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No.33147の一覧
[0] 【戦国ランス】DQNな元会社員(28)に南条蘭を救わせてみた【一話完結】[Shinji](2012/05/22 13:47)
[1] 【戦国ランス】DQNな元会社員(30)にJAPANを救わせてみた【前編】[shinji](2016/04/14 05:36)
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[33147] 【戦国ランス】DQNな元会社員(28)に南条蘭を救わせてみた【一話完結】
Name: Shinji◆b97696fd ID:1391bf9d 次を表示する
Date: 2012/05/22 13:47
警告:タイトル通りの内容なので回覧には御注意下さい。
















――――これは鬼畜戦士が奴隷と共にJAPANを訪れる半年前の話。




北条家が纏める陰陽師。

主に武田家の勢力拡大を防ぐと同時にJAPAN全土の鬼退治・地獄の穴を塞ぐ重要な役割を担っている。

そんな北条傘下の南条家の当主に最近 任命された南条 蘭。

彼女は今回も鬼の討伐の為に上杉家の領地に足を踏み入れていた。

最近になって力を隠していた強力な鬼2体が遂に尻尾を出したらしいのだ。

場所は小さな村 付近の山奥。

よって其処から鬼が降りて来る時を待ち構えて退治する必要が有ったのだが。

蘭は側近の女性の報告を聞いて顔を顰(しか)める。


「……1人だけ避難しない人間が居たですって?」

「は、はい。鬼は村の人間を丸ごと食い尽くす程の危険な存在と言っても断固として……」

「理由は聞いたの?」

「え~っと……大事な商売道具を荒らされたら困るから俺は此処から動かないと」

「北条家である程度の保障はされると言っても?」

「はい。明確な証拠が無い限りは受け入れられないと言っていました」

「……呆れたわね……命が惜しくないのかしら」


今回 炙り出された鬼は南条の当主の蘭はおろか、部下達全員の腕を持ってしても危険な存在であった。

よって念入りな準備が必要だったのだが、それに必須なのが村の人間達の避難である。

だが一人だけ強情な人間が居た様で、このままでは万全な態勢で2体の鬼を迎え撃つ事が出来なくなる。


「そんな訳で蘭様。此処は心苦しいでしょうが捨て置くべきかと」

「……何ですって?」

「正直な所 その男と対面した時は非常に不愉快でした。遣るなら勝手にしろ、精々頑張ってくれ。
 鬼はともかくお前らが店を壊したら犯す等、私達の使命を微塵にも理解する気は無い様子でした」

「…………」

「今回の鬼は強力無比。ですから私達の危険よりは一人の犠牲で済ませるべきかと。どうか御検討下さい」

「…………」

「蘭様!!」

「聞いてるわよ。でも早雲ならどうすると思う?」

「そ、それは――――」

「きっと小細工無しで鬼を倒して、村を荒らさせはしない筈」

「…………」

「だから今回はこっちから討つわよ? 説得してる時間も惜しいわ」

「ま、待ってください!」


北条早雲。

北条家の当主で有り、北条家と言う国の国主でもある。

彼は桁違いに陰陽師としての資質に優れており、蘭がライバル視している男でもあった。

此処でメタな発言をしてしまうと、互いの感情はまだ恋愛感情に進展していないという状況だ。


「早雲に遅れてなんかいられない……強い鬼の1体や2体、私達で倒してやるわ!!」




――――しかし自分の選択肢が無謀であった事に彼女が気付いたのは交戦して直ぐの事だった。




「式神・縛!!」

『オオオオォォォォッ!!!!』


「式神・鳥!!」

『アタルモノカ!!!!』


「くっ!? な、何て強さなの!? 話と違うじゃない!!」

『ハハハハハハッ!! ミクビラレテ貰ッテハ困ルゾ!?』

『我々ハタダ、チカラヲ抑エテイタニスギンノダヨ!!』


赤い鬼は驚異的なパワーを持っており、部下の拘束式神をチカラだけで引き千切り接近すると頭を握り潰し。

また青い鬼は鳥の式神の弾幕を圧倒的なスピードで掻い潜り、爪の一撃で部下のカラダを貫通させる。

対して冗談ではない蘭達だったが、例の男を捨て置いておけば どれだけ楽だったかと考えても今や遅し。

どんなに犠牲が出ても目の前の鬼を排除する事を優先させなくてはならない。

それが彼女達の選んでしまった選択肢であり、陰陽師としての使命なのだから。

よって蘭は自分の無力さで歯を噛み締めながらも、目の前の巨大な赤鬼と対峙した。


「私が出るわッ! 皆は私の援護を!!」

「か、畏まりました!!」


『次ハオ前ダ!!!!』

「!? 防御式神!!」


≪――――ガキイイイイィィィィン!!!!≫


『ムゥ!?』

「式神・蛇!!」


『オォッ!? コレハ何ダ!?』

「弱体化の式神よ!! 辛いでしょう!? さあ皆ッ! 今のウチに片方を――――えっ?」


『クカカカッ! 皆トハコイツラノ事カ?』

「!? そ、そんな……っ!!」

『俺様ノ動キニツイテコレナケレバ、大抵ハコンナモノヨ』

「(甘く……見過ぎていた……完全に私の落ち度だわ……)」


部下を2人殺された怒りでモチベーションが上がり、赤鬼を相手に善戦していた蘭。

だが支援が無いので後ろを振り返ってみれば、一瞬の間に青鬼に部下達の首が飛ばされていた。

退治に向かった陰陽師は蘭含めて8名だったが、青鬼 相手では時間稼ぎすらできなかったのだ。

そうなると蘭の足は竦み式神を出す事など出来る筈は無く、十数秒前とは真逆の士気となる。

対して赤鬼は正面から、青鬼は背後から彼女を挟む様に距離を詰めて来る。


『避ケテ見セルガ良イ!!』


≪――――ガシュッ!!!!≫


「ぁがっ!?」


『手加減シテヤルゾ!?』


≪――――ゴキッ!!!!≫


「ぐふぅっ!!」


青鬼の爪が蘭の背中の皮膚を衣服ごと切り裂き。

赤鬼の鉄拳がフラつく蘭の鳩尾に炸裂して、吹っ飛ばされた彼女は青鬼の真横を通り過ぎて地面を転がる。

もはや既に戦えるような気力は残っていなかった。


『危ナイデハナイカ』

『スマンスマン』

『ダガ呆気ナイモノヨ』

『ウム。デハ早速コイツラヲ食ラッテカラ、マタ姿ヲ隠ストシヨウ』

『精力モ発散サセネバナ』

『今ノ小娘ガ丁度ヨカロウ』

「(早……雲……)」


息も絶え絶えと言った様子の蘭を死ぬまで犯し抜こうと近付いて来る2体の鬼。

今まさに南条蘭は、有る介入者の御蔭で正史を待たずに命を失う瞬間であった。

だが南条蘭と言う人間が此処で死ぬ。

"それだけ"は今の時点では起こさせては成らず、一つの影が2体の鬼と蘭の間に着地した。


≪――――ダンッ≫


『新手ダト!?』

『何者ダッ!?』


その着地したモノとは体勢を低くした人間であった。

身長は170~180の間ほどの中肉中背で、黒い瞳に黒い短い髪の男性。

年齢は20代後半くらいで、両手にはカタナを一本づつ持っており……所謂(いわゆる)二刀流なのだろう。

そんな黒髪の男は鋭い目つきで2体の鬼を睨み付けつつ立ち上がると、こう叫んだのだった。




「通りすがりの……お弁当屋さんだよおおおおぉぉぉぉッ!!!!」
















戦国ランス 二次創作SS

DQNな元会社員(28)に南条蘭を救わせてみた
















――――完全にやらかした。




――――どうしてこうなった。




2匹のクソ鬼を血祭りにした俺は、唯一の生き残りで有った南条蘭の口に世色癌を放り込むと。

眼福に感謝しつつ上着を羽織らせて店兼自宅の一室に担ぎ込んだ。

その際呼吸の荒かった南条だったが、薬の恩恵も有ってか早い段階で安定してくれた。

よって峠を越えたと見て俺は安堵すると同時に頭を掻きつつ溜息を吐く。


「原作には介入する予定なんて無かったのによォ……」


何を隠そう俺は半年前に唐突にランスの世界に飛ばされた。

原因は全く覚えてないので考えるダケ無駄だ。

そんな俺は某企業で会社員をしており、外面は良いがオフでは好き放題遊ぶのが常だった。

まァ死んで痕跡をPCに残す様なヘマはしていないが、自分の運命を呪ったのは間違い無い。

何せ27年築いて来たモノが全て失われた上に、家族や仲間に何の別れも告げられなかった。

事故死で有れば後者は無理だろうが……前者に関しては冗談ではない。

だが荒れてもモンスターやランスみたいな人間に殺される危険性を上げるに過ぎない。

よって俺は現実に泣き寝入りするしかなく、最初に倒れていた上杉領で仕事を探す事にした。

しかし良い年した男性と言う事でマトモな職には就けず、残っているのは軍事関係のみ。

……とは言え人間やモンスターと生死を分けた戦いなどゴメンだったので、適当に料理店の厨房で働いた。

そんな中 料理のノウハウが分かってくると、俺は忘れていたレベル神の呼び出しをした際 驚愕する。

何とアガサ・カグヤから告げられた俺のレベルは27(年齢と同じ)らしく、普通に中堅クラスだったのだ。

其処で俺は厨房を飛び出して"ボタン狩り"で生計を立てる事を選び、何時の間にか弁当屋を一人で開いていた。

……と言っても毎週5回上杉の城に50食のボタン弁当を持って行くダケの簡単な経営です。

だから原作に関しては どうでもいい。

俺みたいなカスを連れて来て何を期待してるか知らんが、ヒトの人生をブチ壊しにしたクソ鯨ヤロウ。

奴の期待に応えるような行動を僅かにでもしたら負けな気がするので、飽きる迄 弁当屋をする事にしたのだ。

だが"今回"の陰陽師の件は完全に予想外……

毎日のボタン狩りと暇潰しの佐渡金山遠征でLvは何時の間にか60近くに成っていたので、俺は鬼より強い。

だから店を襲われて荒らされたら面倒なので、その時だけ対処すれば良いかと楽天的に考えていたが……

まさか南条蘭が討伐に来ていて、俺が避難しなかった為に死なれそうになるとは思わなかった。

てっきり村を主戦場にすると思ったのに、一人の人間の身の安全の為に打って出るとは……

強い鬼ってのが中々来ないから面倒だが見に行ってみると、瀕死の南条がレイプされる直前だったのだ。

その為 咄嗟に助けに入ってしまい、2体の鬼を倒して今に至るというワケだ。

ちなみに俺の才能限界値は同じく現代人の小川健太郎の様に99な線が濃厚である。

故に楽勝だったワケだが、レベル30ちょいじゃ勝てるような相手じゃ無かったんだな鬼ってのは。

最初は鬼如きで荷物纏めて逃げろとか言われて頭に来ていたが、酷い対応だったと言わざるを得ない。

基本他人には愛想を良くしていたつもりだが、寝ている時を起こされた俺の機嫌は最悪だったのだ。

明日は週一の楽しみで有る"巫女機関"に行くつもりだったのに、避難とか冗談じゃ無かったぞマジで。

尚 俺は境遇が酷い為か負のストレスが溜まりやすいらしく、毎回クジが当たってくれるのだ。

これが唯一の俺の癒しで有り、この世界に来て良かった事だ。

原作を考えると良い事ではないが関係無ェ。

ランス達が勝手に何とかするだろうし、精々頑張ってくださいマジで。

もし倒したら別のストレス発散方法を考える必要が有るけどな。

そんな事を考えつつ仮眠を取ったりしていると、次の日の昼辺りで南条が目を覚ました。

巫女機関への旅はオシャカとなったが、コイツを蔑ろにして置く訳にはいかんし諦めるしか無いか。


「んぅ……っ?」

「目が覚めたか」

「こ、此処は……」

「俺の店だ」

「!? だ、だったら皆は――――痛ッ!!」

「落ち着け。順を追って説明する」

「…………」


説明順序を解説すると。

生き残りは南条だけだったと言う事。

鬼は俺が始末したと言う事。(遺品を見せた)

今は翌日の12時だと言う事。

それらの話を聞いて南条はやはりショックだったらしく顔を青くして体を小刻みに震わせていた。

原作と同じで真面目そうなヤツだからな。

無謀な選択肢を選んで招いた結果が取り返しの付かない事だったのを今になって再認識したのだろう。

だが本来俺みたいな非常識なアホが居なければ南条はしっかりと正史に繋げる行動を取っていた筈だ。

つまり俺も俺で普通の農民と同じ行動を取らないと戦国のキャラに悪影響を及ぼす事もあるってか。

だったら最初っから南条の遣いって言えっつ~の。

しかしながらだ。

遣らかしてしまったのは仕方無いので俺は何とか軌道修正を図る。


「すまなかった」

「えっ?」

「俺が避難しなかった所為で沢山の部下を死なせちまったみたいで」

「そ、それは……私達が未熟だったからで……」

「いや違うだろ。強い相手には相応の対策を練る事が必要だったが、俺の行動がぶち壊しにしちまった」

「…………」

「別に恨んでくれても構わねェ。だが協力させてくれ」

「ど、どう言う事ですか?」

「鬼退治ってヤツをだ」

「!?!?」


聞いた話によると南条家は今回の失態を考えると著しく弱体化するのは必至らしい。

だが完全に俺の所為なので罪悪感を抱かざるを得なかった。

他人の事なんぞ知らんがこっちに来てからの心情だったのだが、正史に影響が出るなら話は別だ。

適当に南条をフォローしてマイナスをゼロにはして貰わんと寝覚めが悪い。


「……と言う事で例の鬼は南条が殺った事にしろ。だったら評価は下がりはせんだろ」

「は、はい」

「んで上杉領と武田領の鬼退治を担当して、その際は必ず俺に声を掛けろ。力を貸してやる」

「でも週末に限るんですね?」

「本業は弁当屋だからな。それを蔑ろにはできん(巫女機関は惜しいが)」

「そ、それにしても……何でそんなに強いのにお弁当屋さんをしてるんですか?」

「お腹を空かした皆様に美味しい料理をお届けする。それが俺の生き甲斐だからだよ」

「!?(だから避難をしなかったのね……)」


――――ぶっちゃけ適当だが彼女の性格を考えると納得しざるを得ないだろう。


「そう言う事で気をつけて帰るんだぞ?」

「な、何から何まで有難う御座いました」

「礼とか止めろよマジで。それよりも遣いを出すなら明るいウチにしてくれると助かる」

「分かりました」

「そんな訳で今度から宜しくな? 死なせた命分くらいは働いてやるよ」

「お……御願いします」


今の南条の精神状態は目が死んでるし危うい状況だった。

本来 俺の適当な態度や協力の無理強いに文句でも言って来そうだったが、全て流れに身を委ねている。

だが好都合でもあるので鬼を俺が倒す事で南条に自信をつけて頂くしか有るまい。

そんな訳で打ち合わせが終わると南条にお帰り願う訳なのだが、彼女は何か言いたい事が有る様だ。


「???? どうした?」

「そう言えば、まだ名前を聞いていませんでした」

「あァそうだったな……正直 名乗る程でも無いが」

「…………」




――――此処で名を明かす事に成ったワケだが、考えた名前が名前だったので気恥ずかしさを隠して言う。




「"宮本 武蔵"だ」
















≪ガラガラガラガラ≫


「ちわ~っす、宮本屋で~す」

「むっ? 貴方ですか。今日も御苦労様です」

「ボタン弁当50食 お届けに参りました~」

「それでは手伝います」

「有難う御座いま~す」

「それにしても」

「はい?」

「コレだけの食事を毎日毎日 良く引いて来れるものですね」


数ヵ月後。

本業 弁当屋・裏で鬼退治侍となった俺は何時もの様に上杉の城を訪れ弁当を届けに行った。

尚 姿としては動き易く作られた黒い着物を着用し、二本の安物の刀はリヤカーに隠している。

んで仕事の際 上杉家のモブ娘兵と全く同じ姿をしている何時もの門番の人と会話を交わす。

だがモブ娘と同じ背丈と容姿をしているのは彼女だけであり、其処は流石に原作と相場が違うのはさて置き。

以前は素っ気無くって手伝ってはくれなかったが、休まずに通い続けている事から俺を認めてくれたのだろう。

今はこうして弁当を降ろすのを手伝ってくれるようにもなった。


「鍛えてますからね~、何て事無いっすよ」

「前から感じていましたが何か武術の心得でも有るのですか?」

「いや全く。上杉じゃ男が戦う必要なんてコレぽっちも無いですからね」

「それはそうですが……そうだッ! 宮本さん」

「何ですか?」

「これも何かの縁ですし、上杉家の厨房で働いて見る気は有りませんか?」

「!? どんな冗談スか?」

「とんでもない。今や貴方の作るボタン弁当は取り合いに成る程 評判が良いんです」

「へっ?」

「始めは我々の様な武士は口にせず下の者達に回していましたが、いざ食べてみると本当に美味しくって」

「…………」

「以前は勝子様と虎子様がお弁当の取り合いで大喧嘩していましたよ」

「…………」

「ですから宮本さん次第では私の紹介で働いて貰う事も出来ますが?」

「確かに魅力的な提案では有りますね」

「それでは!」

「でも俺って女性ばかりの所って苦手なんですよねー、だからどうにもなりませんよ」

「あら……」

「折角だけど すんません。まァ余裕が出たら弁当の数を増やしますんで食べてやって下さい」

「わ、分かりました。御苦労様です」

「それでは毎度あり~!」

「(……やっぱり上杉の男性は私達を快く思っていないのね……)」


う~ん、やっぱ現代の知識を活かして有名どころに仕える方が安定した生活が見込めそうだ。

だが上杉の未来を考えると御免だぜ。

正史通り進んでも裏切りで上杉は落ち、まかり間違ってザビエルに滅ぼされればレベル99でも勝ち目は無い。

また冒険者に成って有名になり調子に乗ってもランス3でサテラにボコられたコンビみたいになるだろう。

男な時点でランスに何も悪い事をしていないのに殺される可能性も高いし、チキン街道まっしぐらである。

だが南条の事に関しては除く。

まァ俺の事は彼女の部下も含めて他言しない様に言っているので、大丈夫かとは思ったが……

やはり難しい希望だったらしく、ある人物が俺の元を訪ねて来た。


「真田……透琳?」

「いかにも。以後お見知り置きを」

「その武田の大軍師さんが、何のご用件で?」

「それは――――」

「言って置くけど回りくどいのは無しで」

「ならば単刀直入に申そう。宮本殿。貴方の力を是非 武田の天下の為に役立てて頂きたい」

「!? 何の冗談で? 俺は只の弁当屋ですぜ?」

「しかし本来は鬼を凌駕する実力を持った武士と聞いておりましてな」

「ど、何処でそれを?」

「なに。こう言う立場にもなると、自然と耳に入ってくるものなのですよ」

「……(あのアマども喋りやがったな……)」

「では返答は如何に? 仕官の暁には出来る限りいい環境を用意するつもりですが」

「断る」

「……理由をお聞かせ願えますかな?」

「言うつもりは無い」

「誠にそれで宜しいので? 武田が天下を取れば信玄様の元 上杉の女性・北条の陰陽師の様に差別もなくなる」

「…………」

「あのお方程 JAPANを治めるに適した方は居らぬでしょう。宮本殿もお会いすれば考え方が変わるはず」

「もぬけの殻でもか?」

「!?!?」

「……って事で交渉は決裂。仕込みの途中なんで帰ってくれません?」

「……クッ……畏まった。ですが諦める気は有りませんぞ?」

「御自由に。今度は土産でも持って来てね」

「それでは御免」


まさか武田にも目を付けられるとはね。

そろそろJAPANを離れて大陸に渡った方が良いかもしれん。

だが南条が自信を取り戻すのには、もうちょい掛かりそうだ。

よって正史の開始までは付き合ってやるとするか。
















「おりゃああぁぁッ!! 食らえやカスが!!!!」


≪――――ザシュッ!!!!≫


『グアアアアァァァァッ!!!!』

「(これで腕二本!!)」

『ナ、何ダ……コノ人間ハ!?』


ボタン狩りと村周辺の雑魚モンスター苛めを続けて俺のレベルは既に70となっていた。

鬼の存在を考えて巫女機関に行く頻度を減らし、幾らでも湧いて来る雑魚モンスターを倒す簡単なお仕事です。

だがレベルの限界が低い上に才能限界に成っていると魔物はウザい以外 何物でも無いなマジで。

それはさて置き。

俺は2メートル半は有る巨大な鬼の両腕を容易く斬り落とすと、一歩引いて後ろの人間に叫ぶ。

仕留める事は容易いのだが、それでは意味が無いのだ。


「トドメだ、南条!!」

「はいっ! 式神……虎!!」

『マ、待テ!! グアアアァァッ!!!!』


「一丁上がりか」

「哀れなものね」

「何にせよ大したヤツじゃなくて良かったな」

「み、宮本さんが強過ぎるんですよ」

「馬鹿言え。皆のサポートと強化付与の恩恵だ。一人だとビビって戦えるかっての」

「現に最初 鬼2匹を倒してたじゃないですか」

「そりゃ相場が別だ。女が殺られそうになってて躊躇できるかよ……って俺 恥ずかしい台詞禁止っと」

「と、ともかく。今回も御手伝い有難う御座いました」

「問題ない。だが今ならあの程度の鬼になら勝てるんじゃないか?」

「そう……かもしれません。でも苦戦は免れないと思います」

「何にせよしっかり対策して置けば被害も出ないさ」

「うッ……耳の痛い話です」

「同じく。そんな訳で俺は帰るぞ? 後始末宜しく」

「あッ、はい」


――――鬼の死体は確かにグロくて戦いたくないが、俺も何時の間にか成長したモンだ。


「お疲れ様でした。蘭様」

「貴女達も有難う。でも私は大した事はしていないわ」

「ですが最近の戦果は素晴らしいです。宮本さんの御蔭で南条は桁違いの功績を残せています」

「…………」

「いっその事、宮本さんを南条家に迎い入れては?」

「!? だ、だだだ駄目よッ! 今は忙しくてそれ所じゃないわ!!」

「そうですね。蘭様には早雲様が居りますし」

「ち、ちょっと……早雲とは幼馴染って言うダケでそんな気も無いわよ」

「ではやはり宮本さんですか?」

「いい加減にしないと怒るわよ? そもそも戦争が一段落しないと考える余裕なんて無い」

「ですから戦争を早く終わらせる為にも彼をですね」

「だから彼とは鬼退治を手伝って貰うって言う契約しかしてないの。仕官については当の昔に断られたわ」

「あらまあ」

「それに宮本さんに頼り過ぎてもいざ彼が居なくなったら困るでしょう? だから執着するワケにもいかない」

「ですが何度か彼の店の手伝いに赴いた事が有ると聞きましたが?」

「!? だ、誰から!?」

「宮本さん本人から」←自分の事をバラした仕返しらしい

「あ、あんの男~ッ!!」

「それはさて置き」

「……ッ……」

「蘭様も確実に成長されていると思われます」

「そ、そう?」

「以前は規模の大きい地獄の穴を塞いだでは有りませんか」

「……確かに以前の私だと無理だったでしょうね。早雲なら簡単に出来ただろうけど」

「ですから、もっと自身を持つべきかと。それでは死んだ者達が浮かばれません」

「ご、ごめんなさい」

「では私達は事後処理を致します。蘭様は一足先にお帰り下さい」

「分かったわ。後は頼むわね? ……ハァ」








「……もっと力が……欲しいよ……」








『――――欲しいか?』








「えっ? だ、誰?」








『…………』








「気の所為……よね?」








――――そして"ある日"を境に、南条蘭は武蔵の元を訪れなくなった。
















(戦国ランス)開始1年前……宮本武蔵 登場

登場三ヵ月後……宮本弁当屋の開業

開始半年前……宮本武蔵 南条蘭と契約

開始の直後……宮本武蔵 南条蘭と鬼退治継続中

瓢箪が一つ割れた瞬間……南条蘭の脳内に謎の声

更に一ヵ月後……南条蘭 音信不通 ←いまここ
















「……あんの馬鹿ヤロウが……」


俺がランスの世界に来て1年と数ヵ月後。

織田の快進撃が始まって暫く経つと南条は俺の元に姿を現さなくなった。

間違いなくアイツが"力"を得たからだろうが……やっぱりそれに頼る事に成っちまったか。

まァ仕方ないよな。

アレを使ったスキルは超強力だし、何よりコレで正史通りに話は進む。

だから俺の出る幕はもう無い。

以前の様に鬼退治が巫女機関へのウハウハに戻るだけに過ぎない。

よって俺は気を取り直すと何時もの様にリヤカーを引いて上杉の城を目指した。

無論ドンパチが始まって危なくなれば上杉領を離れるつもりだ。


「ちわ~、宮本屋で~す……って、アレ?」

「どうした?」

「何時もの兵士の人は、どうしたんで?」

「あァ……彼女は戦死したよ」

「!?!?」

「それで、お前が宮本だな?」

「はい」

「これを受け取ってくれ」

「……刀?」

「彼女の業物だ。自分だと思って使って欲しいらしい」

「俺は只の弁当屋なんですけど?」

「お前の事情など知らん。私は只 言われた事をしただけだ」

「そうですか」

「ともあれ最近 奴の機嫌が良かったのもお前の御蔭なのだろう。一応 礼を言わせてくれ」

「…………」

「さてと。今は戦時中で皆腹を空かせている。100食は用意できたのだろうな?」

「当然スよ」

「手伝おう」
















「……ハァ」


今日は自分で決めた休日だが、巫女機関に行く気も無く畳に寝転んで考える。

此処に来てからは将来なんてどうでも良かった。

でも何となく望んでたんだ。

戦争が終わるまで此処を離れる必要が無ければ、上杉で嫁さんでも貰って適当に暮らすのも良いかなって。


「最近は飯にも誘えてたんだけどなァ……」


その対象が例の娘だったら良いな~とか考えた時も有ったんだが、そりゃ死ぬよな武士なんだし。

ゲームじゃ兵の補充は容易だったが、この世界じゃバタバタ死ぬのが当たり前なんだろう。

だがそれは南条が絶望的な時点で割り切っていた筈だ。

なのに何故 例の娘とのフラグを期待していた?

現に南条の部下達を死に追いやっておいて、馬鹿馬鹿しいにも程がある。

よって俺は更に気を改めて弁当屋としての仕事を続けるのだった。








――――そして2週間後。








――――上杉の城が裏切りにより落ちても、俺の行う事は一緒だった。








≪ガラガラガラガラ≫


「ども~、宮本屋で~す」

「んっ? 何だ貴様は」

「見ての通りの弁当屋です。本日も100食のボタン弁当を御届けに参りました(やっぱ門番は男か)」

「聞いていないな。だが良い匂いだ」

「料金は前金制ですよ?」

「ふんッ。知らんな……弁当に免じて見逃してやる、さっさと消えるが良い」

「糞が」

「なんだと?」

「いぃえ何でも。ところで何時もと違って女性の姿が見当たりませんけど?」

「うん? 戦で城を留守にしていた奴ら以外の殆どは皆 殺したか監禁しておるわ」

「なん……だと?」

「何なら貴様も楽しんで行くか? 安くしておくぞ?」

「…………」

「必要無いか。見た感じ金は持っておらぬだろうしな」

「…………」

「むっ? 何だ? どけ。食い物は置いてゆけと言ったではないか」

「それ以上 喋んな」


≪――――カシュッ≫


「がっ!?」

「なっ!? き、貴様何をしている!?」

「馬鹿の喉を斬った。無銭飲食未遂の容疑で死刑」

「ふざけるな!! 自分が何をしたか分かっているのか!?」

「グダグダ言ってね~で纏めて掛かって来い、全員叩き斬ってやる」

「こ、こいつッ!」

「遅すぎ」

「ぎゃああああぁぁぁぁッ!! 腕がッ! 腕がああぁぁ!!!!」

「何だコイツは……つ、強いぞ!?」

「囲めッ! 囲むんだ!! 纏めて掛かれェ!!」

「鬱陶しい!! 俺を殺したきゃ軍神 呼んで来やがれッ!」


実際に来られたら余裕で逃げるのは さて置き。

ムシャクシャして殺った。

今は反省している。

よって気付いた時には勝手に手が動いて、右手の遺品の刀で俺は門番の男の喉を斬っていた。

そして斬り掛かって来る雑兵を2振りの刀で捌きつつ、俺の足は勝手に上杉の城に向かって行く。

本気で上杉家と民の事を想って戦死した、あの娘の代わりが奴等の様なクズだなんて絶対に認めねェ。


「うわああああぁぁぁぁっ!!!!」

「ち、近付くなッ! 殺されるぞ!?」

「一体誰なんだ、コイツは!?」

「まさか軍神の兄だとでも言うのか!?」

「それは中々 面白い冗談だな」

「ひぃっ!?」

「た、助けてくれーっ!!」

「ふん。もう向かって来ねー奴は殺しゃしねーよ。だが質問に答えろボンクラ」

「し、質問?」

「ななな何でしょうか?」

「県政のクソは何処に居る? 5秒で答えろ」








――――そして奴を一人で始末した事で、今 此処にJAPAN最強の剣豪"宮本 武蔵"が誕生してしまった。








――――嗚呼もう何とでも言ってくれってばよ。








――――殺りたい奴は殺ったし、もうJAPANからは逃げるからさ。








「……足痛てェ……あんなに走ったの生まれて初めてだぜ……」


県政の首を飛ばした俺は上杉謙信や直江愛と会う事も無く、天守閣から飛び降りる様にして逃亡した。

そして貴重品を纏めると自宅の店を放棄して武田領まで走って宿を借りる。

んで明日には島津領を目指して、クソッタレな大陸で目立たない様に暮らす事にしよう。

ファンでは有るがランスと会うなんて問題外。

またルドラサウムはともかく女神アリスもブチ殺したくて仕方無いが、チキンな俺には無理な話です。

よって翌朝には元足利領の【まむし油田】に向かうつもりだったのだが……








――――俺の足は勝手に北条領の【江戸】を目指していた。








――――やっぱり、死なせてたまるかよ。








「いでよ……朱雀!!」

『ギャアアアアァァァァッ!!!!』


「蘭様ッ! 流石です!」

「ああも容易く鬼を倒してしまうとは……!!」

「この調子だと、次回の国主だって狙えますよ!」

「ち、ちょっと……買い被り過ぎよ」


≪――――ザッ≫


「其の通りだな」

「!? 何者だ!?」

「怪しい奴だッ」

「いえ……違うわ。私達の味方よ」

「蘭様の御知り合いですか?」

「うん。以前私達に力を貸してくれた宮本さんよ」

「(ごっそり配役が変わってやがる。大方 戦死か調子に乗ったか……)」

「そ、それではこの者が凄腕の――――」

「いやいや。ただ弁当屋を営んでいたダケの宮本 武蔵だ。宜しく頼みますよっと」

「……ッ……」

「ところで南条。何で俺が来たのか分かるな?」

「!? え、えっと……ごめんなさい。今迄 凄く忙しくって……」

「大きな力も手に入れたし、引っ張りダコってか?」

「で、でも蔑ろにしていたワケじゃ無いの。宮本さんに頼り過ぎって言うのも良くないって思ったから」

「そりゃ良い心掛けだな」

「だから来てくれて有難う。宮本さんの所には近い内に行きたいと思ってたし」

「成る程……な!!」


≪――――ガッ!!!!≫


「ぐっ!?」

「ら、蘭様ァ!?」

「貴様……やはり敵だったか!!」

「五月蝿ェ!! "焼き鳥"を良い事にコイツを持ち上げるダケだったテメェらに何が分かる!?」

「戯言をッ!」

「蘭様を助けるのよ!!」

「さぁ! 手加減してやるから本気で掛かって来いッ!」








――――こうして南条を拉致した俺は、北条家から手配される事と成った。








何とか伊賀領に逃げ込むと、俺は峰打ちで昏睡状態にさせていた彼女が目を覚ますのを待った。

すると南条は怒りを露にして俺に吼えるのだが、知る限りの朱雀に置いての情報を流すと顔を青くする。

このままではザビエルの使徒で有る朱雀(戯骸)が目覚め、自分のカラダが弾け飛んでしまうからだ。

だがスキンシップ無しで何とか彼女を落ち着かせると……俺は考えた対策をすべく有る人物の元に赴いた。

原作をプレイして分かったが、南条が朱雀の呼び掛けに答えられない様な状態にしてしまえば良いのだ。


「……あんたがプルーペットで間違い無いな?」

「いかにも。あっしに何の御用でっか? 宮本はん」

「無理を承知で済まないが、一人"ふくマン"状態にして欲しい娘が居る」

「ほほぅ。あんさんも悪でんなァ……高くつきまっせ?」

「生憎だが金が無い。早急に揃えるつもりだが幾ら掛かる?」

「う~ん……此処はJAPANでっから手数料を含めると10万ゴールドってトコですわ」

「10万ゴールドか。ボタン弁当20000食分かよ」

「見た感じ、あんさんは金を持ってる様には見えまへんなぁ? 無い袖は振れまへんで?」

「だったら鬼の骨でどうだ?」

「おっ? 実は下手なゴールドより、そっちが良いですわ。何個あります?」

「100個ほど有る場所に埋めてるが?」

「ひ、ひゃくぅ~!? ホンマでっか!?」

「それで足りたりするのか?」

「むしろお釣りが来る程……じゃなかった、鬼の骨100個で手を打ちまっせ~?」

「では爆弾は無しで頼む。それで洗脳はシッカリして欲しいが、容易に元の状態に戻せる様にしてくれ」

「難しい注文でんなァ……出来ない事は無いですけど、戻すのにも同等の相場が掛かりまっせ?」

「構わない。其の時は其の時で必ず金は用意する」

「ほほ~ッ、それなら宮本はんは今から御得意様やな~。今後とも宜しく頼みまっせ?」

「此方こそ宜しく頼む」

「(鬼の骨を100個も集められるなんて、今の内に仲良く成った方が儲けモンやしな)」

「ところで」

「はいな?」

「何故プルーペット商会の代表が此処に居るんだ?」

「簡単な事でっさ。JAPANにはランスはんがおる。それダケで金は動くんでっせ?」

「納得」

「では鬼の骨の場所を教えてもらいましょうか~?」

「其の前に警告して置くが、下手な事をしたら命は無いと思えよ?」

「わ、わかってますがな~」
















更に時が過ぎると香姫達により織田信長が討たれ、更にはザビエルが島津を乗っ取り魔軍となった。

それにより織田家……いやJAPANは魔軍と戦う羽目となり、それを機に姿を眩ましていた俺は動いた。

いや~、こんな事に成るんだったら最初から信長が倒れたって時点で性眼にチクって置くべきだったぜ糞が。

んで今現在は織田の城で会議が行われていて、有名な武将達が連なっているワケなのだが……

その隅っこには俺もおり、誰とも目を合わせる事無く腕を組んで瞳を閉じ話を振られるのを待っていた。


「ところでだが3G」

「何でしょう?」×3

「あそこに居る見ない顔の野郎は誰だ?」

「…………」


「あの方は」

「織田の用心棒を希望された」

「凄腕の剣豪」

「宮本武蔵と言う方です」×3

「…………」


「み、宮本武蔵ィ!?」

「それって……!!」


≪――――ガタッ≫


「知ってるのか? 健太郎。美樹ちゃん」

「は、はいッ! "宮本 武蔵"って言ったら僕の世界では最強の剣士だと言われていた人ですから!!」

「何せ60回以上も強い人と真剣勝負をして、一度も負けなかった程 強かったって話ですよ~ッ?」

「なんだとぉ~? むむむ……生意気な!!」


魔軍が活性化してしまった今、もはやJAPANから逃れるドコロではない。

そもそも南条を救う為に一時的に彼女を死んだ魚の目状態にさせてしまったので、魔人を倒して貰うしか無い。

だがロードを繰り返した事を考えると非常に分が悪い戦いだそうなので、金の為にも協力する事にしたのだ。

よって3Gに紹介して貰ったワケだが、当然 名を知る小川&来水のアホコンビが興奮して身を乗り出す。

女性の上杉謙信やら小柄な毛利元就を見ても実感が無かった様だが、やはり宮本武蔵のビックネームは強い。

だが俺の気持ちも考えずに持ち上げるなよ……毛利てる・吉川やら他 多数が不敵な笑みを浮かべてんだろ。

決闘とか勘弁してくれよマジで。

南条は完全に不意打ちだったから何とか成ったが、ランスみたく旨く気絶とかさせれねーよ。

そもそも馬場さんやら上杉謙信には勝てる気がしねーし、ランスに傷でも負わせりゃ大問題だ。

しかし此処が漢の魅せ時なので、俺は寡黙な浪人を装って身形を正すと鬼畜戦士を見据えて言う。


「宮本 武蔵だ。腕には それなりに自信が有る。良かったら俺の腕を買ってくれ影番殿」

「う~む……だが男ってのがなァ……」

「だが使える人間は必要なのだろう?」

「最もですよ。我侭はいけませんよ? ランス兄様」

「そうでござるよ~、ランス」

「何だ? 鈴女」

「この人 恐らく人間相手ならJAPANどころか世界最強かもしれんでござるよ?」

「どう言う事だ?」

「上杉で謀反が有った際、一人で城に乗り込んで上杉県政を殺したのは宮本殿でござる」

「な、なんだとォ?」


≪――――ザワッ≫


「お、おい鈴女とやら……何故知ってるんだ?」

「何か妙な様子が有ったので見に行ったのでござるよ」

「優秀な忍も居たものだ」

「いや~殺しは慣れっこでござるが、傍から見ててオシッコちびりそうだったでござる」

「…………」

「更に城を逃れたのを尾行しようにも、鈴女でも追いつけないとは予想外でござった」


「す、鈴女さんでも追いつけなかったですって……?」

「有り得ねェだろそれ……」

「半端ねーな……(サイン貰っとくか?)」


――――更に鈴女が余計な事を言った事で、見当・吉川・坂本が驚きを口々にしていた。


「ふむふむ。ランス殿」

「只 凄腕と言うのみでなく」

「一人で敵地に乗り込む程の勇猛な精神の持ち主」

「これは迷う理由など有りますまい?」×3


「ぬ、ぬぬぬ……良いだろう。それなら雇ってやるからしっかり働けよ?」

「無論だ。感謝する」

「それでは個人的な質問なのですが……」

「なんでしょうか? 香様」

「お金が沢山 必要との事ですが、何が目的なのでしょう?」

「とある女性の未来の為。只それだけです」

「そ……そうですか」

「それでは御免。戦いの際には声をお掛け下さい」


≪――――ザッ≫


「言ってしまいましたな」×3

「そうね」

「しかし世界最強か……全く持って気に食わん!」

「だったら戦ってみるでござるか?」

「!? ま、まァ女が居る様だし害は無いだろ……だが俺様の女に手を出した時は容赦せんぞ」

「意外に強気でござるな」

「主に健太郎が!!」

「えぇっ!? ぼ、僕~!?」

「憧れの剣豪なんだろ? 胸を借りて来い」

「無理無理無理ッ! 勝てるワケ無いですよ!! だって宮本武蔵ですよ!?」

「きっと健太郎君が100回死んじゃっても勝てませんよ~っ!」

『ふむ……どうやら健太郎殿の知る"宮本武蔵"とは、彼の居た世界では超の付く程の有名人だった様ですね』

「でも此処での宮本殿は弁当屋だったらしいでござるよ?」

「弁当屋? だが何で そんな奴が今迄 身を潜ませてたんだ……?」

「案外 名前は知られていなくても、強い人は多いって事でござるよ」


「愛。彼には……」

「そうですね。後で礼を申して置きましょう」

「……宮本様……」

「か、勝子ッ……アンタまさか……」
















「遠方に敵勢力 確認でござる」

「うげッ。なんちゅ~数だ」

「ランス殿。此処は俺が出よう」

「武蔵か。今回は面倒だから お前に任せる」

「畏まった――――奥義」

「うにゃ!? ランスッ! 伏せるでござる!!」

「う、うおおおおぉぉぉぉ!?」

「弐武豪翔破!!!!」
















「ふぅ……何とか倒せたよ」

「油断するなッ! 小川!!」

『アアアアァァァァッ!!!!』


≪――――ガキイイイイィィィィンッ!!!!≫


「宮本さん!?(何時の間に!?)」

「相手は使徒だぞ!? 首を刎ねるまでは気を抜くなッ!」

「わ、分かりました!!」

「(正史のイベントなんぞ知った事かッ)」
















「これは島津に伝わる秘薬でな……飲めば超人的な力を得る事が出来る」

「させるかッ!」

「なにっ!?」


≪――――カキンッ≫


「止めておけ。無駄死にになるぞ」

「(な、なんだこの男は……太刀筋どころか近付いて来るのさえ見えなかっただと?)」

「ランス殿。此処は俺に任せて奴等を捕まえてくれ」

「よしきた! 誰も逃がすなよ!? 鈴女!! きくちゃん!!」

「了解でござる~!」

「おっしゃあ!!」


「……どうやら俺の適う相手では無さそうだ……殺せ」

「潔くて結構。其の前に賭けをしないか?」

「なんだと?」

「俺の予想ではザビエルとかいう奴は黒姫という娘を殺さないだろう」

「!?!?」

「だから彼女は我々が必ず助ける。だから今は死んだ事にして織田に下れ」

「…………」

「それに織田には良い女が沢山居るぞ?」

「……ふっ」

「なんだ? どうした?」

「それ程の実力と持った人間が、まさか冗談を言えるとはな」

「言って置くが織田に仕えてから他人に素を見せた事は一度も無いぞ?」

「それは興味深いな。ところで名は?」

「上杉領で弁当屋を営んでいる宮本武蔵だ」

「つくづく面白い。この島津ヨシヒサ……生き恥を晒すとしよう」

「賢明な選択だ」
















今回の遠征が終わると、俺は織田領の外れのプルーペットが巧妙に隠した小さな一軒家に戻った。

ちなみに戦果は上々。

圧倒的な兵力の魔軍だったが、JAPANオールスターは連勝を重ねザビエルは追い詰められている。

俺も更に強くなっており、ランスの魔剣の効果が有れば最終決戦でも活躍できるだろう。

さて置き。

俺が織田に仕えてから先ずは北条早雲が俺に接触して来た。

当然 用件は南条の事で有り、怒りを噛み殺しているという様子だった。

だが朱雀の事を話し、対策として彼女をふくマン化させた事を告げると逆に感謝してくれた。

"そうしなければ"南条は弾けていたし、ザビエルは何時まで経っても来ない戯骸を妙に持っているだろう。

だが正史に反するし人間にして良い事ではないので俺は彼に謝ったが、早雲はアッサリと許してくれた。

逆に"蘭を頼みます"とか言われちまったし、ぶっちゃけ元に戻したら早雲に返す予定だったんだが……

真剣なヤツの表情を見ると"むしろお前に頼みたい"と返す事も出来ず、頷く事しか出来なかった。

まァ最後に考えるのは南条自身だし、俺は潔く退散する事としましょうかね。


「帰ったぞ~? 南条」

「…………」

「飯は……水しか飲めてないよな。沢山買ってきたから食え」

「…………」


彼女の畳部屋に入ると額にプレートを付けた南条は部屋の隅で体育座りをして膝を抱えていた。

だが俺が入室して飯をちゃぶ台に広げると、黙々と頬張り始める。

それが終わると俺が片付けの手伝いや風呂の準備の指示をすれば、言われた通りに行動し再び部屋の隅に戻る。

即ちコレが"ふくマン"を活かした売春人生を送らせる為の洗脳であり……

何も指示しなければ、彼女は水を飲んで排泄行為をする事しか行わない人形でしかなかった。

正直 酷でしか無いんだが、戯骸を眠らせたままにするには仕方無いのだ。


「良し……布団も敷いたし、ちゃんと其処で寝ろよ?」

「…………」

「おやすみ」

「…………」


当然 寝る場所は別々を考えており、俺は重たい体を引き摺りながら床に就いた。

だが今回も予想通り、南条が俺の布団に入り込んで来た。

洗脳にアッチ方向のものは含まれておらず、記憶も残らない筈なのだが……本能と言うヤツなのだろうか?

まァ背中に触れる感触は心地良いので深く考えない事にするとは言え。

南条に真実を聞いた次第では、プルーペットから払い戻しをして貰わねェとな。

ともかく最終決戦に備えて休むか。

早く巫女機関に通いつつ弁当屋をする生活に戻りたいでござる。

以前は大陸に逃げようとしていたのに、正反対のを考えてるじゃね~かってツッコミは無しだぜ?
















――――全てが終わってから半年後。








――――上杉城に続く門にて。








≪ガラガラガラガラ≫


「ちわ~ッ、宮本屋でござる」

「お早う御座います宮本さん。今日も元気が有りませんね」

「半分は貴女の所為ですよ。直江さん」

「それはそうと、今日こそは良い返事を頂きますよ」

「だ~から上杉に仕える気は無いでござる。絶対に戦いたくないでござる」

「あれだけ鬼神の様な戦いをしていて良く言います。他国の使者を妨害するのも大変なんですよ?」

「そんな事してたの!? でも俺が武将だなんて似合いませんって」

「……確かに……宮本さんには既に"大切な方"が居ますから難しいかもしれませんね」

「ぶふっ!? だ~から誤解だって言ってンでしょ!? 俺とコイツとは何も無ェから!!」

「それは聞き捨てなりませんッ!」

「蘭!?」


ザビエルとオロチを倒したランスは奴隷を連れて大陸を去り、俺は再び愛着の湧いた弁当屋を続けていた。

だが見ての通り上杉家からは猛烈なアタックを受けており、言葉を返すと背後から"蘭"の声があがる。

どうやら今の会話を聞いていた様で、彼女はリヤカーから飛び降りると口を結んで此方に近寄って言う。


「何も無かったなんて言わせませんよ!? 私が"こうなった"のも殆ど武蔵さんの所為じゃないですか!」

「だ、だがアレは蘭の命を救う為には仕方ない事で有って」

「それは理解していますッ! でも"私の事"で何か聞かれたら何時もそんな風に強く否定する……!!」

「いやいや!! 俺は只単に"大切な方"ってのを否定したダケだっつ~の!」

「そ、それに限っては仕方ないかも知れません……でも、言い方っていうのが有るでしょう!?」

「イチイチ気にしてられるかよッ! そもそも何で早雲の所に戻んねェんだよ!? 不自然だろうがッ!」

「な、何言ってるんですか!? アッサリ拉致された挙句 肉体改造までされて、今更 戻れる訳無いですよ!」

「ちょっ!? それを大声で言うなよッ! 誤解されるだろうが!!」

「それに……私の後遺症が治るまでの責任を取ってくれるって言うのは嘘だったんですか?」


≪――――ずいっ≫


「そ、それは……OK分かった俺が悪かった」

「分かってくれれば良いんです」

「はいはい。ご馳走様……それよりも良いの? お弁当が冷めますよ」

「そうだったでござる……蘭。手伝ってくれ」

「言われる迄も有りません」

「(それにしても良い匂いね……謙信が見たら100人分を全て食べてしまいそう)」


後から聞いた話によると、蘭はプルーペットに改造される際 記憶が残る事を望んだらしい。

対してあの野郎は経費が浮くからと承認し、実はずっと俺に飼われていた時の事を覚えていたそうだ。

だが俺が本当に"何もしなかった"事から懐かれてしまった様で、今は店の仕事を手伝ってくれている。

当然 陰陽師としての実力も有るので、パートナーとしては文句なしで優秀な部類に入るだろう。

しかし全財産を叩いて蘭を元に戻したモノの、動きが鈍くなる後遺症が抜けるにはもう少し掛かるらしい。

よって気長に弁当屋をして無難な生活を送りつつ、いずれは大陸に進出して冒険するのが今の俺の目的だ。

南条蘭は……実家に送り返したい所だが、無理矢理にでも付いて来るだろう。

そうなると大陸ではランス・クエストの冒険に乗ろうと思っているので正直 彼女の身が心配だが……

もし彼女が奪われればランスだろうがリアだろうがブッ殺す気でいる俺は、やはり蘭が好きなのかもしれん。

ぶっちゃけ処女は何ヶ月か前にお互い酔った勢いで頂いてしまったので、それが決定的だったとも言える。

つまり年の差が有るとは言え、犯ってしまったからにはランスの様に割り切る事が出来ないのである。

……とは言え俺は"俺"なので今更 遠慮する様な草食系で居る気は無いが、現にモテるのに女を食えない自分。

コレって思いっきり尻に敷かれてるよな? JAPAN最強の剣豪も女には勝てないと笑い話にされそうだ。


「あっ! あれって宮本様じゃないッ!」

「今日も来ているのね!?」

「お弁当……宮本様のお弁当!」

「私こそ、今日こそ当家の婿に……!」


「やべッ! もう気付かれたか!?」

「せ、先週よりも増えてる……」

「全くもう。この時間は周囲に最低限の人間しか置いていない筈なのに」

「ともかく俺ら帰るわ!! 直江さん、後は宜しくッ!」

「はい。次回はちゃんとした時間を設けさせて貰います」

「そう言う意味じゃね~からッ! とにかく蘭……乗れ!」

「は、はいッ」

「全速前進だ!!」


≪ガラガラガラガラ……!!!!≫


「やれやれ……見込みは無さそうね。でも私は諦めないわよ」
















――――1ヵ月後。








――――天満橋にて。








「さて。目指すはランスが居座ってるとされるCityだな」

「どうして、あの男が居る所を目指すんですか?」

「俺が見た感じ奴は只者じゃ無いからな。アイツの近くに居れば冒険らしい冒険が出来そうだからだ」

「…………」

「もしかして怖いか? でも安心しろ。俺が守ってやるから」

「!? そ、そんな心配をして貰わなくっても大丈夫ですッ。そもそも私が勝手に来たんですし」

「(自覚は有るのか)だったらしっかりサポートしてくれよ? 相棒」

「ま、任せて下さい!」

「と言う事で早速 出発――――」

「……って武蔵さん? あそこから何人か走って来てるのって……」

『宮本さ~ん!!』

「ダニィ!? あ、あれは……!!」


いざ蘭と共にJAPANを離れる時が来たと言うワケなのだが。

どうやら無意識のウチに幾つかフラグを立ててしまった様で、数人の女性が俺を追い掛けて来ていた。

全く……何で俺なんかをって思うが、思い返せばチートな実力を披露していたので仕方無いのかもな。

そんな訳で蘭は嫌な顔をするだろうが、素直に受け止めてこの世界で生きる糧とさせて貰うとしよう。








「む、武蔵さん。どうするんですか?」

「決まってるだろう? 連れて行く以外に選択肢が有るのか?」

「それはそうですけど……折角2人で行けると思ったのに……」

「何か言ったか?」

「な、ななな何でも無いです!!」

「(聞こえてたけどな)」








――――そんな訳で俺達のランス・クエストはこれからだ!!!!
















■あとがき■
久しぶりに短編を書いて見ました。コンセプトは一日で何処までの内容を書く事が出来るかと言う事。
よって細かい設定は全く考えておらず、殴り書きみたいな内容です。読んでくれて有難う御座います。
思えばランスシリーズって宮本武蔵って居ませんよね。本当に登場したら何処まで強いんでしょうか。




■宮本 武蔵(29)■

レベル80/99 体力800/999

剣戦闘Lv2 経験才能★★★

行5 攻9 防7 知7 速9 探5 交9 建5 コ1

両手に持つ2本の刀を自在に操る、天性の才能を持って生まれた最強の剣豪。何と生涯を無敗で通した。
其の正体は一般人だがサカつくで有名人の名前を付けた時の様に、この名前を名乗ったら超強くなった。
基本スペックは同レベルの常人の3倍以上あるチート人間。まァ宮本武蔵だから仕方ないね~みたいな。




■追記■
最初は南条蘭の扱いが可愛そうで書き殴ったSSでしたが、予想以上に感想とPvを頂いて驚いております。
尚マグナム本編はクリアしましたが翔竜山がまだで、要所でレベル上げをする事が多く物語の流れが未把握。
よって2周目をのんびり終えたら武蔵と蘭を介入させたサクッとストーリーを書いてみるのもいいかもです。


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