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No.33206の一覧
[0] 星の精霊 [綾](2012/05/22 14:34)
[1] 星の精霊 第二夜[綾](2012/05/22 14:35)
[2] 星の精霊 第三夜[綾](2012/05/22 14:37)
[3] 星の精霊 第四夜[綾](2012/05/22 14:38)
[4] 星の精霊 第五夜[綾](2012/05/22 14:39)
[5] 星の精霊 第六夜[綾](2012/05/22 14:40)
[6] 星の精霊 第七夜[綾](2012/05/22 14:40)
[7] 星の精霊 第八夜[綾](2012/05/22 14:42)
[8] 星の精霊 第九夜[綾](2012/05/22 14:43)
[9] 星の精霊 第十夜[綾](2012/05/22 14:44)
[10] 星の精霊 第十一夜[綾](2012/05/22 14:45)
[11] 星の精霊 第十二夜[綾](2012/05/22 14:46)
[12] 星の精霊 第十三夜[綾](2012/05/22 14:47)
[13] 星の精霊 第十四夜[綾](2012/05/22 14:47)
[14] 星の精霊 第十五夜[綾](2012/05/22 14:48)
[15] 星の精霊 第十六夜[綾](2012/05/22 14:49)
[16] 星の精霊 第十七夜[綾](2012/05/22 14:50)
[18] 星の精霊 第十八夜[綾](2012/05/22 14:51)
[19] 星の精霊 第十九夜[綾](2012/05/22 14:52)
[20] 星の精霊 第二十夜[綾](2012/05/22 14:53)
[21] 星の精霊 第二十一夜[綾](2012/05/22 14:54)
[22] 星の精霊 第二十二夜[綾](2012/05/22 14:55)
[23] 星の精霊 第二十三夜[綾](2012/05/22 14:56)
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[33206] 星の精霊 第二十夜
Name: 綾◆11cd5a39 ID:8b39f981 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/22 14:53
西暦一九XX年、八月十日。東京××××××‐×××に存在する教会は、日本GS協会に宣戦布告した。
唐巣率いる教会勢力は、高機動人型決戦吸血種、対GS最終兵器人造××、横島忠夫を投入した。
戦局は当初の予想を覆し、横島忠夫の圧倒的な戦力に戦線は瞬く間に崩壊した。
GS協会はその名をイレヴンと改め、唐巣の支配下に置かれることとなった。

「という夢を見たんです」

あっけらかんと話す横島に、朝食を食べていた唐巣の口からパンが膝に落ちた。

「横島って以外に暴力的だったりする?」

そんな光景を傍目に、一人稲荷寿司を食べていたタマモが琥珀に聞いた。
いえいえ、と首を振る琥珀にそうよね、とタマモも同意。一体全体何が原因でそんな物騒な夢を見たのだろうかと自ら主と勝手に定めた横島を見つめるタマモ。
それは、GS試験の二週間前の出来事だった。



第二十夜 GS資格取得試験



ゴーストスイーパー資格取得試験会場。毎年一年が掛りで結界が張られるその土地は、偶然か必然か霊脈の真上に存在した。
毎年の受験生は二千人前後。その多くが第一試験で敗れ去る中、一人横島はかったるさをかもし出していた。
試験場でよく言われるのは、何故か他の者の方が優秀そうだという被害妄想だが、横島の場合それは当てはまらなかった。
マイトと学会で名づけられた霊力波動の振幅。人は振幅数を上下させ、あるいは小刻みにするか、長く幅を取るかといった心電図の如き振幅で霊力を生み出し運用している。
だが、所詮は机上の空論。現代科学の粋を集めても霊力と言う確たる物質ではないそれを、正確に図ることはできなかった。
大雑把に二段階に分かれる試験。その第一試験は、そんな確たる証明が出来ない霊力を計り取ることだった。
そしてそれゆえに横島は本腰を入れず左団扇で試験に臨んだ。
その姿勢は試験官は勿論のこと、他受験者の神経を逆撫でした。だがそうしなければ横島と同じグループで第一試験を体験する者は、横島を除き軒並み不合格の烙印を押されるだろう。
マイトと呼ばれる単位は、確認の取れていない重力子、グラヴィトン粒子のようなもの。あると分かっている、あるいは仮定しているそれは、重力と同じように感じることは出来るが、粒子の集合体を見る事が出来ない。
その結果、霊力が基準値を満たしているかと言うことは、精密だというのにあまりに上下が大きすぎる検査機と、霊能力者である試験官の感覚に頼っている。
横島は吸血鬼だ。普通の人間と比べあらゆるポテンシャルが高い。当然霊力も強いことになる。
そんな存在が修行を積み、人で言う一般人から霊能力者に格上げされたがごとく底が上がったのだから、本腰をいれ霊力を放ってしまえば、検査機は勿論、試験官の霊的感覚が狂うことは必至だ。十分基準値に達しているそのほかの受験生の霊力がそう強くないと判断してしまう。
それを避けるには、人外が無意識に垂れ流している霊力を一定方向へ向ければ澄むことだった。
それは初歩中の初歩であり、だからこそ横島は非常に不真面目に試験に参加したのだ。

「十九番、二十七番…三十五番、合格だ。第二次試験会場へ向かいたまえ」

だから呼ばれた番号に自分と同じものがある事も、当然の結果だと横島はコートを翻しその場を去った。



「遅いわ」

ちゅるる、と朱色の箸を器用に使いうどんを啜る。
刻んで乗せられたお揚げを一口。同時ほころぶ頬に、されどタマモは眉間の皴だけは消せないでいた。
横島忠夫。その名前は最早忘れることができないほど、タマモの心に刻まれていた。
はるか昔、タマモが殺生石に封印される遙か前、まだインドでそれほど力が無かったころ、その噂を聞いたことがあった。
星の眷属。当時のタマモはそれの意味するところを正確に知らなかったが、年を重ね経験が増えていくにつれ、どれほど凶悪で、温厚で、そして力強いかを知った。
この星、地球には、星の眷族と呼ばれる吸血鬼が多数存在する。だが星の眷属と言う呼称は、吸血鬼だけを意味しているのではない。
天に昇り、あるいは地に潜った星の眷属は多数存在する。だが今現在人間界で活動している種族は、吸血鬼だけとなった。

「只今から××年度、二次GS資格取得試験を開始いたします」

受験者の方はご来場願います。そんなアナウンスに紙のおわんに入ったきつねうどんを手に持ち、柵に近寄った。
あ、いた。そう声を上げ、一体全体どういった聴力を有しているのか、横島はタマモに向け手を振った。
それに思わず笑みが漏れるタマモは、ふと思案顔になった。

「この夏場に、コートってありなの?」

それが防御服である事は知っていたが、どうにも暑苦しい。そして全身漆黒で決めているのだから、ますます暑苦しさが増すばかりだ。

「ま、いっか」

だがタマモはそれを脇に置き、食べ終わってしまったきつねうどんの汁を飲み干した。そして新しくバックから取り出すと、アルミのなべを狐火でたき、真っ白なうどんが茹で上がるのを待つことにした。
そして一つ溜息を吐く。タマモは横島の対戦相手には同情の意を禁じえなかった。そのポテンシャルの高さから、素手でも十分主席は狙えると言うのに、何思ったのか横島は武器である木刀を持っていたのだから。



一回戦の相手が決まった。二日にまたがる試験。その実質的な第一歩。
横島はブーツを鳴らして正方形上の結界の中に入った。タマモを発見できたのは幸いだったが、琥珀と唐巣は居ない。
唐巣は急遽入った依頼でイタリアに出張中。対する琥珀はと言うと、試験日だと言うのに横島に朝から迫り、結果むさぼりあった。
それが霊力の上昇を狙った物だと言うのはわかっていたが、その緊張感の無さはどうにかならないのかと、横島は琥珀の顔を思い出す。
帰りは裸エプロンですよー、と笑っていた琥珀は、横島が負けるとは微塵も思っていないようで、手にのりをかけて戦勝祝いを作っている。
したがって観覧、あるいは応援に来たのはタマモ一人だけだった。
タマモの変化は横島にも早々見破ることが出来ないレヴェルで安定している。一流どころのGSが霊視したとしても、まず見破られないだろう。尤も現在のGSという但し書きが着くが。
そうしてつらつらと余計なことを考えているうちに、ゴングが鳴った。それに反応したわけではないが、突っ込んできたものを確認する事も無く、ごくごく自然な動作で首筋に霊力を纏わせた上段回し蹴りを放った。

「勝者! 横島忠夫」

審判が腕を持ち高々と上げるのを他人事のように見つめ、目を瞬く。何が起こったのかを倒れている者を見て理解し、横島は溜息を一つ吐いた。

「なんて」

なんて、あっけないんだ。それはその試合を見ていた全ての者の総意だった。



その日の晩はまさに無礼講だった。
ヤモリに始まり、ウナギやスッポン。当の料理を作った琥珀は明日の為ですよー、と言い張っていたが、その日の晩横島の部屋から悲鳴にも似た声が途切れることは無かった。
その事にいい加減うんざりだと、タマモは思った。両想いなのだから別にいいとは思うが、時と場合を考えろと言いたくなる。
早朝も朝食の前に部屋から同様の声が漏れていた。有効的であるのは認めよう。タマモは今日も観覧ようのアルミ鍋式きつねうどんを持参して、会場に入った。
霊的格闘戦なのだから霊力があることにこしたことは無い。だが横島を追い詰めることの出来る人間がいるのだろうかと、疑問が浮かび上がるのが押さえられない。
まず普通の人間には無理であろう。だからこそタマモは魔法瓶に入れた熱湯を注いでいる時真実にたどり着いた。
そう、琥珀は大義名分の下、横島の寵愛を受けたかっただけなのだと。
我知らず眉間に皴がよる。それは鍋を暖める狐火が安定しないことから、胸の内で大問題に発展していることが伺えた。

「そろそろ潮時かしら…」

頬に手を当て、タマモは呟いた。横島の鈍感振りにはその手しか方法が無いだろうと、冷静に分析していた。
外見もクリアしているのだからと、それなりに実った両房を服の上から確かめる様に揉んだ。



「木刀如きがぁあ!」

叫び声と同時に振り降ろされた神通棍を木刀で受け流し、左手から霊力波動を飛ばした。横島の攻撃に迷彩服に身を包んだ男性を結界まで吹き飛ばされ膝を着く。

「ま、まだ終わってなんか」

だが戦意までは失っていないようで、啖呵をきる。それに横島は縮地と呼ばれる移動方で瞬時に距離をつめ、精神のよりどころ、神通棍を木刀で叩き折ることで答えた。
「まだ続けるか」
木刀を瞬時に引き戻し、切っ先を喉元に食い込ませる。霊力が微弱故に怪我と言う怪我をしていない男だが、横島が木刀に霊力を流し込んだときが己の最後だと男も悟っていた。

「こ、降参だ」

その声にとりあえずは合格だと、一息つく横島。だが此処まではほんのお遊びだと分かっていた。
いずれ事務所を構えたいと思っている横島にしてみれば、目立てば目立つほど都合が良かった。
そう、横島は狙っていたのだ。この試験の頂点、主席の座を。



「あた、あたたたたたたた」

放たれる拳を紙一重で避け、幽鬼のようにゆっくりとしかし確実に対戦相手に横島は近寄った。

「くっ、ならこれはどうだ! ゴールデンフラァァァッシュ」

後方に勢い良く飛んだ男は、両手を広げ大の字になると体全体から霊力波動を横島に放った。

「フンッ」

だがそれは横島が左手に灯し放った霊力弾の一撃がまるで川を割く様に男の霊力波動の中を突き進み現れた霊力弾が今度こそ鳩尾に決まり、男はその場で嘔吐した。
そんな選手を倒し、次なる相手はなんと女だった。武器は符。ただそれだけ。
結果以内へは一つの武器しか持ち込むことを認められていない。つまりその符こそ最終手段であり、最強手段。
だからこそ横島は、

「ファイッ」

号令のゴングがなったと同時に、その符を切り裂いた。

「甘いわよ!」

瞬間女性とは思えない威力の蹴りが横島の体を掠った。
その事に横島は好戦的に口の端をあげると、霊力の玉を掌に収め、放出することなく肉弾戦で掌と同時に霊力の玉を女の腹に当てた。

「ッ!」

瞬間声も無く崩れ落ちる女に、横島はそれまでかと、眉を寄せた。
そうして、横島は不完全燃焼のまま、主席を圧倒的な戦闘力を披露して手に入れた。

「なんだかなぁ」

後々になり有利に働くと分かっていても横島はその過程に不満の意を禁じえない。

「ねぇ、横島」

それを思いだし部屋で一人でごろ寝していた横島に、タマモの声がかかった。
何処となく硬いその声音に横島は起き上がりタマモを見た。

「どうかしたか?」

それにタマモは答えず、後ろ手でドアを閉めると、鍵のかかる音が部屋に響いた。

「ねぇ」

ポニーテールを揺らしながらベッドに座った横島の隣に座るタマモ。横島の腕を胸に押し当てるかのように抱きしめ、そっと呟いた。

「   」

その夜、初めて琥珀以外の甲高い声が教会に響いた。


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