富江・リング・呪怨のクロス作品です。
大粒の滴が地面にと叩きつけられる。
雲に覆われた空は闇にと染まり、ただ、雨の音だけが響いている。その中、一つの音が雨の音を遮断した。それは古びた一つの家で止まる。黒い車から降り立った二人組の男、2人は、慌てているのか、息遣いは激しく、車の後ろにと慌てて駆け寄る。荷台には、ブルーシートに包まれた『何か』が、あった。男達は、顔を見合わせる。
「は、はやくしろ」
「うるせぇ、わかってる!!」
雨の中、2人は、ブルーシートを掴み、両端を持って、トラックの荷台からゆっくりと下ろす。それと同時に、ブルーシートから、落ちる白い腕。男達は、そんなことを気にかけることなく、光もついていないその古びた家の玄関を開けて入っていく。
「ドア、あいてんのか!?」
「安心しろ、ちゃんと調べておいたから」
男達が声を上げる中、ドアノブに手をかけて引くと、ゆっくりと扉は開き、暗闇の入り口を作り上げる。中は、真っ暗で、光がない。まるで底なしの穴に入っていくようだ。その中にと、男達は足を踏み入れる。
「気味悪りぃな」
「さっさと、おいて帰るぞ」
玄関にと足を踏み入れた男達は、そのまま靴を履いたまま、玄関にと上がり込む。玄関はせまく、玄関からすぐ、二階にと続く階段があった。だが、2人は、とてもじゃないが、二階に上る勇気はなく、そのまま、リビングにと向かう。男達は、そのまま足早にリビングにと向かう。夜の闇の中、窓に映る外の光で照らされるリビングは、時折、白く光る。リビングの中は荒れ果てており、新聞紙や、雑誌などが散乱している。男達は、そのまま、ブルーシートにくるまれた女を置くと、そのまま、慌てて元来た道を戻っていく。
「あ、ああ!!」
「うああああ!!!」
男達は、そのまま扉を開けて、家から出ていく。
残されたブルーシート。
ブルーシートから飛び出していた腕が、ゆっくりと動き、ブルーシートをどかした。そして、そのまま、腰を曲げて、起き上がる女。髪の毛が長く、右目の下に黒子がある美少女。
富江様が、呪いの家で、呪いのビデオを見てみました。
【出逢い】
……5時間前
東京都渋谷区渋谷駅、ハチ公前
「可愛い子じゃん!一緒にカラオケとかどう?」
「ねぇ、ねぇ、いいでしょう?」
金髪にピアスを開けた、派手な服を身にまとった男達が、一人の女にと声をかけた。ハチ公の前で、寄りかかりながら待っていたその女は、先ほどから誰もが注目をする女となっていた白いワンピースに、白い帽子を被った黒いストレートの女。それは渋谷という町においては、非常にアンバランスな合っていない姿だった。
「本当?嬉しいわ」
女は喜んで、男達の言葉に乗った。
その後は、一緒にカラオケに向かい、女と一緒に楽しもうと男達は思っていた。だが、此処で、女の本性が明らかになっていく。
「こんな安いもの飲めない」
「い、いや富江さん、カラオケなんだから、此処は特に美味しいものとかは」
「ふざけないで。こんなものを飲まして、私の体がおかしくなったらどうするつもり?お店変えて、そうじゃなきゃ……貴方達とはさようならね」
男二人は、富江のその笑みに、背筋を震わせながら、富江が納得できるまで店を変えることとなった。だが、富江は満足しなかった。
「だめ、ぜーんぜん」
富江は2人の男を弄んだ。
「フフ、アハハハ。やっぱりお金のない、ただの子供じゃ遊ぶ相手にもならないわね」
富江は、男達を見下ろしながら、腕を組んで嘲笑う。
カラオケの部屋にて、富江は、店員が持ってきたジュースを片手にして、それをしゃがみ込んでいると男達の頭にとかける。
「それじゃあ、さようなら」
富江は、そう伝えて、カラオケボックスから出ていこうとした。男は、拳を握りしめ、立ち上がると、富江の腕を掴む。
「痛いっ、なにをするの!?」
「ふざけやがって!人のこと、弄びやがってぇ!!」
男はそういうと、富江の腕を引っ張り、カラオケの床にと押し倒す。富江は、そのまま床に倒されて、長い髪の毛を、床にと舞わせながら、男に馬乗りにされる。富江は、そうされながらも、決して、物応じすることなく、男を見て、笑みを浮かべる。
「笑ってんじゃねぇ!!」
男はそういって、富江の顔を殴りつけた。富江は、口から血を吐く。男は、大きく息を吐きながら、その拳をそのまま開くと、富江の首にと手をかける。
「はぁ……はぁ……」
男は、そのまま、富江の細い首を締めあげていく。富江は、やがて苦痛の表情に顔を歪め、口を開けて、目を見開いたまま、そのまま手足をジタバタさせ抵抗するものの、そのまま動かなくなってしまった。
「はあ……はあ……」
「お、おい、なにしてんだよ、お前」
「はあ……はあ、え?」
男は、もう一人の男の言葉で、自分が何をしたのかを知る。目の前には、富江が、死に絶えていた。
「あ、あああああ!!!お、俺、なにしてたんだ!?あ、あれ!?なんで、なんでぇええ!!」
男は富江から離れて、壁にと持たれると、悲鳴を上げる。もう一人の男は、呆然と、動かなくなった富江を眺めていた。どちらにしろこのままでは……。男二人は、そのまま、富江を、酔った客のふりをして担ぎながら、そのまま、カラオケ店を出た。そして、彼女を車の後ろにと乗せると、エンジンをかけた。
「やべぇ、やべぇーよ!どうしよう、どうすればいい!?」
「落ちつけ!やっちまったのは仕方がない。隠せばいいだけだ」
「かくせば?」
「そうだ、犯罪が発覚しなければいいんだからな!」
「そんな場所あるのかよ!?」
「ああ、噂で聞いたことがあるんだ。入ったら最後、絶対に生き残れない家があるって」
男は、そう告げると、その場所に向かって車を走らせた。
そうして、今に至るわけだ。
この家に入ったら最後、生き残れないと噂されている場所。そこに富江を捨てることにした。周りの連中だって、こんなおっかない家誰も入らないだろうし。そう考えた、男達は、富江を捨てるようにしたのである。
そして……。
血まみれの富江が、ゆっくりと身を起こす。
富江が周りを見渡す。どうやら自分は捨てられたようだ。すると、目の前のテレビが突然、スイッチが入る。だが、入ったところで、砂嵐の映像がただ富江にと向けて映し出される。富江は、身を起こしながら、ソファーにと座り、大きく息を吐く。死なないとは言っても、多少血を失いすぎた。少し回復を待たなくてはいけない。そんな中、テレビの砂荒しの映像が止まる。
「?」
富江が、テレビにと近づくとテレビには井戸の映像が映し出されていた。
「これ……どこかで」
それは、一週間前だったか、自分と付き合っていた金持ちの男が見せてきたものだった。確か、呪いのビデオとかいっていたっけ。私には怖いものなど何もないと言ってやったらこんなくだらないものを見せてきたのだが。まあ、今はどこかの精神病院に入院していることだろう。富江が凝視する中、二階から物音が聞こえた。富江は、顔を上げて、二階の物音に耳を傾ける。それは、何かが這いずるような音だ。
「なんなの、この家」
富江がそう言って、再度テレビのほうを見ると、テレビの映像に移る井戸に手がかけられる。そして、そこから這い出してるのは、髪の毛の長い女の姿。それは井戸から、はい出てくると、立ち上がり、そして、ゆっくりとだが確実に、こちらにと向かって歩いてくる。それと同時に、二階を這いずる音は、玄関にとつながる階段にと移動しているようだ。
「あ……あ、ああ……あ、あああ……」
近づいている。
富江は、逃げようにも、外は既に這いずるものに抑えられてしまっている。そして、ここにいれば、このテレビの女が、やってきている。逃げな場所はない。だが、富江自身は、そこまで、驚きも、恐怖も感じてはいなかった。なぜなら、富江は死なない。そして、それを富江自身はわかっているのだ。やがて、テレビにと近づいたそれは、手を差し伸ばし、テレビから外にと現れた。
「!?」
さすがの富江もこれには驚いたようで、思わず立ち上がる。だが、立ち上がった富江の背後には、這いずりまわる音と、そして、大きく聞こえる……女のうめき声。富江は、完全に囲まれた。近づいてくる目の前の髪の毛の長い女。そして、背後にと近づくうめき声の女。富江は、身構える。
目の前の女が長い垂れ下がった髪の毛から目を見せて、富江を見た。
背後にいたうめき声の女が顔をあげて、富江の後ろからその首を掴む。
そこで二人の目が合う。
「「わあああああああああ!!!!!」」
悲鳴とともに、目の前にいた女は腰を抜かしたのか、後ろにと倒れて、指を富江の後ろにとさしている。その指を差されている女もまた、背後にと倒れて、腰を抑えながら、うずくまり、ビクビクと震えている。そんな様子を見ていた富江は、呆然としながら、ソファーにと座っている。
「な、なにしてるの?」
富江が、この状況にふさわしいかどうか分からない言葉を告げる。そんな富江の言葉に、目の前の髪の毛の長い女が顔を上げる。髪の毛の間から見せた顔は、所謂、どこにでもいそうな女……富江には負けるがそれでも美人といってもいいだろう。そんな女が涙目でいる。
「こ……」
「こ?」
聞き返す富江。
「怖いです……び、びっくりしました、心臓止まるかと思っちゃった」
大きく息を吐く女に、富江は後ろを振り返る。
顔を上げた女も、大きく息を吐きながら、まだ震えている。
「あ、あんなの見ちゃったら夢に出ちゃいます……俊雄を連れてこなくてよかったわ。死ぬかと思った」
富江は、肩を震わせながら、立ち上がる。
「あんた達、もう死んでるでしょうがぁあああ!!!」
【御挨拶】
ソファーに座る富江の前、2人の女が並んで座っている。正座をして、とても申し訳なさそうな表情で、富江は、足を組み直しながら、そのモデルのような綺麗な足を見せつけて、2人を見下ろしている。
「まずは、名前を聞いておこうかしら?そっちのおばさんから」
「お、おば……私のことですか?」
「そうよ!早く名乗りなさい」
富江の勢いに押されて、ゆっくりと頷いた女。
「私の名前は、伽椰子といいます。この家の主です……」
「あ、そう。噂で言っていたこの家にきたものは皆殺しにする幽霊だって聞いていたんだけど?家が廃屋みたいになってて、よほど好きな奴じゃなきゃ、誰もこないんでしょう?だいたい、なんでこんな汚いのよ!?あんた、人を呪い殺す気あるの!?」
「ええーっと……すいません……」
富江は、いろいろと突っ込みたいところはあるのだが、無視をして次に隣の女にと視線を移す。富江にみられた女は、ビクっと震える。
「あんたの名前は?」
「は、はい!さ、貞子といいます……」
「前時代的なビデオの幽霊だったわね。もうね、時代は2012年なのよ?ブルーレイ、もしくはDVDにしなさきゃ、誰も見てくれないでしょう!?」
「すいません、すいません、すいません……」
富江は、噂では恐ろしい、致死率100%の恐怖の怨霊と聞いてはいたのだが……。もしそれがそうだとするのなら、噂がただ一人歩きしていたのか、なんなのか。まあ、どうでもいいか。
「へぇ、ビデオでの幽霊なんですか?移動ができていいわねぇ」
「そ、そうですか?私なんか、毎日毎日、移動ばかりだと疲れちゃうんですよ、ほら、井戸だって毎回、一週間たって時間になったら上っていかないといけないし、腕にだけ力がついちゃって」
「わあ、凄い筋肉だわ……」
「お腹割れてるんですよ?」
「あ、ちょっと触ってもいい?あ、本当だ、凄いわねぇ」
「アハハハ……ちょっとした自慢かもしれないです、でも、伽椰子さんはこんな立派な家で過ごせているんですからいいじゃないですか~」
「いろいろと掃除とか、大変で。後は、いつも人が来たら隠れなくちゃいけないから、屋根裏とか、湿気とか、カビ臭いし、大変なのよ?」
「なるほど~、やっぱりそれぞれ苦労しているんですね」
「ええ、でも、おかげで、隠れる能力と身体が柔らかくなったわ。やっぱり狭い所に隠れるから……」
そういって、両足を広げて、身体を前にと倒し、胸が床にとぺったりつく。
「わあ~凄い、私もやってみたいなぁ」
「お風呂上がりとかにやるといいわよ」
富江の肩が震える。
「あんた達、わざとやってるでしょう?」
「「え?」」
「死んでるのに身体が柔らかいもなにもないでしょうが!!!」
富江は、こいつらと話しているとバカになりそうだと思いながら、ソファに肘をつけてため息をつく。そんな富江に貞子と伽椰子が、顔を合わせて、富江を見る。
「あ、あの……貴女の名前は?」
伽椰子が恐る恐る問いかける。
「え?富江よ、富江」
「私たちを怖がらないなんて、あなた、霊媒師かなにかですか!?だから、そんなに私達に対して抵抗力があったりするんですか?」
貞子は、身構えながら、富江を見る。
富江は、そんな2人をチラリと視界の端に入れながら。
「私は死なないの。基本的にね、だいたい、あんた達みたいなのにビビって死ぬほど、私はヤワじゃないのよ」
そういうと富江は、ポケットからナイフを取り出して、2人の目の前で、手首を切る。すると、一気に赤い血が溢れだす。そんな光景を富江は、目を両手で隠しながら隙間から見ている。伽椰子もまた、一瞬、後ろに引いて様子を見ている。すると、富江の傷跡は、すぐに消えていく。まるで最初から何事もなかったように。
その様子をみて顔を青ざめる2人。
「「きゃああ~~~化け物~~~」」
絶叫する2人。
富江は拳を握りしめ
「テレビからでてきたり、突然現れたりできる、あんた達のほうがよっぽど化け物だ!!!」
【力を発揮してみよう!】
「なんだか、本当にあんた達が怨霊なのかわからなくなってきたわね」
富江がポツリと愚痴る。
「し、失礼ですよ!富江さん!!」
「そうです。こう見えても私はしっかりと死んでるんですから!カッターナイフで切り刻まれているんですよ?痛かったんですよ??」
「私だって、生きたまま暗くて狭い井戸の中に捨てられたんですから~~!!」
そういって必死に自分たちの正当性を求める2人の幽霊(?)だが、富江としては、彼女たちの力が本当かどうかわからない。では、試してみるか……。
「ならさ、やってみてよ?」
「「え?」」
富江は、腰に手を当てて、ニヤリと笑みを浮かべる。
「私を捨てたバカ2人がいたんだけれど、ほら……あいつら、この家はいったでしょう?ってことは、呪いのフラグを踏んでるわけじゃない?」
「ああ、そういえばそうでしたね!」
伽椰子は、おっとりとした口調で頷いた。
「後は、ビデオをもう片方に見せて、貞子!」
「は、はひぃ!?」
「あんたがもう一人を殺す。いい?出来るわよね?」
「あ、は……はい。たぶん」
富江は、腕を組みながら、2人の背中を見せた。
こいつらを上手く使えば、他の自分の命を狙う富江たちを一挙殲滅できる可能性がある。富江は、そう考えを巡らして、早速、この作戦を実行に移そうと考えたのであった。
「「あ、あの……」」
「なによ?さっさと、行動に移りなさい!!」
富江が振り返り怒鳴ると、富江と伽椰子は顔を見合わして、困惑した表情で富江を見た。
「さっきの2人ってどんな顔でしたっけ?」
「伽椰子さんと出会ったときに驚いたショックで……」
「「忘れちゃいました。てへ」」
「なんじゃそりゃああああああ!!!」
その日、呪いの家近くを通りかかった人からは家から、大きな声が上がったという言葉を聞いたそうだ。