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No.33206の一覧
[0] 星の精霊 [綾](2012/05/22 14:34)
[1] 星の精霊 第二夜[綾](2012/05/22 14:35)
[2] 星の精霊 第三夜[綾](2012/05/22 14:37)
[3] 星の精霊 第四夜[綾](2012/05/22 14:38)
[4] 星の精霊 第五夜[綾](2012/05/22 14:39)
[5] 星の精霊 第六夜[綾](2012/05/22 14:40)
[6] 星の精霊 第七夜[綾](2012/05/22 14:40)
[7] 星の精霊 第八夜[綾](2012/05/22 14:42)
[8] 星の精霊 第九夜[綾](2012/05/22 14:43)
[9] 星の精霊 第十夜[綾](2012/05/22 14:44)
[10] 星の精霊 第十一夜[綾](2012/05/22 14:45)
[11] 星の精霊 第十二夜[綾](2012/05/22 14:46)
[12] 星の精霊 第十三夜[綾](2012/05/22 14:47)
[13] 星の精霊 第十四夜[綾](2012/05/22 14:47)
[14] 星の精霊 第十五夜[綾](2012/05/22 14:48)
[15] 星の精霊 第十六夜[綾](2012/05/22 14:49)
[16] 星の精霊 第十七夜[綾](2012/05/22 14:50)
[18] 星の精霊 第十八夜[綾](2012/05/22 14:51)
[19] 星の精霊 第十九夜[綾](2012/05/22 14:52)
[20] 星の精霊 第二十夜[綾](2012/05/22 14:53)
[21] 星の精霊 第二十一夜[綾](2012/05/22 14:54)
[22] 星の精霊 第二十二夜[綾](2012/05/22 14:55)
[23] 星の精霊 第二十三夜[綾](2012/05/22 14:56)
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[33206] 星の精霊 第二夜
Name: 綾◆11cd5a39 ID:8b39f981 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/22 14:35
暗闇の中、漆黒の個体とも、液体とも、そして気体とも違った何かが丸底フラスコの中で渦を撒く。ゴムでとめられた口から一つ、ガラスのチューブが途中を蒼き炎で熱せられ同じように口を止められた試験管に伸びていた。
漆黒の何かは炎で成分を変えられ、銀色の何かに変化する。チューブから試験管へ少しずつ漏れる何かは、密閉されているにもかかわらず漆黒のときとは違い、確かに量を減らしていた。
丸底フラスコ一個と、試験管一本。それが同等の値を結ぶそれ。漆黒のそれは確かに悪霊を封じ込めたそれであったが、銀色のそれは一体何だというのだろうか。
光の差さないその部屋で、緩やかに行われる変換は、一体何をもたらすのか。それは棚に置かれた試験管の量が尋常ならざることだと物語っていた。

第二夜 「あっはー」という笑い声

夏休み。そう日本の学校で最も長い学生には必須の休み。その休みの中、横島忠夫は唸っていた。
休みだというのに膨大に出される宿題はとっくの昔に終わっていた。だが学校の成績は最高の評価はもらえない。いつも一つ下の成績。それは横島が劣っているからではない。寧ろ横島の学力は一般人を凌駕している。にもかかわらず最高の成績が付かないのは、教師に嫌われているからだ。
授業はほとんど寝て過ごし、問題を当てられても考える間もなく返答する。起きていたら起きていたで、教師の教え方のミスをただし、より分かりやすく実践的なものを独断で披露する。そんな態度が大人のプライドに触ってしまうのだ。
それは勿論母、百合子も知っている。だからこそあれこれうるさく言うことはない。態度も直せとはいわない。それは彼女も夜の一族だからだ。
その底力を知っているが故に人間を見下しはしないが、何世紀も前から生きているが故に世界を知り、年で判断するよりもその力量にあった評価の仕方をするべきだと常々思っている。授業で寝てしまうことは、夜も活動しそしてまだ幼いが故に体質的なものから仕方が無いと、授業態度としては悪いが、そのことで成績が下がるのは無理もないと判断している。だが、より身に付く教え方をして恨みを買うことは醜くは無いのかと思っており、実際授業参観時、教師と衝突した。
そういったことを横島自身も知っているが故に、授業中寝てしまうことは悪いことだと成長するにつれ直していく課題だと判断し、教師の説明の補足や、間違いの指摘はこれからもやっていこうと、出るくいは打たれると知っていながら正しいことは正しいのだからと、胸を張っている。それが教える同級生から恨まれるのならばともかく、分かりやすく塾に行っている者にも授業が面白くなったとうけているのだから。
そんな横島は、昼は友と遊び、夜は街に繰り出していたが、午前中はというと魔道書を捲る日々が続いていた。
一人前とみなされ、親の加護を離れる十四歳まで後三年。去年ごろから使い魔の必要性を漸く感じ、今その最終段階に入った。
使い魔の有効性は耳にたこができるほど母に聞かされていた。一人前といわれてもまだ年若い間は何かと必要になるのだと、その様々な実例を出されながら。
吸血鬼の使い魔として頭に浮かぶのは蝙蝠だろうが、実際蝙蝠を使い魔にしている吸血鬼は少ない。尤も吸血鬼自体が少ないのだが。
知り合いは蝙蝠を使うが、使い魔ではない。蝙蝠の利点はただ一つ、集団であるだけであるといっても良い。使い魔は時に守護獣とも呼ばれる。蝙蝠に主人を守護することは出来ない。
候補自体は既に考えており、後は術式を構成するだけなのだが、それが酷く難解なのだ。
成人年齢から分かるとおり、吸血鬼は早熟だ。幼い横島もその例にもれず、言語学と科学は大学卒業レヴェルに達しており、その他の雑学の分野に及ぶものも含めて中学卒業レヴェルは既に収めている。
科学は完璧な趣味だったが、言語学は母に教わった。というよりも叩き込まれたのだ。
今読んでいるものもそうだが、魔道書の多くは今は使われていない言語で記されたもの。直接記しているものもあれば、暗号化しているものもある。時には天使語で記されたものまでも存在し、解読が必要なものが存在する。
使い魔の作成はそれら魔道書の中に書かれた術式において中級の初めごろに値するが、それでも英語など現在使われている言語ではない。
だがその方法は普通の使い魔であり、横島の望むものではなかった。それはかなり上級レヴェルの術式であり、材料も質がいいものを使用せねばならず、一年間ためて漸くそろったというほど集めるのが大変だった。
出来るか出来ないか。そのぎりぎりのレヴェルのものだからこそ、魔道書を読み返しているのだ。適切な時は満月が中天に昇る魔力が満ちたとき。そして満月は今日だった。

横島宅は霊脈の真上に建っていた。勿論偶然ではなく、そういった物件を狙ったのだが、始めは地下室など付いてはいなかった。
地下室が作られたのは子供が生まれたからだった。吸血鬼の子は一般常識は勿論、表向き失われたといわれている秘術も習得するのが普通だった。それは風習ではなく、長い年月を生きる吸血鬼は、ゆっくりと変化する人間界に対応しなければならないからだ。
それが常識などの習慣だけならばその必要は無い。だが今の世でわかるとおり、霊能力を持つ人間は時に霊能力を劣化させ、時に鋭くさせ、道具を発展させる。それに対応する、正確には騙す為に様々な術式が必要なのだ。
その地下室にて、今宵、人間にははるか昔に失われたといわれている秘儀が行われようとしていた。
魔法陣上に、きっちり計った材料をばら撒いていく。水や鉄分といった生き物を形作るには欠かせない、されど普遍的な材料を。
「後はこいつや」
そういって振りまかれる銀色の何か。個体ではない。されど液体でも、気体でもないそれは、幾つもの試験から飛び出し、魔法陣に誘導されるがごとく魔法陣の上でスズメバチの巣のような渦を巻いた。
トクリと、心臓が鼓動する。横島は覚悟を決めるように息を吸い、言霊を紡いだ。
「閉じよ、閉じよ、閉じよ。繰り返すことつど三回、魔を呼び、神を呼ぶ」
右手に持った短剣で左手を傷つけ、一滴、血を魔法陣に落とした。
「此処に最後の一がそろい、三界は循環する」
目を瞑り、最後となる節を乾いた唇から発する時間は、これまでの何よりも長く永遠にも近い刻を感じた。
「告げる。我が誓いは汝が下に、汝が剣は我が下に、出でよ三界より生み出されし魔の者よ、聖なるものよ、妖なるものよ。皆等しく生み出されしものよ!!」
全てを放った瞬間、魔法陣がスパークし、蝋燭の火がかき消え様々な色の稲妻が走った。ばらばらだった材料は、無限の形に変化しまるで心臓が鼓動するかのように脈動する銀色の物質に吸い込まれた。
銀の物質は流動し、魔法陣の力か一滴の血が、ゆっくりと宙に浮かび、まるで飲み込まれるかのごとく銀の流動に吸収される。ろくろに回された粘土の如く紅い線が一つの道を完成させたとたん、魔法陣が地下室を埋め尽くすほどの吸血鬼であっても目を開けて入られない光を発し、魔法陣ごと光が掻き消えた。
ごくりと音を立ててつばを飲み込む。早鐘を打つ心臓を押さえる術はなく、はやる気持ちで魔法陣の中央だったその場を見た。
漂っていた煙は、風が吹くことの無い地下室でされど何かにかき消され、覆っていたそれを露にする。
横たわったそれに近づき、震える手で抱き起こす。目を開くときを今か今かと時間が一向に経たない事に苛立ちながら待つと、漸くその澄んだ蜂蜜色の瞳を開けた。
「おめでとう。そしてありがとう」
何故だろうか緊張していたはずだというにもかかわらず、その言葉が自然と出てきた。それは事前に考えていた言葉とは百八十度も方向性が違い、その言霊に存在が左右されるというのに、何故かそれこそがあっていると確信にも似た何かを感じつつ、自然と細まる目に慈愛の色を確かにたたえて、優しくその真紅の髪を撫でながら言霊がこぼれた。
「ずっと…ずっと待っていたよ。生まれてきてくれてありがとう、琥珀」
ありがとう。何度も繰り返すその言葉に、使い魔として生まれたその女性は確かに微笑んだ。


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