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No.33206の一覧
[0] 星の精霊 [綾](2012/05/22 14:34)
[1] 星の精霊 第二夜[綾](2012/05/22 14:35)
[2] 星の精霊 第三夜[綾](2012/05/22 14:37)
[3] 星の精霊 第四夜[綾](2012/05/22 14:38)
[4] 星の精霊 第五夜[綾](2012/05/22 14:39)
[5] 星の精霊 第六夜[綾](2012/05/22 14:40)
[6] 星の精霊 第七夜[綾](2012/05/22 14:40)
[7] 星の精霊 第八夜[綾](2012/05/22 14:42)
[8] 星の精霊 第九夜[綾](2012/05/22 14:43)
[9] 星の精霊 第十夜[綾](2012/05/22 14:44)
[10] 星の精霊 第十一夜[綾](2012/05/22 14:45)
[11] 星の精霊 第十二夜[綾](2012/05/22 14:46)
[12] 星の精霊 第十三夜[綾](2012/05/22 14:47)
[13] 星の精霊 第十四夜[綾](2012/05/22 14:47)
[14] 星の精霊 第十五夜[綾](2012/05/22 14:48)
[15] 星の精霊 第十六夜[綾](2012/05/22 14:49)
[16] 星の精霊 第十七夜[綾](2012/05/22 14:50)
[18] 星の精霊 第十八夜[綾](2012/05/22 14:51)
[19] 星の精霊 第十九夜[綾](2012/05/22 14:52)
[20] 星の精霊 第二十夜[綾](2012/05/22 14:53)
[21] 星の精霊 第二十一夜[綾](2012/05/22 14:54)
[22] 星の精霊 第二十二夜[綾](2012/05/22 14:55)
[23] 星の精霊 第二十三夜[綾](2012/05/22 14:56)
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[33206] 星の精霊 第二十一夜
Name: 綾◆11cd5a39 ID:8b39f981 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/22 14:54
試験から一週間。夏休みも終盤に差し掛かったその日は、もう秋だと言うのか綺麗な満月が天に昇っていた。

「琥珀とタマモは何か願い事はあるか?」

滅多な事では除霊料金を取らない唐巣が、苦肉の策として製作した自家農園のすぐ側に寝転びながら横島は側に座っている二人に問いかけた。

「私は、このままずっと忠夫さんの使い魔でいられればそれで」

琥珀はそっと自らの膝に乗せた横島の髪をなでると、優しく微笑んだ。
その微笑と、自然香る香水などの人工物では決して出すことの出来ない女性特有の甘い香りに横島は心が洗われる様だと、大きく息を吸った。

「琥珀、そんなんじゃダメよ。ここは二号さんから成り上がって、正妻の座を射止めるって言うべきだわ」

狐状態になり、横島に抱かれていたタマモがほえた。先日横島と琥珀のもう一つの関係に加わったタマモは、漸く知ったからだ。横島の許嫁、エヴァンジェリンの存在を。

「ダメですよー。これは一族の決まりなんですから」

それに私たちを捨てるなんてしないですよ。あらあらと笑う琥珀に、横島も釣られ少し声が漏れた。
それを聞いたタマモは確かに想像できないと、琥珀の言い分を認めた。横島が意外と情に厚いことを知っていたからだ。情が厚くなければ今頃何を要求されていたのか想像もできない。
人間界での加護を要求したタマモは、当然それにつりあう何かを提供しなければならない事を自然の摂理として知っていた。体か、労働か。だがそんな事は一度も要求されていない。
そして、気が付けば好きになってしまっていた。それが妖狐の性質、あるいは生物の根底にある本能。強いものや、人界で十二分に保護してくれるという力を肌で感じたことが原因だろう。だが例え本能的なものであってもその気持ちに偽りは無い。そしてタマモは決して言うことはないが、死ぬまでの永遠とも言える時間、ずっと側にいたかった。

「誰か来る!」

だからだろう、心地いい空間を壊す可能性のある人とは違ったその臭いを感じ警告したのは。その臭いには明らかな人外のそれと、

「神父が!」

唐巣のにおいが混じっていた。



第二十一夜 吸血鬼と吸血鬼



「はじめまして、ピエトロ・ド・ブラドーといいます。ピートと呼んでください」

唐巣の横で微笑むその姿は、整った顔立ちと青い目、西洋人独特の肌の白さが、一見ザンバラに切ったかのようにも見える黄金色の髪と相まって、いかなる芸術家であろうと創造する事ができないまさに神の恩恵としか言いようがないほど美しかった。だが、

「あんた…何」

タマモは一切の感情を見せず、氷のように鋭く冷たい視線を休むことなく送っていた。
それに反し、琥珀は頬に手を当て、あらあらと微笑み何も言わず、横島も興味深そうな視線を送るだけ。
だが、タマモの立った一言は身にこたえたようで、ピートと名乗った少年は、確かにうろたえた。

「僕は…」
「吸血種。俗に言うヴァンパイアだろう?」

言葉に詰まるピートに横島は皮肉気に笑いながら言い放った。それに目を見開くピートと唐巣。

「忠夫さんは、以前ヴァンパイアの方と交流を持ったことがおありなんです」

琥珀が何故だと、問い詰めようと口を開きかけたピートを制して疑問を解消させた。だがそれは正確ではない。横島がヴァンパイアと交流を持った事は確かにあったが、殺し合いという武力的な交流であり、一瞬たりとも心休まる時はなかったのだから。

「それなら、分かっても不思議はありませんね」

先ほどまでの笑顔は何処へやら、息を呑んだピートは緊張気味に言葉を投げかける。

「ヴァンパイアといっても、父がそうであるだけで、母はただの人間です」

所謂ヴァンパイア・ハーフというやつですね。そう言い切るピートになるほどと横島は頷き、力が弱いのはそのせいか、と納得した。

「ど、どういうこと?」

だがタマモは始めてみる吸血種に戸惑い、横島に振り返った。

「つまり、此処で修行するということだ。そうですよね」

先生? 口の端を上げ笑う横島に、唐巣は頷くことしかできなかった。



「どういうことよ!」

今や三人で使うことになった横島の部屋に、タマモの絶叫が響いた。
あの後何事も無かったかのように取られた夕食。琥珀は歓迎会をしないといけませんねー、と始終微笑みが絶えず、唐巣はピートの故郷から持ってきたのだというワインで久しぶりに出来上がり、あの頃はあの頃は、と壊れたレコーダーのように繰り返し呟いていた。
肝心の横島に至っては琥珀だけが作った料理は久しぶりだな、と暗に何時も一品は欠かさず作っていたタマモに催促するしまつ。そこにヴァンパイアへの警戒は無い。
そして何より違うことをタマモは敏感に察していた。同じ吸血鬼であるはずの横島と、ピートの種族と言うにおいが全く一致していない事を。

「タマモは何でだと思う?」

対面に琥珀を座らせ、黒のポーンを動かす横島は、他愛も無いことだと全身で表していた。
だからこそタマモは考える。何時もの横島ならば正解に至るまでの道のりが示されていない場合、必ずそれを提示するか、答えを口にし教える。それが無いと言うことは、考えれば分かると言うことなのだ。
二人が吸血鬼である事は間違いない。タマモはそう判断し、それは先ほどのやり取りでも証明されていたことを思い出す。
吸血鬼は西洋の妖怪である。隠れて住む者は多く、以前横島も同じ事を肯定していた。だから違いなんて無い。タマモはそう考えるも、それでは生物の根底、種族と言うにおいが同一でなかったことが引っかかった。
そもそも同じ種族なのだろうか? あるいは違う種族ではないのか? そっと横島の顔を見るが、完全に遊んでいるようで、盤上を見つめながら口の端を僅かにあげていた。
少しぐらいヒントをくれてもいいではないか。そう思うも、琥珀は分かっている様子であり、仲間はずれにされたかのように胸が痛んだ。

「…本当に同じ吸血鬼なの?」

たまらず声を上げ、答えを待つ。

「そうか、タマモは西洋の知識はなかったんだったな」

今更思い至ったと、横島は一瞬タマモに目線を寄越し、ルークを動かしながらヒントを口にした。

「ブラドーと俺は吸血鬼ではあるが、同族じゃあない」

分かるかな? 笑いを含んだその声に、タマモは何がなんだか分からなくなった。
同じ吸血鬼であって、同族じゃない。そしてタマモは気が付いた。それは同じ吸血鬼と言う意味ではないのだと。
横島の言葉は一見はるか昔に枝分かれした先祖を同じにする吸血鬼であることを差しているように見える。だが横島は一言たりとも“同じ”吸血鬼だとは言っていない。

「つまりこういうこと? 横島は星の眷属っていう吸血種で、ピートは吸血鬼っていう一つの妖怪に過ぎない」
「チェックだ。まあそういうことだな」

いよいよ琥珀を追い詰めたのか、横島は楽しげに声を上げると、盤上から決して目を離さずにタマモの疑問をより細かく説明し始めた。

「そもそもこの世界、厳密には地球と言う星には吸血鬼が二種類存在する。日本語に限らず同じ発音の種族名だが、タマモの言うとおり幾ら強くとも片方は地球にあまたと存在する妖怪の一形態に過ぎない。それがブラドーだ」

カツンと僅かな音を立てて琥珀が苦し紛れに出した最大戦力、クイーンを掻っ攫うとチェックと、またしても愉悦を含んだ声で琥珀に宣言する。

「それに対し俺は妖怪と言うカテゴリーには入らない。チェックメイト」

琥珀分かってるよな? 身を乗り出して囁いた声にタマモはいらつき、琥珀は顔を赤く染めた。

「タマモは星の眷属についてどれくらいの情報を持っているんだ?」

遊戯が終わり、ガラス細工の駒と盤を片付ける横島は、そういえばとタマモにそれを聞いたことが無かったと改めて問うた。

「そう多くは知らないわ。ただその力が地球から供給されていることと、普遍的な力量が一般的に言われる大妖や、伝説の主人公程もあって、強いものだと神話級の力を持っているって事だけ」

チェスをしまい終わった横島は、シャワーを浴びる為に出て行った琥珀を見送り、タマモが腰掛けているベッドに座った。

「そうか。なら星の眷属の説明からしないといけないな」

言いながらタマモの太ももに頭を預ける横島に、パジャマ越しとは言え触れていることにタマモの鼓動が早くなった。

「星の眷属。その全ては元から地球に存在した生物じゃない」

腰に手を回し、タマモを抱きしめ顔をうずめる横島の行動に、完熟トマトのようにタマモの頬が上気した。

「そ、それってどういうこと?」

それでも問いかけるのは、目の前の男を知りたかったから。あの日約束を交わしてから変わることなく側に居続け、情を通わせた横島だからこそ、タマモはその全てを知りたかった。
きっと永遠に理解することは出来ない。そのことはタマモに悔しさと、多大な喜びをもたらす。
タマモは思うのだ。理解しきることは出来なくとも、理解する努力は続けられる。それが長い時を生きる自分たちの関係を永遠、途切れないようにする秘訣だと。
そしてそれを怠ったときこそ、破局が訪れるのだと。それは過去殺生石に封じられる前に過ごした人間社会で知ったこと。自分に溺れた権力者の妻たちは、自分が現れる前から関係が崩れていたのだから。

「星の眷属はエイリアン。つまり地球外生命体だ。はじめてあったときタマモは言いかけただろう? 俺の種族名を」
「タイプ・マーズ。火星を意味する言葉だけど、火星に守護されているって言うことじゃ…」

そこまで言って気が付いた。地球外生命体。それは火星人のことではないのだろうかと。

「王と、今は無き后は二人だけでこの星、地球に降り立った。と言っても二人は元から人間のように発生した生物じゃない。火星の妖怪、それも大妖の系統だった」

タマモも知っているよな。と横島はタマモの香りを満喫する。それに気が付き頬を赤く染めるタマモは、されど弱弱しい抵抗とはとても呼べない、ただ横島の頭に手を着いただけだった。

「妖怪の発生プロセスは願いだ。欲望と言い換えてもいい。これは神族と魔族に共通していることでもある。神話の時代、語り継がれる神とはまた違った形で、神という妖怪が多数発生した。それは生きる者達が生み出した自己防衛本能、人間で言うアラヤ意識が生み出したものだ。その時は人がおらず、意志の弱い生物が生み出した妖怪のみだった。そしてそれよりも尚優れた妖怪が降り立ったんだ、地球にな。時にタマモは世界とはなんだと思う?」
「え、そういわれれば考えたこと無いわね」

一瞬横島から注意がそれたタマモは、一瞬でベッドに押し倒されていた。

「ちょ、ちょっと」
「タマモ、世界っていうのは思っているほど強靭ではないんだ」

パジャマの上からそれと分かる双房を軽く揉み、短く悲鳴を上げるタマモに横島は壊さないようにそっとキスをした。

「だから地球上と言う世界は、自らが生み出したもの以外を拒絶した。それは当然の行為だ。だれでも体内に異物が入れば除去しようとするだろう? だがそれは二人も予想していたことだった」

タマモ、と短く呟いて、キスをしながらパジャマのボタンに手をかける。それをタマモは邪魔しない。刺激された感覚は横島を求めてやまなかったからだ。だがそれでも話は聞いていた。タマモは思う。横島に関する話を聞き逃す物かと。
相手を知り、そして自らも知ってもらいたい。それは想い想われている理想の関係にもかかわらずより大きな想いを与え、そして貰いたいと本能ではなく理性が求めているからだ。

「二人は一度しか使えない世界を越した、星との契約を結んだ。世界は星の下位に位置するから、それは当然世界が二人を排除できなくなったことと同義だった。そしてその契約に則り、二人は一度火星の妖怪としての自身を殺し、思いが生み出す妖怪ではなく、地球と言う名の星の一部として生まれ変わった。尤もそれが原因で后は二人目の子を産んで消滅してしまったが」

パジャマのボタンが全て外れ、白い肌が露出した。タマモはこの瞬間が苦手だった。どんなに恥ずかしいことでもそういった行為である限りは全て受け入れるタマモだが、たわわに実った双房や、自慢の肌を黙って見つめられるのは羞恥心が湧く。
いっそ触れてくれればいいのに。そうタマモは思い、されどそのたび横島の微笑みに何もいえなくなる。その瞳は優しく、一度は綺麗だといわれたこともあった。だから今もそう思っているのだろうかと、ほんの少しの期待にも似た何かが湧いた。
それに気が付いたのか横島はそっとタマモの額にキスを落し、横になって抱きしめた。

「妖怪は世界が生み出したものだが、星の眷属はそれより上位の地球自体が許可したどころか、霊体としてみた地球の一部。だからブラドーと俺は同じ吸血鬼という名でも、その意味が全く違うんだ。さて、そろそろいいかな?」

タマモは漸く理解した。タイプ・マーズの意味を。星の眷属の意味を。だがだからこそそんな大きな存在に愛されてもいいのかどうかが不安になった。
九尾の狐という大妖ではあるものの、妖怪に変わりは無く、星の眷属の傍らに立つのは場違いではないのかと。だが、

「タマモ」

愛してるよ。そういわれてしまえばそんな悩みもはるか彼方へ吹き飛んでしまい、疑問が解消されすっきりとした感情を表すかのように、積極的に行為を始めようとして、

「な、何やってるんですか! 今日は私の日です!!」

響いた琥珀の声に今日は諦めなければならない事を悟った。


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