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No.3287の一覧
[0] twilight night[依琉](2008/06/21 00:12)
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[3287] twilight night
Name: 依琉◆62f6b930 ID:7a32ff2d
Date: 2008/06/21 00:12
神様なんてくそくらえだ、と思っている。
完全無欠に公平な神様がいるのなら、どうしてこの世には幸せな人と不幸せな人がいるのだろうか。まったくもって不公平じゃないか。
両親に愛されて育てられた子どもがいれば、生まれてすぐに両親に捨てられる子どももいる。
生まれたばかりの子どもに何が出来るわけでもないのに。
先生たちは、それは神がお与えになった試練なのですよきっとその先には……、なんて説教をくれるけど、わたしは納得なんてできやしない。
今だってほら、

「まったくなんていうことなのかしら。ああ神よ、どう致しましょう」

鋭角的な縁無しめがねが特徴のソエラ教師が大仰な口ぶりでハンカチを目頭にあてる行為をくり返しているのは、神様がお与えになる試練というには凄くくだらないと思う。

「ああ、リタ。今日の礼拝は講堂ではなく、中央礼拝堂で行うことをまさか知らなかったわけではないでしょうに」
「ごめんなさい」

言い訳をすると説教が長くなる。
この学校で8年間過ごしてきて、そんなことは身にしみて解っている。だから、そんな話なんて聞いていないなんて口が裂けてもいえなかった。
連絡を聞けなかったのは不出来なわたしが居残りをさせられていたからで、わたし自身に責任が無いなんて言えない。
ただ、誰もそのことを教えてくれなかっただけで。そして、それもわたしが嫌われ者だからしょうがないのだ。
でも、ルームメイトならそのくらい教えてくれてもいいんじゃないかと、大して仲のよくないルームメイトの顔を思い出して嫌な気分になる。
 
「神に誓って、今後はこのようなことの無いようにしなさい、リタ。宜しいですね」
「はい」

ソエラ教師は気づいているのか、彼女の説教のしめはいつもこの台詞だ。
お陰で話を聞き流していても説教の終わりは解るようになってしまった。
勿論、これはそれだけわたしが彼女に怒られているという証明で、嬉しくもなんともないけれど。

教会の寄宿学校に援助金を貰いつつ通っている立場としては、もっとよい子でいなければいけないんだろうなぁとは思うけれど、思うだけでよい子になれるのなら苦労はしない。
13歳という年齢のために今はまだ自立というのも難しく、孤児であるわたしには選べる選択肢というのも殆ど無かった。
わたしのような生徒は他にも結構いるようで、つまりここはそういう場所でもあるということだ。
そうでなければ、神様嫌いのわたしが教会の寄宿学校に通っているなんて面白くもない冗談でしかない。

さて、こうして大幅に遅刻してしまった礼拝のお勤めも終われば、これから15日間の長期休暇が始まる。
多くの生徒はこの機会に親もとに帰るので、この時期に寄宿舎に残る人物の大半はわたしと似た立場であるということだ。
わたしにしょっちゅう嫌がらせをしてくるクラスメイトが居なくなるのは嬉しいが、15日間ものあいだ何もすることも無く過ごすのは退屈極まりない。
毎年同じことを思っては毎年無為に過ごす長期休暇。



まずは宿題を片付けよう。やることも無いし。

これまた例年通りのわたしの思考パターンで、自分しかいない二人部屋で黙々とペンを走らせる。
全て終わるまでに大体2日から3日かかり、そして10日以上何もすることがなくなってしまう。
1年という期間は今のわたしにとって人生の13分の1にもなる程なのに、成長とか変化とかいう言葉とは無縁だなあ、ああでも身長は去年より1cmも伸びたし成長はしているのかなでもまだ身長順に並ぶと前の方に数人しかいないしむしろ去年より前に居る人の数減っちゃったんだっけ、と思考があっちこっち飛び回っている。
普段から会話なんて殆どしないけれど、やっぱり人の気配が無いというのは別物なんだと実感。
ちょっと出てこよう、と口に出しかけて止まった。独り言が増えるのはよくない傾向だ。



無骨な鉄筋造りの旧駅舎にはぼろぼろになったKeep Outの鉄柵があるだけで、入ろうと思えば簡単に入れてしまう。
新駅舎が完成するまでは、きっとこの辺りはもっともっとにぎわっていたのだと思う。
でも、今はそんな頃の面影も無く、むしろ過疎地帯となってしまったこの場所に立ち寄る人間なんて殆ど居ない。
それでも、遊び盛りの男の子とかなら嬉々としてこういう場所に入ってしまうような気もするけれど、意外とそうでもないのだろうか。
大人がしっかりしているのか、問題さえ起きなければどうでもいいと放置しているのか。
それともこの場所には近寄りがたい何かがあったりするのだろうか。少なくともわたしやここの住人達には、そんな怪しい何かなんて感じていないようだけれど。

「ん、しょっと」

鉄柵の隙間から駅舎に忍び込み、灰色のコンクリートで固められた構内に進入する。
無駄な予算はさけないとばかりに放置された数多くの荷物があり、駅舎の住人達はその少し奥の方に居た。

旧駅舎の住人であるところの3匹の黒猫は特に警戒する素振りも見せず、わたしは猫達の近くにぺたんと地面に腰を下ろす。
動物の中で猫が一番好きなわたしは、以前1匹の猫を追いかけてここに入り込んだことがあった。
その結果この3匹の黒猫のことを知ったわたしは、時たまここへ遊びに来るようになった。
猫たちもいつもここにいる訳でもないが、エンカウント率は結構高い。
餌をあげたりとかそんな余裕はないけれど、ここを縄張りにでもしているらしいこの子たちを見ているとなんだか癒される感じがする。
そこで、一番小さな猫の様子が少しおかしいことに気づいた。

「怪我、してるの……?」

一体どこで何があったのかは知るよしもないが、右の後ろ足の辺りにやや深めの切り傷がある。
他の猫と喧嘩をした怪我とは違う。どちらかといえば、何かの刃物で切られたとかそんな感じの傷だった。

わたしはポケットからハンカチを出して、唾液で湿らせる。
それからハンカチを傷口に当ててやった。
そうして数分間たった後ハンカチを離したそこには、確かにあったはずの切り傷がきれいさっぱり無くなっていた。

初めて気づいたのは4歳の時だったと思う。
何かの拍子に、指を少しだけ切ってしまったことがあって、怪我をした指を口にくわえていたのだけど、口を離すとそこには傷なんてまったく見当たらなかった。
今ではそれが異常なことだと解っているけど、当時はそんなことなんて全然知らなくて、このことが周囲の人にばれなかったのは運がよかったと思う。

兎に角、わたしの唾液には怪我を治す効用があるらしい。
どのくらいの怪我まで大丈夫なのかは試したことが無いので解らないけれど、今の猫の傷がきれいさっぱり治るくらいだから、もしかしたら凄い大怪我も治せてしまうのかもしれない。
試すつもりなんてこれっぽっちもないけれど。

それにしても、何があったんだろう。もしかして近所で猫の虐待とかをしている子どもでもいるのだろうか。
人為的なものと決まったわけではないけれど、嫌なほうへと思考が流れてしまう。
ただでさえ、この場所は冷え込む。屋根があるからと言って寒さを凌げるわけでもないし、食べ物だってきっと足りてないんだろうと解るくらいに、ガリガリに痩せている。
もしかしたら、この後の冬を越すことも出来ないかもしれない。
そんな猫たちにさらに理不尽な試練が待っているとしたら、くそくらえな神様に文句を言ってやる。そして、この子たちに何もしてあげられない自分にも。

カタン、という音がさらに奥のほうから聞こえた。
ただの風かもしれなかったけれど、なんとなく気になって音のしたほうへ行ってみることにした。
ここに入り込んだ悪戯好きな子どもが居て、この子に怪我をさせたんじゃないのか。なんて事も少し考えていた。

だから、そこで見たものを理解することが出来なかった。

「――え?」

それはヒトの形をしていて、ヒトの服を着ていて、床に座り込んで力なく俯いていて、右手の近くには両刃のナイフが落ちていて、胸の辺りに赤黒い染みがあって、土気色の肌は生きているヒトのものとは思えなくて、きっとこれは死体なんだ早く誰かに知らせないといけないだから早くここから離れないと……。

ぐいん、という擬音が聞こえてきそうな勢いで首が持ち上がって、白目をむいた表情なんてものを感じない顔を向けられて、かばっと起き上がって押し倒された段階になって、ようやく自分が危険な状況に陥っていると認識できた。

「い、いやあぁぁぁぁぁ!!」

男の人の死体(?)の背中から黒い靄のようなものが浮かんでいたのが視界に入ったけれど、そんなものは今のわたしにはどうでもいいことで、精一杯暴れまわって兎に角逃げ出そうともがいた。
けれど、わたしの力じゃびくともしなくて、男の人の右手が落ちていたナイフを探しているのに気づいて、飛びついてきたせいでもっと後ろにあるはずだって言うことなんて思いつきもしないで男の人の左手に噛み付いてやった。

「――――――!!??」

とたんに死体(?)から沢山の黒い靄のようなものがあふれ出して、壁を透過してどこかへ言ってしまった。死体は死体らしくぐたっと倒れて、もう何の力も入っていないそれの下からはなんとかわたしの力で脱出することが出来た。
わたしは何がなんだかわからなくて、兎に角ここから逃げ出したいという一心で、埃やらなにやらで汚れてしまった制服を気にもかけず旧駅舎から全速力で離れたのだった。



自分の部屋に戻り、ベッドに体を投げ出す。
呼吸が荒い。全力でここまで走ってきたせいもあるけど、何よりも恐怖のせいだ。
あれは何? あれは何? あれは何!?
理解の及ばない現象に、せめてこの場所は安全であるはずだと、神様を信じてないわたしが神様の聖なるご加護とか言うものに縋る気分だった。



翌日、休暇中にも関わらず校長室に呼び出された。
色々と問題を起こしてきたわたしだけど、校長先生に呼び出されたことなんてさすがにない。
だから、今回はよほどのことなのだろうと予想していた。
もしかしたら、援助金が貰えなくなってここから追い出されるのかもしれない。
この学校にそこまでの未練はないけれど、生活基盤がなくなってしまうのは凄く困る。
せめて卒業するまでは面倒を見て欲しい。
そんな風に不安に駆られていたので、失礼しますと言って校長室に入ってから顔を上げるのにしばらく時間がかかってしまった。
そして、そこに校長先生のほかにもう1人、人が居ることに気がついた。

「リタ、正直にお話なさい」

厳しい表情で、校長先生がそう前置きする。
その後に告げられた言葉に、わたしは唖然となった。

「貴女に殺人の容疑がかけられています」
「……え?」
「昨日、旧駅舎で胸を刺され亡くなっている男性が発見されました。そして、そこから慌てて逃げているあなたの姿を見かけたという人がいます。
 ……私は貴女を信じています。ですから、どうか正直に話してください」

校長室に居たもう1人の男性がいつの間にかわたしの横に立っていた。


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あとがき

はじめまして。依琉(ヨル)と申します。
ここで執筆されている皆々様の作品を読んでいるうちに、

『自分も何か書いてみたいなあ』

等と思ってしまいまして、本当に書いてみることにして見ました。
文章を書く、というのも学校の課題等以外でやったためしがないので、読みにくい日本語がおかしい等々、お見苦しい点が多々あると思います。
このような場に投稿するのはまだ早いのだろうと思ったのですが、

『やったからには最後まで書ききらなければいかん』

という気持ちになるのではないかと考え、こうして投稿した次第でございます。
未熟者というのもまだまだの若輩ではございますが、どうかよろしくお願いいたします。


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