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No.33206の一覧
[0] 星の精霊 [綾](2012/05/22 14:34)
[1] 星の精霊 第二夜[綾](2012/05/22 14:35)
[2] 星の精霊 第三夜[綾](2012/05/22 14:37)
[3] 星の精霊 第四夜[綾](2012/05/22 14:38)
[4] 星の精霊 第五夜[綾](2012/05/22 14:39)
[5] 星の精霊 第六夜[綾](2012/05/22 14:40)
[6] 星の精霊 第七夜[綾](2012/05/22 14:40)
[7] 星の精霊 第八夜[綾](2012/05/22 14:42)
[8] 星の精霊 第九夜[綾](2012/05/22 14:43)
[9] 星の精霊 第十夜[綾](2012/05/22 14:44)
[10] 星の精霊 第十一夜[綾](2012/05/22 14:45)
[11] 星の精霊 第十二夜[綾](2012/05/22 14:46)
[12] 星の精霊 第十三夜[綾](2012/05/22 14:47)
[13] 星の精霊 第十四夜[綾](2012/05/22 14:47)
[14] 星の精霊 第十五夜[綾](2012/05/22 14:48)
[15] 星の精霊 第十六夜[綾](2012/05/22 14:49)
[16] 星の精霊 第十七夜[綾](2012/05/22 14:50)
[18] 星の精霊 第十八夜[綾](2012/05/22 14:51)
[19] 星の精霊 第十九夜[綾](2012/05/22 14:52)
[20] 星の精霊 第二十夜[綾](2012/05/22 14:53)
[21] 星の精霊 第二十一夜[綾](2012/05/22 14:54)
[22] 星の精霊 第二十二夜[綾](2012/05/22 14:55)
[23] 星の精霊 第二十三夜[綾](2012/05/22 14:56)
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[33206] 星の精霊 第十一夜
Name: 綾◆11cd5a39 ID:8b39f981 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/22 14:45
十二月二十五日は何の日か。琥珀は甘い朝のモーニングコーヒーですよ、と誘惑したが、そうではない。そうではないのだ。
横島はその朝神父であり、師である唐巣を急襲した。驚く唐巣に向かい横島は同じ質問をした。唐巣は当然のごとくキリストの誕生祭である。そう答えたが横島は首を振った。違う間違っているぞ、先生と。
そして横島は言った。
「爺が尋ねてくる日だ」

第十一夜 爺と言う名の新たなる神

唐巣はその目を疑った。あり得ないと。
「おう、琥珀ちゃんやもうちょい右、右」
アー気持ちえー。そんな言葉を吐いている存在。それが何故ここにいる!? 唐巣はもう何があっても驚かないと、その存在を認めた。と言うよりは認めなければやっていけなかったからだ。そう、サンタクロースの存在を。
あ゛ぁー。そう魂が抜けるかのような声を出すその老人は、紅い服を着たサンタクロースだった。
「おい爺。さっさと返れ」
それに対抗心をむき出しにするのは弟子である横島。その事に唐巣は首をひねった。いつも温和な横島にしては珍しいと。
犯罪者でない限りどのような者であっても親しくする横島の人気は、教会に訪れるご近所様方から何かと評判がいい。いまどきの若者にしては、と。
「お主もそう肩肘張らずに、まあいっちょ酒でも飲んで」
「未成年に酒を勧めるなッ、この破戒サンタ」
苦々しい表情を隠そうともしない横島は、されどその酒を飲んでいた。
「で、最近の成果はどうなんだ」
ポツリ零された声は暗い。まるで誰が戦死したと聞いているようにも感じた。
「だめじゃのぅ。闇が広がっておる」
返すサンタもどこか暗い。何の話かと首を突っ込むかどうか悩んだ唐巣は、結局今までのことを思い出し撤退することに決めた。
人類の根底に関わる問題が議論されるとも知らないで。

その存在に出会ったのは猛吹雪の山奥だった。
横島にサンタクロースからのプレゼントというビックイベントはない。早熟な吸血鬼はその存在が確かにいることを知ってはいたが、それ故に真実配られるプレゼントの量は決まっているということも知っていた。
サンタクロースは一種の信仰が生み出した一人の神とも言える。多くの子供たちの願いが実体化したサンタクロースは非常に霊格が高い。子供は残酷でもあるがとても純粋だからだ。更には純度が高いそれが欲というには可愛いものではあるが強烈に祈られる。世界中という多くの数もあり、結果サンタクロースは近代の神としては稀な事に霊格が高くなったと言うわけだ。
だが時代は子供にとっても厳しいものに変化していった。夢を失った子供たちは、神を精霊を、そしてサンタを信じなくなったのだ。
年々力が落ちるサンタが、高山を昇りきれず横島の真横にそりで突っ込んだのも無理はない。
サンタは横島がどういった存在なのかを一目で見抜いたが、それ故現実を思い出してしまい泣いた。横島程ではないが、世界の子供の多くは現実を知り心の中に夢を持たなくなってしまったことが悲しかったのだ。
それ以来毎年横島の元を訪れては、愚痴を零し特例としてプレゼントを渡していっている。
早熟な吸血鬼にしては、子供らしいとはいえないものの純粋な夢があったからだ。色々な事を知りたいと、作りたいと言う金という現実を知っていても尚消えることのない炎が。

徹夜は身にこたえるわい。そういいながら仮眠を取ったサンタは、見送りにきた琥珀に向かって梨のような果物が入った大きな籠を渡した。
「琥珀ちゃんや、坊主を離すんじゃないぞ」
しっかり魅力でからめとっておくんじゃよ。それに琥珀はにっこりと笑い勿論です、と答えた。
「琥珀は産まれてきたことを嬉しく思っています。私は使い魔。忠夫様に仕える守護獣に過ぎません。ですが」
琥珀は顔を赤らめ、恥ずかしそうに零した。
「愛してますから」
サンタはそれに笑いかけると、果物の説明をした。
「エデンには二つの実が実っておった。一つはアダムとイヴが口にした知恵の実。もう一つは琥珀ちゃんが持っておる生命の実じゃ」
そりに腰掛け、腰を叩く。
「エデンから持ち出すのはちと骨じゃったが、坊主は悪用せんじゃろう」
「何故そういいきれるのです? 私がかどわかすかもしれませんよ」
「サタンのようにかのう? 琥珀ちゃんには悪いがそれだけで落せるほど坊主は弱くはないわい」
からからと笑い、サンタは横島のことを話した。
「あれほど純粋で、自分のことを何よりも優先するというにもかかわらず、真に大事なものを見失っておらん生物はそうおらんよ。琥珀ちゃんがいくら魅力的というても、坊主を落すのは無理じゃろうて」
その返答に琥珀は気分を害するどころか嬉しそうに笑った。
「ええ、琥珀のご主人様はすばらしい方なんです」
だから何時だって幸せです。

最後の材料が手に入った。闇の中横島は思考した。それ以外の準備は既に終わり、後は実行に移すだけ。
横島がサンタを嫌うのは、今まで幾度も発明品や製作中の代物を完成した状態のものをプレゼントされたからだ。それが存在することは確かに利益になる。だがその過程を楽しんでもいるのだ。だからそれを掻っ攫うサンタが憎い。一回だけならば許せるそれも、十何回も続けられればいい加減にしろ、と仲が悪くなるのも無理はない。
だが今回だけは感謝しよう。そう思い籠の中身を手に取った。梨にも似たそれはしかし金色で、とても果物とは思えない輝きを放っていた。
一見無害に見えるそれは、食べた瞬間死ぬことが確定していることを知っていた。毒や呪いがあるのではない。この地、エデンから追放されたこの地に住まうモノ全ては、知恵が少なからず存在する。それが本能にも似たものであったとしてもだ。
だからこそ、それは食べることを許されない。生命の実。それは知恵の実を食べその力を手に入れた人間が食べてしまうと、神と等しき存在になるからだ。
もともと神に似せられ作られた人間。神の力の象徴である知恵と殺しても死ぬことのない永遠の命。その片方、人が手に入れる頃の無かったものを宿した果実がそれだった。
この世界に神族という魔族と対を成す存在がいる。だがそれは創造神のことではなく、それ以外の信仰された神々のことだ。創造神ははるか高みから地球、魔界、そして神界を見下ろしている。それと等しくなるのならばそれを阻止しようと何かが使わされる。
それは神族でも、魔族でも、ましてや人間でもない。最高指導者と呼ばれる魔界と、神界のトップをも凌ぐ干渉すること事態が世界の異常に繋がる何かが送られる。それは人類の総意であるアラヤ意識が具現化した滅びたくはないという何者にも勝つことの出来ないそれすら打ち倒し、人類を滅ぼすことすら可能だろう。
だが、原材料として使用するならば問題は無い。普遍的な果実でもそうだが、加工すればするほど味が落ち、何かが失われる。神と同じになりたいのならば加工してはいけないのだ。だから加工することを前提にしている横島に、生命の実が渡ったことを観測しても、神は人類を滅ぼすことはない。
見つめ考える横島の横顔は、中学生とは到底思えない程の深刻さがあった。
「根を、詰めないで下さいね」
それを見つめていた琥珀は、そっと諭した。理由は知っている。単純で、利己的。だが利益を考えているわけではない。それを成せば莫大な利益がもたらされるというにもかかわらず。
「霊脈でも探すか」
何を思ったのだろう、横島はそう呟くと、脇に座っていた琥珀を抱きしめそっとキスをした。
「ならば私が」
「ダメだ。一緒に行こう? ここじゃできない事もできるんだから」
瞬間琥珀の顔が高潮する。誘惑するのは慣れていても、されるのは慣れていないのだ。
それに笑いを耐え、そっと胸に抱いた。


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