そう言えば、あの兄妹はもうすぐ中学を卒業する。将来はコロニーに上がって宇宙開発事業に携わりたいと言っていたな。

(俺たちがサイド7に押し込められたと思ったあの日。そしてあいつらに取ってサイド7は今や全人類の最前線。
大開拓時代、コスモ・フロンティアの象徴。サイド7も様変わりしたと言うし・・・この仕事が終わったら一度宇宙のブライトさんに挨拶に行ってみるか)

どうやら始まるらしい。
誰もが沈黙する。
ティターンズの新長官の次の言葉を待つ。
それは戦場となっている筈の地球周回軌道のエゥーゴ艦隊、アクシズ艦隊、ジオン反乱軍所属艦艇、地球連邦宇宙軍の第1艦隊、第2艦隊、第5艦隊、第12艦隊、そしてティターンズのロンド・ベルも聞いた。
マイクが、各地の放送局がこの放送を流す。
ジオン本国のズム・シティではギレン・ザビを筆頭にザビ家全員とマ・クベ首相、エギーユ・デラーズジオン公国軍総司令官、シーマ・ガラハウジオン親衛隊司令官らが。
月面都市ではAE社の幹部らが。サイド6ではブッホからロナへと家名を変更したマイッツァー・ロナの親族一同が、サイド7にて入港したジュピトリスではパプテマス・シロッコがサラ・ザビアロフと共に。
更にアクシズ要塞ではハマーン・カーンが、北部インド連合にある秘密拠点の一つではタウ・リンが、北米のキャルフォルニア基地ではゴップ統合幕僚本部本部長やイーサン・ライヤー作戦本部長らが、ワシントンではブライアン大統領やオオバ首相らが、その他各地の重要拠点で、多くの重要人物がこの稀代の政治ショーを見学する。
代価は己の未来。
これ程までに価値のあり、価値の無いものは存在しない。誰も分からないモノをチップに賭けるのだ。コール。

『私が彼らを悪と言えば彼らはこう言う。ティターンズの行為こそ悪であると』

カイは思う。確かにティターンズは特権階級を形成している。特殊警察として準司法権と独自の軍事力を持ち、連邦軍への指揮系統への介入も可能。
これで驕らない者は余程出来ている人物だ。実際にカイの告発レポートで100名単位のティターンズ士官の除名者(除名前に逮捕された者も当然いる)が出ており、皮肉な事に、ティターンズの監視と護衛を受ける稀有な人物でもある。
それがカイ・シデンというジャーナリストであった。

『だが、私は敢えて彼らを悪と断ずる。それは何故か?』

口調は穏やかだ。
だが、心は熱い。

(これはあのサイド6でのウィリアムさんの声。本当に愁いを帯びた優しい声なのに・・・・何故この言葉に気が付かないのかしら?)

セイラは疑問に思いながらも青色のスーツの背筋を伸ばして彼の演説を聞く。
それは宇宙にいる兄、キャスバル・レム・ダイクン、いや、シャア・アズナブルも婚約者のアムロ・レイも同じだった。




『だが、私は敢えて彼らを悪と断ずる。それは何故か?』

(ちい! 完璧な作戦にならんとは!!) 

ノイエ・ジールⅡのコクピットでシャアは思った。こちらの計画は台無しだ。
第5艦隊こそ旗艦ドゴス・ギアを大破に追い込んだものの後方は敵の第1艦隊と第2艦隊に左右から押し込まれた。
突破口を作るべく残存部隊全軍に地球周回軌道の重力を利用したスイングバイでの脱出を提案しようとした時、それは起きたのだ。
ムサイ改級巡洋艦24隻の主砲とグワジン級戦艦の大型メガ粒子砲、合計200発前後の一斉射撃だ。
苛立たしい事に威嚇のつもりか、沈んだのはエンドラ級の赤色塗装のワンドラだけだったが、それでも同じジオン軍が発砲した事にジオン同盟軍とアクシズ艦隊の動揺は隠せない。

(不味いな、例の木馬の改良艦が味方艦隊を纏め上げている間に逃げ出す筈が、ここにきてザビ家の艦隊だと?
このままでは我々は殲滅される・・・・ええい、今度は右後ろか! どこまでも祟ってくれるな、ガンダム!!)

そう思いつつも、必死に操作する。ノイエ・ジールⅡとはいえ、既にIフィールド発生装置は破壊された。
メガ粒子砲の直撃を受ければ必ず落とされる。しかもアムロ・レイのガンダムMk4が嫌な位置からビームライフルを撃ってくる。

(流石は白い悪魔か・・・・片腕を喪失したにしては良くやる。だが!!)

残ったビーム砲で前面のサラミス改をまた沈める。最早逃げの一手。三十六計、逃げるにしかず。それしかない。

『私はまずトリントン基地のガンダム試作二号機とマラサイ強奪犯の罪を追及する』

どうやらティターンズの新長官は多くの政治家の様に長々と演説する気は無い様だ。一気に、簡潔にウィリアム・ケンブリッジは言い切った。

『戦闘兵器の私的運用並び強奪は重罪である。ジオン公国軍法、地球連邦軍軍法双方の点から見ても最低禁固20年以上、最大銃殺刑の重大な犯罪行為だ。
その一点を持って、彼らは連邦政府を断罪することは出来ない。何故ならば彼らが行った行為は法律で言えば強盗殺人でしかない。法治国家で法律を犯した犯罪者の集団である。それ以外に何者であろうか?
私はこの問いに答えられる人間がいたら逆に問いたい。MSを奪う行為が犯罪以外の何かであるという理由を。
それもである、正規の軍事教育を受けた人間が、本来であれば最も自重しなければならい軍人の士官が行った。
この点で私は彼らを軍人とは認められない。
彼らは、インビジブル・ナイツもグラナダ特戦隊も、アクシズ艦隊やジオン政府の指揮下を離れた各地のジオン亡命軍、今なお、太平洋、大西洋、インド洋各地で略奪行為を繰り返すジオン海中艦隊も犯罪者だ。
敢えて、もう一度言おう。
政府の命令を無視した軍人は最早軍人では無いのだ。
単なる武器を、大量殺戮者予備軍のごろつきでしかない!! それはこの放送を聞いているアクシズの指導者にも当てはまる!!』

この瞬間、ティターンズ第二代長官のテロ標的の優先順位が一機に急上昇したのは言うまでもない。だが、それも覚悟の上。
誰かが言う必要があった。誰かが言う事だった。そして今現時点でのティターンズの意思は地球連邦政府の意思。
そう考えればこのタイミングでティターンズの長官がアクシズとジオン反乱軍を明確に軍では無いと否定する事に意義はある。
これがケンブリッジ家にとって破滅への道しるべであったとしても。

『続けて、エゥーゴ艦隊並び、エゥーゴ参加者として連邦軍から法に違反した脱退を行った者に告ぐ』

アムロのビームをシャアはかわす。
だが大型MAで、MS相手に格闘戦を仕掛けられて勝てる筈がない。まして相手はあの白い悪魔に新型ガンダム。
シャアは追い詰められていた。そして引っ切り無しに来る支援要請に命令をよこせと言う要請。正直言ってそれどころでは無い。
馬鹿者どもには自分達で何とかしろ言いたい。

『何故、連邦市民としての権利を放棄して武力によるテロに走ったのか? 私はその点を追及する。
ある者は言うだろう、そうしなければ連邦政府は変わらない、と。
ある者は言う。スペースノイドの自治権獲得はジオン公国と同様に武力を持ってしなければならない、と。
またあるエゥーゴ支持者はこう述べた。我々は正義で、私達、ティターンズや地球連邦、ザビ家は悪である、と。
だが、逆に問う。私達、地球連邦の、ティターンズの正義は間違っているというならば、君たちの正義は何故正しいと言い切れるのだ!?』

その言葉はブーイングを続けていたあるエゥーゴ支持者の酒場を静まりかえした。
それは各地のコロニーでも同じ。
逆にアースノイドは喝采を上げる。特にニューヤーク市攻撃で身内を亡くした人々の反応は凄かった。
大歓声であったと言える。

『そうだ、何故自分達は正義だと言える? 
ニューヤーク市に巡航ミサイルを撃ち込んでおいて知らぬ振りをする貴様らに正義を語る資格など無い!』

そんな声なき声が地球上で、いや、北米州のニューヤーク市を中心に上がる。
ブライアン大統領の思惑通りに。そして演説は別の局面に入る。

『仮に君たちが政権を担うとしよう。その時、君たちはどうする? 
地球連邦内部で政権を担うのならそれは単なる権力闘争、クーデターに過ぎない。
武力で政権を奪うと言うならばその時点で君たちに、エゥーゴに現在の民主共和制を掲げる地球連邦を非難する資格も、ザビ家独裁だと声高に叫ぶ資格も無い。
何故なら、軍事力による政権奪取を目指す行為は例えどれ程まで美辞麗句で固められても流血を促すであろうし、現在の世界で行えばそれは単なる軍事クーデターである!
逆にだ、政権を合法的に手に入れた上で地球連邦を解体すると言うなら私の今から聞く問いに答えてくれ』

沈黙。
そして。
ウィリアム・ケンブリッジは地球圏全域に問う。

『地球連邦政府亡きあとの地球圏をどのような形で、どの様な政治体制で維持していくのだ?
その具体的なヴィジョンは存在するのか?』 

それはウィリアム・ケンブリッジの最大の疑問。
サイド3の独立戦争はまだ分かった。
自治権拡大要求と言うスペースノイドの動きも、準加盟国への参加という旧地球連邦非加盟国地域の動きも理解できる。
彼らは地球連邦という人類史上最大の連邦国家の存在を認めた上で、その前提があって自分達の要求を通そうとした。
その一例が南極条約だった。だが、エゥーゴの価値観や主義主張は良く分からない。反ティターンズなら連邦議会でそう申し立てれば良いのではないか?
新組織であるティターンズの活動が気に入らないならジャーナリストやマスコミを使って世論を動かせばよかった。
或いは政党活動、ロビー活動を行った上でティターンズの権限縮小に動くべきであろう。それをせずに軍事力による反地球連邦活動を行った事が分からない。

『そして君たちは今まさに、地球連邦首相選挙と言う議会制民主共和政治で最も大切な日に武力闘争を行ってきた。
これを私は軍事行動とは言わない。テロリズムであると断言する』

テロリズム。軍事行動では無い。地球連邦首相選挙への攻撃。
そんな囁きが聞こえる。いつもはうるさい各マスコミのナレーターも何も言わない。ただフラッシュが、ライドが、カメラがケンブリッジを照らす。

『何故今日なのだ? 何故言葉による闘争では無く、武力による威圧を行った? 答えられるのか?
私は敢えて今回の作戦を指導した人物に問う。
何故、核兵器搭載ガンダムを投入した上で地球軌道に艦隊を展開し、民間人が存在し、国民から選ばれた代表者たる連邦議員も、ただ職務に忠実な官僚たちのいるダカールに攻撃を仕掛けてきた?
何故、言葉で戦わなかった! 何故、5年、10年、或はジオン公国の様に20年以上かけて政治の世界で戦おうとしなかった!! 
何故安易な武力闘争の道を選んだ!!!
何故、同胞である筈の地球連邦市民を殺す!! 
答えていただこう、赤い彗星シャア・アズナブル・・・・いや、キャスバル・レム・ダイクン殿!!』




「キャスバル? あの赤い彗星が、シャア・アズナブル大佐が建国の父であるジオン・ズム・ダイクンの息子!?」

アナベル・ガトーはMS隊を展開したジオン第二艦隊の先頭で驚愕した。
かつてルウム戦役序盤で轡を並べた赤い彗星がジオン・ズム・ダイクンの息子だとあのアースノイドは言う。

(嘘か? いや、あのウィリアム・ケンブリッジ殿はデラーズ閣下やギレン閣下らが信頼する宿敵。
ならば真実だろう。だが・・・・ならば)

我々は最初から踊らされている?

ガトーの脳裏に死んで行ったジオン反乱軍の同胞達や反乱を起こしたアクシズの将兵らが脳裏をよぎる。
仮にあの赤い彗星が、シャア・アズナブルがキャスバル・レム・ダイクンならその血筋でジオン本国への反旗を翻す事も可能だ。
そして漸く戦時国債の返済が終わりつつあるジオン公国をダイクンという錦に旗の下に奪取する為に火星圏から独断で戻ってきた。
その為の駒がエゥーゴであり、アクシズ艦隊であり、アクシズ要塞であり、ジオン亡命軍。そう考えると辻褄が合う。ならばこの戦闘で死んだ同胞たちは一体何のために死んだのだ?

(だが・・・・いや、いいや、惑わされるな、ガトーよ、今は一人でも多くの同胞を降伏させる事だ。
この連邦の放送がジオン本国の世論を動かしてしまう前に、一人でも多くの同胞を救うのだ!!)

そうしてガトーはガーベラ・テトラ改の左手にあるMS用通信パラボラアンテナを向ける。
だが、その間にもウィリアム・ケンブリッジの弾劾裁判の放送は続く。
ガトーが何とか説得しようとした矢先、決定的な一言が放たれた。

『そして、ニューヤーク市へのテロ行為。死傷者30000名以上。依然として瓦礫の山は残り、今なお、死者の数は増えている。
君らは決起時に言ったな、地球連邦政府は地球に巣食うだけだ、と。
今や建国の理念は失われ、宇宙に住む者を搾取するだけの存在になった、と。
そうかもしれない。それは否定できない側面はある。それは認めなければならない。だが!
ならばあの攻撃で死んだ人間、あの攻撃で友人を、親族を、家族を失った人間に、二重遭難を恐れずに救助に当たった人間にも同じ言葉を言えるのか?
君らは地球に巣食う寄生虫の一部だ、と。だから駆除した、殺した。そう言った事を君らは一方的に殺した相手にも同じ様に言えるのか? 
水天の涙作戦で行われたソロモン要塞駐留艦隊への熱核攻撃。
だが、ソロモン要塞で焼かれた地球連邦軍に兵士全員が志願兵であった筈はない。いやいや徴兵された兵士、そしてその家族にも罪はあるのか?
ただ地球連邦軍の軍服を着ていた、それだけの理由で、非合法に奪った核兵器で一方的に焼き殺して良かったのか?
・・・・・・・・・・・・・・答えろ!!』

次の瞬間、半壊したノイエ・ジールⅡから信号弾が撃たれた。
内容は、赤。それは全軍死兵となって前方を突破、アクシズ要塞、ペズン要塞、月面各都市、地球の非連邦加盟国各国へ向け撤退せよという内容。

(しまった!!)

その信号弾の意味を正確に理解したアナベル・ガトーは即座に国際救難チャンネルを使って呼びかけた。

「こちらジオン第二艦隊のガトー大佐だ。各機、即座に降伏せよ! 今ならまだ間に合う!! 降伏するのだ!!! これは命令である!!!」

だが、こんな放送を聞いた後で黙って降伏できる程、楽観視できる男は、女はいない。
残存するエゥーゴ艦隊、アクシズ艦隊、ジオン反乱軍は一斉にジオン第二艦隊に向けて発砲した。

「やめろぉぉぉ!!!!!!」

ガトーの絶叫。
だが、その言葉が合図とばかりにジオン第二艦隊の各艦も一斉に散開陣を取る。
と、一機のザクⅠがザク・バズーカを向けた。咄嗟に、ガトーは乗機であるガーベラ・テトラ改のビームマシンガンの引き金を引く。
そのザクⅠはモノの数秒で穴だらけになり爆発、宇宙の塵となった。

「!!!」

言葉にならないとはこの事を言うのだろう。
ガトーは歯を食いしばって、左上空からのザクⅡF2のザクマシンガンの攻撃を回避する。
別の方向からはリック・ドムが90mmマシンガンを乱射しながら攻撃する。ガトーのカラーリングから隊長機と分かったからジオン軍らしく容赦がない。
そして思考と体は別々に動いた。ガトーは咄嗟にフットペダルを引いて後方に全力で後退、次にリック・ドムを撃ち落とす。
更に、ガトーを援護するべくカリウスの乗るガルバルディβがビームライフルでザクⅡF2を落とした。

「ガトー大佐!! 御無事ですか!?」

「カリウスか・・・・他はどうした!? 他の部隊・・・・は・・・・・」

それ以上言えなかった。各地でガルバルディβがビームライフルでアクシズ艦隊を、ジオン反乱軍を攻撃している。
そして悟った。自分の落とした最初のザクⅠが、この同胞同士の同士討ちの契機となったのだ、と。

「・・・・・大佐・・・・・心を切り替えてください。我々は既に・・・・・戦闘状態です」

見ればジオン第二艦隊が一斉射撃を開始する。
エゥーゴ艦隊、アクシズ艦隊の後ろからは地球連邦軍の第1艦隊と第2艦隊が、前方側面からはロンド・ベルと第5艦隊の健在艦艇が攻撃している。

「出来るだけ・・・・・殺したくないものだな」

そう思いつつ、ガトーは戦場に舞い戻った。彼にも責任がある。ジオン第二艦隊MS隊全部隊への責任が。
責任感の強いアナベル・ガトーがこれを逃れる筈はない。
一方、グワジンのCICでは。

「そうか、やはり失敗したか」

ぼそりと参謀長のシュマイザー大佐にだけ聞こえるようにノリス・パッカード准将、艦隊司令官は述べた。
闇夜のフェンリル隊を率いた男も小声で反応する。
これはジオン軍同士の同士討ちでもある。だから下手に大声で騒ぐ訳にはいかない。士気に関わる。

「仕方ありません。デラーズ総司令官とマ・クベ首相、サスロ総帥の決定では最低でも禁固30年。艦長や部隊長クラスの上級士官は全員銃殺刑と内定しておりました」

この事実はあえてガトー大佐には伏せた。
あの武人にこの事を馬鹿正直に伝えたら、面倒な事になるのは火を見るよりも明らかだったから。

「そうだな。言い難いが後腐れなく出来うる限りここで撃ち落とさせろ。
彼らが本国に戻っても火種にしかならない・・・・・アイナ様のお子様の為にジオン本土は安定化させたいからな」

最後の方は独語だったが、どうやら聞こえたらしい。苦笑いする参謀長。

(思えばこの参謀長とは一週間戦争以来の付き合いだな。長いものだ)

サハリン家の令嬢がティターンズの士官と結婚して数年、漸く妊娠したと言う事でノリスは我が事の様に喜んだ。
なにより、アイナ・サハリンから一言。

『ノリス、次はお爺様と呼ばれますよ。ですから今度の出撃でも死なないで下さい。
私とシローの下に帰ってきてくださいね。
そして・・・・・この子の名付け親になって下さい』

流石に伯父になるギニアス・サハリンも名代とはいえお祝いの言葉を述べたが、現在彼は地球の極東州にあるムラサメ研究所で何かを作っているようでそれ以上は言わなかった。
何も無かった。ただ社交辞令的にジオン社交界にこの事を伝え、連邦政界に挨拶しただけだ。妹を出汁に使ったと陰口を叩かれている程だ。

(恐らくアイナ様とギニアス様の亀裂は修復不可能・・・・・仮に修復できても最低でも10年以上はかかるな)

と思った。
まあ、戦闘中なのでそんな事は直ぐに頭から追いやる。

「ガトー大佐らは?」

戦闘状態に入りました。
右翼、左翼、双方のMS隊も包囲網を狭めつつあります。

CICに情報が入る。流石はグワジン級戦艦。ジオン公国『最強』の戦艦だ。因みに『最大』の艦艇はドロスである。
ネェル・アーガマ級大型戦艦、ドゴス・ギア級大型戦艦、バーミンガム級大型戦艦やグワダンらには見劣りするが、それでも地球圏屈指の戦艦と言う事だけの事はある。
人員もジオン親衛隊に移籍しなかった古参兵ばかりなので精鋭部隊だ。

「よろしい、諸君。全ての責任はこの私、ノリス・パッカードが取る。気兼ね無くとは言えないが、職務に精通してほしい」

グワジンの砲撃が宇宙の闇を切り裂き、ガルバルディβがビームライフルで敵機となった嘗ての同胞らを撃ち落とす。
それは戦場の無常さを象徴していた。




地球での戦闘は完全に終了した。
演説は一旦終わり、マスコミ各社は一斉に反エゥーゴ、反アクシズの大規模バッシングを行っている。
小学校の体操と一緒。全員並べ~駆け足、進めぇ~、回れ~右!
そう、カイは感じた。

(確かにウィリアム・ケンブリッジの言った事は正しい。だが、敢えてキャスバル・レム・ダイクンの名前を出すと言うのは卑怯じゃねぇのか?
これに反論できる筈も無い。アンタも同じ方法でやられたらどうするつもりだった?
まあ、これでアンタの人となりも大方理解できた。野心家では無い。だが、無心家でもない。
家族を守る為なら平然と他人を切り捨てられる程冷酷じゃないが、それでも自分の為ならば他人を陥れられる人物か。
セイラさんが負けたように一筋縄ではいかないな、こりゃ。
決して地球連邦市民が、特にアースノイドが思い描いている私心亡き政治家じゃない。
寧ろ、ジャミトフ・ハイマンらよりも余程私欲溢れた政治家じゃないのか?)

カイの感想。
セイラも似た様な結論に至った。だが、アムロからエゥーゴの実質的な軍事指導者がシャア・アズナブルであると知っていたセイラは最終的な結論は違う。

(これも自業自得。兄さんはアズナブルさんの家を滅茶苦茶にして、そして多くの人を殺した。しかもまだお母様の復讐に囚われている。
ランバ・ラル、貴方が今の兄さんを見てもそれでもついていこうとする? それとも見限る?
ジンバ・ラル、貴方ならついていくでしょうね。でも私は違うわ。もうアルティシア・ソム・ダイクンでは無いのよ。
私はセイラ・マス。
私なら今の兄さんよりもウィリアムさんを選ぶ。少なくとも、ティターンズの実績を築いたウィリアムさんの方が信用できるから)




そして宇宙での戦闘もまた最後の佳境に入った。
ガンダムMk2を駆るカミーユは中距離からガンダム試作二号機のマレットを攻撃する。
マレットの駆るガンダムの後方にいる何もしないマラサイを不思議に思いながら。

「卑怯者が!」

ビームサーベルを構えて突進してくるマレット乗るガンダム試作二号機。
時節、敵機から卑怯者と通信が聞こえるが、アムロ少佐とバニング少佐の教えを思い出す。

『良いか、決して相手の間合いに入るな。挑発にも乗るな。どんな事があっても冷静に、かつ慎重に攻撃するんだ』

『戦いは生き残った方の勝ちだ。卑怯でも何でもよい。生き残らないと何も出来やしない』

その言葉通りに動く。相手はビームサーベル。

(敵はビームライフルを捨てた。バルカンは射程外。なら接近さえしなければ死にはしない!!)

後は周囲のMS隊と共同歩調を取るべし。
カミーユは驕れる事無く、マレットを相手取る。
その内に周囲のガザDや少数のズサ、エゥーゴ使用のジムⅡ片付けたロンド・ベル隊のネモ部隊が集まる。
そうこうしている間にマレットは一気に囲まれてビームを雨あられと撃ち込まれだした。
驚異的な回避を行うが、それでも20機以上の敵機に囲まれては意味が無い。

「行ける!」

ガンダム試作二号機が完全に動かなくなったとき、カミーユは必中の一撃を放った。
ガンダムMk2のビームライフルから高熱のビームがマレットの乗ったガンダム試作二号機のコクピットを貫通した。

「よし!」

思わず拳をぶつける。この点はまだ16歳の少年だった。
その瞬間、リリアはその理性を失った。

「!!!!!!!」

声にならない叫び声と共に、マレットから預かった核弾頭を構える。
だが、その装備はガンダム試作二号機が使用する事を前提とした専用核兵器投射機である。
それをMSの機種も使用する核兵器も違う状況で発射しようとするのだ。ただでさえアムロ・レイと互角に戦えるニュータイプと言われるカミーユ・ビダンに気がつかれ無い筈がない。
カミーユは察知した。何か厄介なものを使おうとしている、と。この辺りはニュータイプと呼ばれる人間の性なのか?
他のネモ部隊よりも素早く反撃する。
因みに臨界点に達しない限り核兵器は危険では無い。特にだ、太陽からの放射線が日常の宇宙空間では尚更に。
そう教わったカミーユに迷いは無かった。ビームライフルを向ける。

「落ちろ!」

カミーユの、第三者から見れば何を言っているのか良く分からない言葉でマラサイのコクピットを撃ち抜く。
次の瞬間爆発するマラサイ。
この時、グラナダ特戦隊はこの世から消えた。
ガンダムMk2を操縦したカミーユ・ビダンによって全機が撃墜されるという事象を持って。ガンダムを奪った者がガンダムによって討伐される。これ程の皮肉はそうは無いだろう。

そして青い死神のユウ・カジマとデルタチーム、ホワイト・ディンゴの合計7機のギャプランは性能でも技量でもチーム戦でもインビジブル・ナイツを圧倒する。
考えてみれば当然である。ジオン反乱軍は地球連邦軍の偵察から隠れる事と物資の面から演習など出来なかった。
方や、再招集されたロンド・ベル部隊、特にギャプランを与えられたパイロットとオペレーターらは一日8時間の猛烈な訓練を実施した。
しかもその相手は、マラサイと互角に戦える機体としてAE社から納品されたネモ部隊を相手に、である。
ジオニック社のマラサイをティターンズのオーガスタ研究所が開発したギャプランが落としていく。
さぞかし、ジオンの技術陣にとっては悔しい光景になろう。

「はん、流石俺の戦友共だ。後で一杯奢ってやろう・・・・・で、後はお前だけだ、聞こえるか、ガンダム!」

一対一の決闘の様な形をとったエリク・ブランケとヤザン・ゲーブル。だが性能差とルウム戦役以来の技量の差、その後の支援体制の格差が如実に表れる。
ヤザンのギャプランはゆっくりと、だが、確実にエリクの乗る緑のガンダムMk2を追い詰める。
ビームサーベル同士が衝突するも、鍔競り合いで押されるのはガンダムMk2であった。当然だ。当たり前だ。何を言っている。
このギャプランは地球連邦軍の最精鋭部隊の中のティターンズの更に精鋭であるロンド・ベル特注の機体なのだ。
ある意味、次世代機の為のテストケースと考えられていたガンダムMk2とは開発コンセプトと過程が大きく異なる。
Mk2は汎用機のモデルケース、ギャプランは局地戦専用機。
この差は大きい。
そして勝負は一瞬で決まった。
疲労ゆえか、それとももう一機のガンダムMk2がユウ・カジマの乗るギャプランに後ろからコクピットをビームサーベルで貫かれた姿を見せられた故か。
動揺が走ったのが分かった。

「お前・・・・今・・・・気が散ったな!!」

言葉と体が同時に動く。
ヤザンのギャプランが両手を前で組み、ビームライフル二挺とメガ粒子砲二門をエリクの乗ったガンダムMk2に向けて連射する。
とっさにシールドを構えるが4本のビームの連射などに耐えられる筈も無い。そのまま機体は溶解。
メインエンジンが暴走し、爆散した。

「戦場で余計なこと考えるとな、死ぬんだよ・・・・・カモノハシ、ラムサスやダンケルのように、な」

一方で。
串刺しになった緑色を基調としたガンダムMk2。

「・・・・・・・・」

ビームの光が消える。それはまるで乗っていたパイロットの光も消えた様な感触をユーグ・ローグに与えた。
分かってはいる。相手は敵だ。ユウ・カジマは、戦友は自分とシェリーとの関係を知らない。そしてあのケンブリッジ長官の放送は味方の士気を一気にあげた。
旗艦であるドゴス・ギアを大破に追い込まれ、二機の大型MAの猛攻で半壊状態だった第5艦隊でさえ能動的な反撃に出られる程に。

「それでも!」

何が言いたいのか、何を言いたいのか分からない。幸いな事に戦闘は終息に向かいつつあった。
そして機体のエネルギー残量不足を理由にユーグ・ローグのギャプランは帰投する。
彼は気が付かない。自分が泣いていた事を。
そして砲火は遂にグワダンを捉える。

「ここまでだな」

ブラードは思った。既にシグは死に、シャア大佐ももうすぐKIAだろう。
それだけ連邦軍は強かった。自分たちの予想以上だった。驕り高ぶっていたのは自分たちの方だった。

(今更後悔しても遅い。後悔先に立たずか。昔の賢者は良い言葉を残したものだ。
そしてそれを身をもって体験することになろうとはね・・・・度し難い男だな、俺は)

残存艦艇は不明なほどに撃ち減らされた。
MS隊の大半は地球へと降下していくが地球各地のポイントはバラバラで、しかも支援してくれる地域に降りられるかどうか、地球各地のジオン亡命軍と合流できるかどうかは運次第。

「それでぇ、ブラード艦長、どうします?」

副長が聞いてくる。肥満体だが、良い副長だった。確か、名前をドレンとか言ったな。
今も士気の低下を防ぐためにわざとふてぶてしく振舞っている。
もっとも半分以上は演技以外の何物でもない。

(小刻みに恐怖で膝が震えているぞ、副長)

そういえばこの男も赤い彗星のせいで人生が狂ったと愚痴を言っていた。
本当は戦争終結と同時に本国に戻りたかったが、奴の副官と言う扱いの為か戻れずにアクシズ勤務にさせられた、と。

「決まっている。副長、総員退艦だ、総員退艦から5分後にグワダンを自沈させる。
それで・・・・あとはガトー大佐の言葉を信じよう、それと・・・・」

そういって拳銃を引き抜く。
そのままドレン大尉の方に一発撃ち込む。血が飛び散る。何事かと艦橋のメンバー全員の視線を浴びる。

「これでガトー大佐らには言い訳はできるな?」

その言葉に痛みを抑えながら敬礼するドレン。
そうだ、艦長の命令にいやいや従った。その証拠がこれだ。この弾痕。最後は艦長を止めようとして撃たれた。
そういう筋書きだ。
それにこの艦が自沈すれば、自分たちの個人IDは全て宇宙のゴミになる。そこからサルベージするのは恐らく不可能だろう。
ならばこの言い訳は効く。

「それでは総員退艦します・・・・艦長、あんた、良い男でしたな」

そう言って彼はタバコを吸う。アクシズでは貴重品だった。地球圏では忙しすぎてすえなかった。
自分も貰う。箱ごとくれた。纏めて二本同時に吸う。ああ、美味い。

「君も良い船乗りだったよ、ドレン大尉。ああ、艦長は叛逆した為に君が部下の安全を確保する為に殺した事にしたまえ。
その方が恰好がつく。私も最後まで抵抗した甲斐があったと言うモノだ。ついでに娘のミアンをジオン本国に連れて帰ってくれるかな。
もう復讐なんか忘れろ、新しい人生を探せ、そう伝えてくれるとありがたい」

笑い声が艦橋に響いた。

「必ず連れてきます。ついでに赤い彗星とは違う良い男を探してやりましょう。艦長の代わりに御嬢さんの父親としてヴァージン・ロードを歩いて見せますよ」

「それは・・・・どうやら後1発か2発撃たれたいようだな、ドレン君?」

そして無言で敬礼する。
その後、グワダンに退艦命令が出される。
退艦していく乗員。敢えて残る乗員。様々な思いを乗せて。そしてブラードは肉眼で見た。
二隻のアーガマ級機動巡洋艦がメガ粒子砲とビーム砲を撃ちながら接近してくるのを。

「ふん、早いな。発砲を確認!! 取り舵12!」

自ら舵をとり、音声入力で回避運動を取らせる。
一方で居残り組が個別に攻撃する。
ブラード・ファーレン中佐の神業的な回避行動で二隻のアーガマ級の攻撃を悉く回避する。

「左舷、弾幕薄いぞ。何やってんの!!」

「敵は手負いだ、なぜ仕留められない!!」

ブライトらが叫ぶが当たらない。
見かねてネェル・アーガマさえ砲撃に加わってきた。それでも中々命中しない。業を煮やすロンド・ベルの砲術員や艦長たち。
更に発砲するも、それさえ想定内と言わんばかりに躱す。だが、いつまでも続く筈がない。

(まだまだ甘い。これなら・・・・ん? 気が付けばララァ・スン大尉のキュベレイがいない。
どこに行った? まさか撃墜されたのか?)

グワダン艦載機のガザDが8機だけ近場に残っているが、ミノフスキー散布下のあてにはならないレーダーでも30機近い敵が接近してきた。
索敵用モノアイでビームライフル装備のハイザックだと分かる。予備兵装にザクマシンガン改を装備している機体や、対艦用ハイパー・バズーカを装備した機体もいる。

「終わったな。所詮はジオン完全独立やダイクン派閥復興、打倒ザビ家、地球連邦への抵抗運動など泡沫の夢。夢幻の如くなり、か」

その時、後ろを見た。
ドレン大尉と娘がスクリーンの先にいた。
どうやら青十字のランチで艦を離脱した直後らしい。まだ有線通信が可能な為、通信ができる。

「お父さん! 早く脱出して!!」

無言で首を振る。
そして伝えた。伝えるべきだ。娘まで道を誤る事の無い様に。

「シグは・・・・お前が好きだった男は死んでしまったセラ君に取り付かれて死んだ。ミアン!!! 目を背けるな!!
シグは死んだ。死んだんだ!!! 良いか、これが復讐者の末路だ。復讐の果てにあるのは無残な死だ。それが現実だ!!
映画の様な幸福な結末も、死んだ人間が実は生きていましたとか、クローンですとかいう結末は無い。英雄的な死など存在しない!!!
そして死んだ人間はもう生き返らない。お前が好きだった男はもういない、この世に存在しない。そして・・・・私もいなくなる」

『お父さん!!』

そんな顔をするな、ミアン。
別れるのが辛いじゃないか。

「だがな、ミアン。お前は生きろ。生きて、セラ君とシグ君とアイン君が生きていた事を伝え続けろ。
・・・・・・・・あいにくと私にはもう無理だ・・・・・・人殺しの片棒を担いだ男の末路が来たようだからな。
だが、おまえは違うぞ、そうだ、ミアン、お前の手はまだ白い。決して、紅に染めるな。朱に交わるな。赤くなるな」

艦が揺れる。どうやら敵MSのバルカンが直撃したようだ。
更にアーガマ級からのビーム砲で左舷カタパルトが全壊した。ついでに直援機は全て撃ち落とされた。
護衛のムサイ2隻とサラミス改3隻は既に沈み、エンドラ級巡洋艦エンドラはどこかに逃亡した。
まあ、この状況で律儀に護衛するのは余程の忠義者で・・・・・愚か者だ。

「ミアン、最後の頼みだ、お前は復讐に生きるな。新しい生き方を探せ。
お前はまだ若い。そして新しい命を育んだらその子にこう伝えろ。戦争なんてくそったれだ、ゴミのような人間のする最低の行為だ、と」

そこで通信が切れた。最後に娘が頷いたように思えたが・・・・・気のせいだろう。

「さてと、最後の相手が木馬の改良版か。いい、最後だったな」

タバコを吸う。そして誰もいなくなった艦橋に煙が充満し・・・・ネェル・アーガマとアーガマの二隻から放たれたメガ粒子砲がグワダンを直撃した。




宇宙世紀0088.10.20、午前10時24分、グワダン撃沈。




「大佐!!」

ララァのエルメスが介入した時点で戦局は一変した。形勢不利と見たガンダムはビームライフルで牽制しつつ後退、距離を取る。
一方で自分のノイエ・ジールⅡも放棄せざる得なくなった。既に操縦系が機能してない。グワダンとも連絡は取れない。
そうだ、ならば仕方ない。ここは引くしかない。

(まだだ、まだ終わらよ)

そう、シャアにはアクシズ要塞がある。それにエゥーゴ残存戦力やエゥーゴ支持者にAE社の支援もある。
まだ再起の芽はあるのだ。そう信じて。

「ララァ、このまま北部インド連合領域に降下してくれ。そこで残存部隊とアクシズ地球派遣軍先遣隊と合流する」

ファンネル12機中、9機を撃墜された緑色のキュベレイはそのまま赤い彗星の乗るノイエ・ジールⅡのコクピットブロックをパージ。
それを保護したまま降下に邪魔な連邦軍を蹴散らし、地球の大空に消えた。
そして残ったノイエ・ジールⅡはそのまま大気圏に突入。自爆する。
これを最後に戦闘は終了。ジオン第二艦隊に投降するアクシズ艦隊やジオン反乱軍、連邦軍によって掃討されるエゥーゴ艦隊。
こうして、第13次地球軌道会戦は地球連邦軍の勝利で幕を閉じた。
成果を得たジャミトフ・ハイマンはブレックス・フォーラーと共謀してバスク・オムを中央から完全に遠ざける事とした。
以下は、宇宙でルナツー要塞へ帰投中のバスク・オム宛に発信された宇宙世紀0088.10.22の午後1時30分の辞令である。

『バスク・オム准将、第13次地球軌道会戦にて貴官の指揮に関して詰問すべき点があり。
査問会への出頭並び、二階級降格、中央アフリカ第1123補給基地司令官勤務を命じる』




戦闘二日後。
改めて所信表明演説に立つ事になるウィリアム。

「フリーのカイ・シデンです。長官は今後の宇宙開発とスペースノイドの扱いに対してどうお考えですか?
それをお聞きしたい」

カイは誰よりも先に手を挙げて、誰もが聞きたくて聞けない事を聞いた。
この事実上の地球連邦最大級の権力者の意思を、意向を。

「サイド3、ジオン公国に関してはリーアの和約通りに扱います。サイド6とサイド7については準加盟国扱いとしてオブザーバーとして連邦議会に参加。
これは今後の課題ですが、サイド1からサイド5までは連邦軍とジオン軍、それぞれ20隻ずつの駐留艦隊を配備します。
合計40隻の艦艇がコロニーの治安と航路を警備します。これはリーアの和約とは別の条約を結びます」

つまり?

「ええ、シデンさんのおっしゃる通り、ジオン公国はこれからも宇宙開拓の最前線国家として地球連邦の盟友として存続する事になります。
また、駐留艦隊ですが、サイド1、サイド2、サイド4、サイド5は全て各サイドの志願兵によって構成します。
先のエゥーゴの決起に地球連邦宇宙軍の不平不満が存在した事から各サイドの意見を尊重します。
無論、地球連邦軍の艦艇を供与する事、地球連邦軍の軍紀に従い、これに反する場合はいかなる人物であろうとも法に従って裁く事を基本条件とします。
また一年戦争以前の様なコロニー駐留艦隊専用税金を各サイドに課す事はありません。財源は地球各州に分担します」

その言葉に今度は地球各州のジャーナリズムがざわめく。
だが、それも想定内。

「続いて、アースノイドとスペースノイドの垣根を無くすべくサイド7の更なる開拓を行います。
特にルナツー近郊にジオンから謝罪の意として正式に割譲されたア・バオア・クー要塞を持ってきます。
元々ア・バオア・クー要塞はジオン公国の資源採掘衛星でしたのでサイド7、いえ、グリプスの開発に大いに役立つでしょう」

次。
その開拓、開発は誰がするのですか?

「ティターンズの護衛の下、地球資本が中心になります。これはコロニー防衛費を捻出する為の必要事業とお考えください。
またコロニーの工業化も進める為、各サイド、サイド1からサイド6までにそれぞれ5基の密閉型コロニーをジオン公国に発注します。
その資材は中華と北米州、極東州、南米州、統一ヨーロッパ州が担当します。
経済についてはこれまで通り地球主導ですが、コロニー開発プロジェクトと並行して木星圏と火星緑化計画を進めます」

夢物語では?

「ジョン・F・ケネディは10年で人間を月面に送り込みました。人類が初めて空を飛んでから100年も経過していないのに、です。
それならば50年かけての火星の地球化計画は実現可能でしょう。その為にアーガマ級のデータを元にした高速惑星間航行巡航艦の建艦計画を民間主導で行います。
幸い、グワダン級、グワジン級、グワンバン級という惑星間航行可能艦がジオンにありますのでそれを元に建艦計画を進めます。
他になにか?」

エゥーゴのメンバー、アクシズに関してはどう対応しますか?

「エゥーゴの行為は地球連邦軍の軍紀に照らし合わせて処罰します。アクシズはジオン軍の軍紀に照らし合わせます。
この点に寛容はありません。彼らは核攻撃、大都市への無差別攻撃、首相選抜選挙への武力妨害を行っており、決して野放しにしてよい存在では無いのです」

ジオン亡命軍とジオン反乱軍については?

「シデンさんは分かっていて聞くのですね。ジオン亡命軍は来月1日から1か月以内に投降するなら恩赦を与えます。家族ぐるみの連邦構成国への亡命も認めます。
ですが、そこまでです。それ以降は反乱軍と同様にジオン軍に引き渡します」

ティターンズ、連邦軍はどうする予定ですか?

「ティターンズは第13艦隊を結成します。編成はアレキサンドリア重巡洋艦9隻、マゼラン改級戦艦4隻、大破したドゴス・ギア級大型戦艦、ドゴス・ギアを1隻、サラミス改級巡洋艦36隻の50隻です。これに補給艦としてコロンブス改級が10隻付きます。
ロンド・ベルは従来のアーガマ級巡洋艦4隻、ネェル・アーガマ級大型戦艦1隻で編成のままです。
他の艦隊は戦前通り、マゼラン改級戦艦5隻、サラミス改級巡洋艦35隻、コロンブス改級補給艦10隻の50隻体制を維持。
グリプスならびルナツー配備の第1艦隊、第2艦隊、第12艦隊、後は従来通りですね。ソロモンで壊滅した第4艦隊と第3艦隊は再建しません。
第13次地球周回軌道会戦で大打撃を受けた第5艦隊も各地のパトロール艦隊に編入します。これで良いですか?」

海上艦隊と陸軍は?

「そちらは国防大臣に聞いて下さい。何でもかんでもティターンズの長官が答える事は無いでしょう」

ありがとうございました。それでは最後に一言。今後の身の振り方は?

「できれば故郷のカナダで雪を見ながら隠居したいですが・・・・私はもう・・・・・・罪人です。
何十万人も殺しました。間接的ですが、人殺しなんですよ。ですから呑気に悠々自適な生活は出来ません。
私は最後まで義務を全うします。それが死んで行った人間全てへの手向けの花束になると信じて。
以上で質問を終わらせたいと思いますが・・・・・他に誰かいますか?」




0089.01.05
北米州副大統領にジャミトフ・ハイマン選出。

0089.01.09
月面都市フォン・ブラウンにてメラニー・ヒューカーバイン会長逮捕。命令者はティターンズ長官ウィリアム・ケンブリッジ。

0089.01.15
ギレン・ザビ公王暗殺未遂事件勃発、犯人としてアンリ・シュレッサー元公国軍准将を逮捕、18日即決軍事裁判後に銃殺刑執行。

0089.01.19
セイラ・マス、アムロ・レイと結婚。夫婦別姓を選択する。

0089.03.05
ムラサメ研究所事件。ギニアス・サハリンによる内部告発で人工ニュータイプ、強化人間の実験が明るみに出る。
ジオン公国、フラナガン機関からカウンセラーを派遣。ゼロ・ムラサメ、レイラ・モンドと接触。後に交際へと発展する。
シグ・ウェドナー、アイン・レヴィン。セレイン・イクスペリエンの遺体をティターンズ収容。
その後、0093、ミアン・ファーレン氏が引き取る。

0089.03.18
ゼナ・ザビ死去。ギレン・ザビはダイクン派のテロ行為と発表。詳細は不明。

0089.04.06
ティターンズ第二代長官ウィリアム・ケンブリッジ暗殺未遂事件発生。
続けて、ケンブリッジ家に爆弾テロ。難を逃れるも、この事件を契機にティターンズの親ケンブリッジ派閥が軍閥化の傾向を見せ始める。

0089.04.10
エコーズ、ティターンズ要人護衛部隊として再編。ダグザ・マックール中佐が筆頭。

0089.05.01
第二次朝鮮戦争勃発。空腹に耐えかねた北朝鮮人が中華地域境界線を越境。これに中華軍が暴走し、反撃。
これに呼応した極東州は3隻の正規空母を中心に中華軍を援護。ティターンズのロンド・ベル、緊急展開部隊として展開。

0089.05.08
平壌陥落、北朝鮮地域全域が降伏。ジオン公国が一年戦争以前に売りつけた核弾頭を全弾回収。
朝鮮不況。極東州と中華で反地球連邦デモ発生するも、双方ともに即座に沈静化。

0089.06.01
地球連邦政府、アラビア州よりシリア地域に進撃。ジオン亡命軍掃討を名目に積み重なった旧式兵器の一掃セールを開催と揶揄。
実質はその通り。

0089.06.30
北部インド連合を除く、地球全土を掌握。
レイニー・ゴールドマン、連邦議会より連邦共和制第一勲章を授与。

0089.08.08
ジオン残党軍の拠点、ペズン要塞へロンド・ベル攻撃開始。
三日後、ペズン要塞陥落。

0089.08.15
続けてロンド・ベル、暗礁地帯の茨の薗基地を強襲。これを制圧。
ジオン反乱軍、並びアクシズ艦隊を完全に殲滅。

0089.10.20
ロンド・ベル、タウ・リンの拠点となっていた北極圏のカムチャッカ01と03を制圧。02は破壊。
その際、超大型メガ粒子砲を搭載した謎の新鋭艦を鹵獲する。

0089.11.01
外惑星航行可能艦空母ベクトラ建造開始。MS隊隊長にアムロ・レイ中佐、艦長にブライト・ノア准将就任予定。

0089.11.16
クラックス・ドゥガチ、地球圏来訪。ウィリアム・ケンブリッジ、ジャミトフ・ハイマン、レイニー・ゴールドマン、アデナウアーらと会談。
その際にティターンズが建造した20隻の簡易ジュピトリス級輸送艦を譲渡される。
また多数の惑星間巡洋艦を木星圏へ派遣する事を決定。
この動きには木星船団船団長のパプテマス・シロッコの後押しがあった。
この後10年で木星圏の居住権は一挙に拡大するが、それはまた別の話。

そして。

0089.12.24

北半球のワシントンは雪に包まれた。
ロナと改名したブッホ君が必死に作業を指揮している。何の作業か?
それはプレゼントに擬態した爆弾が無いかを調べる為である。外にはダグザ中佐らが護衛している。
ここは白い館を増築して建てられた場所。黒い館からコンドルハウスの異名を持つ。

「漸くあの一年も思い出になったな」

そう言って彼は一冊のA4書類を閉じた。
死者・行方不明者、22万7862名。

「不謹慎ね、我が夫どの」

笑いながら問いかけるは我が愛しき存在。

「不謹慎だが・・・・・いつかはこうなる。まだアクシズ要塞が見つからないのが気がかりだが・・・・・いつまでもこうしてはいられないからな」

確かに。

「そう言えばバナージ君だったか? ミネバ君の同級生で・・・・あのラプラスの箱の鍵を握る人物の直系」

妻もこの数年で知らなくてよい事を知った。
実際、彼女は今、こう呼ばれている。ホワイトマン部長、と。

「ラプラスの箱ね。あれに如何ほどの価値があるのやら?」

「価値は作るモノだよ。それに武装放棄の念仏完全平和主義も統一国家による武力弾圧による平和も俺は平和とは思えない
思想統制と一部のカリスマによる支配体制なんてもってのほかだ。逆に武器での威圧も効果は無い。
だからさ、本当の平和とは何かを探していくのが・・・・ティターンズ第二代長官の本当の役目だ。俺はそう思う」

ギレン・ザビ公王みたいだな。
そう思った。

「それよりも、もうすぐクリスマスパーティよ。みんな来てるのよ。この為にロンド・ベルのメンバーを全員集めたんでしょ?
早く行くわよ!!」

そういって白いドレス姿の妻に右手を引っ張られて自分は行く。そこにあったのは掛け替えのない戦友達。
デルタ小隊が、タチバナ小隊が、ホワイト・ディンゴが、シナプス提督が、ホワイトベースの面々が、不死身の第四小隊が、そして最早当たり前の様にいるブッホ君とダグザ中佐。
隣には最愛の妻。成長した子供たち。更には何故か当然の如くシャンパン片手のジャミトフ先輩にお忍びで降りてきたドズル・ザビとミネバ・ラオ・ザビ。
しかもギレン・ザビから祝いのメッセージメモリー付きと来た。

「「「「メリークリスマス!!!」」」」

「「「「おめでとうございます!!! ケンブリッジ長官!!!」」」」

「「ティターンズ長官就任一周年、おめでとう。これで平和が来るな」」

この日、ウィリアム・ケンブリッジは地球連邦で最も栄誉ある勲章である地球連邦共和制名誉勲章を授与された。
この政府からのクリスマス・プレゼントを持って、ケンブリッジ家は地球連邦名家の一員とみなされる事になる。


・・・・・・・望むと望まぬと言わずに・・・・・




宇宙世紀0089.12.31

この日、復興したニューヤーク市に本拠を戻した地球連邦政府は正式に「水天の涙」紛争と呼ばれる戦いの終息を宣言した。
或はグリプス戦役、もしくはガンダム強奪事変とも一部で呼ばれた戦争未満紛争以上の戦いは終息した。

これが一時の平和となるのか、それともウィリアム・ケンブリッジが願う長い平和の時代になるのかそれは誰にも分からない。

消えた赤い彗星と木星帰りの男、そしてタウ・リンと呼ばれる謎のテロリストとアクシズと言う不安要素を抱えながら、宇宙世紀0089は過ぎ去った。




第二部 「水天の涙紛争」編 終了


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