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No.33206の一覧
[0] 星の精霊 [綾](2012/05/22 14:34)
[1] 星の精霊 第二夜[綾](2012/05/22 14:35)
[2] 星の精霊 第三夜[綾](2012/05/22 14:37)
[3] 星の精霊 第四夜[綾](2012/05/22 14:38)
[4] 星の精霊 第五夜[綾](2012/05/22 14:39)
[5] 星の精霊 第六夜[綾](2012/05/22 14:40)
[6] 星の精霊 第七夜[綾](2012/05/22 14:40)
[7] 星の精霊 第八夜[綾](2012/05/22 14:42)
[8] 星の精霊 第九夜[綾](2012/05/22 14:43)
[9] 星の精霊 第十夜[綾](2012/05/22 14:44)
[10] 星の精霊 第十一夜[綾](2012/05/22 14:45)
[11] 星の精霊 第十二夜[綾](2012/05/22 14:46)
[12] 星の精霊 第十三夜[綾](2012/05/22 14:47)
[13] 星の精霊 第十四夜[綾](2012/05/22 14:47)
[14] 星の精霊 第十五夜[綾](2012/05/22 14:48)
[15] 星の精霊 第十六夜[綾](2012/05/22 14:49)
[16] 星の精霊 第十七夜[綾](2012/05/22 14:50)
[18] 星の精霊 第十八夜[綾](2012/05/22 14:51)
[19] 星の精霊 第十九夜[綾](2012/05/22 14:52)
[20] 星の精霊 第二十夜[綾](2012/05/22 14:53)
[21] 星の精霊 第二十一夜[綾](2012/05/22 14:54)
[22] 星の精霊 第二十二夜[綾](2012/05/22 14:55)
[23] 星の精霊 第二十三夜[綾](2012/05/22 14:56)
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[33206] 星の精霊 第九夜
Name: 綾◆11cd5a39 ID:8b39f981 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/22 14:43
令子が無事GS試験に合格し、半月たったその日。何故か眠る事ができないでいた唐巣は、気分転換にと教会を見回った。
見習い期間である令子は、漸く除霊現場を任せられ実戦を積むごとに成長している事がありありと伝わってきていた。内弟子に取った横島も、生活を共にし、常日頃から鍛えているからだろうか、霊力の伸びが異常に速く、既に自身を超えていると唸り、それ以外の技術に驚くもまさにGSこそ天職なのだろうと笑った。
恐らくは家は古くから続く退魔師の家系か何かで、資質は先祖がえりでもしたのだろう推測していた。それならば技術にしても伝えられている事に説明が付くと。
ただ、そんな才能に満ち溢れた横島を、伝統とはいえ管理下におかずどうなるかも分からない修行の旅に出す事に首を傾げた。尤も今はそれが功を奏しているのだから、言う事はない。
そしてその資質から固定観念が着く前に実際の除霊にだしてみようかと、令子が聞けばまた暴れる事は必至だろう前々からもっていたことを黙考した。
人間相手の格闘戦は今まで見てきたどのGSよりも頼もしい。だがそれが除霊成功に繋がるかというと確実とはいえない。
この世界には元何々と格闘技を専門とし、何らかのきっかけで霊力に目覚めた者が意外と多くいる。うまくやっていくものもいるのだが、その一方で人とは違った形態と動きに翻弄されこの世を去った者も数多く存在した。それは悪霊が人という形を捨て、柔軟になったことから起こるものであり、それに対処するには除霊する側も柔軟な思考を得なければならないのだ。
だが唐巣は知らない。横島の存在を既存の枠組みで計っている事の愚かさを。そして忘れている。新しく行動を起こしたとき、既存概念をことごとく破壊していった横島の悪意ない当然だといわんばかりの行動の数々を。

第九夜 闇の力を秘めし鍵よ真の姿を我が前に示せ、契約の下、忠夫が命じる

ああ暇だ、何かないかな、暇つぶし。そんな言葉が頭に浮かんでしまうほど横島の状態は悪かった。
風邪をひいたのではない。純粋に暇なのだ。夏休みという時間は、当初クーラー一つない教会に、冷房機具を取りいれるという新たな創作意欲に火をつけた。
唐巣は霊能力者であったが、霊脈の重要性を知らなかったのかそれとも仕方が無かったのか、教会の地下に霊脈は走っていない。
ゆえに永遠とも言える霊脈のエネルギーを得られず、動力エネルギーは勿論、それを完成させる為のエネルギーすら十分に得られない状況だった。だがそれが逆に意欲を掻き立て、霊能力者による僅かな霊力の供給という条件が付いたものの、精霊石と宝石を使った動力で問題は解決した。尤も精霊石と力を循環させる宝石のカッティングの仕方が非常に難しく、術式も霊力で組み込まなければ成らないので、大量生産は出来ない。その事に令子が落胆したのは今更な事だろう。
それらはコツコツ自室で作業したのだが、それ以上の大掛かりなものを作ろうとすればかなり場所をとる。そんな余裕は教会にない。そしてエネルギー源として霊脈が必要だった。
そんな何も出来ない中、それを聞いたときニタリと笑ったのも無理はなかった。

東京の住宅事情は厳しい。それを解決しようと破竹の勢いで古き物は壊され、新しい住居が建設される。そんな時代の波に呑まれた住宅地に横島は来ていた。
「ミッションワン。悪霊を退治せよ!! 燃えます、萌えますね。だからことの後は私を自由にしていいですよ」
あっはー、と笑う琥珀に横島は首を振った。
「燃えない。燃えないね…こいつら雑魚だ」
アーハッハッハと笑う声が聞こえる住宅地に、横島は落胆し、唐巣はそうだろうと頷いた。
「だがね忠夫君、除霊経験がないのだからこれは当たり前だよ」
そっと諭す唐巣の言葉に、それはそうだろうと横島も一応の納得を見せる。だが雑魚は雑魚だ。言っていないので知らないのだが、横島は小学校の頃から悪霊と対峙してきている。そういった者達から比べても雑魚なのだ。
だがまあ、と実戦に使ったことのないそれを使ういい機会だと思い直す。
「いっちょ行きますか」
大量の悪霊たちを見据えて手にした魔道書を開いた。

これはどういうことなのだろうか。唐巣は目の前の光景が信じられなかった。
実力を見るというよりはテストのようなものだった今回の除霊。様々な技を見せるためにあるいは見る為に悪霊が大量にたむろしている依頼に同伴させた。依頼の危険度自体はそれほど高くない。だが初めての者には脅威が低いといっても尽きることがないともいえるほど湧いてくる悪霊に精神的に疲労することは確実なはずであった。
「ウッド!」
光とともにカードが消え、生きる蔦のように何かが伸び、硬い幹となり悪霊と貫き、締め、滅していった。
その光景は様々な除霊方法を見てきた唐巣にしても未知のものであり、何をしているのかが分からなかった。
だがその間にも戦いは続いている。その場にいた大量の悪霊を消滅させた幹は、光の粒子となると一枚のカードとなって横島の下へ運ばれた。瞬間開かれる一冊の本。風も無いというのに凄まじい勢いでページが捲られその一ページにカードが収まった。
「先生! 敵は融合して一つになろうとしています!」
「解った! 一気に切り抜けるぞ!!」
どうやってその情報を得たのか。疑問が浮かび上がったが、それを後回しにする。霊達は無害な者が悪霊が集まるこの場の空気に触れ錯乱した者や、堕ちて間もないもので占められ、身を守る術のない常人であっても十分逃げ切れる。霊能力者にしてみれば僅かに霊力を纏っただけであっても傷一つ着かない事は明白だった。だがそれも一つ一つの霊であり、それが集合しより巨大な者となったのならば話は別だ。
「風よ、降りかかる葉を分け道を開けよ! ウィンディ!!」
横島は木刀の峰にカードを当て呪文を唱える。走りながらの行為だというにもかかわらず、カードが落ちる様子も、息を乱す兆候もない。そして唱え終わった瞬間カードが消え目に見える色の付いた霊力が風となり、道をふさいでいた悪霊達を割った。
「先生!」
瞬間飛び出る唐巣は、今はいったん横島の術を捨て置き、感知したという融合しようとしている悪霊の下へ向かった。
仇なす者、と言うよりは動く者に反応している悪霊達は、されど走っている唐巣と横島に近寄れなかった。虚空を振り払う動作を繰り返す悪霊に唐巣は先程の風を思い出す。
「先生あれです!」
並んでいた横島が指さす方向に目を向けると、確かに巨大な塊がそこにあった。
「最悪だ…」
思わず絶句するのも無理はない。挽肉をこね肉団子にしようとして失敗したかの様なそれは、骨の様に細い両手をはやしその手に悪霊をわし掴みにし、人と同じで一つのされど大きすぎる口で周りにいたのだろうと思われる悪霊を咀嚼していた。
霊の共食い。それだけならばどれほど助かっただろうか。ザリガニの様に同族を食べ自らの血肉とかすだけならばさして脅威ではない。だが今回の場合コドクという呪法が自然発生しており、食べれば食べるだけ害ある存在としてその霊格を階段飛びに跳び越し格段と上げる。
呪い屋が扱うそれには到底及ばないものの、食べた量によっては見習いGS程の力では太刀打ちできず、殺される可能性もあった。
「主よ…」
聖書を片手に聖句を唱える。それと共に霊力が練り上がり風となりその場を支配した。
「ンギャェェァァッァァァッァァァア」
だが、その攻撃は完成することはなかった。霊力を纏った叫び声が、聖句の波長を乱したからだ。
ぐっと歯を噛みしめる唐巣。霊体ボウガンや破魔符マシンガン等の遠中距離用の武器があれば目の前の悪霊はすぐさま葬れる。危険とはいえその程度の悪霊に過ぎない。令子が使う神通棍の出力ほども必要ないだろう。唐巣は温厚な顔をしていてもその道のプロだ。だがそれ故に此処にそれらの道具はない。
令子は多種多様の道具を使いその場その場で臨機応変に対応する道具使いである。それは令子自身のスタイルであるが、おおよそのGSは多くはないがそれなりの数の凡庸的な道具を使う。それは唐巣にも言える事で、徐霊現場には少なからずそう言った物を持ってきている。今回もその例にもれず破魔符は持ってきていた。だが普段なら携帯している神通棍は持っていなかった。
唐巣も霊が一つにまとまるといった可能性を考えなかったわけではない。それでも十分安全だと石橋を叩いて渡る程の慎重さで、武装を選んだ。だが流石にコドクを実行するとは思いもよらなかったのだ。
「忠夫君…」
撤収だ。そう言おうと悔しさに間をあけた瞬間、横島が飛び出た。右手に持った木刀で捕らえようと霊絡を伸ばす触手を切って落とし、左手の本が勢いよく捲られていく。
呼び戻そうとして開けた口は、されど何も言うことなく閉じられた。GS試験には格闘戦もある。それに合格している唐巣は当然格闘戦もそれなりにできるという事になる。それは事実で、唐巣一人ならば目の前の悪霊如きどうとでもなった。だがこれはあくまでも横島の体験用に受けた依頼であり、何処までやれるかあるいはやれないかを見るための場なのだ。
周辺には住民もおらず全て壊す予定の家ばかり。建設工事が始まるのもまだまだ先であり、当然できなかった場合として何度も挑戦させることを考えていたからには、いずれ倒す必要があるとは言っても唐巣が倒してはいけなかった。だからこその撤収だったのだが、唐巣が見るに横島はまだ何らかの策があるようだった。
それは霊絡の触手をかいくぐり本体を叩き斬らず、数回見た何かを発生させる際捲られる本のページが、態と距離を置いたまま捲られていっている事から伺えた。
これが剣の腕だけを頼りにした突撃ならば無理にでも引き返しただろう。確かに横島の太刀筋は見事ではあったが、今回の相手との相性は余り良くない。切り払っている触手は本体が霊を捕まえては喰らう作業に割かれており、真実脅威と悪霊が判断すればそれらが一斉に襲い掛かってくる。横島にそれをかいくぐれる実力はあるだろうが、現場と言うものは何がおきるかわからないものなのだ。だからこそ極力危険な行為は避けることがGSとしていきぬく条件だ。仮に特攻したのなら、それは状況判断ができていない印か、慢心の結果かに別れるが、GSとして取ってはならない行動である事に変わりはない。
だが現状は違い、何を成そうというのかまでは解らなかったが、おそらくは遠距離型の攻撃を実行しようとしている事は横島が保っている間合いで判断できた。
それが一撃必殺なのか、近づけるほどにダメージを与える程度の物なのかは定かではなかったが、それが解らない唐巣ではなかった。
「火よ、燃えつくす炎よ。今ひとつの柱を此処に、ファイアリー!」
終わりに近いページで止まったそこから浮かんだのはやはり一枚のカード。先の二つと同じようにタロットカードの様な長方形型のそのカードは、木刀の峰にその裏側を当てられ言葉を紡ぎ終わった瞬間、紅蓮の炎が宵闇を切り裂いた。
「グギャギャィィィヵァッァァァッァ」
炎は途中にあった霊絡を巻き添えに霊を貪っていた悪霊に直撃、その場で天を突くかの様な火柱を上げた。唐巣は、炎に照らされた横島が無邪気に笑っている事に気が付いた。


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