生命謳歌万歳。
土砂や岩の中に埋もれている、グロスターのコクピットの中で目が覚めた僕が真っ先に思ったのは、この言葉だった。
生きてる…僕生きてるよぉ…。
冗談抜きで…今回は死ぬかと思った…。
最後に憶えている記憶は、圧倒的な質量を持った、崖崩れに巻き込まれ、前後左右が解ら無くなる程、揺らされまくった記憶。
コクピットの中がジェットコースターになった気分だ。
…よく生きてたな、僕。
これが噂の主人公補正?
いや、脇役な僕にそんな補正はないよな。
単純に運がよかったのか?
とにかく生命謳歌万歳。
にしても本当に自然の脅威は恐ろしい!
日本は地震が頻繁に起こる国だと聞いていは居たが、まさかこれほどの地震を実際に体験する事になるとは…。
日本に住む方!特に東北地方の方々はご注意を!
……さて、皆に注意を促した所で、そろそろ行動に移さないとな。
雪崩や土砂崩れに巻き込まれた場合の恐怖の一つは、どちらが天か地か解らなくなる事だそうだ。
だが幸いに、今僕が埋もれている場所は比較的、地表に近い所の様だ。
土砂や木々の隙間から光りが漏れている。
とりあえず、今の状況からは抜け出せれそうだ。
土砂や岩に埋もれた場所から、グロースターを抜け出し、機体の調子を確かめる。
確かめた結果、芳しくない結果がわかった。
まずは通信機がイカレている。
仲間や本陣と連絡を取ろうと、通信を試みたのだが、繋がる気配が無い。
そしてレーダーも逝っちゃている。
仲間の識別反応や、敵の熱源反応を示す、装置がうんともすんとも言わない。
更には、地図すらも表示されない。
これでは何処へ行けばいいのか解らない。
そして問題はグロースター自身にもある。
あの土砂崩れに揉まれたおかげで、グロースターの反応が鈍い。
少しではあるが、いつものグロースターの動きよりも鈍重に感じる。
そして武器も無い。
僕はこの戦いにおいて、大型ランスとアサルトライフルを持ってきたのだが、今それらの武器は、あの土砂の中に埋もれている。
発掘して見つけ出すのは、実質不可能といってもいいだろう。
つまりは今の僕は丸腰。
こんな状況で敵に見つかったらマジでやばい。
そして更にヤバイ事態が一つ。
………………此処……何処?
僕の名前はアクア・アッシュフォード。
世界の三分の一を占める超大国ブリタニア帝国の軍人としての最高峰の一角である、ナイトオブラウンズであり、第七席の称号を与えられたナイトオブセブンだ。
ジノやアーニャとトリオを組み、駆け抜けた戦場は数知れず。
勲章もばっかばっかって感じで増えて行っている、若手の中では出世頭の象徴のような存在。
皇暦2017年ブリタニア帝国の中で抱かれたい男ナンバー1!………だったらいいなぁ。
そんな僕は今、迷子っています。
ナイトオブセブンが遭難しています。
仲間も、何も無く、途方に暮れています。
………物凄く家に帰ってニブニブ動画を見たい。
絶望に暮れる僕に、木枯らしの風が吹いた気がした。
少しの間コクピットの中で体育座りをしながら、孤独を味わっていたが、さずがにこのままじゃいかんと気付いたよ。
時間を確かめて見ると、土砂に巻き込まれた時から、そんなに時間は経っていない。
どうやら気絶していたのは一瞬だけのようだ。
それが唯一の救いだな。
さて、冷静になった所で考えようじゃないか。
僕がどう動くかを。
1. この場で味方が救助に来るのを待っている。
んー…保留。
山などで遭難した時は、下手に動かずにその場で待っているのも一つの手だと聞いたことがある。
しかし今まで戦場であった場所では、軍も直ぐには救助活動はできないであろう。
下手したらこの場に置いてけぼりなんて可能性もある。
そんなのは死んでも御免だ。
でも結構魅力的な提案なので、一先ずこの案は保留。
2.山から下りる。
んむー……保留だな。
戦地から離れられるこの提案はかなり魅力的だが、下山した所で、コーネリア軍と合流できる保証が無い。
そもそもコーネリア軍は敵軍を順調に攻略していた。
あの土砂崩れがコーネリア軍にどれだけ損害を与えたかは解らないが、あの戦況からでは、別の勢力が現れでもしない限り、戦況は引っ繰り返らないであろう。
殆ど勝ちが決まった様な戦場で、敵前逃亡は不味いだろう。
僕はラウンズは辞めたいけど、捕まりたくは無いのだ。
でも戦場から抜け出せれるのは魅力的なので、この案も保留。
3.山をもう一度登る。
うぬぬーー…保留!
山を登れば、コーネリア軍の誰かと合流できる可能性が高くなるだろう。
しかし、敵とも遭遇する可能性もある。
如何に、日本解放戦線がほぼ壊滅状態だからって、侮ってはいけない。
今の僕は武器が無い状態なのだ。
そんな時に敵と出会ったらマジでやばい。
でもコーネリア軍と合流できる可能性が一番高そうなので、この案もやっぱり保留。
…って何だよ!僕!
出す案全部が全部、保留だらけじゃないか!
しっかりしてくれよ!僕!
でも駄目だ!僕の陳腐な頭じゃ、どれがベストな案なのか決められない!
んーー、どうしよう。
少しの間必死に頭を捻らせたが、これだ!という意見が浮かばない。
段々必死になって考えてるのがアホらしくなってきた。
ああ!何かもう考えるのがめんどくさくなって来た!
もういい!全ての採決は神様に委ねるよ!
最近の神様はよく僕の事見放すけど、さすがにこんな命が掛かった採決には仏心を出しくれるだろう!
信じてるよ!神様!
と言うわけで、運命の採決スタート!
ど・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り!
神に全てを委ねた採決の結果は、山を登るであった。
神様わかりました。
あなたを信じます。
はい決定!
山登るので決定!
拒否案は受け付けません!
レッツゴー!ハイキング!
神に全てを委ねた僕は、グロースターを起動させ、山をもう一度登りだす。
味方と合流するために。
……しかしこの行動は、破滅への第一歩となる行動だったのだ。
なんちゃって。
うーん。
結構登ったんだけど、誰とも会わないなぁ。
行けども行けども自然ばっかり。新鮮な酸素が豊富だ。マイナスイオンもガンガン出てるんだろうな。
此処が日本解放戦線の本拠地でなかったら、普通にハイキングに来てもいいかもしれない。
僕は引きこもりが大好きなインドア派だけど、時にはアウトドア派にもなれる新世代の引きこもりなのだ。
ニュータイプって勢いだね。
でもこの土砂崩れ本当にすごかったんだなぁ。
山を登っている間に土砂崩れの被害を目の当たりにしているのだが、かなり広い範囲の被害があるようだ。
やはり自然災害は恐ろしい。
こんな事が戦場でしょっちゅうあったら、命が幾つあっても足りない。足りなさ過ぎる。
やはり軍人は常に命の危機に晒されている。
早くこの職業を辞めて、ニートに戻るのが僕の最大の使命だな。
んー…。
しかし本当に敵味方問わず、誰とも会わない。
でも戦闘は終わってはいないと思うんだよなぁ。
なんちゅーか、戦場の独特の空気と言うか…表現しづらいんだけど、そういった物を感じる気がする。
まあ、確証は無いけど。
しかし大分山を登った。
このまま登っていいものか。
なんか嫌な予感がしてきた。
んー何か僕の感が、これ以上登るなと告げている気がする。
僕の第六感は当たったり外れたりで、ぶっちゃけ役に立つのか微妙だけど、此処は従ったほうがいいかもしれない。
さて、そうなると問題となるのはどちらの方向に降りるかだな。
今まで僕が登ってきた方向と、山に登る方向は省いてだ。
大雑把に言えば、今僕が見ている所から左に行くか。
それとも右に行くか。
この二択だ。
これは割かし大事な選択だと思う。
ギャルゲーで言うなら、ルート分岐並に大事な選択だ。
そして残念ながら、現実は厳しく、ギャルげーの用に分岐時にセーブをしておくなんて行為はできない。
そして優柔不断な僕が、この不毛な二択を選ぶのは難しいものがある。
という訳で、神に全てを委ねよう。
ど・っ・ち・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り!
はい!今僕が見ている方から向って、左の方に決定!
拒否案は受け付けません!
どちらにしろ、どちらかに行かなくちゃ行けない上に、何の情報も無いのだから、行き当たりばったりで行くしかない。
神に全てを委ねるしかないんだよ。
なーに!最近神様、僕の事見放してばっかだから、そろそろ助けてくれるだろ!
神様!信じてますよぉ!
と言う訳で、神の導きに従い下山スタート!
神様!頼みますよぉ!
神の従いに全てを委ねた僕は、下山を開始するのであった。
■ギルバード・G・P・ギルフォード■
目の前に居る、ナイトメアと鍔迫り合いを繰り広げながら、私の心は焦燥に満ち溢れていた。
事態は深刻だ。
敵の援軍に、背後から奇襲を突かれ、我ら親衛隊は劣勢に追い込まれた。
この状況を打開しようと、ポイント9に敵を誘導し、一気に敵を撃破しようと考えられた、コーネリア殿下が、一足先にポイント9に行かれたのだが、その行動が不味かった。
ポイント9にはゼロ率いる黒の騎士団が、既に待ちかねていたのだ。
そして先ほど、殿下と黒の騎士団の戦いを告げる通信が殿下から、聞こえたのだ。
私達親衛隊は殿下を守るためにも、直ぐにも駆け付け、殿下の加勢をしなければ行けない。
だが、目の前にいる敵が其れを許してはくれないのだ。
藤堂。
七年前の日本侵攻作戦において、ナイトメアを持たぬ日本軍に置きながら、一度も負ける事が無かった伝説の男。
将軍と騎士の器を持つ者として、ブリタニア軍にも其の名を轟かす武人。
その男が私達の行く末に立ち塞がっているのだ。
「どけぇ!藤堂!」
鍔迫り合い制した私のグロースターが、力任せに藤堂の操るナイトメアを突き飛ばす。
グロースターの突き飛ばしを食らった藤堂の機体は、バランスを崩しながら後方へと逃げる。
その好機を逃すまいと、私のグロースターは追撃を仕掛けるのだが、私の行動を邪魔する様に、藤堂の機体と色違いのナイトメアが、こちらに切りかかってくる。
ランスを斬撃へと合わせ、敵の攻撃をいなす。
その間に、藤堂は私から間合いを取り、体勢を整えていた。
藤堂への追撃は諦めざるを得なかった。
先ほどからこのような戦闘が続けられているのだ。
此方が攻めれば、向うが引き。
此方が引けば、向うが攻める。
敵は此方が殿下の下へと駆けつけぬように、一気に攻めてくるのではなく、時間稼ぎをする戦闘を繰り広げているのだ。
藤堂が率いる部隊は、完璧なコンビネーションをもってして、私達親衛隊をこの場に釘付けにしていた。
殿下は今黒の騎士団と戦闘を行っている。
一刻も早く殿下の下へと駆け付けなければいけないと言うのに…!
だがどうする!?
この調子では、直ぐに藤堂達を片付け、殿下の下へと駆け付けるのは難しい。
ダールトン将軍の部隊も、日本解放戦線の残党に挟撃されていて、殿下の下へは行けない。
くそぉ!手詰まりだ…!
あの土砂崩れで、我が軍が崩壊していなければ、このような事には…!
殿下の危機に駆けつけられぬとは…!
誰か、殿下の下へと行ける者は居ないのか!?
ポイント9の周囲の地図に目を走らせる。
だが、それは少し前に見た地図と全く同じで、味方の信号を示すサインが無い地図…いや、違う!
ポイント9の近くに、一つ我が軍の信号を発している機体が在る!
だが、一機だけ姫様の加勢に向っても焼け石に水かもしれない。
それでも居ないよりはましか!
通信を繋げようと、信号を確かめた私は驚愕する事になる。
この信号は…アッシュフォード卿!?
アッシュフォード卿の率いる純血派は、我が軍に多くの被害を出した、土砂崩れに巻き込まれた。
そしてアッシュフォード卿自身も、その土砂崩れに巻き込まれ、行方が解らなくなったと、純血派の生き残りからの報告であったが、生きていたのか!
「アッシュフォード卿!
こちらギルフォードです!
アッシュフォード卿!?」
通信が繋がらない!
向うの通信機が故障しているのか!?
土砂に巻き込まれた時に故障したのか!?
こんな肝心な時に、通信が繋がらないなんて…!
「アッシュフォード卿!こちらギルフォード!
アッシュフォード卿!応答願います!
くぅ!邪魔だァ!」
私の隙を見出したように、藤堂率いる部隊が再び攻勢に入る。
その攻撃を捌きながらも、私はアッシュフォード卿に通信を行う。
「アッシュフォード卿!応答願います!
こちらギルフォード!応答願います!」
戦闘をこなしながら、必死にアッシュフォード卿に通信を繋げる。
だが無常なまでに、通信は繋がらない。
アッシュフォード卿が姫様の加勢に向わねば、姫様のお命が危ないと言うのに…!
何故繋がらない!頼む!繋がってくれ!
私の心の焦りを読み取ったのか、藤堂がこちらの一瞬の隙を見つけ、私のグロースターに上段から切りかかってくる。
その斬撃を避けようと、グロースターを移動させるが、その行動は遅かった。
斬撃はグロースターの肩口を切り裂き、返す刀でコクピットを切り裂こうとする。
返しの刃をランスで受け止め、再び鍔迫り合いとなる。
「アッシュフォード卿!
お願いします!応答願います!
アッシュフォード卿ォォ!」
余所見をしている暇は無いと言わんばかりに、藤堂の機体が此方を押してくる。
駄目だ!
他の事に気を取られながら戦って、勝てる相手ではない!
だが、此処でアッシュフォード卿に、コーネリア殿下の危機をお伝えしなければ、姫様のお命が…!
頼みます!アッシュフォード卿!
どうか私の言葉をお聞きください!
そして姫様を…!お助けください!
「アッシュフォード卿ォォォォォ!」
叫びとなった私の通信に応える声は…。
『…こち…ア…フォード。
ギルフォー…卿。
応答…う』
あった。
希望は繋がった。
■アクア・アッシュフォード■
まずい事態だ。
神様が示された道を進み続けたが、とんと味方と出会う気配が感じられない。
このままでは僕は、戦場に一人迷い込んだ、哀れな子猫ちゃん状態になってしまう。
そんなのは死んでもゴメンだ。
やはり神様を信じたのがまずかっただろうか?
最近僕のことを見放してばっかりだったから、そろそろ助けてくれるだろうと思い、信じたのがそもそもの間違いか。
やはり人は己の力で、道を示すべきだったのかもしれない。
まあ、今後神様を信じるかどうかはともかく、この状況は本気で何とかしなければいけない。
このままじゃ本気で、BADENDに直行してしまう。
この通信機さえ繋がれば、味方の現在地がわかるというのに!
僕は通信機が内蔵されているであろう、場所を憎たらしげに見つめる。
通信機さえ繋がれば、仲間と連絡を取り、直ぐにでも合流地点へと向う事が出来るのだ。
だが通信機が繋がらなければ、仲間との連絡も取れず、居場所もわからない。
こんな肝心な時に通信機が使えないなんて…!
しっかりしてくれ!てい!チョップ食らわしてやる!
壊れたテレビを直す要領で、通信機が内蔵されているであろう所に、ビシ!ビシ!っとチョップを食らわす。
右45度の角度がポイントだ。
その角度に沿って打つべし!打つべし!
ニ、三度打ち込んだが、特に通信機に変化はない。
現実逃避でチョップを打ち込んだが、まあ、これで直ったら奇跡だな。
そして奇跡は簡単に起こらないから、奇跡と呼ばれちゃうのよね。
アクアションボリ。
さて、現時逃避はそろそろやめよう。
この先僕がどう動くか、考えようか。
このまま現実逃避かましてたんじゃ、マジで僕の命がやばい。
…って、ん?
今、通信が繋がったような!?
「アッ…フォード卿…ォォォ!」」
うお!?びっくり!?
通信機から突如聞こえてきた、馬鹿でかい声に、僕は驚愕してしまったよ!
いきなり通信が繋がったと思ったら、こんなでかい声に迎えられるなんて!
え!?まさか僕のチョップが通信機を蘇らせたの!?
すげえ!マジで僕のチョップすげえェェ!
今度から僕の右手は神の右手と呼ぶ事にしよう!
おっと、そんな事よりも通信だ!
あの声には聞き覚えがある。
おそらく通信先はコーネリア殿下の専属騎士である、ギルフォード卿だ。
「こちらアッシュフォード!
ギルフォード卿!
応答願う!」
通信を寄越してきたギルフォード卿に、一抹の期待を寄せて通信を行う。
頼む!繋がってくれ!
本当にお願いだから繋がって!
繋がったら、ジノとだって一発やってもいいから!
………いや、やっぱりそれはやめておこう。
とにかく繋がってくれェェェェ!
僕の必死の願いは…。
『アッシュ…ド卿…
こちらギルフォ…』
通じたーーー!
僕の願いが通じたーーー!
「ギルフォード卿!
今こちらは、通信機や、レーダーと言った物が故障しています。
そちらに合流したいのですが、現在地を教えてくれませんか?」
ギルフォード卿が所属する部隊は、コーネリア殿下の親衛隊。
親衛隊はコーネリア軍の中でもトップの実力を持つ、屈強の部隊にある上に、コーネリア殿下自身も、卓越したナイトメアの操縦技術を持った人だ。
つまりはこの親衛隊が居る所が、この戦場の中ではある意味で、一番安全と言う事だ。
『直ぐにポイン…ナイ…
殿…の下…』
ええい!
しっかりしてくれ!通信機!
ギルフォード卿が何て言ってるか全然わかんねえよ!
「申し訳ありません!
通信機の調子が悪いので、もう一度お願いします!」
お願いだから、見捨てようとしないで下さい!ギルフォード卿!
どうか、もう一度僕に通信を!
…って、何か地図が送られてきた!
よく伝送できたなぁ。
どれどれ?
ポイント9までの地図…。
これが今コーネリア殿下や親衛隊が居る場所か!
やっと僕の欲しい情報が手に入った!
しかも、今の僕が居る場所から、かなり近いし!
やったー!
これで生きて帰る事ができそうだ!
「ありがとうございます!ギルフォード卿!
直ちに、ポイント9に向かい、そちらと合流します!」
『殿……を
よろ…し…』
僕の感謝の言葉に、ギルフォード卿は何らかの返事を返してきた。
やっぱり通信機の不調で、何て言ってるのかはわからなかったけど。
でも、神様の言うとおりに進んでよかったぁ!
これで全然反対方面に進んでいたら、えらい事になっていたよ!
後はとっととポイント9に行って、親衛隊と合流すれば、万事解決だ!
よっしゃー!善は急げだ!
これで、時間を掛けてしまい、コーネリア殿下や親衛隊の連中が移動でもされたら堪らん。
とっととポイント9に向うぜ!
目的地を定めた僕は、グロースターを稼動させ、ポイント9へと急ぐ。
ふぅ。今回も何とか生きて帰れそうだ。
土砂崩れに飲み込まれた時は、もう人生オワタと思ったもんだが、無事に生きて帰れて本当に良かった。
まあ、安心するのはポイント9に向かってからだな。
■ギルバード・G・P・ギルフォード■
『ありが…ご…います!ギルフォ…卿!
直ちに、ポ…ント9に向かい、…合流します!』
その言葉を聞いた瞬間、藤堂と切りあっている最中だと言うのに、私の心は安堵に包まれた。
通信をまともに行えない中で、地図を送信できるかは賭けであったが、無事に送れたようだ。
「殿下を宜しくお願いします!
アッシュフォード卿…」
殿下の事は、アッシュフォード卿が何とかしてくださる!
ならば、我らがすべき事は。
「藤堂!
此処でお前達を倒す事だ!」
私達親衛隊は、藤堂達との戦いに身を没頭させるのであった。
■アクア・アッシュフォード■
おかしい。
何もかもがおかしい。
ポイント9に辿り着いた僕を出迎えたのは、コーネリア殿下や、親衛隊の面子ではなかった。
いや、コーネリア殿下は居るのだが、様子がおかしい。
何か、殿下専用のグロースターの両手が無いし。
しかも何故か知らんが、殿下の傍には、赤くて、すごい強そうなナイトメアが居る。
そして崖の上には、数機の敵のナイトメアが。
あれ?親衛隊の皆様は??
「着てしまったか…!ナイトオブラウンズ!
だが、いまさら邪魔はさせんぞ…!」
崖の上の指揮官機らしきナイトメアが、オープンチャンネルで吼えていた。
それに呼応して、臨戦態勢に入る敵のナイトメア達。
そして状況に取り残される僕。
あれれ?
もしかしてこれって死亡イベント??
…そりゃねえよ。神様。