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No.33586の一覧
[0] そう、ここはナイトスプリングス(Alan Wake )【セカンドシーズン開始】[キサラギ職員](2012/07/10 00:22)
[1] 「霧のつまった箱」[キサラギ職員](2012/06/26 00:22)
[2] 「想像力」[キサラギ職員](2012/06/26 00:23)
[3] 「死ねない男」[キサラギ職員](2012/06/26 00:25)
[4] 「正夢」[キサラギ職員](2012/06/26 00:26)
[5] 「死人ばかりの町」[キサラギ職員](2012/06/26 00:26)
[6] 「神の木」[キサラギ職員](2012/06/26 00:27)
[7] 「会話だけの世界」[キサラギ職員](2012/06/26 00:28)
[8] 「小説家になろう」[キサラギ職員](2012/06/26 00:29)
[9] 「反抗心」[キサラギ職員](2012/06/26 00:30)
[10] 「予言」[キサラギ職員](2012/06/26 00:31)
[11] 「キャトルミューティレーション」[キサラギ職員](2012/06/26 00:32)
[12] 「盲目の男」[キサラギ職員](2012/06/26 00:33)
[13] 「月面より」[キサラギ職員](2012/06/26 00:33)
[14] 「ナイトスプリングス」[キサラギ職員](2012/06/26 00:35)
[15] 「傑作」[キサラギ職員](2012/06/26 00:38)
[16] 「救いの神」[キサラギ職員](2012/06/26 00:39)
[17] 「井戸の底」[キサラギ職員](2012/06/26 00:40)
[18] 「本」[キサラギ職員](2012/06/26 00:40)
[19] 「壁を抜ける男」[キサラギ職員](2012/06/26 00:41)
[20] 「エンドレス」[キサラギ職員](2012/06/26 00:41)
[21] 「アルカディア」[キサラギ職員](2012/06/26 00:44)
[22] [キサラギ職員](2012/06/29 22:51)
[23] 船上にて(セカンドシーズン序)[キサラギ職員](2012/07/06 12:28)
[24] 「幻痛」[キサラギ職員](2012/07/07 22:38)
[25] 「スランプ」[キサラギ職員](2012/07/08 15:50)
[26] 「酒」[キサラギ職員](2012/07/09 23:08)
[27] アラン、暗闇と対峙する[キサラギ職員](2012/07/10 00:55)
[28] 「移住者」[キサラギ職員](2012/07/10 22:50)
[29] 「創造力の源泉」[キサラギ職員](2012/07/13 02:38)
[30] 「恐怖」[キサラギ職員](2012/08/02 12:58)
[31] 「頭痛」[キサラギ職員](2012/12/11 04:13)
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[33586] 「アルカディア」
Name: キサラギ職員◆7d11a6c8 ID:3a9e008c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/26 00:44
 ―――桃源郷。理想郷。ユートピア。
 すべてに共通しているのは、手の届かない場所にあることと、二度と巡り合うことはないことだ。
 
 ナイトスプリングスでは、そのような教えがある。


 今夜のお話は「アルカディア」

 
 
 バリー=ウィーラーは編集者である。
 あるとき彼は、彼自身が受け持つ作家がスランプに陥ったと話を聞きつけた。
 売れっ子作家特有の症状だが、その作家は神経質で内面に暴力的な一面を隠していることもあり、それなりに充実した休暇が必要だった。もしくは、充実感はなくても、考えることのない、のんびりとした休暇が。
 バリーは彼の休暇を了承した。

 「まぁ奥さんによろしくな」

 そう言って送った。
 ある日、彼からSOSの電話がかかってきた。
 
 「よぉ、休暇を満喫してるか」
 「バリーか? 助けてくれ! ここの連中は何かおかしい……」
 「冗談はよせよ」
 「冗談なんかじゃない。俺は本気だ」

 鬼気迫る電話内容にはじめはバカにした調子のバリーも、様子がおかしいことに気が付いた。
 彼は神経質な男だったが、冗談くらいは言う。酒によって下品なことも口にする。
 だが、少なくとも悪戯に時間だけを消費する男ではなかった。
 バリーは一度電話を切ると、再び電話をかけようとした。
 鳴り響く電話。
 受話器を取ると、酷く落ち着き払った声が聞こえてきた。

 「取り乱してすまなかった。休暇はやめにした。今から仕事をする。原稿を渡しに来たから扉をあけてくれ」

 ――休暇中ではなかったのか?
 バリーは疑問に思いながらも自宅の扉を開けてみれば、髪をオールバックにした彼がいた。
 格好も随分とラフである。20代のプレイボーイのような色気さえある。
 手にあった原稿を受け取り、目を通す。
 確かに文章は彼のものだ。
 何か釈然としない気持ちを抱きつつも、バリーは尋ねた。

 「雰囲気変わったな」
 「これが普通さ」




 時に理想郷は人を飲み込んでしまう。
 ナイトスプリングスも同じなのかもしれない。


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