―――死。
死は誰にも平等で、誰にでも不公平だ。
だが一つだけ言えるのは死を免れることができた人類は存在しないという事実だ。
もし逃れられるとすれば、我々の考えもつかない手段が必要となるだろう。
ありえないことが現実になる場所。
そう、それこそがナイトスプリングス。
今日のお話は「死ねない男」。
仕事も、人生も、何もかも上手くいかなくなっていたロバート氏は、大きな借金を作ってしまった。
ギャンブル、酒、女に溺れていよいよにっちもさっちもいかなくなった。
もう死んでしまおうとロバート氏は遺書を書き残すとビルの屋上から飛び降り自殺をした。
彼の肉体はばらばらとなり血肉骨の残骸と化した。
ふとロバート氏が気が付くと、全裸で地面に横たわっていた。
「私は死んだはずじゃないのか」
「ようそこであんた何してる。酒もほどほどにしろよ」
呆然とするロバート氏の横を一人の男が声をかけて立ち去って行った。
ロバート氏は調べてみたところ、たしかにロバートという男は死んでいた。
墓の中にはロバートのものとしか思えない死体が埋められているという。
第二の人生を手に入れたと神に感謝した彼だったが、不幸なことにも車に轢かれてミンチになってしまった。
またロバート氏が気がつくと、全裸で横たわっていた。身元不明の死体が事故の原因となっていた。が、それは確かにロバート氏であった。
彼は気が付いた。
これではいつまでたっても死ねないじゃないかと。
いや、そもそも自分は自分なのだろうか? ひょっとすると死の間際に夢を見ているのかもしれない。
自殺をはかった彼であったが再び全裸で蘇ってしまう。
彼はもう一つの事柄に気が付いた。
地面が自分と同じ質量分だけ抉れていたのだ。
もしかすると、死と同時に、なんらかの奇跡が起こって土が自分自身と同じ構成をした物体に変化しているのかもしれない。
構成が変わってしまった自分というのは、はたして自分と言えるのだろうか?
ロバート氏はこれで五度目になる死からの覚醒を経て、しばし考え込んだ。
限りない答えの道が示されるも、決して道しるべの無い町。
それがナイトスプリングス。