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No.33140の一覧
[0] 【試作】背教者の兄(歴史物・ローマ帝国)[カルロ・ゼン](2012/05/15 20:08)
[1] 第一話 ガルス、大地に立つ![カルロ・ゼン](2012/06/24 00:30)
[2] 第二話 巨星落つ![カルロ・ゼン](2012/11/03 13:07)
[3] 第三話 帝都、血に染まる![カルロ・ゼン](2013/01/19 06:33)
[4] 第四話 皇帝陛下の仕送り[カルロ・ゼン](2013/06/09 15:20)
[5] 第五話 ガルス、ニコメディア離宮に立つ![カルロ・ゼン](2013/06/23 22:54)
[6] 第六話 ガルス、犯罪を裁く!(冤罪)[カルロ・ゼン](2013/06/23 22:57)
[7] 第七話 イリニとガルス[カルロ・ゼン](2013/06/23 23:00)
[8] 第八話 ガルス、悩める若者になる![カルロ・ゼン](2013/08/01 17:49)
[9] 第九話 ガルス、バレル![カルロ・ゼン](2013/11/01 21:56)
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[33140] 第五話 ガルス、ニコメディア離宮に立つ!
Name: カルロ・ゼン◆f40da04c ID:f789329c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/06/23 22:54
奴隷問題って、どこに相談すればよいでしょうか?
やっぱり、国連?
でも、真面目なカナダさんが軍縮委員会をボイコットしたりするくらいに不真面目な組織らしいし如何しましょう?

取りあえず、専門家、専門家が必要です。
ウィリアム・ウィルバーフォースさま、エイブラハム・リンカーンさま、いらっしゃられましたらばお近くの時空管理スタッフまでご連絡ください。
もしくは、読者様の中に、公民権運動の専門家はいらっしゃいませんか?

あ、ご足労願って恐縮ですが左翼と新左翼とプロ市民は地上の楽園にでもご帰還ください。
奴隷問題の専門家が必要なだけで、奴隷経済の専門家は間に合っておりますので。
ああーしらんがなぁ、と泣きたいですが世間的に見れば大奴隷主の一族ですので、自分。

高等なニート生活こと、高等遊民生活に奴隷は絶対に必要不可欠というヘビーな現実に直面し、おやつを遺してしまいました。
自分が食べない余りが彼らの楽しみになっていると知って、さらにへこみます。
とかブラックなことを考えてしまう程度に社会問題を意識してしまいますが皆様いかがお過ごしでしょうか?

申し遅れました、フラウィウス・クラウディウス・コンスタンティウス・ガッルスです。
今日から、祖母の手伝いを兼ねて奴隷の管理方法について勉強することになりました。
というより、祖母的には人を使う術を覚えてほしいらしいです。

で、最初は地所の農園経営のお勉強のはずだったのですが、神学とか、諸々の諸学の勉強も大切だからニコメディアですればよくね?と皇帝陛下がなんか転居許可を出してくれやがりました。
折角だし、俺んち、ニコメディアにもあるからつかいなよ?と皇帝陛下直々のご厚意を賜った次第。

断れるわけもなく、涙が止まりません。
いえ、感涙ですよ?ああーありがたくて、涙が。

プリーズ、コールミー、ガルス。


「どうしてこうなった?」

ニコメディアにある離宮が一角にある豪勢な宴会場で、山積みにされた珍奇な数々の料理。
それらを前にして、都市参事会員らに歓迎されるはずの主賓は只々帰りたいと願っていた。

忘れられがちだが…古代ローマはグルメだ。
が、ちょっとだけ呑気に珍味を楽しめる期間が長すぎた、ともいう。
EUどころか、地中海全域の流通を確立し、各地の珍味を長年享受してきたローマのグルメは良く言えば独特であり、悪く言えばゲテモノ食いに走っているのだ。

クジャクとか、珍奇で、雌豚の外陰部と乳房とか、最高級じゃね?とかいう感覚にガルスは嘔吐をリアルで催す次第である。
なお、食事中に嘔吐のために席を立ったガルスは当然のごとくマナー違反だったかなぁと飲み会で吐いてしまう学生のノリで反省したのだが…ローマはそれもオッケー立ったりする。

「はっはっはっ、殿下も中々の食道楽ですな。」

「こちらの魚などいかがですか?」

「ああ、どうもご丁寧に…って、何です此れは?」

「引っかかりましたな、殿下。Salsum sine salsoですよ。どうです、シェフの見事な一品でありませんかな?」

と笑われてながら、別の珍味という名の何かを口いっぱいに詰め込まれるガルスはもう一度吐くために席を立つはめになった。
で、口を押えながら吐くために案内された一角に駆け込むガルスは何故か同じ方向に都市参事会の幾人かも向かっていることに気が付く。
そして、笑いながら満腹になったので、一度お腹を空にしなくては、等と笑いあっているのだ。

別に、贅沢が嫌いではないがこの贅沢は何か方向性が間違っている気がする、とガルスは否応なく痛感する。
同時に、これがローマ式の飲み会であると悟り、恐怖した。

毎晩こんなものに付き合う宮仕えとか、今はなき父上が顔を真っ青にして呻き声を上げながら家でのた打ち回るはずだ、と。


事の始まりは、ガルスが同人誌を作る程度の軽い気持ちで本を出したいと考えたことだ。
史実のフラウィウス・クラウディウス・コンスタンティウス・ガッルスと異なり、彼は頗る出不精だった。
豪快な運動を好み野を駆けるのを楽しみにする社交的な人間とは真逆である。
が、今のガルスにしてみれば平和に家で麦茶でも飲みながら本を読めれば満ち足りてしまうのだ。
ニコメディアに近い祖母の地所とはいえ、出版には書記や色々な職人が必要だから…とはるばるニコメディア迄陸路を歩くのは億劫で仕方がない。

無論、歴史に名を轟かせた古代ローマの整備され切った街道は舗装された道路という歴史上稀に見るインフラ網を整えてはある。
綻びが目立つとはいえ、小アジアの中枢部が往来が困難に直面するほどにはローマの問題は表には未だ出ていない。
だから歩いて行く気さえあれば、ニコメディアに出向くのはローマ人の感覚ではそうたいしたことではないだろう。
日本人の感覚でいえば、今新宿だけど、今晩は新橋で飲むよー程度である。

が、ガルスにしてみれば地図の上では近いといえ、100キロ近くとは自動車もなく移動するなどちょっと想像もできない距離だった。
もちろん、コンスタンティノープルからビテュニアの地所まで船と陸路で移動してきた経験は酷く憂鬱な記憶となっている。
延々馬車に揺られることなど、最悪の乗り心地で悪夢に等しい記憶だった。
まあ、ガルスが顔を青くしたところで世間的には家族と親族を宮中の不幸な事故で失って落ち込んでいるとみられたので特に気にされなかったが。

とまれ、そんな記憶と印象を抱いているガルスにしてみれば誰かに妨げられない限り一生ビテュニアにある祖母の地所で平和に引き籠る気満々である。
幸い、というべきか祖母の地所で働らいている使用人(含む奴隷)たちは比較的朴訥ながらも農耕には良く長けていた。
ガルスがうろ覚えの怪しい農業知識で何ちゃって内政をする必要もなく、せいぜいが相談に応じて時折推薦状を書いて送ってやればよい程度。
その推薦状にしても、自分のところの地所で使っている使用人の子供を都会の塾や学校にやるときの裏書のようなものだ。
実際のところは推薦する以上責任が付きまとうのだが、ガルスにしてみれば祖母の信頼する使用人という時点であまり難しく考えていない。

そしてちょっと奴隷というヘビーな存在に頭を抱えたりしないでもないのだが、ガルスは努めてその問題からは目をそらすという小市民的対応で深く考えないようにしていた。
だから、という訳でもないのだろうがガルスは余り煩いことを言わず、人使いも粗くないという評判だ。

若様は煩いことは言わず、散策するにしても畑を荒らすこともなく、どちらかと言えば気さくな口と来ている。
地元としても、次代にこういう人ならば揉めたりはしないだろうという事でそれなりにガルスに敬意を払いつつも受け入れてくれていた。

他方、ちょっと面倒なことを頼むときも頼む相手には困らないのがガルスの特殊な環境だ。
ガルスの付き人として皇宮から派遣されてきた連中は、ガルスの動向に非常に関心を寄せている。
秘密にしたい仕事を頼む相手としてみれば最悪なのだろう。
が、特に二心がないガルスにしてみれば、タダで雇えてラッキー程度の扱いなので監視されていることをあまり意識していない。
元々、人に仕えられるということが良く分かっていないので、そんなものか、と気にしていないともいう。
お陰で、皇帝に届く報告には『ガルス殿下に不審な動きは一向に無し』と記されるばかりだ。

時折ユリアヌスとの散歩に出かけるときにしても、外で軽食を摘みたいというピクニック気分で従者を連れ歩くので隠し事などありはしない。
そんなわけで、監視している側にしてみればガルスに真面目に仕えていれば事足りるので肩の力も自然と抜けてしまう。

だから、ガルスにしてみればビテュニアは頗る居心地がよい。
本を出すにしても、何も自分がはるばる100キロ歩いてニコメディアまで歩いてゆくなど思いもしなかった。
小市民ながらも、前世では信じられないプチ贅沢に浸っているガルスは、はっきりと言えば出不精になっているのだ。
が、ガルスは言い訳をひねり出すに苦労はいらない。
億劫な理由を正当化するためにじゃ『皇帝陛下の許可を取らないといけない。』と遠出を自粛していると呟けばよいのだ。

ニコメディアまで出ていきたいのはやまやまだが、此処で勉学に励めと皇帝陛下に言われている以上勝手に出歩くの良くない!…とニートが叫んでいるだけなのだが、筋は通っている。

僕は出向けない、だから、職人と材料を送ってくれ。
厚かましいことこの上ない要望ではあるのだが、如何せん、政治的にはこれが大正解なのだ。
立場をわきまえ、皇帝を憚り、何かするにしても一々皇帝の意を伺う。
専制君主相手には、それが正しい。

エウセビス司教が、原稿をもってコンスタンティノープルまで出向いたのもガルスの立場を理解しているからである。
まさか、当の本人が歩くのメンドクサイ、と考えているとは夢にも考えていない。
老齢である司教さえ、カエサリアから、コンスタンティノープルまで平気で馬車や歩きを含めて旅をするのだ。
眼と鼻の先のニコメディアさえ、車じゃないと遠いなぁと感じるガルスの感覚は理解できない。
だから、ガルスの言葉を額面通りに受け取って、同情までしてしまっていた。
真実を知れば、間違いなくそのねじれた精神を叩き直すべく信仰を叩き込むのだろうが。

…なお、不幸なことにガルスにとってこの結果は非常に高くつくことになる。


「は?ニコメディアに出向いて、よい、と。」

「はい、殿下。陛下は、何も殿下を幽囚とされているわけでもないのにビテュニアに縛り付けるつもりは無いと仰られておられます。」

気を良くした皇帝が、歳費の中抜きと汚職を撲滅しがてらガルスのガス抜きもかねてニコメディアくらい好きに行かせてやると許可を出してくれたのだ。
それも、ご丁寧に皇族なのだから今更ではあるが外出用に馬車まで差し向けてくれていた。

「勉学に励むことを望まれてはおいでです。ですが、偶に外へ出たい気持ちは理解できるので、遠慮はいらない、とのこと。」

「では…、ニコメディアへ?」

「はい、殿下。陛下のご厚意で馬車が手配されております。お出かけの際は、どうぞ、ご自由にお使いまわしください。」

遠路はるばる皇帝の勅令を運んでくる使節が、顔をほころばせ、おめでとうと言わんばかりの笑顔で告げてくれる事実。
早い話が、コンスタンティウス2世がガルスに善意で手配してくれた馬車だ。
…多分、行き先を監視できるとかそういう意向もあるのだろうが。

とはいえ、行きたいけど、皇帝陛下の意を伺う必要が-と言い訳していたガルスにしてみれば最悪だった。
本気にしたらしい皇帝陛下が、わざわざ気を使って馬車を手配させてくれたのである。

これでひきこもりますとか言えば、間違いなく空気が読めない子だ。

「ありがたいことだ。陛下にはよろしくガルスがお礼を申し上げていたと伝えてくれ。遠路、貴殿もご苦労だった。」

「いえ、職務ですので。」

「引き止めるようで申し訳ないが、夕餉を用意させている。宜しければ、ご一緒出来れば幸いだ。」

こうして、皇帝陛下の裁可を経てガルス君は無事にニコメディアへ行くことが叶いました、マル。
そう、行かなければならないのだ、それも一番マシな選択肢でも馬で。

冗談じゃない。
そう叫びたいが、そう叫ぶわけにもいかないのが自分の生まれ。
ガルスは今更ながらに、皇族とはなんと恐ろしく窮屈な身かとつくづく思い知らされる。

具体的には、サスペンションの重要さとかで。

それでも旅路がさして心躍るものではなかった、と言えば嘘になる。
年若いユリアヌスはまだ旅には早いと居残りだが、だからこそ馬車に侍従らがついてくれたおかげで酔い止めも兼ねた会話相手には不自由しない。
オマケに、ちょっとばかり下世話ながらも彼らから、ニコメディアで話題になっている若い乙女たちの踊りの評判を聞きガルスはちょっと見てみたいな、と思ったりもする。

まあ、まだ10代の若造の肉体にしては早熟というべきなのだろうが、綺麗な女性を見たいと思うことぐらいは自然な気分だ。
もちろん地所に帰れば、一族郎党という形に近いクリエンテスらのなかに年若い子もいないではない。
が、パトローネスとしての責務とやらを祖母に叩き込まれている中であまり年若い子とお知り合いになる機会は得られていなかった。

教育上、よろしくないという配慮もあり女奴隷を教育につけるという事をガルスの家は避けているらしい。
まあ、訓練されたナニーではなく、単にギリシャ語の発音が綺麗だからという理由で採用される家庭の女奴隷らなのだ。
おしゃべり好きで、正規の指導者層の教育を受けていない彼女らに将来の指導層を委ねることほど愚かなこともないと神君カエサルの母が示した故事に倣う家は少なくない。
祖母も、愛情を持って自分とユリアヌスをしっかりと育て上げることだけが楽しみらしいので余り失望させたくないなぁとガルスも自重しているのだ。
実際所、どう日々を奴隷に世話されて過ごしていいかも距離感が分からずに戸惑うガルスにしてみれば祖母の方針はありがたいのだが。

でも偶には羽目を外し、古代ローマのクラブではっちゃけても良いじゃない、とガルスも少しばかり浮かれていた。
用事というか、出版のために幾人かの職人に直接指示を出し、ついでに本や羊皮紙を散策する程度の大して目的のない旅行である。
一応、若い一門の務めという訳でニコメディアに居る祖母の知己に手紙を届けることやら、あいさつ回りは有るらしいが。

だから離宮の一角に滞在所を用意してもらい、歓迎の宴まで開いてもらったガルスも最初は浮かれ気分だった。
この、宴会場で延々フォアグラになるじゃないか、と歓待されるまでは。

「…おや、お若い人。ワインが進んでおりませんが、どうされましたかな?」

「いえ、どうも、自分の舌はまだ若造のようで。」

今、頭を占めているのは貴族としては不味いのだろうが、即刻田舎暮らしに逃げ帰りたいという気持ちだけである。
宴会に若い高貴な女性たちも、確かに参加してはいるのだが…なんだろう、ケバい?
あと、脱色しているのだろう髪の匂いに嗅覚が政治的亡命を申請し始める始末。

お酌させましょうか?と笑ってくる参加者に、断りの文句を入れるも所詮若造だ。
老獪な連中の勧め文句を断るに断れず、ガルスは結局各地の珍味とアルコールを散々に浴びるように詰め込まれたる。

結局、翌朝二日酔いでガンガンに痛む頭を押さえて寝台の上でのた打ち回っていた。


「…うげぇ、気持ち悪い」

古代ローマのワインは、一般に希釈される。
まあ、早い話が色々な割りもので割られて飲むのが一般的ということだ。
本来は酔っぱらわないための方策だったのらしいが、今となってはカクテルとして愛用されている。

そして、水差しから水を汲んで飲む干す勢いで空けるガルスは昨晩の酒席でそれは見事に潰された。
彼とて体質的に問題があるわけではないのだが、量が入ば体質など無視して二日酔いは襲ってくる。

疫病にかかった経験こそあれども、基本的には健康優良児であるガルスにしてみれば頭痛でのた打ち回るのは久々の経験だった。
だから、少しばかり元気をなくした体に引き摺られたガルスの心は、いつもならば無視しようと努める自制心を少しだけ失ってしまう。
心の殻が、僅かに揺らいだその時、脂汗を垂らしながら、妙に眩しい太陽に表情を顰めて寝台で横たるガルスの脳裏を占めるのは妙に後ろ向きな思いの数々。

どうして、自分がこんなに悩まねばならないのか。

どうして、自分がこんな経験をしているのか。

負のスパイラルが入りつつあることを自覚していようとも、その自覚がさらに後ろ向きの思いを強めてしまう。


そんな時だ。
普通ならば気にもとめない微かな歌声と賑やかな笑い声が頭に響いて、思わずガルスを苛立たせる。
表通りを行き交う人々だろう。
日も高く登り、ニコメディアの街並みは雑多ながらも活気にあふれているらしい。

自分がどう悩もうと、世は事もなし、という次第だろう。

だからこそ、釈然としない葛藤を内包しながら立ち上がり、なんともなしに騒ぎのする方の窓へと歩み寄る。
そのまま、外を行き交う群衆を見ようと窓を除き予想と違う光景故にガルスは戸惑った。
始めは、人の喧騒故に大通りからか辟易していたガルス。
だが、窓から眺める光景が大通りではなく離宮の一角だと気付くことで勘違いを悟る。

ひらひらと白い布を翻し、踊っているのは若い乙女。
離宮の広場で、幾人かの女官らに囲まれ踊っている彼女は、また此処の住人なのだろうか。
その楽しげな姿を見るにつけ、仮初の離宮の主であるガルスは居た堪れない思いを何故か感じてしまう。

まるで世の中全てが自分の舞台だとばかりに軽やかに彼女は踊っている。
しなやかな手足がクルクルと舞うありさまなど、世界で溺れてもがいている自分の無様さを否応なく思い知らされるのだ。

羨ましかった。
雁字搦めに、束縛されている自分の身分。
奴隷を使う側の皇族とて、所詮立場の奴隷なのだ。

田舎で、祖母と弟と、気のいい地元の人間と、呑気に自然と本の中で暮らしていければと思わないでもない。
だというのに、皇族という名で縛られ、帝都から追われてなお身に纏わり付くしがらみの数々。
押しかかってくる重圧と、祖母の期待。

全てが、全てが忌々しいのだ。

…望んで、望んで皇族として生まれたのではない。
つまらない宮中儀礼や、陰険な宮中での陰謀などこりごりだ。
あの都市参事会の連中にしても、何人が自分を歓迎していることだろう。

…皇帝の従兄弟が、皇帝の命令で滞在しているときに、ご機嫌をとっておき監視も兼ねているのだろうと推測がつく。
それらを思えば、全てが、何もかもが、億劫になるのだ。

だというのに。
どうして、彼女らは。

そこまで、考えかけたとき、ガルスは隣で控えているであろう侍従を大声で呼び出していた。

「ルシウス!ルシウス!」

「…如何なされましたか、ガルス殿下?」

「すまないが、あそこで騒いでいる輩を静かにさせてくれ!半日でよい、半日でよいのだ!」






あとがき
まさか、このペースで更新するはずがないとは誰もが疑っていなかったに違いない(笑)。

一応、原稿担当さんに送ったし、時間あるのだぜひゃっはー。
でも、やらないといけないことも多いのだorz
そんなこんなですが、ちょくちょく更新できればなぁと。

後、エタ-回避のための次回予告。

次回、イリニ。ご期待ください。
そうだ、テオドラさん風味にぼーいみーつがーるやろう。

誤記修正


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