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No.33133の一覧
[0] エムゼロEX 【エム×ゼロ ifアフター】[スウォン](2013/03/22 20:42)
[1] 第一話[スウォン](2012/05/14 18:35)
[2] 第二話[スウォン](2012/05/15 18:06)
[3] 第三話[スウォン](2012/05/16 18:38)
[5] 第四話[スウォン](2012/05/23 00:10)
[6] 第五話[スウォン](2012/06/05 03:14)
[7] 第六話[スウォン](2012/06/19 17:02)
[8] 第七話[スウォン](2012/06/21 16:11)
[9] 第八話[スウォン](2012/06/29 15:22)
[10] 第九話[スウォン](2012/07/01 15:41)
[11] 第十話[スウォン](2012/07/10 23:12)
[12] 第十一話[スウォン](2012/07/17 18:39)
[13] 第十二話[スウォン](2012/08/09 00:45)
[14] 第十三話[スウォン](2013/01/03 17:57)
[15] 第十四話[スウォン](2013/03/24 00:11)
[16] 第十五話[スウォン](2013/03/26 22:07)
[17] 第十六話[スウォン](2013/04/04 14:55)
[18] 第十七話[スウォン](2013/04/10 19:49)
[19] 第十八話[スウォン](2013/04/30 23:32)
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[33133] 第二話
Name: スウォン◆63d0d705 ID:f55bda92 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/15 18:06
      第二話 愛と涙のカラオケルーム



「えー、約一名非常~ぉに危うい方がいましたが、一年生執行部員全員が無事に中間テストを切り抜けられたことをお祝いしたいと思います」

マイクを持って演説しているのは一年生魔法執行部員にして一年D組のリーダー的存在である竹谷和成。
一学期のクラスマッチで"キング"役を務めたことからもわかるように、仕切りがうまく人望のある男だ。
竹谷のジョークでカラオケルームが笑いに包まれる中、九澄だけが苦い顔をしていた。

「なんか腹の立つ言い方だな……」

「まあまあ」

自分をなだめる愛花が実は一番楽しんでいることに九澄はちょこっと傷つく。
彼女が隣に座っていることに関してはかなり嬉しいのではあるが。
竹谷のスピーチは続く。

「えー、思えば一年生執行部が正式発足して以来、仕事に慣れるためにドタバタしたり中間テストがあったりで
なかなかこういう機会がありませんでした。
 今日はこの七人で、日頃の激務を忘れてパーッと盛り上がって親睦を深めていきましょう。
 まあ堅苦しい挨拶はこれぐらいにしてエントリーナンバー一番竹谷和成、歌います!」

 九澄と他六名の一年生執行部員はテストの数日後、カラオケボックスに集まっていた。
ちなみに九澄はこの日の朝久しぶりに目覚めたばかりである。

「うーん、俺は何を歌おう……」

竹谷がなかなか達者に歌う中、九澄は腕を組んで曲目リストとにらめっこしていた。
伊勢や津川あたりとのカラオケならそれこそなんでもありで、アニメソングやエロナンバーを合唱して盛り上がったりできるのだが、執行部員の面々とはまだそこまで打ち解けていない。
考えてみれば人生の中でも女子あり(姉除く)のカラオケは初めてではないか。
しかもその中の一人は想い人の愛花である。意識しないはずがない。

(ここは柊への気持ちを込めてラブソングを……いやいきなりそれは露骨すぎるか……?
 ていうか柊はどんな曲が好きなんだ……?)

 九澄がウンウン唸っている中マイクは「C組の氷の才女」(命名・伊勢カオル)こと氷川今日子の手に渡った。
学業成績では愛花を上回ってC組トップ、学年全体でも大門らと並んでトップクラスという秀才だ。
魔法の実力は上の下といったところだがその頭脳を買われて執行部入りし、事務担当として期待されている。

(へー、結構綺麗な声だし歌上手いな)

と九澄は感心した。とっつきづらい女子という印象だったがこうして見るとなかなか魅力的な女の子に思える。
実際クラスでも隠れ美人だと評判なのだが、毒舌家でクールな性格のため男子には敬遠されがちなのだ。
本人はうざい男どもに関わらなくて済むと素知らぬ顔なのだが。

「すごーい、今日子さんすっごく上手だね!」

歌が終わると愛花が氷川の手を両手で握って絶賛した。
一年執行部で二人きりの女子、おまけに同じクラスということで愛花は氷川を慕っている。
執行部入りの前はさほど仲がいいという程でもなかった二人だが、今では姉妹のようにも見えるなと九澄は思った。
いつもの様に無表情な氷川でも心なしか照れているように見えなくもない。
しかしそんなことより愛花が可愛いと九澄は性懲りもなく思った。

(考えてみりゃ柊の親友は三国にしろ乾にしろ子供の頃からの付き合いなんだよな。
 高校で出会った観月や氷川と仲良くなるのは柊にとっても良い事なんだろうな、うん)

 マイクは三人目の影沼の手に渡った。九澄はひたすら曲目リストをにらみ続け、影沼が歌い終える頃ようやく自分の曲を入力した。

「それじゃあ次はあたしの番だね。あんまり自信ないけど……みなさん聞いてください」

愛花がマイクを握った。
九澄は全身全霊を傾け愛花の歌声を胸に刻みつける。
最初の一声が流れた瞬間九澄の耳に電流が走った。

(こ、これが柊の歌声……可愛い! いやこれは可愛いなんてもんじゃない……天使! 天使の旋律!!)

実際愛花の歌唱力は平々凡々といったところで、惚れてる男でもなければ特に感激するようなものでもないが、九澄にとってそんなことはどうでも良い。
地球上のどんな歌姫も愛花という名の妖精には敵わないと九澄は確信した。
愛花が歌い終える頃九澄はほとんど逝きかけていた。
自分が歌う前に燃え尽きる勢いである。
なんとか精神を立て直しマイクを受け取った九澄。

「心を込めて歌います!」
(特に柊、聞いてくれ俺の愛の歌を!)

特に書くべきこともない凡庸さなので省略。
ちなみに愛花は笑顔で拍手していたが、他の男子が歌った時と全く変わらない反応であったことは付記しておく。

 ラストを飾るのは大門である。

「実はカラオケって初めてなんだ」

「そりゃ意外だな」

今時そんな高校生がいるのかと九澄は思った。
おおかた勉強と将棋ばかりやっていたんだろう、この優等生め。

「まあ君よりは上手く歌える自信があるけどね」

当然とばかりに胸を張る大門。

「ほ、ほおお……?」

九澄が青筋を立てて大門を睨みつける。大門は大門で一歩も引かずに睨み返す。

「はいはい、二人とも仲良くする!」

この二人が愛花に逆らえるはずもなくあっという間に場は収まった。

「まったくもう、どうして九澄くんと大門くんって仲良くできないんだろう」

多分柊さんが原因だと思うよ、という影沼のつぶやきは誰も聞いていなかった。

(お手並み拝見といこうじゃねーか、大門)

九澄が身構える。
だが大門の歌が始まった瞬間、その場の誰もが凍りついた。
下手だ。下手すぎる。音程がズレまくっていてもはや原曲がわからない。

(な、なんつー音痴だ……そのへんの小学生のほうがよっぽどうまいぞ。
 つーかなんだそのご満悦な表情は、お前それが上手いと思っているのか?)

どこか遠くを見つめながら自信たっぷりに一曲歌い上げた大門。
紅白歌合戦の大トリ歌手もかくやという堂々たる風格であった。
しばらく沈黙が場を支配する。
心優しい愛花が拍手し始めると、竹谷と影沼が遠慮気味にそれに続いた。

(勝った……歌では俺の圧勝だ! お前なんかに柊は渡さねーぜ)

他は大半負けているのだが。

 カラオケ大会はその後さらに二巡続いた。
大門の音痴は相変わらずだったが、本人のあまりの威風堂々とした態度を前に誰もそれを指摘できずにいた。
九澄のラブソングは相変わらず全然愛花に伝わっていなかった。
九澄は愛花が歌うたびに感激していた。

「ふう、そろそろ時間じゃないか?」

九澄が尋ねると竹谷が時計を確認する。

「いや、後一周ぐらいはできそうだぜ」

「ええ、もうあんまレパートリーないんだけどな……」

九澄としてはもう後は愛花のワンマンショーでもいいぐらいなのだが、そういうわけにもいくまい。
まだ何かいい曲あったっけと記憶を検索していると、大門が身を乗り出した。

「みんな、せっかくだから最後は点数を競わないか?」

一瞬場が固まる。
何を言ってるんだこいつは。

「こういうカラオケパーティーでは、採点を競って最下位だと罰ゲームがあったりするんだろう? 一度やってみたかったんだよ。」

他ならぬ大門からの提案に一同言葉を失う。
それ、負けるのお前じゃん。

「大門君、悪いこと言わないけどその発言、取り消すことをお勧めするわ」

氷川が極力優しく言葉を選ぶ。普段の彼女には見られない配慮だ。

「いや、やろうぜ」

九澄が賛成する。
大門に恥をかかせる願ってもないチャンスなのだ。黙って引き下がれるはずがない。

「へえ、君が乗り気とはありがたい。ここで一丁白黒つけようじゃないか」

大門もその気だ。
周囲はやや引き気味である。

「男に二言はないな?」

九澄が念を押す。

「もちろんさ」

大門はうなずく。

「罰ゲームは全員一枚ずつ紙に書いて中が見えないように折りたたむ。負けた奴はその中から一枚選んで実行する。これでいいだろ」

九澄が悪役っぽく笑う。

「面白い、何が出てくるか開けるまでわからないというわけだ」

大門が不敵に笑みを浮かべる。
決戦の火蓋が切って落とされた。
九澄は内心喝采を叫んでいた。

(勝てる! 負けるはずがねえ!
 こうなった以上罰ゲームは完全に大門に標的を絞らねえと……。
 何が最も大門にダメージを与えられる?
 唐辛子の一気食い? 公園の池で裸泳ぎ? 書店でエロ本のタイトルを読み上げて購入?
 いや駄目だ、そういうイジメじみた罰ゲームは書いた人間の品性が疑われちまう。柊に嫌われちゃ元も子もねえ。
 つまり一見非道じゃない行為なのに精神的に辛い行為、大門の急所を突く命令、それはなんだ?)

 九澄の脳裏に閃光が閃いた。

(これだ。これしかねえ!)

『好きな異性の名前を言う』

(古典的にして単純、そして破壊的。まさに罰ゲーム・オブ・罰ゲーム!
 俺は大門が誰を好きなのか知っている。
 なんてったって俺も同じ女に惚れているんだからよ。
 最初は単なる思い過ごしかとも思ったけど、あいつらが執行部入りしてから疑惑は確信に変わった……!
 明らかに柊のことを気にかける大門。柊にだけ特別優しい大門。
 やたらと将棋の話を柊に振って二人だけの話題を作ろうとする大門。
 もう間違いねえ。今や奴は俺の最大の敵だ!)

そして現時点で愛花が大門を特に異性として意識していないということも九澄は確信していた。
自分に対してもそうだというのが悲しい所ではあったが……。
いずれにせよ、その状態で他の人間が見ている前での公開告白などできるはずがない。
適当にアイドルの名前でも挙げて誤魔化すしかないだろう。
その誤魔化したという引け目が、今後大門を愛花に対していくらか消極的にさせてしまうだろう。
これぞ大門高彦の急所を突く命令!

(ヘヘ……完璧な計画だ。なんだか自分が夜神月になった気がするぜ)

九澄が新世界の神を思わせる邪悪な笑みを浮かべていると、なにやら愛花が自分を呼んでいるのに気付いた。

「九澄くん! 曲始まってるよ!」

「え……ええっ!?」

 全ては九澄自身の失態だった。考え事に熱中するあまり上の空で適当に曲を選び、その曲が始まったことにさえ気づかなかったのだ。

「やべっ……、今どこの部分だっ……? ええとええと……」

瞬間的にパニックになった九澄がきちんと歌い始めるには少々時間がかかった上、連鎖的にあちこちでボロが出る始末だった。
機械採点というのは残酷である。こちらの事情などいちいち勘案してくれはしない。

 46点……!
            絶望的数字……!
     敗北……!
  ざわ……!     ざわ……!

(いやまだだっ! まだ大門の結果は出ちゃいねえ!
 あいつならきっとこれ以下の点数を出してくれるはず!)

だが女神は微笑まなかった……!
大門高彦、50点……!
九澄大賀、敗北……! 圧倒的敗北……! 取り返しのつかない敗北……!

「失礼な機械だな、この僕が50点だなんて。
 まあ九澄に勝てたから良しとするか……」

大門はあくまで点数に納得いっていないようだった。
だが九澄にそこに突っ込む余裕などあろうはずもない。
死んだように打ちひしがれる男がそこにいた。
他のメンバーが46点以下の数字を出すはずもなくあっさりと九澄の最下位が決まる。
ちなみに優勝は氷川今日子の93点。

「ま、勝負は勝負。罰ゲームを選んでもらおうじゃないか」

大門が九澄を見下し不敵に笑う。
勝者の余裕に満ちた悠然たる佇まいだった。
50点だけど。

九澄は頭を切り替える他なかった。

(とにかく楽な罰ゲームを選ぶしかねえ……
 多分柊なら優しいことを……そう、コーラ一気飲みとか書いてくれてるはずだ……。
 そうでなくとも俺の書いたやつだけは引けねえ……ここで告白とかできっこねえ……。
 どれだ……俺の書いたやつはどれだ……?)

 紙の区別などつかなかった。どれも同じメモ用紙を使い同じ四つ折りにしてシャッフルしているのだ。
それこそ魔法でも使わないと判別できそうにない。
無論ここは魔法特区ではないし、第一魔法特区の中でもどうせ九澄は魔法が使えない。
頼るべきは己の運と勘しかないのだ。
ままよと右端の紙に狙いを定め、引く。開く。

(俺の運よ……応えろっ!!)




   『好きな異性の名前を言う』




 今日は九澄の厄日だった。

「ええっと……どうしても言わないと駄目かな……」

「今さら何を言ってるんだ君は。男に二言はないんだろう?」

「ですよねー」

九澄は苦し紛れに笑う。
その背中には冷や汗がだらだら流れ、頬はヒクついていた。

(どうするどうする……いっそここで告白……)

九澄が左側をちらりと見ると、黙ってこちらを見ている愛花と目線が合った。

(だーーーーっっ!!! できっこねーーーーっ!!!)

やっぱり誤魔化そうと決意した九澄。
本来ならばここで人気のアイドルの名前でも出しておくのだろう。
だがパニック状態の九澄はとにかく一番最初に浮かんだ名前を出してしまった。

「俺が好きなのは…………ルーシーだ!」

場内沈黙。ぽかん。
数秒間の無音地帯。

「ルーシーって……誰?」

最初に口を開いたのは竹谷だった。

「海外の女優か誰かかい?」

大門が続く。

(やべっ! つい勢いでルーシーって言っちまった……!
 でもこいつらにあいつのこと話す訳にはいかないし……仕方ねえ、適当に言っとこう)

「ははは、実はそうなんだよ。いやーすげえ美人でさー思わずファンになっちまったよ」

得意の作り話を並べる九澄。
いつの間にかルーシーはコメディドラマでデビューし今や演技派として人気急上昇中のニューヨーク出身若手女優ということになっていた。
どうにかこの場を切り抜けた九澄は安堵の溜息を付く。
だがその時愛花から白い目で見られていたことには気づかなかった。


####


翌日、いつも通りに登校した九澄の前に、体から憤怒のオーラを醸し出している少女が立ち塞がった。
整った顔立ちが鬼の形相になっているその様子を見て九澄はたじろぐ。

「み……観月……?」

「変態! ロリコン!! ペドフェリア!!! いっぺん死んで生まれ変われ!」

それだけ叫んで観月は顔をぐしゃぐしゃにして走り去っていった。
唖然とする九澄の前に今度は愛花が現れる。

「あのね、九澄君……昨日一晩中考えたんだけど……やっぱりルーシーちゃんを恋愛対象にするのって良くないと思うの。
 その……思春期の男の子って色々複雑なんだと思うけど……出来れば人間の女の子に興味持ってほしいなって……」

「ま、待ってくれ柊! あれは……」

「あたしにできることがあったら協力するから! じゃあね!」

愛花は脱兎のごとく駆け出した。
九澄は小さくなっていく愛花の背中を涙目で見送るのみ。

「違うんだ柊! 
 誤解なんだ!!
 ちくしょう、カラオケなんて大っっ嫌いだーーーーーーーっっ!!!!」


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