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No.33206の一覧
[0] 星の精霊 [綾](2012/05/22 14:34)
[1] 星の精霊 第二夜[綾](2012/05/22 14:35)
[2] 星の精霊 第三夜[綾](2012/05/22 14:37)
[3] 星の精霊 第四夜[綾](2012/05/22 14:38)
[4] 星の精霊 第五夜[綾](2012/05/22 14:39)
[5] 星の精霊 第六夜[綾](2012/05/22 14:40)
[6] 星の精霊 第七夜[綾](2012/05/22 14:40)
[7] 星の精霊 第八夜[綾](2012/05/22 14:42)
[8] 星の精霊 第九夜[綾](2012/05/22 14:43)
[9] 星の精霊 第十夜[綾](2012/05/22 14:44)
[10] 星の精霊 第十一夜[綾](2012/05/22 14:45)
[11] 星の精霊 第十二夜[綾](2012/05/22 14:46)
[12] 星の精霊 第十三夜[綾](2012/05/22 14:47)
[13] 星の精霊 第十四夜[綾](2012/05/22 14:47)
[14] 星の精霊 第十五夜[綾](2012/05/22 14:48)
[15] 星の精霊 第十六夜[綾](2012/05/22 14:49)
[16] 星の精霊 第十七夜[綾](2012/05/22 14:50)
[18] 星の精霊 第十八夜[綾](2012/05/22 14:51)
[19] 星の精霊 第十九夜[綾](2012/05/22 14:52)
[20] 星の精霊 第二十夜[綾](2012/05/22 14:53)
[21] 星の精霊 第二十一夜[綾](2012/05/22 14:54)
[22] 星の精霊 第二十二夜[綾](2012/05/22 14:55)
[23] 星の精霊 第二十三夜[綾](2012/05/22 14:56)
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[33206] 星の精霊 第十三夜
Name: 綾◆11cd5a39 ID:8b39f981 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/22 14:47
「これはまた微妙な品を預かりましたね」
あっはー、とそれでも笑いを浮かべる琥珀は、されど口の端が震えていた。それが受け取った代物の扱いに対する笑いを抑えるためなのか、それに自身に気圧されたのか。どちらにしてもそれは圧倒的な存在感と、尋常ならざる霊圧を垂れ流していた。
「これこそが本物だと主張するコレクターは星の数ほど居る」
その物体に緑茶を飲みながら何気なく横島は触った。瞬間毛細血管が浮き出たかの様に、真紅の何かが脈打ちながら浸食した。
「だがその中で真実力を持つものは存在しない」
やはりか、と呟きそれを見る横島。横島はその意味を知り、そしてそれでも何の事はないと許していた。
「琥珀さん。これこそがかのキリストを貫いた聖槍。ロンギヌスの槍だ」
名を呼ばれた聖槍はそれに呼応するかの様に霊圧を脈打たせた。

第十三夜 いつか誰かがたどった道

タタリが滅びた事はシエルを通してその筋の者に流れた。当然唐巣の元にもその情報は来たのだが、肝心の横島はと言うと一切の感想を持っていなかった。
師である唐巣が驚いたのにあわせた事はあわせたのだが、内心ではたかが下等生物一匹、と騒ぐ面々に呆れていた。
死徒と人間。そのどちらが厄介かと問えば大多数は死徒と答えるだろう。だが横島はそう思っていなかった。
人間が変わった一つの種である死徒。その力は膨大で、凄腕のGS数人掛かりで漸く倒せるかどうかというレヴェルである。そしてタタリは死徒の中でも力が強いと目される死徒二十七祖に数えられる存在だ。当然その影響力は膨大で、滅せられた事が奇跡とも言えるレヴェルだった。
だが、横島はそれを下等生物と評した。それはタタリが正常な判断能力を失っていたからだ。何百年も生きているというのに空に描いた魔法陣に気が付かない。理性が残っていたのならそんな事はあろう筈がないのだ。
そして死徒は理性を無くしているか、正常な判断能力に欠けている者が圧倒的多数を占めている。それ故に人類という種は生存競争に生き残ってこれたのだ。勿論例外はいる。宝石翁とよばれるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが良い例だ。
それよりも舞い込む除霊の依頼量が尋常ではなかった。タタリは噂や恐怖をもとにその力を得、それを具現化する。それには潜在的なものも含まれ当然人間だけが対象ではない。
霊の多くは何がしかの未練を残しこの世にとどまっている。それが長く続くと霊力源が底をつき、無意識的にそれを多く持っている身近なものから摂取しようと人を襲うようになる。それがごくごく一般的な善良な霊が悪霊と呼ばれる霊になるまでの過程、その一例だ。
恐怖の念は自己防衛を促し無意識下で霊力を使う。それは霊も変わらなかった。そしてタタリは全てのものに平等に恐怖を与えた。それは自我があればどのような存在であっても変わらない。それはすなわち霊も含まれているということに他ならなかった。
「鎖斬華」
成りたての悪霊は、それでももともとの念が強かったのか霊格が高く、霊力弾などの遠距離攻撃よりも至近距離から放つ斬撃の方が効果があると、横島はすれ違いざまに縦、斜め左右に切り裂いた。
消えていく霊の咆哮を聞きながら残心から血を振り切るかのように木刀を振り、唐巣の下に戻った。
「うん、ずいぶん強くなったね」
唐巣のその言葉にどう反応したものかと横島は悩んだ。風圧を飛ばすかのように、木刀に宿った霊力を振りぬくと同時に切り裂くという意思を乗せ飛ばす中距離からの技と繋がりのある技が先ほどの鎖斬華だからだ。あれ一つが独立しているのではなく、練度という意味では図れるが、当然それだけで横島の攻撃、そのレヴェルを図るには少し足りない。
「しかし困ったね。GS試験は最低限満十六歳で無いとダメなんだ」
ほんと困ったね。そう言って頬をかく唐巣に横島はまだまだ習うことがあると、はなから試験を受ける気は無かった。
確かに今のままでも試験には受かるだろう。そんな事は令子を見ていれば分かることだった。
自立も目的の一つではあるが、人間のやり方にも興味がある。それはまだまだ見たりないと思わせるほどのものであり、それをある程度熟知するまで試験には出ることは無いだろうと思っていた。
自立するだけならばすぐに出来る。だが修行の旅なのだ。レヴェルアップしなければ意味は無い。そうして吸血鬼は時代の流れに乗り、人のそれより緩やかだが確実に進歩し、進化していったのだから。
「令子君も独立した。お金にはがめついが話の拍子に出るほどになるには依頼料の低いもの、あるいは噂を広げる為にボランティアをしなくてはならないから…」
コピーしたロンギヌスの槍をどう使うか、あるいはどう改造するか。関係のない事を話し出した唐巣を見て考えていたことが次の瞬間霧散した。
「旅にでも出てみるかい? 忠夫君」

ゴールデンウィーク。連休のそれはしかし学生の特権である長期休暇に比べるとどうということはない。
行脚ではないが、自分の足だけで長い道を歩き、野宿し、自炊あるいはコンビニで全てを済ますか、霊障になやむ依頼料の払えない人々をその泊まることと引き換えに解決する。そんな旅。それを唐巣は提案した。
横島の保護者の代わりとなっている唐巣は、横島が非常に優秀な学生だということを知っていた。暴力沙汰もあったが、それは決まって相手から手を出されたときか、誰かを助ける為だけだった。
クラスの中心にいるということは無いが、端にもいない。だが担任の教師が初老に差し掛かった経験豊富な者だったため気が付いたことだったのだが、クラスの中心となる人物を作り出しているのが横島だった。人を影で煽る事にもたけ、どの時代も存在したいじめという社会現象をやることがバカらしくなるような雰囲気に持っていっている。
それは性格なのだろう。そして才能でもあるのだろう。だが、だからこそ唐巣は人生の主役というものを経験して欲しかったのだ。
他人を輝かせる者もいていいだろう。寧ろ今の時代そういった人物こそ求められているのかもしれない。だがGS業界で成功しようとすればその性格は邪魔者以外の何者でもない。
GSは派手に、散るときですら輝きをもって逝く存在こそ至高と呼ばれるのだから。GSに脇役は居ない。誰かの補佐をするのならばそれでもいいだろう。だが直接任されたわけではないが自身を選んだからには輝く恒星へと育て上げる義務があると、唐巣は感じていた。そして旅をしながらそれを感じ取ってくれればと、学生には厳しい条件のそれを提案したのだ。
装備は木刀とコルトバイソンのみ。符や魔法陣の製作技術は既に学んでいたようだったのでそれだけで済む。琥珀は留守番で、案の定目をつけた令子の開業の手伝いに回された。
そうして今時のGSが忘れてしまった何かを探す旅に横島は出発した。

「ありがとうございます」
目の前で頭を下げる男性に、横島は戸惑った。霊障というものは意外と見つけにくいもので、中には何かに憑かれ奇人変人の動作をする事も多い。
霊能は血筋で固定されるといっても過言ではないほど一般人と霊能力者に分けられる。だから憑かれた故の行動をしていても、普通はそうとはわからない。今回解決した霊障もそんなものの一つだった。
謝礼にと渡されるそれを辞退し、半ば強引にその場を去る。ビジネスであれば取る物をとっただろうが、そうではないのだ、と横島は思う。
世界を保つにはバランスが必要だった。何かを成すには同等の何かが必要になる。それは覚悟だったり、諦めだったりと様々だが、大よその場合物品で解決する。
横島は旅の意味を知らなかった。だが霊障の解決は旅の目的の一つであり、この旅には欠かせない要素だった。霊障との遭遇なくして旅は無い。そう言いきれるほどの重要性。
だからこそ何も取らなかった。男性からは霊障という要素を提供され、それに霊障を解決するという形で対価を支払った。これ以上何かを貰う必要性は無く、貰えばバランスが崩れることになる。
それは間違いないはずだと横島は夜道を歩きながら思った。横島たち吸血鬼は、自身という世界のバランスを崩すだけで容易くその性質を中庸から変質させるのだと、徹底してバランスの価値観を教育された。事実それで堕ちた吸血鬼もおり、遠い過去ではそれだけのために一人の吸血鬼を機械的に育て上げ、堕ちた吸血鬼を狩る戦闘マシーンにしてしまったという黒歴史が存在するほどの問題だった。
そういったところは、かの魔女に似ているなと、横島はこの東京のどこかに存在するという店に久しぶりに訪れたくなったが、今は修行中の身なのだと思いとどまる。
「それはともかく何処に向かうべきか」
思い悩んだのは一瞬。どうせ当てのない旅なのだからと無意識のまま道を選ぶ。
途中時代遅れの口裂け女や、首の無いライダーに出会ったのは一体何を意味していたのだろう。
腹が減れば何年ぶりになるというのか忘れてしまった人の血を啜り、酒を飲んだかのような高揚感に満たされた。
林道を通ると冬眠明けの熊に出会い、その日の晩は熊肉を民宿の方々とともに食した。一体何処から入ってきたのかドライアドという草の妖怪を離れたところから銃弾で倒すことは無く、いい鍛錬になると木刀一本で挑み、茨の触手をかわし意外とあっけなく滅した。
そうして連休も終わりに差し掛かった頃漸く唐巣の意図が分かった。それもそのはずで、GSというものは意外と社会に浸透しており、口を開けば何処で事務所を開いているのかを聞かれ、実年齢を明かすと驚かれ更なる高待遇で接せられた。若いのに偉いと。
元来横島は引っ張り出されるということに慣れていない。早熟な吸血鬼に生まれたからということもあるが、幼くとも長くを生きるという意味を本能的に察していたのだろう、銀一と夏子を除き意図的に距離をとっていた。銀一と夏子が寄ってきたのは中々頷かない横島に焦れたのだということが銀一が転校する祭に分かったのだが、そんな奇特な人間は早々いないだろう。
GSとなり成功するには当然客が入らなければならない。いくら腕がよくとも事件が無ければ無意味なのだ。それには美しい蝶が誘われるような光が必要だった。尤もその光には蝶に擬態した蛾や攻撃的なスズメバチおも寄せ付けてしまうことになるが、有名税だと思えば納得はいかずとも理解できる。そして自分にはその輝くものが無い、否意図的に輝かせていない。それを矯正しようと直接霊障に出会うことになる旅を勧めたのだということが漸く分かった。
「先生、ただいま帰りました」
一週間まともに風呂にも入っていないその体は汚れていて、
「忠夫君。その様子だと分かったようだね」
それでも唐巣は不快になることも無く、寧ろ満足そうに笑い返した。


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