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No.33445の一覧
[0] 【完結】蝉だって転生すれば竜になる(ミンミンゼミ→竜・異世界転生最強モノ)[あぶさん](2014/07/11 00:39)
[1] 第二話 竜は真の慈愛を知る[あぶさん](2014/07/11 00:08)
[2] 第三話 孤独な竜はつがいを求める[あぶさん](2014/07/11 00:09)
[3] 第四話 竜はやがて巣立ちを迎える[あぶさん](2014/07/11 00:17)
[4] 第五話 竜の闘争[あぶさん](2014/07/11 00:22)
[5] 第六話 竜と少女の夏休み[あぶさん](2014/07/11 00:29)
[6] 第七話 蝉の声は世界に響く[あぶさん](2014/07/11 00:35)
[7] 幕間[あぶさん](2014/07/11 00:37)
[8] エピローグ 蝉だって転生すれば竜になる[あぶさん](2014/07/11 00:39)
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[33445] 【完結】蝉だって転生すれば竜になる(ミンミンゼミ→竜・異世界転生最強モノ)
Name: あぶさん◆5d9fd2e7 ID:9f632b24 次を表示する
Date: 2014/07/11 00:39
この作品は小説家になろう様にも投稿しております。








第一話 蝉は竜の翼で飛び立つ


生き生き生き生きて生の始めに暗く
死に死に死に死にて死の終わりに冥し    (空海)






生の輝きは流星のきらめきよりも短く、命の炎は手の平の淡雪ごとく儚い。

死の安寧は感触も匂いも温度もない、重力も地平線もない只の黒であった。

人は死を闇、生を光と捉えるというが、ならば私の生とは生きながらにして死んだも同然だったのではなかろうか。

なぜなら私は、それほど短くはない一生のほぼ全てを、暗闇の中で過ごしていたのだから。
卵から生まれ、実に6度目の夏を迎えるあの日まで、私はただ、ひたすら土の中で蟻やモグラにおびえながら暮らしていた。

暗闇のなかで生きたあの6年は、私には永遠の闇にしか思えなかった。


終ることがないと思っていた永遠の闇。

だからこそ、あの暗い一生の中で出会った一瞬の光に、私は喜びに打ち奮えたのだった。

朝靄の中、ようやく殻から抜け出したあの日、私は生というものの意味を初めて知った。


光だ


初めてふれた太陽の光は徐々にその本性を表しはじめた。

柔らかな桃色であった光の光源は徐々に角度と色を変え、それが真上に登るころには、目も眩まんばかりに白となって、羽化したての私の頼りない外殻をジリジリと焼いたのだ。

真夏の強い風は私のやわらかい羽を叩きつけながら吹き抜けて、草いきれの強烈な匂いが私の嗅覚を奪っていった。


ああ、生とはなんと苛烈なものか


凶暴な太陽に、瞼もない私の小さな目が眩々(くらくら)と揺れた。


確かに光は生だった。

気がつけば、私は太陽に向かって羽ばたいていた。


誰に習ったわけではない、ただ、本能が飛び方を知っていたのだ。

空を飛ぶということがいかに素晴らしいことか、それはきっと飛んだものにしかわからない。

遥か高い空を飛ぶ渡り鳥たちにくらべれば、私の小さな羽根では、せいぜい地べたを這いずる程度の羽ばたきにしかみえなかっただろう。

しかし、小さな私にはそれで十分だった。


8月の気層の光の底を夢中に駆け巡っていたあの時、私は確かに生きていたのだ。


わたしは、ただ、ただ、飛び続けた。


にわか雨を木陰でやり過ごし、腹をすかせたカラスの嘴から逃げおおい、わたしを捕まえんとする子供たちの虫網をかいくぐり、



飛んで、飛んで、飛んで、飛んで…



気がつけば、私は地に横たわっていた。


働き者の黒い死神達が、群れをなしてこちらに向かってくるのを認めた時、脳未満の神経繊維の束ですら、これが私の死なのだと理解することができた。

暗くなっていく視界の中で、私はこの生を振り返った。


僅かな間ではあったが、私は空とともにあった。風とともに泳いだ。木漏れ日ともに戯れた。この広い世界のほんの一欠けらでも、旅をすることができた。

土の中で、あるいは脱皮の最中に命を落とした仲間達から見れば、私はなんと幸運な一生を終えたのであろうか。


こうして

わたしは

おおむね満足して

蝉としての生を終えるのである。


…おおむね?


そうだ。私の生にはただ一つだけやり残したことがあったのだ。


私の目から最後の光が消えるその瞬間、私は気管から漏れ出す最後の息とともに、たった一つのことを思った。


(一度でいいから、メスゼミと交尾(あいのいとなみ)をしたかった・・・・。)


交尾を知らぬまま、愛を知らぬまま生を終えるのだと知った時、種としての本能、交尾への欲求がむくりと起き上がった。

死を前にして、私の針のように小さな生殖器が疼いた気がした。


生の終わり、光が消える前にチロリと燃えたその欲求。種の保存への根本的な欲求は、


死という完全なる冥闇の中でも、微かに燻り続けた。


今思えばその欲求と未練こそが、私を次なる生へと繋いだのかもしれない。


周りに広がるのは完全なる黒。ツヤもなければムラもない黒。

一瞬であったのか、あるいは永遠であったのか。その暗闇に再び一筋の光が差したとき、私の2度目の生は始まったのだ。



光、そう。光だ。



光を生み出すものは紛れもない太陽。


もう2度と拝むことのないと思っていた太陽と、再び顔を合わせたその時、私の中に膨大な知識が津波のように流れ込んできた。

継承の儀式とよばれるそれによって、わたしは1週間意識を失っていた。1週間たち、ようやく全ての知識が脳に定着したときに、私はすべてを悟った。



自分の前の生が蝉とよばれる小さな生き物であったこと


この世界は私が前にいた世界とはまったく別の世界であること


この世界には人間を始めとしたさまざまな種族が存在すること


わたしが今いるこの島は、ヒトの住む大陸から1000キロほど離れた巨大な無人島であること


この世界には生物達の頂点に君臨する竜とよばれる生き物が存在すること


この島には1000年生きた竜が住んでいて、その竜が死ぬときにすべての力と知識を残し、一つの卵を生んだこと



そしてその卵から孵ったのが…私であること。



一通りの情報を整理した私は、空に向かって飛びあがった。


蝉であったころから考えると、比べ物にならないほど大きなこの体は、同じく比べ物にならないほど逞しい翼を以って大空へと羽ばたいたのだ。


ぐんぐんと遠ざかる大地と、ゆるやかに近づく空。
蝉の小羽では決して届くことのなかった雲の塊を通り抜けたとき。私は腹の底から笑ったのだ。

前世から通じて、生まれて始めて笑ったのだ。蝉の仮初めの脳みそでは笑うことすら許されなかったのだから。


針金のように細かった手足は、巨大な岩山すら持ち上げられるほどに太く逞しくなった。

いつも風に吹き飛ばされていた私の薄羽は、羽ばたけば嵐すら巻き起こすことができる。

樹液をすすることしか能のなかったあごは、アイアンタートルの甲羅すら容易く噛み砕く。


蝉という卑小な生き物が生物の長たる竜となる、運命とはかくも奇妙なものか。

蝉が、ましてや異世界の生き物が、なぜこの竜の体に宿ったのかは受け継いだ知識を総動員してもわからないし、その理由を知る必要もない。


竜になった以上、そんなことはもはやどうでもいいことなのだから。

たしかに私は、蝉としての記憶を持っている。しかしそんなちっぽけな記憶など、すぐにこの脳裏から消えていくであろうから。

私は竜なのだ。セミの一生などとは比べるのもバカらしいほどに、長い長い生が、強い光が我を待っているのだ。


虫網にも、カラスにもおびえる必要はない。

知識が語りかけてくる。

私は最強だと、我が咆哮だけで地上の全ての生き物を震え上がらせてしまえるのだと。


私は今、この空の…いや、世界の王となったのだ!


さあ、声高く歌おうではないか、竜としての新たな生の始まりを!








ミーンミンミンミン ミーンミンミンミン








世界に響け、わが喜びと求愛の歌よ










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人間が竜に、竜が人間に転生するお話があるのだから、蝉が竜に転生する話があってもいいじゃない。
次回は高貴だけどエロ担当な癒し系ヒロインの登場です。




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