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No.33206の一覧
[0] 星の精霊 [綾](2012/05/22 14:34)
[1] 星の精霊 第二夜[綾](2012/05/22 14:35)
[2] 星の精霊 第三夜[綾](2012/05/22 14:37)
[3] 星の精霊 第四夜[綾](2012/05/22 14:38)
[4] 星の精霊 第五夜[綾](2012/05/22 14:39)
[5] 星の精霊 第六夜[綾](2012/05/22 14:40)
[6] 星の精霊 第七夜[綾](2012/05/22 14:40)
[7] 星の精霊 第八夜[綾](2012/05/22 14:42)
[8] 星の精霊 第九夜[綾](2012/05/22 14:43)
[9] 星の精霊 第十夜[綾](2012/05/22 14:44)
[10] 星の精霊 第十一夜[綾](2012/05/22 14:45)
[11] 星の精霊 第十二夜[綾](2012/05/22 14:46)
[12] 星の精霊 第十三夜[綾](2012/05/22 14:47)
[13] 星の精霊 第十四夜[綾](2012/05/22 14:47)
[14] 星の精霊 第十五夜[綾](2012/05/22 14:48)
[15] 星の精霊 第十六夜[綾](2012/05/22 14:49)
[16] 星の精霊 第十七夜[綾](2012/05/22 14:50)
[18] 星の精霊 第十八夜[綾](2012/05/22 14:51)
[19] 星の精霊 第十九夜[綾](2012/05/22 14:52)
[20] 星の精霊 第二十夜[綾](2012/05/22 14:53)
[21] 星の精霊 第二十一夜[綾](2012/05/22 14:54)
[22] 星の精霊 第二十二夜[綾](2012/05/22 14:55)
[23] 星の精霊 第二十三夜[綾](2012/05/22 14:56)
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[33206] 星の精霊 第四夜
Name: 綾◆11cd5a39 ID:8b39f981 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/22 14:38
小学校五年生の冬。ずっと同じクラスで、親友であり悪友であった銀一が転校してから二年。小学校を卒業すると同時に大阪から遠く離れた東京に移り住んだ。
あっはーあと一年ですねー、と語る割烹着の布団の中にもぐりこんできた使い魔に改めて自覚させられた。そう旅立ちの日まであと一年しかないのだと。

第四夜 ヴァンパイアナイト?

これはもうやるしかない。そういって一斉奮起したのは珍しく東京タワーに態々金を払って上ったとき。
名も無き翼を広げた饅頭のような一柱の神に出会ったのは、果たしていつだっただろうか。様々なことを知り、様々な世界を知った。
東京タワーに来たのもその中で知った成長する武器と防具を作る為の材料を得るためだ。饅頭神が言うには、東京タワーの展望室は、丁度時空と時空を繋ぐ空間に面し常人であっても意志が強いものならば世界を跳び越す事が可能なのだという。
世界を跳び越す魔法陣は、瞬間移動の魔法陣と似ていたので作ることは簡単だった。だが無事に帰ってくるには縁をもったものがいなければ、瞬間移動と違い異なる時間に出てしまうことが多いという。
そこで、琥珀を展望室に残し、感覚で跳べる、とまでは行かないが、脳裏に術式を組み立てるのは一瞬で出来るように様になった瞬間移動の術式を書き換え空間を跳んだ。

「これはあれや」
真後ろから奇声を上げ迫り来る何かを振り返り、溜息をついた。
「食虫植物ならぬ、食人植物。しかも術が使えないってどうなんよ」
迫り来る物体はどこからどう見ても植物。ただし太い根を足のように動かし、大きな花に牙の生えそろった口のあるどこからどう見ても肉食の植物。
先ほどから組んでいる飛翔の術式はされど組み立てることは出来ても発動はしない。
「武器、借りてきたほうが良かったなぁ」
沈黙の森といわれる日の差すことの無い不気味としか言いようのない森の入り口に、プレセアという鎧と武器の製作者が住んでいた。一切魔法の使えぬ森だと助言されたが、魔法はもとより使うつもりが無く、術式でどうにか成るだろうと楽観視していたのが今の窮地を呼び寄せた。
植物ごときが、と不作の呪いをかけたのだが、一向に発動しない。今では寧ろ植物故に弱点が無い強敵になってしまった。
「問題や。問題なんよ」
これが動物ならば血でもすってリビングデットに仕上げればよかったのだが、何度もいうように植物だ。血はない。
どうするか。身体能力を駆使して走り抜け、そこまで考えて、漸く臨時食として教えられていたものが何かを思い出した。
「そや、植物なんや。やったら」
ハッと向き直り、襲い掛かられる前にその生気を吸い取った。茎の一部を伸ばす食人植物は、しかしその願いを果たすことなくレンジでチンしたがごとく風が吹くだけで崩れ落ちるほど脆くなり、死滅した。

「これが伝説の泉…」
食人植物を倒した後、襲い掛かってきた不死の鳥に噛み付き従えた横島は、材料があると言う泉にたどり着いた。
「なんか、変な気もせんことないけど、いっちょやったるか」
怪鳥の背から、泉の中へダイブする。空気が高速で動くときと同じように鳴ることに、飛んでいるのだと精神が安定した。尤も落下しているだけなのだがそれは些細な事だ。何処となく普通の泉とは違った雰囲気を感じていたが、この世界における伝説級の鉱物があるのだからと、危険なことは承知積みといわんばかりの勢いで行こうと思っていた。
目前に大地ではなく透明な太陽に輝く水面を瞳に討つし水しぶきを上げ潜った瞬間、声を漏らした。
「精神操作?」
湖は底がなく、まるで渦につかまったかのごとく人間ならば気を失うほどの遠心力に回されながら、そこに落ちた。
瞬時に両目に霊力を回し、蒼くぼんやりと光らせた。だが視界からは何も情報は得られず、ただ光一つない暗闇に存在していることだけが分かった全てだった。
「忠夫…」
背後からかかった声に、横島は目を見開いて振り返った。
「かぁ、さん」
それに父さんも。放たれる言葉に力はなく、ただただ呆然としていた。
だが次の瞬間体が自然と反応した。
「と、父さん! 何を!!」
頬に一筋、真っ赤な血液が流れ落ちる。大樹が手に持った刀で切りつけたのだ。横島の問いに口で笑みを作ることで答えた大樹は、緩慢な動作で刀を構えなおすと、黒かったその瞳を炎のように赤く染めた。
「忠夫、いけない子。防具なら私たちが作ってあげるのに、態々世界を超えてしまうなんて」
音もなく真後ろで聞こえた声に、骨の髄まで染み付いた歩方を使い横にとんだ。
「ッ!」
風を切る音とともに腕に赤い一筋の線が浮かび上がる。
「エスクキューショナー。本気、なんか…」
百合子が持つ剣は、鉈の拡大版といっても過言ではない僅かな反りと中華包丁の様に切っ先が無い漆黒の型刃の大剣。父、大樹にしても、母、百合子にしても持ち出した以上冗談が通用しない特一品のそれは、本来英国の大英博物館に収集されていてもおかしくはない歴史背景と、常人には扱いきれない上位の魔族や神族であっても斬られれば再生が難しく、魂ごと消滅可能な概念武装。
冗談ではないと戦慄した横島は、そっと頬の傷に触れた。
「ッ!?」
その瞬間、目を見開き、うっすらと笑った。
「どうしたの忠夫。もしかして恐怖で喋る事もできなくなったのかしら」
うふふ、と笑うその姿に横島はただ掌を向け。
「…失せろ」
目もくらむような光とともに霊力弾を放ち、百合子をかき消した。
「おい、お前」
その声には先ほどまでの困惑は何処へやら、冷徹な強者の怒りの念が含まれていた。
「謀ったな」
父の姿をした何かを見据え、横島は冷たく笑った。そう、本物の百合子ならば横島の攻撃など余裕を持ってかわすだろう。あるいはその必要すらないかもしれない。だが、目の前にいた百合子は滅せられた。そして何より、
「父さんの剣は、そんなに安くないわッ」
大樹に傷付けられた傷は、治るはずがないというのに綺麗に掻き消えていた。そのことから目の前の二人が偽者だと分かったのだ。
刀を振りかぶり斬りかかってくる何かに、横島はその場を一歩も動かず、
「ッ!!」
「どうした? 何を驚いている」
その刃を掴み取り、力を入れ飴細工のごとく捻じ曲げた。その事に一歩後ずさる父の姿をした何かに、笑いながら胸を突き破った。

「それが伝説の防具ですか」
赤い髪をショートカットにした蜂蜜色の瞳の琥珀が、いまどき珍しい割烹着を着て中学生の横島と腕を組みながら家までの帰路を歩いていた。
「何か文句ある?」
何処かぶっきらぼうなその声に、鈴の音を転がすように笑うと、いいえと髪を揺らし肩に頭を預けた。
「コート姿が珍しいだけです」
その言葉に、漆黒のコート姿の横島はへそを曲げた。
「知らなかったんだから仕方ないだろ」
某管理官が来ているような身を覆うロングコートは、どうやって作ったのか糸を一切使っていないにもかかわらず布の質感がした。防御力をふんだんにつぎ込んでいると告げられた言葉が事実かどうか知る術はなかったが、カシミアのコートよりも軽い着心地は、比喩ではなくまさに一つの羽のようだった。ボタンは一つもなく、防寒着としての機能はあまり無い様で完全な前開きのそれは見るものに横島という少年を正しく着飾っていた。
伝説の鉱物は、それを取ってきた者の力量を記憶し、防具となる時正しくその者が着るに値する性能をもたらす。だからこそ成長する防具と言われるのだが、人ならぬ吸血鬼である横島の力量で果たしてどれほどのものが出来上がったのか、それを正しく知る者はまだ誰もいなかった。


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