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No.33445の一覧
[0] 【完結】蝉だって転生すれば竜になる(ミンミンゼミ→竜・異世界転生最強モノ)[あぶさん](2014/07/11 00:39)
[1] 第二話 竜は真の慈愛を知る[あぶさん](2014/07/11 00:08)
[2] 第三話 孤独な竜はつがいを求める[あぶさん](2014/07/11 00:09)
[3] 第四話 竜はやがて巣立ちを迎える[あぶさん](2014/07/11 00:17)
[4] 第五話 竜の闘争[あぶさん](2014/07/11 00:22)
[5] 第六話 竜と少女の夏休み[あぶさん](2014/07/11 00:29)
[6] 第七話 蝉の声は世界に響く[あぶさん](2014/07/11 00:35)
[7] 幕間[あぶさん](2014/07/11 00:37)
[8] エピローグ 蝉だって転生すれば竜になる[あぶさん](2014/07/11 00:39)
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[33445] 第四話 竜はやがて巣立ちを迎える
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:de479454 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/07/11 00:17


広すぎる家では、心も離れてしまう (ゲーテ)








「ほら、太陽ですよ」


逆さに伏せた瑠璃色の玻璃碗の空のふちから、金色の光が顔を覗かせる。

光は矢になってみるみる雲を貫いてゆき、風にたなびくこともなく、真っ直ぐに世界へと広がっていく。

さきほどまで、ぐずぐずと西の空にとどまっていた紺色の夜は、もうここまでだと、尻をまくって逃げだした。



世界に朝がやってくる



私とユグドラシルは上空遥か5000メートルの高さから、海をぐるりと切り取ったような水平線を眺めていた。

金属質な光沢を持つ水面から、水蒸気はゆるゆると立ち上り、海霧となって流れていく。
眩むような高さから、逆さに吊られた天の椀は、雄雉の羽のような、深く美しいグラデーションを作り出す。
山や森は、生まれたばかりの太陽を讃え、影をどこまでも伸ばそうとする。

管弦楽の序章のように、世界はゆっくりと目を覚ます。


何もかもが美しい朝の光の中、しかし、一際まばゆく輝くものに、私はただただ見とれていた。



大樹ユグドラシル



柔らかく屈折した光によって、その樹皮は桃色に染まり、高地ゆえに霜を纏った永緑の葉は磨きあげられたエメラルドのように光り輝いていた。



ユグドラシル、この世で最も美しく、最も古く、最も尊い、世界の宝



「私‥、この世界が大好きです」


ユグドラシルは、この朝の空気のように、瑞々しく、透き通った声で私に言った。



彼女の言葉に、私の心臓はとくんと鳴いた。

私も彼女に「この世界が好きだ」とこたえようとしたのだが、私の声は巻雲のように千切れて消えて、なぜか言葉にならなかった。


思うことも伝えられぬ卑小な私は、今日を最後に彼女の元を巣立つのだ。












-ふむ、これでよい。-

目の前の岩に4つ目の印をつける。私の鋭いこの爪は、分厚い玄武石の岩盤ですら熟れた瓜にナイフを入れるかのように、なんなく印を刻むことができる。

竜の爪痕は縄張りの証。この島のいかな愚かな生き物だとて、この縄張りを踏み越えてくることはありえない。竜の縄張りを侵すことは死にも等しいことなのだから。


「本当に、感謝の言葉もありません。偉大なる竜の御方・・」


ラミアが私に深々と頭をさげた。先ほどから大地に頭をこすり付けんばかりに礼を繰り返されている。
ようやく彼女を説き伏せて、どうにか顔を上げてもらった。私を見つめる彼女の頬は、動脈の巡りで血の気を取り戻し、ラミア特有の濡れた妖気を放ち始めていた。


その後ろには、ラミアの母子に血と肉の全てを譲り渡し骨となった雄牛の姿があった。



今朝、いつものようにユグドラシルの樹液で腹を満たした私は、ラミアの住む北の泉へとむかった。昨日ラミアに約束約束した通り、途中で“狩の練習”をして。

大河のほとり、群れからはぐれた老いた水牛は、その雄雄しい角を振るうこともなく私の爪の餌食となった。咆哮で意識をなくした雄牛を、せめて苦しまぬようにと一息に首を落とした。

前世から通じ、生まれて初めて他の生き物の命を奪うことになった私ではあったが、竜の精神がそうさせたのか、すんなりと初めての狩を受け入れることができた。

モノ言わぬ黒い双眼に、「許せとは言わぬ。そなたの命は決して無駄にせぬ」と祈りを捧げ、爪で水牛を掴みあげると北の泉へと羽ばたいた。



爪についた血を「うまそうだ」と感じた自分には気がつかぬ振りをしながら…



北の泉に降り立った私を、ラミアは大きな驚きと、幾分の警戒をもって迎えた。

私はラミアに笑いかけ、約束通り獲物を運んできたと伝えると、私が手に持つ雄牛を認めた彼女はなんどもなんども感謝の言葉を繰り返した。

埒があかぬので、「感謝などいらぬからどうぞ食ってくれ、礼を言っているうちに肉が腐ってしまうぞ。」と、終わらぬ礼を止めて雄牛を彼女の傍に横たえた。

彼女は一瞬躊躇したが、もう一度私に礼を述べた後、ようやく雄牛の肉にくらいついた。

その後は休むことなく、夢中でラミアは肉を咀嚼し続けた。
常に気丈にみえていた彼女ではあったが、あるいは餓死寸前の状態なのではなかったろうか。

雄牛はみるみるその形をなくし、肉を半分ほど失った。その後ラミアはついと口元の血をぬぐい、もう一度感謝の言葉を述べた後に私に雄牛の残りの半分を差し出した。

硬く筋張っている筈の肩や背中の肉は全てなくなり、美味である筈の腹やでん部の肉は手がつけられることなく、そのまま残されてあった。

腹など空いていないから貴方が全部食べてくれと私は彼女に言ったが、彼女はもう十分に腹を満たしたと答える。

あまりにも強情なものだから、「ならばその残りの半分は、いまだ腹を空かせているお主の子に食べさせてあげてくれ」と言うと、彼女は少し恥ずかしそうにうつむいた後、ようやく私の言うことを聞いてくれた。

やはり私に遠慮をしていたのだろう。

結局彼女は残りの肉も全てその胃の中に収めた。お腹の子供も喜んでいるにちがいない。彼女のお腹は、いつもよりもさらに大きく膨らんでいた。


それにしても、今まで極端に痩せていたせいで解らなかったが、実はラミアの腹の子はかなり大きくなっているのではないだろうか。ひょっとしたら、あと一ヶ月もたたぬうちに生まれてくるやもしれない。


赤子が産まれたならば、外敵にも注意せねばならぬだろう。
私は彼女と生まれてくる子供の為に、ラミアの巣の周りを竜の縄張りにすることを思い立った。
竜の縄張りの中にいれば、ラミアは安心して子を産み、育むことができるだろう。


こうして私は、ラミアの巣を囲む4つの岩に縄張りの印をつけることにしたのである。


少しばかり長くなってしまったが、これが今、ラミアに平伏されながら礼を言われ続けている理由なのだ。


ラミアは私を自分とお腹の子の命の恩人だと言い、何か私の為にできることはないかと問いかけた。

ふむ・・、私はしばし考える。

お礼といっても、この竜の身でラミアに求めることなどは何も思いつかぬ。

竜にできることでラミアにできぬことは星の数ほどあるが、竜にできぬことでラミアにできることなど一つもないであろうから。


ラミアは自分ができることなら何でもすると訴える。肉と血を食べ生気を取り戻したおかげだろうか、先ほどまで陶器のように青白かった彼女の頬は、今はっきりと赤く染まっていた。


ぬれた瞳で見上げながら、控えめに、しかし確かににこちらへ近づいてくる彼女を前に、私はなぜか、ひどく窮屈な場所へと追い詰められているような気になった。


今すぐ何かほしいものを言わねばならなぬ。私は奇妙な不安を肌に感じながら、懸命に思考を巡らせた。


ラミアの手がそろりと私の方へと伸ばされようとしたその瞬間。



-そうだ! 巣だ、巣をさがしているのだ!-



‥と、答えていた。


答えてようやく私は思い出す。そうだ、私は巣を探さねばならなかったのだと。


ユグドラシルのうろは素晴らしい巣であり、生涯そこに住み続けていたいものではある、しかしあの場所は彼女の物であり、私の家ではない。

私は新しい巣をみつけるまでという約束で、仮宿として使わせてもらっている居候の立場にすぎぬのだ。


第一、女性の家に転がり込んで、働きもせず甘い蜜だけすすっていきようなどと、これではまるでヒモかジゴロのようではないか。

生まれたばかりとはいえ、私はもはや一人前の竜である。竜がそのような軽薄な生き様をしていてはならぬ。一刻も早く新たな巣を見つけるべきだろう。



しかし竜の巣を見つけることはそんな簡単な話ではない。まず、この巨体がおおきな問題だ。

雨露を防ぐためにも、私の巨体のさらに数倍の大きさを持った空洞が必要である。また、寝返りなどで崩れることのないように丈夫な岩の洞穴でなければならぬ。

当たり前のことだが、すでに他の生き物が住む場所は論外だ。自分の為に他の生き物から巣を奪うような行為をするつもりはない。

ユグドラシルからそれほど離れていないことも需要だ。

いつかは私もラミアのように血や肉を食物とする日が来るのであろうが、今はまだ、大樹の樹液をすすっていたい。できるだけ大樹の近く、具体的には羽ばたき3分以内の場所がよい。

洞窟はじめじめしやすいから日当たりのよい場所がいい、入り口も南向きがよいだろう。巣の周りは風がよく吹き抜ける開けた場所がよい。近くに水場でもあれば最高だ。


ふむ‥、そうなるとやはり、巣とは容易に見つからるものではないな。

まあ気に入った岩山でもみつけ、この爪で穴を掘るというのが現実的なところだろう。

それなりに時間はかかるだろうが、優しいユグドラシルのことだ、私が巣を掘る終えるまで、彼女の元に住まわせてくれるはずだ。


そんなことを考えていた時、ラミアの声が私の思考を遮った。
驚くことに、ラミアは一つだけなら心当たりがある、と私に告げた。




ラミアの巣とユグドラシルを結んだ直線のちょうど真ん中あたり、一面の広い平原の中に、まるで生まれる場所を間違えて来たかのような巨大な岩山がただ一つ聳え立っていた。
その山の裾野には、ぽっかりと口をあけた洞窟の入り口があった。

中は想像以上に広大な空間となっており、ユグドラシルのうろとほぼ変わらぬ広さをもっていた。

水場も近く、日当たりもよい。先住者がいる影もない。なぜこれほど巣に適した場所が誰にも使われていないのだろうか。わたしは奇妙に思い、ラミアに問うた。

ラミア曰く、ここには20年前まで凶暴なヒュドラが住んでいたそうだ。
島の生き物を手当たり次第に食い散らかし、毒の息を辺りに撒き散らしていたヒュドラは島の生き物達から恐れられ、だれもこの岩山の付近に近づこうとはしなかったという。

しかし、増長したヒュドラは身の程知らずにも竜に戦いを挑んだ。

竜の亜種たるヒュドラとて、古き真なる竜にはかなうわけがない。ヒュドラはあえなく敗れ、その身を竜に喰われてしまったそうだ。

主を失い、ただの空き家となってしまったこの洞窟ではあったが、その後20年経った今なおこのあたりに住む生き物はヒュドラの恐怖を思い出し、あるいは語り継ぎ、誰もここに住む者はいなかったという。


なるほど、確かに私の先代の記憶にはヒュドラの9つの頭を、ほつれた絹布でも引き裂くかようにするすると裂いていく白竜の手の映像が残されていた。

醜悪極まるヒュドラではあったが、不釣合いなほど上質な巣をもっていたようだ。ヒュドラを恐れて他の生き物が近づくことがないというのなら好都合だ。他の生き物をいたずらに刺激することもないだろう。

立地も大きさも、これ以上の巣が見つかることないと思えた。私は案内をしてくれたラミアに礼を述べた。

ラミアは私の役に立てて光栄だと、嬉しそうに笑った。


しかし、理想の巣が見つかったにもかかわらず、明日にも巣立ちせねばならぬのかと思うと、私の心は何故か霧がたったように曇った。。



・・・・・・・


・・・・・・・



「では巣が見つかったのですね。おめでとうございます」


夕食(樹液)のあと、私はユグドラシルに新たな巣が見つかったことを伝えた。彼女は私の巣が見つかったことをまるで自分のことのように喜んでくれた。

ひときしり喜んでくれた後、


「もう引越しされてしまうのですね‥、短い間でしたが、とても楽しかったです」


と続けた。私の錯覚でなければ、声に幾分の落胆と寂しさをこめて。

私の心臓がまるで絞られた雑巾のようにぎゅうっと鳴いた。そして思わず、



―いや、まだだ! まだ引越しするわけにはいかぬ。まだ、大事なものが足りぬのだ!―



と叫んでいた。


「大事なもの‥、ですか?」


ユグドラシルは私に問う。
思わず口に出てしまった言葉ではあるが、巣が完成していなければ、まだ引越しする必要はないはずだ。
理想の巣には、まだなにか足りぬものがあるはずだ。

私は必死に考える、巣に必要なもの、必要なものとはいったい何であろうか?

ぐるぐると回る私の頭にふと閃きがまい降りた。


―そうだ! 床だ! 寝床がひつようなのだ!―


そう私は答えていた。答えた後に、なるほど、あの新しい巣には寝床がたりなかったのだと、改めて私は気が付いた。

ユグドラシルのうろの中はほどよいやわらかさをもった土の床であるのだが、今日見つけた巣は冷たい岩の洞窟である。
硬い岩肌に眠るのもそれほど悪いものではないのかもしれぬが、やわらかい寝床があるに越したことはない。穏やかな眠りは豊かな生活を生むであろう。

うむ、やはり寝床は必要だ。明日からゆっくりと理想の寝床を作ることにしよう。


ユグドラシルもわたしの言葉を受けて、


「はいっ、そうですよね。柔らかい寝床があればきっとよく眠れますもの。‥ふふふっ、では、寝床が完成するまで、明日からもよろしくおねがいします。同居人さん」


そういったユグドラシルの声は、やはりこれも私の錯覚でしかないのかもしれないが、明るく弾んでいたように聞こえた。

彼女の明るい声を聞いて、まるで私の胸も花が咲いたように明るくなった。


今日もよく眠れそうだ。わたしは、その後も今日の出来事をユグドラシルと語り合った後、世界樹のうろの中で幸せに目を閉じた。





次の朝は、曇天で雨こそ降らぬものの、じっとりとした湿気につつまれた一日のはじまりだった。寝床の材料は午後にでも探すことにし、わたしはふと思いたちハーピーの少女の元へと向かうことにした。

当初は毎朝ラミアの元へ食料を運ぶつもりだったのだが、彼女が言うには、ラミアとは食いだめの利く生き物らしく、あれだけの量を食べれば2週間は何も食べる必要はないそうだ。

「そうか、ならば1週間後にまたこよう」と答えたら、ラミアは不意を突かれたような顔をみせたあと、頬を赤く染めながらいつものように頭をさげた。

そういう事で、時間もできたことであるし、先日のもう一つの約束を果たそうとハーピーの里へと羽ばたいたのである。


私の突然の訪問はそのような意図などなかったのだが、ハーピーの一族に恐慌を巻き起こしてしまった。
逃げ惑い、あるいは恐怖に震え動けなくなったハーピー達に、友人に会いに来ただけだから案ずるなと声をかけた。
一番近くにいたハーピーに「歌えないハーピーの娘はどこにいる?」と尋ねると、ガクガクと震えながら、里の外れの方を指差した。


私は彼女に礼を言い、その震える指の示す方向へと飛び去った。背中からハーピー達の安堵のため息が聞こえてきた。


ハーピーの里から2キロほど離れた場所に、私は布と木でつくられたゲルのような小屋をみつけた。
低地で日陰となり、幾分湿っぽいその場所は、決してハーピーが好んで住むような場所ではなかったが、他に家らしきものはあたりには見つからなかった。


家の中に生き物の気配を感じた私は、家の入り口を探した。
どうやら布の合わせ目が入り口となっているようだが、扉も呼び鈴もない入り口ではノックのしようもない。

鍵などない入り口はめくるだけで簡単に開けられるものではあるのだが、女性の家を断りもなく覗くような真似などしてはならない。
ともかく私は、声をだしてハーピーの少女を呼んでみることにした。

私が声を発するやいなや、小屋の中からバタバタという羽音と、ガラガラと何か転がり落ちるような音がきこえた。

その後しばらくして、入り口らしき布と布の境目から私の友が恐る恐る顔をだした。彼女の空色の髪からは水がぽたぽたとしたたっていた。どうやら体を拭いていた最中だったようである。

彼女は私と目があった後、いつものように口をパクパクさせていた。
もっとも、今回は何かを言いたいわけではなく、ただ純粋に驚いているだけのようであったが。

私は先日そうしたように彼女の頭に指を乗せると、意思のみで言葉を交わした。


―約束しただろう? 雲の彼方まで連れて行ってやると、今から空へと遊びにいかぬか?―


ハーピーの少女は一寸目を大きく見開いたあと、小さな林檎のような笑顔を浮かべ、


―はいっ―


と答えた。


準備をしなければならないので10分ほど待って欲しい。と、彼女は私に言った。
私がもちろんだと返すと、そのまま亀のように頭を家の中へ引っ込めた。小屋の中からは再びバタバタと慌しい羽音が聞こえてきた。

10分たち、もう10分たち、さらに10分ほど経ったあと、彼女はようやく小屋から現れた。


遅くなってしまったことを懸命にわびる少女に、謝るのは何の前触れもなくやってきた私の方であると答えた。私の謝罪に対し、彼女は手と顔と羽を左右にバタバタと動かした。

ハーピーの少女は薄い橙色のテュニカを纏っていた。彼女の空色の髪によく似合う淡い色合いのものだ。幾分古そうではあるが汚れのないその服は、大事に扱われていたことが伺われた。

その服はとてもよく似合っているな、と伝えると、ハーピーの少女ははにかみながら、母にもらったものだと嬉しそうに答えた。

その服は、雲の上を飛ぶにはどうにも薄すぎるものではあったが、彼女の笑顔を見ると、水をさすのは野暮に思えた。

上空の冷たい空気と風など、私の無尽の魔力で防いでしまえば事足りるのだから。


-では、ゆこうか-と、彼女につたえる。


しっかり私を捕まえているように促すと、彼女は私の首の後ろにきゅっとしがみついた。
私は彼女をふるい落とさぬよう気をつけながら、曇天の空にむかって羽ばたいた。大地はみるみる遠ざかり、雲がどんどんと近づいてくる。
ハーピーの少女から、すごい! すごい! という声が伝わってくる。

思考を伝えて会話をする我らの間には、嘘など存在する場所はない。ハーピーの少女は私の背に乗った飛翔を、心のそこから楽しんでいた。

ハーピーの一族は艶やかで美しい色合いの羽を持っている。しかしその翼は体の割には小さくあり、長い時間を飛ぶことはできない。また、私のように魔力も合わせて飛ぶような技をもっているわけでもない。これほどの高さから大地を見下ろすのは初めての経験であろう。

私はさらに高く飛ぶ、空に広がる灰色の雲の壁に飛び込んだとき、ハーピーの少女から戸惑いと驚きの感情が伝わってきた。


そうして厚い雲の層を抜けたとき。空は一転して晴れ渡っていた。


眼下にはもはや地上は見えず、広大な雲の海が広がっていた。太陽は真上に強く輝き、雲の海を真っ白に染めあげていた。


ハーピーの少女は-雲の上が晴れている‥-と、ぽかんとなっていた。


私は少しだけ悪戯をしたくなり、体を翻し雲の海へと再び飛び込んだ。ハーピーから-きゃっ-という悲鳴が伝わってきた。

そうしてまた雲の上に出たあとに、私たちは思わず笑い始めた。

ハーピーの少女は声を上げることはできなかったが、私は彼女の分も笑った。
友達と遊ぶことはなんと楽しい事か。

それから私達は、2・3時間ほど空の遊泳を楽しんだ。


太陽が僅かに地平線の方へ傾き始めたころ、われらは里へと戻ってきた。

ハーピーの少女は今なお私の首にしがみつき、興奮交じりになんども-楽しかった-と繰り返していた。彼女の素直な心の声に、私は誘って本当によかったと思った。


ハーピーから御礼にと昼食に誘われた。作りおきの山菜のスープがあるそうだ。

歌で獲物を誘うことのできない彼女は、山菜や木の実をとって暮らしているらしい。

今まで食べたことのない食事には少し興味を引かれはしたが、私は彼女の提案を固辞した。

彼女にとっては鍋いっぱい分のスープでも、私には匙一杯分の量にもなりはしないだろう。彼女の貴重な食料を奪うわけにはいかない。


わたしはそろそろ寝床の材料を探しにいかねばならないからと、彼女の家をお暇することにした。


―寝床?―


いまだ首にしがみついたままの彼女は私に問うた。

…ふむ。山で山菜や木の実をとって暮らしている彼女なら、あるいは寝床にちょうど良い材料をしっているかもしれぬ。
私は彼女に寝床を作るのになにかよいものを知らないか? と、尋ねた。

ハーピーの少女はしばし考えた後、


-そうだっ、あれなら竜さんの寝床にぴったりかも!-


と、答えた。




ハーピーの里からいくらか離れた赤い峡谷。


その裂け目の中、日の光が微かにしか届かぬ場所へと私達はやってきた。

奥へ、奥へと歩をすすめると、谷底にぽっかりと空間が開けていた。

その場所の中央に、傘のような形をした巨大な一枚の岩があった。

‥いや、岩ではない。これはまさか、オオザルのコシカケか?


私の問いかけに首にしがみついていたハーピーは肯定の意をつたえてきた。

オオザルのコシカケとよばれるこれはキノコの一種である。

毒こそないものの、味も栄養もなく食用には適さない。しかし削れば火種として使用できるためこの島の亜人達に重宝されているものだ。

大きいものは牛程のサイズにもなるそうだが、目の前のそれは牛どころではない、私の巨体よりもさらに大きい。
もはや遥か昔に枯れていたのだろう、日の射さぬ場所にもかかわらず。その体はすっかり乾ききっていた。

おそらくは、この峡谷の中で誰にもみつかることはなく、何百年ものあいだ生きていたに違いないオオザルのコシカケ。

わたしはそれを両手で持ち上げてみた。なんの抵抗もなく岩からはがれたコシカケは、驚くほど軽かった。

ためしにその上に寝転んでみたのだが、私の巨体をなんなく支え、かつ適度な柔軟さと反発性をもち、その使い心地には、思わず感歎の息を吐かずにはいられなかった。

何も手を加えなくとも、寝床としてこれ以上のものはない。

私の体に合うだけの巨大な寝床をつくるには、いったい何日もの間、島の中を材料をもとめてさまよわねばならぬのかと考えていたが、まさか一日で最高の寝床を手に入れられるとは思ってもみなかった。


私はハーピーに礼を言った。ハーピーはパクパクと口を動かしながら、今日一番の笑顔を私に見せてくれた。











「まあ、同居人さんよりも大きなオオザルノコシカケですか? それは本当に珍しいものを見つけられましたね。」


夕食の後、いつものようにユグドラシルに今日の出来事を語った。ユグドラシルは時にうなずき、時に驚き、時に相槌を打ち、私の話を楽しそうに聞いてくれるのだ。

ユグドラシルと出会ったあの日からわずか4日。しかし私にとって、彼女とのこのひとときは、何事にも変えられない大切で穏やかな時間となっていた。


「本当によい寝床を見つけられましたね。きっとオオザルノコシカケさんも喜んでいるのではないでしょうか。枯れてもなお、誰かの為にあることができるというのは、私もとても素敵なことだと思いますから。」


死してもなお、誰かの役に立つことができる‥か、それは確かに素晴らしいことなのかもしれぬな。

私はオオザルノコシカケの事を思う、この先ずっと大切に使わせてもらおうと、心に決めた。


オオザルノコシカケは既に新しい巣に運んでしまっていたが、明日にでもユグドラシルに一度見せに来ようと思った。
ユグドラシルはもちろんのこと、きっとオオザルノコシカケも喜んでくれるのではないだろうか。


ユグドラシルの優しい視点は、世界が優しさにつつまれていることを私におしえてくれる。
もしも、私が彼女に出会わなければ、私の世界は今程光り輝いてはいなかったに違いない。


「‥でも、随分早く寝床が見つかりましたね。明日にでも新しい巣に引越してしまわれるのですか?」


ユグドラシルの言葉に私はハッとなった。そうだ、寝床を見つけたということは、私の巣も完成したということではないか。


一人で住み始めれば、このユグドラシルとの暖かな時間も今日で最後になってしまう。
私は再び、ぐるぐると頭を巡らせる。


巣はまだ完成ではないはずだ。


何かあるはずだ、何か・・何か・・寝床以外に巣に必要なものとはなんだ!?

ねどこ‥どこ…ど・と、と‥ とびら、…扉!



-扉だ! 扉がひつようなのだ!-



‥と、私は叫んでいた。


「えっと…、扉、ですか?」


うむ、と私は頷く。

竜の巣というのは、財宝でうめつくされるものである。

私自身は金銀財宝などには興味はないし、これからも集めるつもりはないのだが、先代の竜が集めた宝を放置しておくわけにはいかぬだろう。

富は争いを生む。他の生き物の目につかぬよう、財宝は新しい巣に運んでおくべきだ。
ならば扉の一つもなければ、オチオチも外出できぬではないか。


私は、彼女にそう伝えた。うむ、完璧な理論である。ユグドラシルも、


「留守とはいえ、竜の巣に近づく生き物などいないような気もしますが…、でも、用心はしすぎるに越したことはないといいますものね」


と、賛同してくれた。


「ふふふっ、では、玄関が完成するまで、またよろしくおねがいしますね。同居人さん」


こうして私は巣立ちの日まで、また暫くの猶予を得ることとなった。


それにしても、なぜ私は、こんなにもこの場所を離れたくないのだろうか。

今日は大樹のうろに背中をぴったりとつけて眠ることにした。血の通っていないはずの彼女の体は、なぜかとても暖かく感じた。





・・・・・・・


・・・・・・・



私が、世界樹に背中を預けながら眠ったその日。私はとても不思議な夢を見ていた。



私は再び蝉となっていた。

蝉になって、小さな羽根で空をとぶ私は、ただひたすらにユグドラシルの姿を探していた。

探しても、探しても、探しても、ユグドラシルは見つからない。

いったい何処に消えてしまったというのだろうか、私は巣をまだ作り終わってはいない。わたしはまだ、あなたに伝えたいことを伝えていないのだ。

過去と現在が交錯する夢の中、不意に甘い匂いがした。


間違いない、彼女の樹液だ。私は、目の前のその匂いの元が何者かも考えることもなく、樹液にしゃぶりついた。


しゃぶりついて‥、







生臭ァ!!!







私は口に残る不快感とともに夢から唐突に引き剥がされた。

うつつに戻った私がみたものは、世界樹のうろの壁にヤモリのように張り付いて、巫女服から伸びる長い尻尾を私の口に垂らしている、リザードマンの姿であった。



「ミミーン!!!(訳・ぬぉおおおー!!)」



私は驚きのあまり竜の咆哮を放ってしまった。体から血の気が一気に引く。リザードマンの巫女と、そしてユグドラシルは大丈夫であろうか!?


「ど、どうかされたのですか!?」


ユグドラシルは意識を閉じていたようだ。木である彼女には睡眠など必要ないが、時折こうやって意識を閉じているのだそうだ。

怪我はないかと彼女に問う、幸運なことにユグドラシルには傷一つついていなかった。地面に横たわるリザードマンの巫女も、巫女服こそ多少傷んではいたものの、体にはさしたる影響は無いように見えた。

もっとも、咆哮の力で意識は失ってしまっていたが。

数日前は岩山すら吹き飛ばした私の咆哮ではあったが、咄嗟の一声であったためか、魔力を練りきっていなかったのであろう。
なにはともあれ、最悪の事態は免れたようで安心した。


気絶したままのリザードマンの巫女をよそに、私はユグドラシルに何が起こったのかを説明する。ユグドラシルはひと通り私の説明を聞いた後。


「やっぱり…、必要ですね、扉…」


と答えた。




朝、太陽が登る頃にリザードマンの巫女はようやく目を覚ました。私は昨夜の一件はどういうつもりだ? と、尋ねた。


曰く


夜の散歩中、偶然この近くを通りかかり、

その時ふと、寝ている私の姿を見てみたくなり、

うなされている私の姿を見て、気がつけば私の口に尻尾を垂らしていたそうだ。



‥なるほど、理解できん。


「やはり、丈夫な扉を作らねばならぬな」


私の思考は思わず口にでていたようだ。私のつぶやきを聞きとめたリザードマンの巫女は、「扉ですか?」と尋ねてきた。

今、新しい巣をつくっている最中であること、そしてその入り口に大きな門をつくるつもりなのだと答えた。
それを聞いたリザードマンの巫女は、こんなことを言い出した。


「そういうことであれば任せてください! 私(わたくし)、この島の最高の職人達を知っておりますわ!」





・・・・・・・


・・・・・・・



「おめぇさまがぁ、あたらすぃ竜様だべかぁ?」


「は・・はじめますてだな。り・・り・竜さまの玄関作るなんて、ここ・・光栄なんだな」


太陽が真上に登った頃、リザードマンの巫女は二人の巨人を引き連れて、私の新しい巣へとやってきた。
ファゾルトとファフナーと名乗る二人の巨人は私とほぼ変わらぬ巨躯をもち、日焼けしたゴツゴツとした両手には、彼らの体の倍ほどもある大量の材料をかかえていた。


「ここに扉ぁ、つくればいいんだべなぁ。なぁに、このくらい簡単な仕事だべぇ」


「きき、緊張するべな。りゅ‥竜様にき、気に入ってもらえる門をつ・つ、つくるんだな。」


そう言って二人の巨人は仕事に取り掛かっていった。二人の仕事振りは壮観であった。
巨大な金槌を軽々と振り回したかと思えば、カンナで丁寧に表面を仕上げる。

二人の巨人は時折短い言葉を交わすのみで、まるで二人で一つの生き物であるかのように淀みなく作業を続けていった。

大胆に、繊細に、且つ素早く。扉はみるみると出来上がっていく。


私は彼らの仕事振りに見惚れていた。職人とはなんと素晴らしい人種なのであろうか。
私の胸に感動という名の衝動がこみ上げてくる。


私の爪に引き裂けぬものなどこの世にはない、しかしこの爪で、彼らのようになにかを作り上げることができるのだろうか?


何かを作り上げる手と、何かを壊してしまう手。


二人の巨人を見つめながら、いつかこの自分の手で何かを作ってみようと思い立った。金や銀の財宝には興味はないが、自分で作った何かであれば、それは一生の宝となるのではないだろうか。

私はリザードマンの巫女に礼を言った。彼らと引きあわせてくれてありがとうと。

物を作るということがこんなにも素晴らしいものだとは知らなかったと、私は素直に心の内を晒した。


巫女は私に礼を言われたことがよほど恥ずかしかったようだ。

顔を真っ赤にし、尻尾をバタバタとさせながら、ついっと二人のいる方向へと顔を逸らすと、「御礼なら,是非あの二人に言ってあげてくださいませ」と言った。


言われるまでもないことだ。


二人の巨人が休憩を挟んだところを見計らい、私は二人に尊敬と礼の言葉を述べた。


「礼を言う必要はねえべぇ、これがぁ、おらたちの仕事だべぇ。」


「き・き、恐縮なんだな、さ、最後の仕上げ、がが、がんばるべな。」


と、職人らしく、力強く気持ちのよい返事をもらった。

仕事の対価は財宝でよいのか? と尋ねるが、二人の巨人は対価などいらないと答えた。


「リザードマンの巫女さまのぉ、頼みだべぇ。お礼なんてもらえるわけねえべや」


「み、み、巫女さまには、お、おお、お世話になったんだな、ここ、これは恩返しなんだべな。」


恩とはなんだと話を聞いてみると、10年以上前のこと、二人の巨人は黄金の指輪を巡って命の取り合いになる大喧嘩をおこしたことがあるらしい。

そのとき命がけで二人の喧嘩を止めたのが、まだ10歳にもなっていなかったリザードマンの巫女だったそうだ。

当時はまだ幼いリザードマンの巫女ではあったが、巫女としての優れた知覚によってか、指輪にかけられていた死の呪いを敏感に察知し、二人の巨人が目を離したその隙に、黄金の指輪を海の中へと放り捨てたのだそうだ。

指輪が海の中に消えたとたん、二人の巨人は正気を取り戻して争いをやめたという、

その後、命がけで二人の呪いを解いたリザードマンの巫女を自身の命の恩人として、そして大切な兄弟の命を救ってくれた者として、深く崇めるようになったそうだ。


私はその話を聞き、今まで彼女を邪険に扱ってきたことを恥じた。
確かに彼女の行動や言動は突飛ではあるが、その心は金剛石のように強い勇気と凛とした輝きに満ちているのではなかろうか。


リザードマンの巫女の方をに目を遣る。彼女はずいぶんと離れたところで、こちらに背中を向けて座っていた。
二人の巨人が彼女の逸話を話し始めたとたん、彼女は恥ずかしくていたたまれないといった様子で、ここから離れていったのだ。

私には普段の彼女の行動の方がよほど恥ずかしくおもえるのだが‥。


本当に、人とは見る角度によっていろいろな姿を見せてくれる。
私は彼女のほんの一面しか知らなかったのだと気付かされた。

これからは、他の姿も知ってみたいものだ。

彼女とも良い友人になれるとよいな、と私は願った。


休憩を終えた二人の巨人は再び仕事へと戻った。
門はほとんど形をなし、残りは最後の仕上げのみだそうだ、私は彼らの邪魔をしないように、少しだけ二人から離れた場所から眺めていた。

門を開閉の具合を確かめて頷き合う二人。どうやら職人の二人が満足できるほどのものができたようだ。

観音開きの扉はぴったりと隙間なく閉じた。

右の扉の下のほうについてある小さな勝手口も問題なく開閉するようだ。
板の繋ぎ目で精巧にカモフラージュされたその扉は、勝手口というよりも隠し扉のようであった。



………勝手口だと?



この小さな扉はなんだと二人に尋ねると


「ああ、これけぇ? 巫女さまがいつでも忍び込めるようにぃ、隠し扉つくってくんろとおっしゃったべぇ」


「だ、だ・ダメなんだな、兄者、そ、そ‥、それ、りり、竜様には内緒なんだな」




うむ、よくわかった。今すぐ封印してくれ。




防犯に致命的な欠陥のあった扉は、勝手口を厳重に塞いだせいで多少ゴテゴテとした見た目となってしまったが、その日のうちに完成した。

リザードマンの巫女は隙をみては門に細工をしようとするため、偶然通りがかったガルーダさんに里まで運んでもらった。



今日も一日が終わろうとしている。黄金に光る黄昏時、わたしと、二人の巨人の影が彼方へと伸びていく。


私は二人の仕事を心から讃え、感謝の言葉をもう一度伝えた。

巨人の兄弟は額に大量の汗をかきながら、岩をも転がしてしまいそうな豪快で、気持ちのよい笑いを返してくれた。
ファゾルトとファフアーは、肩を並べて夕焼けの沈む方角へと消えていく。もはや数すくない巨人族、彼らが安寧に暮らしていけることを心から願う。


彼らの姿を見送ったあと、私は世界樹の元へと向かう。
今日はみやげ話がたくさんある。二人の巨人と、リザードマンの巫女の話。私もこの手で何かを作ってみたくなったこと。

きっと彼女は楽しそうに聞いてくれるのだろうな。ああ、いまからでも待ち遠しい。


私は、世界樹の元へと羽ばたいた。



‥ふむ? 何か大事なことを忘れてはいないかだと?



案ずるな、さすがに3度も同じ醜態を繰り返すわけにはいかぬ。巨人たちの作業を見届けながらも、ちゃんと考えるべきことは考えてある。

男らしく、一言で簡潔に伝えようではないか。

私は世界樹のところに帰るなり、こういった。





「最後にトイレを作る」



そうして今日もまた、ユグドラシルの樹液を飲み、おしゃべりを楽しんだ後、彼女のうろで眠るのだ。






・・・・・・・・


・・・・・・・・



次の日の朝、目が覚めた私は新たな巣に直接向かうことにした。どうもここ数日、誰かに合うたびにことが上手く運び過ぎるきらいがある。

これまで色々と引き伸ばしてきたものの、トイレまでつくってしまえば流石に巣は完成である。それ以外に必要なものなどもはや私には思いつかない。

今回は誰にも相談せず、一人で作業を進めるべきだと、そう考えた。


さて、今から巣の傍にトイレを作るわけなのだが、これがそう簡単にはいかぬものだ。
上水道と下水道、2種類の水の道を作らねばならぬからだ。
穴をほってハイおしまい、というわけにはいかぬ。
快適な家を作るためには、手間など惜しんではいけない。また、上水道は飲み水や体を拭く水にも利用ができる。


ここでの問題は、いかにして水を確保するかにある。

近くの川から水を引いてきてもよいのだが、あまりたくさんの水を引き寄せてしまうと川に住む生き物たちの生態系にも影響を及ぼしてしまうかもしれない。
それに、雨季で川が氾濫してしまうと巣まで水浸しになってしまう可能性もある。

となれば、地下水を掘るのが最良の選択ではあるのだが・・・。


そう考えていた時にふと背中に視線を感じた。

遠い岩陰から、こちらをこっそりと見つめるその視線。


私は視線の主に向かって出てくるようにと促した。
岩陰の後ろにいた者は私の声にビクリと反応した。しばらく躊躇したあとに、観念したようにでてきたその者は、




「ゲコォ…」




と鳴いた。



・・・・・・・・


・・・・・・・・


巣の前で、私とゲーコさんは微妙な距離感を保ちながら、差向いに座っていた。
私達の間には重い空気が横たわっている。空気に鉛でも混じっているかのように息苦しい。
私からゲーコさんに語る言葉は思いつかなかったし、向こうもまた、私に伝えるべき言葉を見つけられないのだろう。


わたしたちはただ、沈黙を続けることしかできなかった。


間を持て余し、視線は自然に彷徨ってしまう。ゲーコさんは前にあった時よりも随分痩せてしまっていた。皮膚も乾き両生類特有のぬめりを失ってしまっている。


ひょっとして、あの日からろくに餌を食べていないのではなかろうか。

私がユグドラシルの樹液で毎日腹をみたしていた間…。


それに気づいた時、私は自身をひどく恥じた。あの日わたしはゲーコさんをいったいどれだけ傷つけてしまったのだろうか?


ゲーコさんの体に雄の印を認めたあの日、私は喚きながらその場を逃げ去ってしまった。


ゲーコさんに、なんの言葉も残すことなく。
あれはなんと卑劣な侮辱ではなかっただろうか?


生き物は、必ずしもその身体的性別と精神的性質が一致するとは限らない。

魂と肉体の不一致とは、本人ではどうしようもできぬ病なのだ。蝉の魂と竜の肉体を持つ私が、なぜゲーコさんの苦しみを理解しようとはしなかったのだろうか?

私にはゲーコさんを妻とすることはできない。しかし、同じ種類の悩みを持つものとして、友となることはできたのではないだろうか。


私は自身を省みる、省みて、今何をするべきか考えた。
そして考えるまでもないことに気がついた。私が今なすべきことは、只一つしかないのだから。



「ミーンミンミンミン」



私は歌う、親愛と友情の歌を。言葉などいらぬ。音が、歌が、旋律が、我らの友情を繋いでくれる筈なのだから。


「ゲーコゲコゲコゲコ・・・」


ゲーコさんも私に歌を返す。しかしあの時のような低く力強い音ではなく、どこか恐る恐るといった風合いの歌だ。


私はここまでゲーコさんを追い詰めてしまった自分を恥じた。恥じて、しかしだからこそ謝ってはならぬと心に言い聞かせた。


何と言って謝る? 雄だとはおもっていなかった?


馬鹿馬鹿しい、雄だとか、雌だとか。いったいそこに何の意味があるというのだろうか。

真の友には性別など関係ない。われらはこれから友になるのだ。


どうした、友よ? お前のうたはそんなものではないだろう?

私の歌についてこい、ゲーコ! 友の間に遠慮などいらぬ!


「ミーンミンミンミン!」


私はゲーコを挑発する、音楽とは合わせるだけではつまらない、時には反発しあってこそ、新しい旋律がうまれるのだ。

さあ、どうした? 私はもっと強く歌えるぞ?


「ゲーコゲコゲコゲコ!」


ゲーコは私の意図を正しく察し、力いっぱい歌い始めた。
うむ、乗ってきたな! ならばこの旋律はどうだ?


「ミーンミンミンミン!!」

「ゲーコゲコゲコゲコ!!」


私の音に、ゲーコは寸分たがわず付いてくる。やはりゲーコは本物だ。

私の音に付いて来て、あるいは凌ぐことすら可能なのは、目の前のライバルただ一人なのだ。


今日の音楽はヘビーメタルでいってみようか、シャウトとシャウトの間にある本物のソウルを聴いてみないか?



「Min min min min!!!」


「Geko geko geko geko!!!」



イッツ・クール! ザッツ・オーライッ!


私とゲーコの歌は島中に響きわたる。我らの魂の叫びは誰も止めることはできやしない。


「ミーンミンミンミン!!!!」


「ゲーコゲコゲコゲコ!!!!」





歌うことは楽しい、しかし誰かと歌うことはもっと楽しい。


友を見つけることは嬉しい、しかし友と仲直りすることはもっと嬉しい。


「ミーンミンミンミン」


「ゲーコゲコゲコゲコ」


歌って、歌って、歌って…

気がつけば、私達は大地に横たわって大声で笑っていた。




空は青く、真っ白な雲が風に吹かれて飛んでいく。真夏の太陽から光線が羽のように降り注いでいた。


女だとか、男だとか、蝉だとか、竜だとか、


そんなことは、とてもちっぽけなことではないだろうか。


私たちは握手を交わす。仲直りの握手はとても暖かい。


今度はラップでも歌おうか? と笑いかけると、ゲーコは



「ゲッKO!」



と、力強く答えた。


その後、われらは他愛もないおしゃべりをする。

今、トイレを作っている最中なのだと話すと、ゲーコは手伝わせて欲しいと名乗りでてくれた。

トイレは一人で作ってみるつもりだったのだが、友の厚意を無碍にするわけにもいかぬ。わたしが「では頼む」とお願いすると、ゲーコは任せてくれと、力強くうなずいた。


ゲーコは巣の周りの幾つかの場所でうつ伏せになり、何かを探り当てるかのように大地に耳を当てていった、私はゲーコの邪魔をしないよう、息を潜めて見守っていた。

ゲーコは、なんどかそれを繰り返した後、とある場所で立ち止まった。

ゲーコの口に、いや‥、舌にか? 力強い魔力が込められているのが私にはわかった。ゲーコの舌先が青白く光っていた。そしてそのまま‥、


「ゲーコォオオオ!!!」


気合の一声とともにゲーコの舌がうねりを上げながらドリルのように伸びて行き、厚い岩盤を突き破っていった。

削岩音とともにギュルギュルと伸びていく舌。一体、どれほどの長さを伸ばしているのか想像もできなかった。

暫くして、ようやく舌が巻き戻り始めた。
そして舌がゲーコの口の中に巻き戻ったと同時に、なんと、大量の水が地面から溢れ出てきた。

ゲーコはそこから少し離れた場所に移動して、もう一度同じように舌で地面をえぐった。最初のあなから出てきた水は2つ目の穴に吸い込まれて流れていった。


一体何をしたのかと尋ねると、一つ目の穴は地下にある水脈とつないだと。そして二つ目の穴は排水用に、1キロほど離れた場所にある川まで伸ばしたのだと。


私は、驚きに声も出ない。ゲーコはまさかあれだけのことで、この巣に上水道と下水道を通してしまったというのか。あとは、適当に大地を掘れば、トイレでも風呂でも簡単に作れてしまう。


私はゲーコを褒め称えた。歌だけではなくこんな特技まで持っているとは、感服するばかりである。
私の爪では大地をえぐることはできても、長い穴を通すようなことはできはしない。

ゲーコは私の賛辞にくすぐったそうに目を細めながら、



-掘るのは得意だから-



と答えた。


ゲーコは、他にも穴を掘りたくなったらいつでも私の力になると言い残して、自らの巣へと帰っていった。


ゲーコのような友がいて、私は本当に幸せ者だ。その後、私は一人で穴を掘った。
上水道と下水道を溝でしっかりとつなぎ、その間に大小3つの穴を掘った。

一番上の小さな穴が水飲み場。2番目の大きな穴が体を洗うための水おけ用。3番目の中くらいの穴が排泄用。

ゲーコがもっとも大変な作業をしてくれたおかげで、2時間もたたぬうちにそれは完成した。
巨人たちの作った立派な門に比べれば、お世辞にも恰好のよいものではなかったが、これもまあ、味があってよいだろう。


巣を作り始めて僅か4日。


楽しく、学ぶことも多く、友も増え、非常に凝縮された4日間であったが、


こうして私の新しい巣は遂に完成してしまった。












「ふふふっ、おかえりなさい、今日はとても楽しまれていたようですね?」


ユグドラシルは開口一番私にこう言った。うむ、確かにとても楽しかったが、一体どうして、


「お二人の歌、とてもお上手でしたよ。」


ああ、なるほど。確かに我らの歌は島中に響いていたであろうから、ユグドラシルが聴いていない道理はないだろう。ではまずは、ゲーコとの仲直りについて話そうか。


今日のユグドラシルとのおしゃべりは一際楽しかった。


私は今日の出来事だけではなく、この4日間を振り返りユグドラシルに私が思ったこと、感じたことを全て話した。


この4日間、ラミアに、ハーピーに、リザードマンの巫女に、二人の巨人に、ゲーコに、助けられて、立派な巣を作り上げることができた。


私はこの世界で最強の竜である。


しかし、ラミアのように良い土地を知っているわけでもなければ、

ハーピーのようにどこで山菜がとれるかを知っているわけでもない。

リザードマンの巫女のように広い人脈をもっているわけでもないし、

ファゾルトや、ファフナーのように器用に何かをつくることもできない。

ゲーコのように長い穴を掘れるわけでもないし、

ましてや、ユグドラシルのようにその慈愛あふれる枝葉で、皆を包み込む存在になれるわけでもない。


私は最強の竜である。しかし、私の友たちは、私よりもずっと強いのではないだろうか。


ユグドラシルは私の言葉を一つ一つ、大事そうに聴きながら、最後にこう答えてくれた。


「皆、いろいろな役割を持って生まれてくるのだと思います。全てを一人でできる生き物など誰もいません。だから皆、手を取り合って生きていくのではないでしょうか」


わたしは、ユグドラシルの言葉を大切に胸にしまう。


私も、ユグドラシルも、もはやそのことにふれない。


もはや巣はできてしまった。これ以上必要なものなどないし、引き伸ばすこともできぬ。





巣立ちの時だ。





私はユグドラシルにこれまでの日々を感謝して、


―貴方のために、何か私にできることはないだろうか?-


と、問うた。


私が皆から何かをもらったように、私も彼女に何かを返したかったのだ


ユグドラシルはしばらくの間考えた後。


「では………」


彼女の願いに、私はいささか拍子抜けしながらも、「是非に」と答えた。


今日は早くに眠らねばならぬな。


最後の眠りは、いささかこの場所が広すぎるように錯覚した。



・・・・・・・・



・・・・・・・・



・・・・・・・・



「私、この世界が大好きです」



ユグドラシルは、この朝の空気のように、瑞々しく、透き通った声で私に言う。

彼女の願いとは、一緒に朝日を見て欲しいというささやかなものだった。


私がうけた恩に比べればなんのことはない。こんなもので恩をかえしているなどとは決して思えぬ。

しかし、伝わってくる感情から、彼女が本当に喜んでいるのだとわかった。




彼女の「大好き」だという言葉に、私の心臓はとくんと鳴いた。


私も彼女に「この世界が好きだ」とこたえようとしたのだが、私の声は巻雲のように千切れて消えて、なぜか言葉にならなかった。


私はただ、無言で世界を、彼女を見つめ続けた。変わり続ける空の色は、朝焼けの終わりが近いことを告げている。


同じ朝は二度と訪れない、時は決してとまらない。

無言で寄り添うこの時間、それも直に終わるのだろう。



そして私は、巣を飛び立つのだ。



半時ほどか、あるいは刹那のことだったのか、気がつけば空は青く染まっていた。
何か言わねばと思ったその瞬間、ユグドラシルは私に語りかけた。


「気に入っていただけましたか?」


私の言葉はやはり声になることはなく、頷くことで答えを返した。ユグドラシルは嬉しそうに、


「自分が好きなものを、他の方も好きだといってくれることは、こんなにも嬉しいものなのですね」


と言った。私は彼女に何か答えたいのだが、声を胸からぎゅうとつかまれたように、言葉を放つことができなかった。


「同居人さん」


彼女は私に話しかける。


「貴方と出会って、一緒に過ごしたこの6日間、私は本当に楽しかったのですよ」


私は、無言で彼女の言葉を聞いた。


「朝起きたら挨拶をして、わたしの樹液を本当においしそうに召し上がってくれて、夜には色々とおしゃべりをして、おやすみなさいのあとには一緒に眠って。そうして今日は、一緒に私と朝日を見てくれて‥」


彼女はそこで少し休んでからこういった




「もし‥、もしも、もう会うことがなくなったとしても、私のことを忘れないでいただけますか?」




「ユグドラシル!!」



気がつけば私は叫んでいた。

ユグドラシルは突然大声を出した私に驚いたようではあったが、「はい」と答えて、わたしの言葉の続きを待った。


わたしは今、何を彼女に何をいうべきなのか、今、何を言おうとしているのか、


今までユグドラシルの前では何度か醜態をさらしてきたが、これほど頭が混乱したのは初めてであった。

私が何を彼女に伝えたいのか、私自身その正体がまったくわからなかったのだが、今、この場で彼女に何かを伝えないと、彼女がそのまま消えてしまいそうな、そんな不思議な不安を抱いてしまったのだ。


「わ‥たしは‥」


言え! 言葉よ、私の口を塞ぐな!

私は今何を思っている? なにを彼女に伝えたい?


「私は、あなたのことが…」


わたしの心の声はようやく言葉になった。僅かに湿った雑巾から水滴を搾り出すような、か細い言葉ではあったが。
しかしその後、何をいうべきなのか、何を私の口が言おうとしているのか、わたしにもわからなかった。


「あなたのことが‥、とても」


とても、とても、なんなのだ? 何を彼女につたえようとしているのだ。わからない、頭がぐるぐるとなって、わからない。


「と‥ても…、とても…」


「とても?」


とてもだけを繰り返す私に、彼女は優しく続きを促す。
ええい! 言うことを聴かぬ我が口よ、言うことを聞かぬならもぎ取ってしまうぞ!


「とても、とても」


我が口よ、言葉を放て、放つのだ! 頼む! 私の胸のうちに秘められたその言葉を!!






「とても…、ト、トテモ‥ト、ト、トーテムポールをつくるのだ!!」





私の口からは、思いもよらぬ言葉が生まれていた。



「とーてむぽーる・・・ですか???」



一体何を言おうと考えていたのか、気がつけば私は、日の沈む方角の大陸に住む原住民たちの民芸品の名前を口にしていた。


ユグドラシルはしばし考えた後、


「ああ、なるほど! 新しい家の守り神を作られるのですね? ふふふっ同居人さんは信心深いのですね」


と、解釈した。


「ごめんなさい。私、てっきり同居人さんの巣が完成したものだと勘違いしてましたわ。そうですよね、前にヒュドラさんの住んでいた場所ですから、魔除けのおまじないは必要ですよね」


そういってユグドラシルは、なにやら自然に納得してくれた。そして最後に



「では、トーテムポールができるまで、もうしばらくよろしくおねがいしますね。同居人さん」



この日から、私はトーテムポール(大作)を作ることとなるのである。


随分と高くなってきた太陽を見上げ、今日もいつもと変わらぬ一日が始まるな。と私は思った。
















話は数日前まで遡る。竜とユグドラシルが見つめていた朝日の方向、竜達が住む島から、遥か1000キロ離れた大陸に聖王都と呼ばれる都市がある。

何十万という人口を抱える首都の中央には、街を見下ろす巨大な聖堂が聳え立っている。
日中は敬虔な巡礼者であふれるこの大聖堂も、夜は嘘のように静まりかえる。

この闇の中、陽炎のような蝋燭の明かりによって、3つの人影が浮かび上がっていた。


一人は赤い法衣をまとった男。ダルマチカと呼ばれるその衣は、金糸で美しい刺繍が施されており、この男が相当に高位な聖職者であることを示していた。

もう一人の男は、法衣をまとった男の前に跪いていた。黒か、あるいは暗い紺色のローブに、その身はすっぽりと覆われていた。真っ暗な闇の中、日焼け知らずの青白い顔が仮面の様に浮かんでいた。


その男の傍らには、一人の少女が控えていた。年の頃は11・2歳といったところだろうか、少女の細い筈の右腕は、巨大な鉄のカタマリのような複雑な意匠を持った物体で覆われていた。

銀色に光るその物体は少女の背丈よりも高く、右手から肩口までを覆い尽くしていた。
人によれば、少女がそれをもっているというよりも、少女がその物体から“生えている”ようにもみえるかもしれない。
黒いローブの男は膝をついたまま、暗く、幾分しわがれた声を発した。


「陛下、遠読みの巫女に神託が下りました。新たな竜が生まれたと」


「やはり、刻読みの巫女の予言通りということか…」


陛下と呼ばれた男は、言葉の最後に重たい息を乗せた。黒ローブの男はため息の邪魔をせぬように、暫くおいて言葉を続けた。


「準備は整っております、明日明朝に、ここ聖都より出港する手筈となっております」


法衣の男はねぎらいの言葉を与えた。黒ローブの男は一度深く頭を下げ、傍らの少女に目線を移した。


「いかな真竜だとて、生まれたばかりの赤子。コレは竜殺しを必ずや成し遂げてくれるでしょう」


“コレ”とよばれた少女は、しかしなんの反応も返さぬまま彫像のように立っていた。灰色の瞳は何も映さず、右手の鉄塊のみが鈍く光ったように見えた。


「世界樹を救うためとはいえ、このような少女を犠牲にせねばならぬとは・・」


法衣の男はせめてもの償いだと祝福を授けた。


「聖樹ユグドラシルよ、あなたの忠純なる戦士に大いなる慈愛と加護を与え給え」










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物語は起承を終えて、転の部分へと…

次回は幼女とガチバトルです。


















(こっそりおまけ・非公式)

サブヒロインへの分岐点(ユグドラシルの好感度が低い場合のみ発生)

分岐その1
あの時孕みラミアの手が竜に触れていたら→ラミア筆降ろしエンド
親子三人で幸せに暮らします。クール系姉さん女房も夜は情熱的でした。
娘ラミアにも懐かれすぎてちょっと大変。

分岐その2
竜がハーピーの家を断りもなく空けていたら→ハーピー純愛エンド
行水中のハーピーのラッキースケベが発生。驚愕と羞恥のあまり、でない筈の声が出る。「きゃぁぁああ!!」これが彼女が生まれて始めて喋った言葉だ。
その後、竜の責任を取る発言で場はなんとか収まりました。
…サイズ?やりようはいくらでもありますよ。

分岐その3
寝ぼけた竜がリザードマン(巫女)の尻尾を間違って食べていたら→鬼畜×メス豚エンド
意外においしいザードマン(巫女)の尻尾。竜の血が刺激され、肉食系にジョブチェンジ。何度でも生えてくるし、こういうプレイもアリじゃね?

分岐その4
蛙の穴掘り作業中に、なんとなく四つんばいになりながらお尻を高く上げてみたくなった→男としてエンド
アッーメン

分岐その5 隠しキャラ
サルノコシカケがまだ枯れていなかったら?→同衾から始まる愛もある・サルノコシカケエンド
竜がサルのコシカケを抜こうとしたら、「な・・!なにすんのよぉ!!」と、サルノコシカケさんの声が聞こえます。その後紆余曲折をへて、彼女は竜の巣に引越しすることに合意します。
「サ、サルでもない癖に私に乗っかろうだなんて、この変態!!」とかなんとか文句をいいながらも、いざ眠るときは、ちゃんと素直なマットレスになってくれるツンデレ菌類。
「ああっ、とんじゃうー! 胞子とんじゃうー!」



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