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No.33459の一覧
[0] みにくいジャック(短編童話)[ゆずる](2012/06/15 01:03)
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[33459] みにくいジャック(短編童話)
Name: ゆずる◆6f2a5fb3 ID:501e74b6
Date: 2012/06/15 01:03
「みにくいジャック」

昔々、ある村にジャックという男がいました。
ジャックは見ているだけでムカムカするほど、みにくい顔の持ち主でした。

ジャックは、隣の家のキレイな娘が好きでした。
娘の名前は、マイと言います。
けれど、マイはジャックがとても嫌いでした
顔が、とてもとてもみにくかったからです。

ジャックは、自分がマイに嫌われていることを知っていました。
ジャックはそれが哀しくて、毎日シクシク、ひとりで泣いていました。

そんなジャックを見ていた神様が、天からこう声をかけました。
「ジャックよ。お前に力を与えよう」
神様がそう言うと、ジャックの目の前に一枚の布が現れ、それはジャックの顔に巻きつきました。

「これでお前は、娘と話せるようになるだろう」
顔に巻かれた布は、ジャックの顔をかっこよく変えたのです!
「これで、マイに微笑んでもらえる!」
ジャックは、とても嬉しそうにマイの家に向かいました。

マイはその時、隣町のお金持ちに結婚を申し込まれていました。
お金持ちの顔はかっこいいのですが、「いくら払えばマイと結婚できる?」と言って、嫌味を言うばかりです。
マイはとても嫌がっていました。

ジャックはマイの嫌がる姿を見て、すぐにお金持ちの前に立ちました。
「お金で、マイを自分のものにするな!」
マイは顔を変えたジャックの後ろにさがります。
お金持ちは、ジャックの迫力にひるみ、逃げ出してしまいました。

「どなたか知りませんが、助けてくれてありがとうございます」
顔が変わったために、マイは自分を助けてくれたのがジャックだと分かりませんでした。
それでも、ジャックの胸はポカポカと温かくなっていました。
それは、ジャックの目の前には、大好きなマイの笑顔があったからでした。

「また、会えればいいですね」
そう言って、ジャックはマイから走り去ってしまいました。
好きなマイの前に居ることが恥ずかしくなったのです。
ジャックが家に戻ると、顔に巻かれていた布が、はらりと落ちました。

「鼻が、ない」
ジャックの顔には、あるはずの鼻がありません。
「お前の好きなマイと一回話すごとに、その布はお前の顔の一部を取り上げる」
神様の冷たい言葉が、ジャックの耳にひびきます。

「それでも、いい」
ジャックは、鼻のない顔で、笑いました。
「だって、マイが笑ってくれるから」
神様はもう、何も言いませんでした。

ジャックはそれから、毎日マイと話しました。
月曜日には、右耳が消えました。
火曜日には、まつげが消えました。
水曜日には、かみの毛が全部消えました。

木曜日には、左耳が消えました。
金曜日には、まゆげが消えました。
土曜日には、口が消えました。
それでもジャックは、毎日マイに会えるのが嬉しくて、 ニコニコ笑っていました。

そして、土曜日の夜、マイの家が騒がしくなりました。
マイの家に強盗が入ったのです。
ジャックはそれに気づいて、急いで布を顔に巻いて、マイの家に走ります。
そしてジャックは、あっという間に強盗を追い出しました。

「ありがとうございます!ありがとうございます!」
マイは泣きながら、ジャックにお礼の言葉を言いました。
ジャックにはもう、口がないので言葉が出ません。
そしてジャックは、だんだんマイが 見えなくなりはじめていました。

「わたしは あなたのことが だんだん・・・」
マイが恥ずかしそうに、ジャックに何か言いたげに口をもじもじさせました。
ジャックはそれを聞く前に、マイから逃げ出してしまいました。
ジャックは、見えなくなる自分に戸惑う姿を、マイに見せたくなかったのです。

家に戻ると、もうジャックは何も見えなくなってしまいました。
布がほどけるとジャックの顔は、何もない、のっぺらぼうに、なっていたのです。

「これで、本当によかったのか」
神様の声が、ジャックの心に話しかけてきました。
「これでいい。マイが笑ってくれるなら、僕はどうなってもいい」
神様はもう、何も言いませんでした。

ジャックは今日も、布を顔に巻いてマイに会いにいきます。
目が見えないので、ジャックの足元はフラフラです。
「昨日は、ありがとうございました」
頬を真っ赤にするマイの姿が、ジャックには見えません。
「それで・・・その・・・わたしと・・・おつきあいを・・・」
震えるマイの声が、ジャックには聞こえません。

「オレの物にならないなら・・・」
マイの告白を聞いて怒っているのは、前に逃げ出したお金持ちでした。
「オレの物にならないヤツは、死んでしまえ!」
お金持ちの手にはまっすぐなサーベルが握られていて、その先はマイの方を向いていました。

(マイ!)
ジャックは、サーベルの気配を肌で感じてマイの前に立ちました。
気配を感じる力は、布に取り上げられていなかったのです。
そしてサーベルは、ジャックの胸に突き刺さりました。

サーベルの刺さったジャックはそのまま倒れて、胸から真っ赤な血があふれています。
そしてそのまま動かなくなり、同時に布がハラリと顔からはがれました。
「ジャック・・・・・・」
布から見えたのは、ジャックの元のみにくいかおでした。

お金持ちはまわりの人間につかまえられました。
しかし、マイには死んでしまったジャックしか見えていません。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
マイは、ずっとずっと、ジャックに向かって泣き続けていました。

「これで よかったのか?」
神様が、魂だけになったジャックに話しかけます。
「マイはこれから、もっと笑える明日がある。そのきっかけが僕で嬉しい」
その時、神様の涙がひとしずく、ポタリとジャックの魂に落ちました。

「ジャック。お前には神様の素質がある」
神様は、布を顔に巻きつけてジャックの魂の前に現れました。
神様は、ジャックの魂の前でえいやと強く念じます。
すると、ジャックの魂は身体になり、服とマントを身につけ、顔もかっこよくなりました。

「ワシのかわりに、神様をやってほしい。そのための力を全部譲ろう。そして、お前と同じ美しい魂の者に布をあげて、救ってやってほしい」
そう言って神様は、ジャックをかっこいい顔にした布を手渡しました。
ですが、ジャックは首を横にふって、こう言いました。

「布は、あげない。けど僕は、僕なりのやりかたで、この力でみんなを助けに行く」
そう言ってジャックは、神様からもらった布をドアほどの大きさにしました。
そして全身を布で隠し、布をちぎってそれを口に巻いて顔を隠して、神様の前から飛び去りました。
神様はもう、何も言いませんでした。

ジャックはその夜、布で顔を隠してマイの部屋に行きました。
ジャックが死んで泣きつづけているマイの前で、顔を隠したジャックは優しく話しかけます。
「マイ、泣かないで。これから君は、素晴らしい世界を生きていけるんだ」
「僕が君を好きになれた、この世界でね」
「僕は消えるから、忘れてね。さようなら。幸せにね」

ジャックが消えると、マイの顔はきょとんとしていました。
「どうしてわたし、泣いていたんだろう?」
マイは、ジャックを忘れてしまいました。
その後、マイはジャックによく似た、みにくいけれど優しい人と結婚したそうです。

ジャックは神様として、今日も布で身体と顔を隠して空を飛んでいます。
自分と同じように、自分がみにくくて哀しんでいる人の前に現れて、布を渡さず、優しさを与えているそうです。

どうかどうか、どうにもならないと、嘆かないでください。
きっと空からジャックが現れて、あなたを助けるために飛んでくるでしょうから。

いつか、きっと。

おしまい。


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