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No.33140の一覧
[0] 【試作】背教者の兄(歴史物・ローマ帝国)[カルロ・ゼン](2012/05/15 20:08)
[1] 第一話 ガルス、大地に立つ![カルロ・ゼン](2012/06/24 00:30)
[2] 第二話 巨星落つ![カルロ・ゼン](2012/11/03 13:07)
[3] 第三話 帝都、血に染まる![カルロ・ゼン](2013/01/19 06:33)
[4] 第四話 皇帝陛下の仕送り[カルロ・ゼン](2013/06/09 15:20)
[5] 第五話 ガルス、ニコメディア離宮に立つ![カルロ・ゼン](2013/06/23 22:54)
[6] 第六話 ガルス、犯罪を裁く!(冤罪)[カルロ・ゼン](2013/06/23 22:57)
[7] 第七話 イリニとガルス[カルロ・ゼン](2013/06/23 23:00)
[8] 第八話 ガルス、悩める若者になる![カルロ・ゼン](2013/08/01 17:49)
[9] 第九話 ガルス、バレル![カルロ・ゼン](2013/11/01 21:56)
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[33140] 第二話 巨星落つ!
Name: カルロ・ゼン◆f40da04c ID:f789329c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/11/03 13:07
お久しぶりです、フラウィウス・クラウディウス・コンスタンティウス・ガッルスです。
プリーズ、コールミー、ガルス。

おどろくことなかれ。
これでも、皇族なので権威とか権力とかならばたっぷりあります・・・・・・・偉大な叔父上のところに。
叔父上こと大帝の気分を損ねた瞬間に死亡フラグら乱立する地雷原に立っているとも言います。

その気になれば、地雷原を突破して簒奪できるくらいの立場に立っているので先制予防攻撃が不安です。
積極的自衛権の行使として、皇位継承レースから安全に逃げ出したい毎日。
あと、できれば高等遊民的に引き籠って好き勝手しながら文化的な生活もしたいです。

だから、俗世と縁を切りたいといってみました。
教会に保護してもらえば、ぬっ殺されることはないだろう、と。
でも、叔父上こと大帝コンスタンティヌスが変に気を使ってくれました。

わざわざガチガチの司教様を召喚して、わざわざ甥っ子のための教師にしてくれたのです。
なんと、あの多忙な大帝が、わざわざ自身で教師を選んでくださるという名誉。

期待を裏切ったら怒りを買って粛正フラグですか、泣いて良いですか?


ガルスです…。


「御子は被造物である。そういわれて、殿下はいかがお考えですか?」

異端査問ですか?
何世紀さかのぼって、異端査問ですか?
ここは、コルドバですか?

おかしいなぁ、元ヒスパニア属州がひゃっはーするのはずいぶんと後のはずなんだけどなぁ。
なんで、目の前の司教様間違ったことを言ったら即刻焼いてやるぞ的な視線向けてくるんだろう?
泣きたい。

なにしろ、彼の個人教師を選んだのは皇帝陛下。
それも、英雄とか大帝とか呼ばれる類の皇帝陛下。
ぶっちゃけ、対応を間違うと即座に粛正されそうな皇帝陛下。

そんな人の選んだ先生に詰め込み教育されるわが身の不幸。
若干だが、心ではもう泣いて良いはずだ。
顔面が引きつりそうになりつつも、ガルスは懸命に考える。

御子が被造物って、何ぞ?と。
エウセビス司教の言わんとするところは、何処にありや、と。

だが、捉え方が違うという視点は彼には、ガルスにはない。

宗教のことなぞ、信仰心の欠片もないガルスにとって単なる教養だ。
オブラートに包まずに言えば、ガルスにとっては中二病の亜種だった。
だから、ムー的な何かを読み漁るつもりで知識を漁っていたことが災いする。

「父と子と聖霊は同一、そう教わっていましたが。」

当たり前すぎるほど日本では氾濫していた三位一体説。
その内実がなんであるかなど吟味せず、単なる固有名詞としての『三位一体』説。
ただただ、『そういうもの』だと知っているガルス。

そこに、疑問をはさむほどの知識も必要性もなかった。
所与のものとして、それを知識として与えられるのだ。
故に、彼はそれが確立されるまでに紡がれた言葉を知らない。

だからこそ、彼はそこに込められた言葉の意味を理解していない。
彼は結果を知るのみで、その成立過程を知っているわけではないのだ。

「殿下、それはいわゆる矛盾ではありませんかな?」

ガルスは、教理に微塵も執着していない。
彼にしてみれば、中の人間にしてみればそれは単なる言葉遊び。
論理の類いであり、そのために人生をかけるという類ではない。

彼は、その意味においてどこまでも傍観者にすぎないのだ。
厳密に自意識を検証するならば、ガルスとてこの世界で生き延びるために全力を尽くしてはいる。
例えば、目の前の司教に変な報告を大帝コンスタンティヌス陛下にされないように。

だが、それは完全に受け身の発想だ。
主体的に教理を論じたいわけではない。
なにより、教理そのものに意味があるとは考えたこともないのだ。

ガルスにしてみれば、それはある種の面接である。
つまり、正しい答えが言えるかどうかのテスト。
その認識だからこそ、彼は正解できるかどうかで緊張している。

だから、彼はエウセビスの問いかけを表層でしか理解しえない。
険しい老司教が生涯をかけて探求している真理というものはガルスにとっては無価値なのだ。
まあ、礼儀正しくその思想を尊重することくらいはできるだろう。

だが。

だからこそ。

思想の違いで対立に至り争うという宗教上の論争は彼にとって知識にすぎない。
彼の言葉は、だからこそ信仰を真に抱く人間にとっては耐え難い軽さをもつ。
それでいてガルスの言葉は、何よりも許し難いことに飲み干さざるを得ない『真理』を含む。

「確かに、三つが一つであり、一つが三つというのは理解を超えていること。」

それは、数多の論争の末に導かれた結論だ。
知っている人間であり、構築した人間でないガルスはいわゆる剽窃を行っている。
救いがたいことに、オリジナルが発表される数世紀も前に無意識のうちに。

「なればこそ、凡俗たる我ら信徒は理解するのではなく主を信じるべきではないかと思うのですが。」

彼は、知らないのだ。
アリウス派とアタナシウス派の激しい近親憎悪を。
何より。

教会史の専門家でもない彼が内情を理解しているはずもない。

彼が知っているのは、単純に世界史の教科書に載っている事実だけだ。

「では、殿下。仮に、3つが1つとして受肉することはあり得ますかな?」

「エウセビス司教、私が思うに仮に1つであったとしてもそれは神であり人ではないのですか?」

彼は、ただ、そういうものだと知っている。
それが、いかほどに残酷であろうか?
真理を探究するもの、理想主義者と論じているのは教理を空文として弄ぶ輩なのだ。

「1つの中に、両者が混在すると?」

「父の子であり、父より使わされし御子であればどちらも矛盾せず内在しませんか?」

人の好い老司教が、学識豊かとされる老司教が唸らされる分析。
それでいて、信心深い信徒であるエウセビス司教はガルス殿下の本質を少しばかり察していた。
彼の人は、知的好奇心として、学徒として信仰を考えているということだ。

つまりは、信仰の輩ではなく、信仰に好奇心を抱く若者。
それでいながら、彼は知性を示しているのだ。
それも、教会にとって非常に有益ながらも危険な。

そして、ガルスが単なる子供であればエウセビスにとって彼は面白い対談相手で済んだだろう。
だが、フラウィウス・クラウディウス・コンスタンティウス・ガッルスとは単なる子供ではない。

司教にとって、教会にとって、大帝コンスタンティヌスとの関係は常に難しいかじ取りを迫られている。
彼は所謂ミラノ勅令でもって、ローマ帝国における信教の自由とキリスト教の布教を許可した皇帝だ。
だが、同時に教会に対して積極的に公会議に代表されるように介入してくる皇帝でもある。

それは、教義に対する皇帝の介入を意味するのだ。

いや、まだ、弾圧し迫害されないうえに教会内部のいざこざに口を出す程度ならば。
エウセビスとてここまで危惧を抱かずにはすむだろう。
これまでの大帝の教義への干渉は、あくまでもローマ帝国内部におけるキリスト教諸派の争いを厭うから。
言い換えれば、教会内部の纏まりさえ確保できればそれほど深刻なものとは捉えられないのだ。

だが。

「殿下の、言は興味深い。…学者を目指されるお積りはおありですかな?」

「アテナイで学ぶのは、面白いことではあるだろう。だが、私は俗世よりは聖界に活躍の場を求めたいよ。」

現皇帝の、有力な甥。
フラウィウス・クラウディウス・コンスタンティウス・ガッルスとは、それだけで一つの巨大な力を持ちうる皇族なのだ。
単に信心深いだけの皇族ならば、教会にとって最良の庇護者の一人たりえたかもしれない。
だが、彼は信心深いというよりは知性で教理を学ぶ類の人間。

そして、生半可な学者は論泊できない論理をもって教理を語れるのだ。

そんな皇族を教会に取り入れるということが、どのようなことを意味するか?
事と次第によっては、それは教理の純粋さを保ちえないどころか皇帝の意のままにされかねない。

純粋に信仰を保っている老司教にしてみれば、それはさびしい未来だ。
だからこそ、彼は洗礼の前によく考える様にと促しガルスの入信そのものを先延ばしにしていた。
知識が先行しすぎている若者を教え諭すことが、できるかどうか。

それが、老司教にとっての疑念なればこそだ。

ガルスは知らない。

自分の学識と、身分を売り込めば教会が大歓迎してくれるはずだという思いは完全に的外れだということを。
彼の知っている、想定している教会というのは教会が整備された中世以降のそれ。
言い換えるならば、教会でさえもお金で身分が決められるボルジアの時代とは異質な論理が教会を支配しているのだ。

そして、つい十数年前まで迫害されていたキリスト教。
その純理に対する健気なまでの愛着と、純粋さは彼の想定するところではない。
ついぞ、彼が知りえているのは公会議で司教たちが相争ったという事実だけだ。

つまりは、権力闘争かとガルスが先入観を抱いていたことが事態を悪化させている。
初期キリスト教の教義論争が持つ純粋さと、剥き出しの粗野さというのは彼の知らない世界の話。

故に、教会がガルスという超ド級の問題への対応に頭を抱えて苦慮していることは想像すらつかなかった。





「ユリウス、どう見る?」

「…国境を固めるだけでは不足かと。」

コンスタンティノープルが中枢。
宮中に集まった首脳陣が直面したのはペルシャからの挑戦。

当初は、国境間の紛争程度にすぎないと思われていた事態。
だが、投入されているペルシャ軍の規模が判明するにつれ本格的な武力侵攻であることが明らかとなっていた。
当たり前だが、ローマの国境を侵したペルシャにはしかるべき教訓を垂れてやらねばならない。

そのために、ユリウス以下官吏らは属州長官らを通じて各地に食糧を積み上げ兵を集めている。
各地から集結しつつある軍団兵は、砂塵を巻き上げながら指定された各地で意気高らかに調練に参加。
磨き上げられた武具と、集められた馬匹の量も、大規模な遠征を行うには十二分な規模。

「軍団兵の集結は?」

「4個軍団をニコメディアに。5個軍団を、コンスタンティノープルに集結させました。」

「各地から集めた軍をまとめれば、10万の軍団兵は使用できます。」

重装歩兵を、騎兵を、彼らは十二分に集めている。
必要とあれば、ローマの軍団旗はペルシャに思い知らしめることも行えるのだ。
そして、ローマの国境は侵されている。

和戦どちらにせよ決断が迫られている。
そう、決断だ。

問題は、皇帝その人の決断にある。

いや、厳密に言うならば意志よりも肉体の問題だろう。
隠してはいるものの、年齢からくる衰えというのは武官としては致命的だ。
年若い弟のユリウスが、文官として働くことが激務と感じる歳。

兄幾多の戦場を駆け抜けてきたコンスタンティヌスの肉体は、もはや自身の意志を裏切りあまりにも重い。

本来であれば、彼は誰か親族を派遣すればよいだろう。
或いは、執政官を選抜して軍を預けて派遣してもよい。
それを許すだけの、国力が、システムがローマにはある。

だが、ローマはあまりにも広大でありその防衛に彼はすでに5人もの息子や甥を張り付けていた。
その指揮下に多数の将軍や官吏を付けている以上、コンスタンティヌスは自身で出るしかない。
そもそも、コンスタンティノープルの位置からして帝都そのものが東方への抑えなのだ。

この方面は、彼が、皇帝が担当しなければならない。
なれば、なればこそ。
数年前まで、彼は戦陣にあって蛮族からローマを守り続けていた。

クリスプスさえ、クリスプスさえここに居れば。
そう考え、周囲を見渡しコンスタンティヌス大帝は密かにため息を心中で漏らす。
自らが、陰謀に欺かれ処刑した長男の無実を訴える叫び声。

それが、大帝の心をして蝕む。

本来であれば、彼は帝国の内政に専念し息子らが辺境の守りを盤石にするはずだった。
唯一、彼を輔弼しうる弟のユリウスは帝都の行政機関を統括するだけで限界。
むしろ、曲りなりにも官吏らを取りまとめられているだけで評価に値する激務だろう。

何より、ユリウスは行政官だ。
軍人としての経験は、軍政官としてのものであり野戦の指揮官としてではない。
これは、対ペルシャということを考慮するうえで致命的な経験不足を意味する。

他に彼の手札に残っている息子や甥も、まだあまりにも若すぎた。
辛うじて期待できる手札は、ユリウスの息子、ガルス程度。
しかし、彼とてまだガキだ。

知恵はあるようだが、書生のそれで戦争ができると考えるほどコンスタンティヌスは呆けてもいない。
戦陣に立ち、幾多の戦闘を戦い抜いてきた古強者からすればガルスという若者は単なる雛なのだ。
行く行くは、ローマの安定がために教会内部をガルスという皇族を通じて統治しつつ息子たちに帝国をと思わないでもない。

だが、それとて先の話。
あまりにも先の話ともいえるだろう。

今は、和戦どちらかを決しなければならない時期。

そして、講和しようにも条件闘争すら現状では行えない。
なにより、それはローマのやり方ではなかった。
国境を侵され、和を乞うのはハンニバルのイタリア侵入以来ローマが断固として拒否してきたこと。

ローマ帝国を、ローマを再統一したと自負する大帝にとってそれは譲れない一線。

故に、彼は決断するしかない。

「親征する。ユリウス、手配を。」

「分かりました。ただちに。」

だが、立ち上がった瞬間。
大帝はかすかな違和感を意識せざるを得ない。
それは、彼の肉体からの悲鳴。
しかして、それは数年前から慢性化していた悲鳴でもある。

コンスタンティヌスは、その疼きを意志と頭脳で押し込め立っている

無論、コンスタンティヌスとて健康に気を使わないわけではない。
だが年齢ばかりは、神に等しい大帝とまで称された彼でも如何にもしがたい。
ローマをその双肩に担い続けた彼は、もはや今にも朽ちようとしているのだ。

その自覚を、意志の力で抑え込み立ち続けた皇帝。
故に、彼は限界が近いことを理解しつつも読み違えた。
ティグリス川流域までの遠征。

それは、若かりし頃の彼にはともかく。
今の拮抗状態を辛うじて維持しているだけのコンスタンティヌスの肉体には過酷に過ぎた。

万雷の歓声とともに、フォーラムで見送られながら出陣する軍団。
その威容堂々たる軍団を率いる大帝は、見送る帝都の誰にとって頼もしい存在として見送られて帝都を立つ。
誰もが、栄光の凱旋式を確信しての出兵。

数年前にも、その前にも皇帝はローマを侵す蛮族を撃退し続けていた。
彼は、ローマを幾年にもわたって外敵から守護し続けている。
なればこそ、市民の誰もが皇帝の出陣なれば問題を快刀乱麻の元に解きほぐして解決すると信じて疑わない。

だが、それはコンスタンティノープル市民が大帝を見る最期の機会だった。

出陣した軍団。

それを直卒した皇帝がニコメディアに到着して程なく。
コンスタンティノープルに、皇帝不予の知らせがもたらされる。
愕然としたユリウスが、帝都を出立し駆け付けたとき。

すでに、彼の兄であり同時にローマ世界をその双肩に担ってきた大帝。
ガイウス・フラウィウス・ウァレリウス・コンスタンティヌスはこの世の人ではなかった。








あとがき

こんな時間に更新して大丈夫かって?
問題ない、デスマーチのタスクはやっつけたのさ。
なーにちょっと手ごわかったけど何とかなるさ。
ダイジョウブダイジョウブ。


取りあえず、本作の世界が時代背景を導入的な。
作者、ラテン語できないから三次資料とかに平気で依拠するっていう。
ラテン語どころか、英語も怪しいのよね。
だから、文献理解も適当orz

原始キリスト教教会とか、教義とかまじ勘弁。
洗礼うけるのが、死の間際なのが一般的な情勢とか、原始キリスト教とか泣きたい。 (´;ω;`)
そんな前提知識、勉強してもしても追いつかないorz

日本人に馴染みなさすぎな分野でなんで、こんなの書いているんだろう自分…。いや、溢れるローマへの愛。そう、これは愛に違いない。

本作は、あくまでもフィクション。
コミーだろうが、宗教だろうが、ローマだろうが、議論は歓迎。
でも、フィクションだから一部意図的にいじっていることはご海容ください、切実に。

ガルスとユリアヌスの家族の複雑な異母兄弟とか甥っ子とか端折りすぎ?アリウス派きっちりやらんかボケェ?とかいう突っ込みは、ご容赦ください。

こんな本作ですが、始まります。


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