~ご注意~
外伝、それはネタとかネタとかネタとかをコンクリートミキサーにかけてぶちまけた何か。
簡単に言うとそれはネコ缶にも似た青春の向こう。
要約すると、ネタでしかない。
本編もヒドイですが、外伝はもっとひどい。
ただそれだけご注意をば。
――金が無い。
「開口一番がそれって主人公的にどうにゃの」
金が無ければ食事もできない。
主人公だろうが勇者だろうが魔王だろうが、食わなければ腹は減るものだ。
ここ最近の献立を言ってみろマイサーヴァント。
「朝、朝日を受けながら水道水。昼、食堂の香りをおかずに水道水。夜、星空を眺めながら水道水。路地裏同盟にすら劣る食事――泣けるにゃ」
涙を流すな。水分がもったいない。
あとそんな怪しい同盟と比べるな。
……そろそろ水分だけでは我慢できなくなってきた。
何か、何か食い物はないか。
「保健室に行けばいいんでにゃいの?主役になりたいザ・モブなら出番に嬉々として恵んでくれるにゃ」
それも考えた……が、さすがに桜に甘えすぎるのはダメだろう。
「本音は?」
餌付けされているようで怖い。
なんか桜さんの微笑みが怖い。
「ちゃくちゃくと外堀埋められて気づいたら入籍、みたいにゃ」
大人の階段登るどころか、階段ぶっ壊してるぞそれ。
「ミス・モブは手段を問わなくにゃってきたからにゃー……それはそうとこのまま空腹で少年が脱落するのも――ありあり?」
できれば無い方向で。
今まで戦ってきた相手に申し訳なさすぎる。
「ふむ――にゃらば、あたしが少年をヴァルハラへ連れて行ってあげるにゃー!」
待ってパトラッシュ。
俺まだ疲れてない。疲れてないから。
昇天だけはまだしたくない。
「連れて行ってやるよ、あの星空の向こうヘにゃ――真祖ワープ!」
待て、そんな謎ワープでセラフに穴を開けるな――!
「海老にホタテ、シャケ、野菜。そして――蟹。ふふ……完璧、完璧だわ。やっぱり雪景色には鍋物よね。前はブサイクネコに邪魔されたけど、今度こそ堪能するわよー!……それにしても、遅いわね七夜……べ、別に七夜を待っているわけじゃないわ!ちょっと材料を揃えすぎちゃって一人じゃ多いだけなんだから!」
「一人ツンデレとか今日も絶好調だにゃ白いの」
「――帰れ」
「ん~しっかし、やっぱり蟹って言うほどうまくにゃいにゃ――硬いし」
「殻ごと食うな――!……何しに来たのよバケネコ」
「にゃに、白いのが一人寂しく鍋囲ってると電波を受信したので、わざわざ人を連れて来たのだよ」
「大きなお世話よ!……で、そいつ誰よ」
俺はただの通りすがりの鍋奉行。
この雪原に吹く北風だと思ってくれ。
「ちょっと!何勝手にコタツに入って鍋の準備してるのよ!」
雪原のど真ん中にコタツとは風情があるねお嬢さん。
おっと、この春菊食べごろだよ。
どうぞ。
「あら、ありがと。――じゃ、なくて。何当然のように仕切ってるの!?」
そこに鍋がある。それが答えだ。
む、海老は良さそうだな、いただきます。
「少年、少年。あたしにもくれー」
うむ、この煮干をやろう。
「それ出汁用じゃね?」
何を言うか愚か者。
様々な海産物のエキスを吸った煮干に勝る旨みは無い。
「あ、ホントだうめー」
うむ、堪能するが良い。
おや、お嬢さん。箸が止まってますよ。
お豆腐に白菜、食べごろです。
「どうも――じゃ、なくて!アナタ誰!?」
ふむ、一言で言うのならば――食事を求めて流離う旅人、とでも言っておこうか。
お、このシャケ、脂が乗っててうまいな。
「それタダの食い詰めてる迷子じゃない……」
「少年!次の食材を求む!」
うむ、オススメはこの昆布だ。
「それも出汁用じゃね?」
何を言う。しっかりと水分を得て膨らんだ昆布の噛み応えといったらたまらないぞ。
「あ、ホントだ。いつまでも噛んでいられるにゃー」
はっはっは。
物言わず、おとなしく噛んでろ。
「騙されてるわよバカネコ」
中々聡いお嬢さんだ。
どれ、この肉厚なシイタケを贈呈しよう。
「あら、大きい。うん、出汁が浸みてておいしい」
そうだろう、そうだろう。
……これが夢にまで見た――蟹。
俺は今、冬の名物、その頂点へ挑む――!
「……アナタ、さっきから野菜とか豆腐とか、サブをこっちに回して、メインは自分ばっかり食べてない?」
はっはっは。
――いただきます。
「ちょっと待ちなさい!その蟹は私のモノよ――!」
ふ、鍋奉行と安堵していたのが間違いだ。
俺の真の姿は、鍋の主導権を握り、己が望むままに食す鬼。
即ち――鍋将軍。
「鍋将軍――!?まさか、実在したなんて……!」
失敗したね、お嬢さん。
この鍋戦争で生き残りたいのならば、俺に菜箸を持たすべきではなかった。
「そんな、それじゃあ私は――」
そう、君は最初の一歩を間違えたんだ。
俺は――俺が食べたい物を食べるだけの者だ。
では……いただきます――!
「させるか!フルール・フリーズ・クルールー!」
鍋から氷柱が――!?
「凍りつきなさい。アナタは雪に埋もれて眠るのよ」
鍋から突き出た氷柱は、熱々の出汁を一瞬で凍りつかせた。
そこにあった食材ももろともに。
つまり――
鍋、食べられなくなったけど、どうするんだお嬢さん。
「――あ」
「へ~、アナタ、そのバケネコのマスターなんだ」
あぁ、遺憾ながらな。
ホタテと海老、もう食べれるよ。どうぞ。
「ありがと。それにしても、良くアレのマスターなんてできるわね」
本当にそう思う。我ながら。
「まふぁまふぁーうふぇふぃいくふぇに!」
昆布噛みながら喋るな。というか、まだ噛んでたのか。
む、この白菜うまいな。
「でしょ?わざわざ有名な産地から取り寄せたんだから」
あぁ、名に劣らず確かにうまい。
しかし――やはり鍋は大人しく静かに食べるのが一番だな
「えぇ、まったく。まぁ、いきなりの訪問は些か常識はずれだけどね」
いや、本当にすまなかった。
それでも尚、こうして鍋を囲ませてくれるお嬢さんには感謝してるよ。
「ま、元々一人で食べきれるものでもなかったし……べ、別に一人が寂しいとかじゃないわ!」
「んぐんぐ、ごくん――相変わらずのツンデレだにゃ白いの。そういえば、ダーク☆ボーイはいにゃいのか?」
「ダーク……あぁ、七夜?――知らないわよ七夜なんて。……今日は鍋だから早く帰ってきてねって言ったのに」
ダークボーイで伝わる人物像って大丈夫なのか、七夜さんとやら。
「ニヒル・ボーイは今日も夜中を徘徊中かにゃー」
徘徊癖のあるニヒル・ザ・ダークとかちょっとお知り合いになりたくない部類ですね。
「うむ。実に危険人物にゃ」
「アンタにだけは言われたくないと思うわ」
確かにな。
「波状攻撃とかどういうことにゃの。悔しい、でも……」
「黙りなさいバケネコ」
鍋を囲んだ談笑。
雪原の真っ只中というのに、そこには温かみがあった。
だが、その穏やかな空間が、一瞬にして消える。
「――妙な気配があると思えば……これか」
――っ。
背後から聞こえた声に全身が凍りつく。
何時からそこにいたのか、何処からそこへ来たのか、何もわからなかった。
雪原を踏む足音はなく、北風を遮る存在感もない。
声に乗せられた感情を感じ取ることはできず、まるで幽鬼が傍にいるような感覚が俺を襲う。
驚愕に暴れる心臓を必死に沈めながら後ろを振り向くと、そこには少年がいた。
年のころは自分と同じぐらい。
紺色の制服に身を包んだ黒髪の少年は、何処にでもいる学生のように見えた。
だが、その瞳を見た瞬間に、そんな安堵は一瞬にして消える。
空虚を覗いたかのような虚無。
こちらを眺める冷ややかな目線は、刺すような圧力を持っている。
その瞳に映した感情は――
「お久しぶりにゃー今日も元気にポエムってる?」
「――次の夜まで消えるとしよう」
「待ちなさい七夜!」
尋常じゃないほどの面倒くさそうな気だるさだった。
「それにしても、君に鍋を共に囲むモノがいるとは思わなかったよ、レン」
「ふん、別に私が招待したわけじゃないわ。こいつらが勝手に来たのよ」
「照れなくてもいいんだぜ。さっきまでは仲良く鍋をつついてたじゃにゃいか、マイシスタ。あ、それとも私が一緒に鍋をつつきたいのはアナタだけよアピール?」
「――黙れバケネコ」
彼の膝の上で凄まれても怖くないですよお嬢さん。
それで、君が七夜さんでいいのかな。
「あぁ――アンタ、面白いな」
はっはっは。
少女を膝に乗せている人からいきなり面白い認定されるなんて――大丈夫か俺。
「もう手遅れにゃ」
――マジか。
「クッ――空虚な存在に見せて、その実、わけが分からないモノが詰まってる」
それ人に対する評価なのか。
「あぁ――誇っていいぜ、アンタ。実に解体のしがいがありそうだ――!」
全身を貫くような濃い気配。
幾度も感じた、死の匂い。
聖杯戦争の戦いにも似た殺気が纏わりつく。
だが、俺は引かない。
引かないだけの自分は既に持っている。
そうだ、死線なら既に何度も越えた。
だから、言ってやる。
目の前の死神に、現実を突きつけてやる――!
――お嬢さんの喉をごろごろさせながら言う台詞じゃないよね。
「台無しにゃ」
「ハッ――いいね。この程度の殺気は意にも介さないか」
え、続行?
俺の突っ込みを受けても続行するの?
「厨二を駆け抜けるダークボーイの心は正に鋼にゃ」
すごいな七夜さん。
尊敬できるほどのタフネスさ。憧れはしないけどな。
「出会っちまったんだ。なら――ヤルことは一つだろう?」
あぁ、そこまで言うのなら、仕方が無い。
わかっているさ、この場で何を求められているのかぐらい。
「ククッ――そこらにいる凡夫のような在り様だが、アンタの瞳は苛烈さが宿ってる」
上等だ。
そこまで言うのなら、お前が望むモノを与えよう。
「そのナマモノを見たときはガッカリしたが……今日は運があるようだ。さぁ……」
はい、蟹。
「殺しあお――蟹?」
海産物とポン酢って最強だと思わないか。
「分かってるじゃないか、やはり素材の味を引き立ててこその鍋だ。昨今の豆乳だのチゲだの――濃すぎるんだよ」
おっと、ななやん。
気に入らないのは分かるけど、殺気を込めるのはよしてくれ。
ほら、海老が良い感じだよ。
「あぁ……つくづく無能だな、お前。そのホタテ、食い時だ」
――む、本当だ。
これに気づくとは……
「話にならん。鍋奉行は来世で名乗るんだな」
さすが、と言いたいが……このシイタケを食ってみろ。
「何?――クッ……余すことなく出汁を吸いきった肉厚のシイタケ、その旨みが極限となる一瞬を見抜いただと――」
俺とて一度は鍋奉行を名乗った身。
そうやすやすと鍋の主導権を渡すことはできないな。
「ハッ――まともじゃないよな、お互いさ」
ふ――違いない。
「何、あの空間」
「端から見てると近寄りがたいにゃー」
「ていうか、何。何なの。七夜が鍋つついてるって」
「すげー高速で食材をさらってるにゃ。閃鞘・八点衝使ってにゃいか?」
「それに付いて行くアンタのマスター……人間?」
「ギリ人間」
「その蟹……俺が貰い受ける」
舞い上がれ俺の魔力――!
さて、そろそろシメといきますか。
「あぁ――宴は終わるものだ。そして、終えるからこそ……」
次があるってな。
それじゃ、シメのうどんを――
「待て。お前、今何をいれようとした」
何って、シメのうどん……
「シメは雑炊に決まっているだろうが」
何だって?
海鮮の旨みたっぷりのだし汁にはうどんだろうが。
「出汁を余すことなく吸い上げる米こそが、終わりを飾るに相応しい」
何故わからない。うどんこそが至高であると――!
「クッ――やはり、鍋奉行は一人でいい」
……いいだろう。
ならば、戦争だ――!
「斬刑に処す。その六銭、無用と思え――」
「ネコ缶IN蟹鍋。どうよ白いの。あたしのQ極の鍋は」
「あら、意外とおいしいわね」
――コードキャスト・対象七夜!筋力・速力その他もろもろ全部乗せ!
「弔毘八仙、無常に服す――!」
「にゃ!?ダークボーイが分身しながら地面を滑って襲い来る――おぶぱ!?」
さて、名残惜しいが、これでお別れだ。
「ねぇ、アレ、バラバラに解体されてるけどいいの?」
俺は帰るよ。月の戦場へ。
「聖杯戦争……過去の英雄達との殺し合いとは惹かれるが――お前の戦場を奪うのはやめておこう」
「ねぇ、アレ、ビクビク震えだしてるけどいいの?」
あぁ、悪いな七夜。
あの戦場は譲れない。
あれは、俺の戦いだ。
「うわ……少しずつ再生していってる」
「お前をヤルのは、お前が勝者となった後で十分だ」
さて……勝者になれるかはまだわからないな。
「うわ、うわぁ……生きてるの、あれで生きてるの」
「クッ――次に会うときは、勝者たるお前の首……俺が貰い受ける」
勝者を迎えるなら今日みたいな宴にしてくれ。
……また会おう。
「あぁ……精々あがくんだな――貧乏人」
あぁ……勝者になったら次は俺がおごってやるよ――ロリコン。
「綺麗にまとめてるけど……アンタ達、後ろのグロ画像をもうちょっと見なさいよ」
いや、食後にあれはちょっと。
「あそこまでヤッて殺しきれん奴など、もはや見たくもない」
「あたしを倒そうとも……第二、第三のネコソルジャーが……」
~あとがき~
続きを書く時間が中々取れないので、とりあえず書き溜めておいたネタを放出。
またの名を時間を稼ぐ。
もうネタはないので次は大人しく続きを書きます。
――時間ができれば。