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No.32851の一覧
[0] IS Inside/Saddo[真下屋](2012/10/30 23:14)
[1] RED HOT[真下屋](2012/05/31 23:39)
[2] Adrenaline[真下屋](2013/05/05 00:27)
[3] 裏切りの夕焼け/コンプリケイション[真下屋](2016/01/25 20:55)
[4] BLOOD on FIRE[真下屋](2012/04/22 13:59)
[6] チェックメイト[真下屋](2012/05/02 02:17)
[8] ポリリズム[真下屋](2012/05/06 13:24)
[10] Hollow[真下屋](2012/05/06 13:24)
[13] (前)LOST AND FOUND[真下屋](2012/05/08 23:38)
[14] (後)アンサイズニア[真下屋](2015/05/31 21:16)
[15] Groovin’s Magic[真下屋](2012/05/15 01:31)
[16] Butterfly Swimmer[真下屋](2012/06/07 07:59)
[17] アダルトスーツ[真下屋](2013/05/05 00:28)
[18] スクールバス/瞳[真下屋](2012/06/21 00:41)
[19] 恋ノアイボウ心ノクピド[真下屋](2012/07/07 23:37)
[20] 遠雷[真下屋](2015/05/31 21:10)
[21] Re;make[真下屋](2012/08/23 20:55)
[22] Holidays of seventeen # Sanfrancisco Blues[真下屋](2016/04/13 00:43)
[24] Holidays of seventeen # Tell Me How You Feel[真下屋](2012/09/23 17:54)
[25] Holidays of seventeen # You & Me[真下屋](2015/05/31 21:12)
[26] OutLine:君の街まで[真下屋](2012/06/21 00:41)
[27] OutLine:believe me[真下屋](2012/08/13 23:29)
[28] OutLine:Cross Illusion[真下屋](2012/08/28 00:57)
[29] (前)存在証明[真下屋](2012/11/07 19:33)
[30] (中)Killer Likes Candy[真下屋](2013/10/25 01:29)
[31] (後)メアリーと遊園地[真下屋](2012/11/15 21:49)
[32] WINDOW開ける[真下屋](2012/11/15 21:47)
[33] 名前のない怪物[真下屋](2012/12/19 00:55)
[34] [筆休め、中書] [真下屋](2013/10/25 01:29)
[35] SideLine:(前) Paper-craft[真下屋](2013/01/19 13:13)
[36] SideLine:(中) とある竜の恋の歌[真下屋](2013/03/24 23:44)
[37] SideLine:(後) The Kids Aren't Alright[真下屋](2013/04/14 08:22)
[38] SideLine:(終) All I Want In This World[真下屋](2013/06/01 21:21)
[41] HofS:箱庭ロックショー[真下屋](2015/05/31 21:19)
[42] My Happy Ending[真下屋](2013/10/25 01:01)
[43] (前)100%[真下屋](2014/08/14 23:34)
[44] (中)The Hell Song[真下屋](2014/08/14 23:33)
[45] (後)Sick of it[真下屋](2014/08/15 00:33)
[46] Fight For Liberty[真下屋](2014/08/24 17:59)
[47] OutLine:Sheep[真下屋](2015/01/17 23:44)
[48] distance[真下屋](2015/05/31 21:30)
[49] OutLine:拝啓、ツラツストラ[真下屋](2015/11/30 23:35)
[50] House of Wolves[真下屋](2016/03/27 20:28)
[51] OutLine-SSBS:空っぽの空に潰される[真下屋](2016/04/13 00:18)
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[32851] 恋ノアイボウ心ノクピド
Name: 真下屋◆8b7c8ad0 ID:981535a7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/07 23:37
「最高のスピードと、最強の劔冑を所望する 」

数年ぶりにコールしてきた愛しの妹は、開口一番そう告げてきた。
まるで私の『準備』、―――彼女の為の専用機の存在を知っていたのか様に。

「箒ちゃん、勿論準備してあるよ。最高性能にして超規格外。
 箒ちゃんと釣り合いが取れる様な超絶なヤツを」

箒ちゃんは私を怖がる。
私は箒ちゃんを愛している。
そういった立場に、私たち姉妹はある。

しかし。
私が箒ちゃんに恐怖していないと誰が決めた。
きっと私以外の誰も、私が箒ちゃんを怖がっているなんて知りもしないだろうけど。
きっと私以外の誰も、箒ちゃんを怖がっていないだろうけど。
有象無象の能無し共が。

「とっても、とっても、とおっても、手間をかけたの。
 この天才束さんの謹製特製お手製の超傑作『第四世代』機―――紅椿。
 その対価には、箒ちゃんは『何』を支払うの?」

世界の視線を釘付けにするその機体。
現行機のどの機体より速く、強く、硬く、鋭い。
万能機の最高峰。

「何も支払わん。これは交渉でも取引でもなく、妹から姉への『ささやかなお願い』だ。
 姉さん。束姉さん。私に専用機を、くれ」

「あはっ♪」

いいねぇいいねぇ箒ちゃん!
そうだよね! 箒ちゃんはそうじゃないとね!
エゴの、かたまり。
篠ノ之の女は、そうでないと。

「うん、あげちゃう! 可愛い可愛い私の妹の箒ちゃんだもの。とびっきりのサプライズまでおまけしてあげちゃうよ」

「ありがとう姉さん。それでは息災で」

「近々お届けちゃうから、待っ―――切ったよあの子」

数年ぶりの姉妹の会話は、一方的に終わりを告げた。
この私を頼ってくるとは、どういう心境の変化だろうか。
まんまと巻いた餌に食いついてしまったのか。
はたまた別の要因か。
どちらにせよ。

「どちらにせよ。『織斑いっぴー』、いっくんの影響なのは間違いないんだろうけどさ」

ああ嬉しいな嬉しいな。
ねえ、お前もそうでしょ?
あの子なら、お前を十全に使い潰す主と成れるよ?
コアナンバー468、始祖のコアと対となるオリジナルのラストナンバー。

一瞬コアが返事をするように煌いたのは、きっと私の気のせいだろう。












































温泉に混浴と云う名のワンチャンは無かった。
無かったんや……。

「ふっふーふん ふっふーふん ふっふーふん ふっふーふん」

しかし温泉。されど温泉。たとえ一人でも温泉入る。
いや、温泉はぶっちゃけ一人で入りたい。
だからこそ早朝。
この朝の時間帯。
わざわざ早起きした理由。

「ふっふーふん ふっふーふん ふっふーふん ふっふーふん」

なんか地面から生えているL字型の小物を発見。
それを眺めている箒も発見。
一瞬目が合い、互いに理解した。
うん、だよねぇ。おk把握。
箒が去っていく。

「En Touch ME DOWN!」

イン、ザ、パストと最高潮に盛り上がる曲の途中で「何をしてらっしゃいますの?」セシリアから邪魔された。
すげぇもやっぴー。

「アレは、…なんなのでしょうか?」

「知らん、分からん、存じませぬ。俺は今から温泉行くけど、一緒に入る?」

「……遠慮しておきますわ」

フラれちゃったよ。
ですよねー。
だが一瞬考え込んだキミの横顔は見逃さなかったぜ!

「そんじゃあ俺は大浴場へ。セシリア、あれ抜くなよ、絶対抜くなよ、絶対だからな!」

俺はL字型の突起を指差し、再三セシリアに忠告しその場を後にした。
数分後、中庭から爆発音が聞こえたが俺は悪くない。





















さすがに見捨てるのも後味が悪いので現場に直行。
こんなこともあろうかと、脱衣所で携帯をいじくってたのだ。
温泉を前に脱衣もせず待っていた俺を誰か褒めて欲しい。
関係ないけどなにを隠そう、俺は脱衣の達人だ!

中庭には地面に突き刺さる人参型のロケットと、座り込むセシリア。
人参が左右に割れ、スモークが漏れる。
悩むな、行け!
俺は裸足で中庭に躍り出て、スモークが晴れるまでの短時間に人参の背面? に回り込んだ。

「やっほーいっ! 引っかかったねいっくん。どうよこの束さんのエキセントリックな登場は。―――あれ?」

「パンツまでワンダーランドな柄してんぞ成人女性。あんた脳内だけじゃなくて下着の趣味までお花畑かよ」

スモークの中から登場しドヤ顔で登場した天災のスカートをたくし上げパンツの柄を確認する俺マジ勇者。
するとイタズラ黒ウサギ(真)さんは飛び跳ねて逃げた。

「相変わらずだねいっくん! この束さんの後ろを取った挙句にパンティチェックまでするなんて!」

それが一番楽なあんたの対応だからな。
チッピーが開発した篠ノ之束の撃退方法、スカートめくり。
スカートをめくるとこの天災、恥ずかしがって逃げます。
どうぞお試しあれ。

「一年ぶりに会う近所のお姉さんに対して取る対応じゃないと思うけど、まあいっくんだし仕方ないか」

やい黙れこの巨乳。
「○○だし」と容認されてしまったら俺の過去がそんな事ばっかで埋まっていると思われるではないか。
大体あってる。

「じゃあ今度はいっくんの番だね! ほら、ハグハグしようか!」

ぴょん、とジャンプし距離を詰め俺に抱きついてくる天災。
やい止まれこの巨乳。

「いっくん、顔が真っ赤になってるよ~? なになに、照れちゃった? それともお姉さんのおっぱいに欲情した?」

あのおっぱいが悪い。あのおっぱいが悪い。
あんなもん押し付けれたらそりゃ赤面ぐらいするわ。

「束姉、また育った?」

たばねえ。束姉。篠ノ之束。
篠ノ之箒の姉にして、織斑千冬の親友にして、織斑一夏の近所に住む美人な姉的存在にして、
ISの開発者且つ天災天才、マッドネスサヴァン。
篠ノ之束、その人だ。

「うん、この世の中には夢が足りてないからね。胸ぐらい、夢いっぱいにしたいじゃない?」

素敵だと思います!
さすが蝶天才、言う事が違います。
少女を、夢を抱け。胸に(バストサイズ的な意味で)

「あの、一夏さん、こちらの方は―――」

「五月蝿い喋るな金髪出しゃばるな金髪。私の知り合いに金髪はいないんだよしゃしゃるなよ。
 どうしてこう凡才凡人は私の貴重な時間を一々削り取ろうとするのか意味不明だよ。
 大して脳味噌使って無いくせに酸素を消費する金髪はそれだけで罪なんだからあっち行ってろよ」

「―――え?」

「こんだけ言っても理解出来ない? 言語視野に腫瘍でもあるんじゃないの病気持ちなのこの金髪。
 邪魔だから消え失せろって言ってるんだよ? これだから外人は嫌いなんだよ。なんで日本にいるんだよ金髪。
 ちょっとおっぱい大きいからって調子に乗ってるんじゃないよ金髪。ゲラウトヒア金髪」

走り去るセシリア。
その顔がどんな顔をしてるかは分からなかったというか分かりたくない。
後が怖くなんかない。ないですはい。

「ええい、そろそろ離せ。イッピーは温泉に行くのです。弟の敵をトルノデス」

「ん、なーに? お姉ちゃんと一緒に入る?」

「入ります!」

むしろ入れます!

「また今度ねー。そんじゃ私も箒ちゃんを探して旅にでましょうか」

「箒なら向こうの方に行きましたぜ姉御」

「え? 私が開発した『箒ちゃん探知機』と逆方向を指してるんだけど」

「それは残像だ……」

「残像なら仕方がないね。流石はこの天才科学者たばねちんの妹である箒ちゃん。ありがとね~いっくん」

手をひらひらと振って俺の教えた方角へ歩いていった束姉。
おいモッピー。お前の姉の頭の中ではレーダーを誤魔化せる残像を出せる女になってんぞお前。大丈夫か?































「よし、専用機持ちは全員揃ったな?」

「ちょっと待ってください。篠ノ之は専用機を持っていない筈ですが」

俺純粋にこのクラス割りどうなってんのか理解できないんだけど。
一組、織斑一夏。
一組、セシリア・オルコット。
一組、シャルロット・デュノア。
一組、ラウラ・ボーデヴィッヒ。

二組、凰鈴音。

なんだろう、世界の悪意だろうか?
一組に集める事で切磋琢磨アンド織斑千冬の集中教導によりレベル上げを図るってんなら
話は分かるけど、なぜ鈴だけ二組なのか。
織斑ブラザーズに対する学園側の嫌がらせだろうか。おいどいつだ首謀者。
鉄拳制裁してやんよ(ちっぴーが

「本日より篠ノ之箒も専用機持ちだ。篠ノ之、場所は此処で間違いないか?」

「はい、間違いありません。あの人の事ですから、出待ちしているのではないでしょうか」

一般生徒とは一線を画す『代表候補生/専用機持ち』の扱いですが、どうなんでしょう。
最近は実技になるとチッピー:専用機組と山ちゃん:一般生徒組、って分け方してるんだけど、
個人的にはなんだかなぁ、と思ってたりして。

「よし、全員周囲を警戒しろ。怪しいもの、並びに怪しくないものを探せ。
 なおダンボールを発見した際は即座に報告するように」

ただでさえ立場的に溝が出来やすいのに、カリキュラムからしてそういった差をつけると、ねぇ?
よくないと思うわけですよ。

「ダンボールなんて、こんなとこにあるわけないでしょうに」

「甘いわよセシリア。ダンボールをなめたら命を落とすわ、覚えときなさい」

「凰が何を言っているかさっぱり分からんのだが……」

「ラウラにはちょっと難しいかも知れないね。今度教えてあげるよ」

あんで今日は海水浴じゃないんでしょうか。
今日も浜辺でキャッキャウフフしたかったなぁ。
水着姿を無料で拝める素晴らしい空間が台無しです。


「なになに? ちーちゃんが束さんを探してる? 今会いに行きます!」


崖の上の方から声がして、兎さんが岩場をピョンピョンと跳びはねて降りてきた。

「さあ、愛に逝こうちーちゃん。私元気な子を産むから、幸せにし―――」

「―――業務中だ」

スパン、と快音が響く。
長々と話し出しそうだった束姉を出席簿アタックにて黙らせた。

「愛が痛いよ、ちーちゃん」

「そうか、良かったな」

「良くないよっ!」

「黙れ。尻穴に人参ぶち込まれたいか?」

「……ちょっと興味あるかも」

コイツ、出来る……ッ!
コレが噂の天才変態少女か。
流石のイッピーもたじたじか?

いや、俺の中の可能性はそんなものじゃない。 
人が誰しも持ちえる力。
今を越える力、可能性と言う名の内なる神。
イメージしろ。頭に思い描くのは、常に最高の自分。

シャルロにお尻を指で優しくほぐさ○○後、ベニバンで言葉攻めされながらイカさ○○、
そんな姿を妄想してあやべ勃っちゃったどうしようやべえやべえ。
この前要望出してISスーツの改良を行ったけど、まだまだ発展途上なんですよ。
その、俺の尊厳の為にね、○起した際に目立たなくするよう局部にサポータ的な処置を施したんですよ。
担当した向こうの職員さんが明らかに男慣れしてない眼鏡白衣のお姉さんだったにも関わらず、
俺は真顔で「勃起すると男性器が隆起して女子に軽蔑されてしまいます」、なんて相談はしていない。
していない事にしてください。

精神的トリップから帰還すると、女の子達は明らかにどんびきの表情。
ですよねー。
これが、現実。

「あれ、箒ちゃんなんで久しぶりに愛しのお姉ちゃんに会えたのにそんな情けなくて今にも
 泣きそう! 見たいな顔をしているの?」

「話かけないでください、貴方のことが嫌いです」

ばっさりですね箒さん。

「あれ、そんな態度取っちゃっていいのかなぁ? お姉ちゃんが折角バースデープレゼントを持ってきたっていうのに、
 そんな態度とっちゃっていいのかなぁ?」

悪い顔だ。
対して箒はうぐっ、と苦い顔をする。

「お願いの仕方は教えたよね箒ちゃん? さあヒアウィーゴー!」

「いたしかたあるまい。我慢だ、私。専用機もらったらこの女殺そう」

「……あの、箒ちゃん? ぶっそうな本音がダダ漏れだからね?
 それとそんなに軽くたった一人の姉妹を殺そうと決意しないで欲しいな?」

「黙れ」

箒さん強気すぎワロタ。
相変わらずこの姉妹の力関係は謎である。
騒がしいコントを尻目に、手持ち無沙汰にしている姉に話しかける。

「姉さん。姉より優れた妹って存在すんの?」
「知らん。だが姉より優れた弟は存在するかも知れん」
「あっそ」
「お前、最近私に冷たくないか?」
「まさか。休日に二回も気絶させられてお休みが半分瞑れちゃった事とか根に持ってないよ?」
「かなり根に持っているんだな。あとその内の一回に関しては私は関与していないからな」

そういうやなんで専用機持ちを全員集めたのやら。
御披露目会とか強制参加させるぐらいなら、俺を一般生徒と一緒に授業に参加させてくれ。
俺は浜辺で恋のマイレージを流したいんだ。

「お姉ちゃん、私、プレゼントが欲しいな(はーと)」

「あげるあげるなんでもあげちゃう! 箒ちゃんマジ天使! なんなら私の処女も―――」

「いらんわ」

胸の前で手を組み、上目遣いに束姉に可愛らしくおねだりしていた箒は、
飛びついてきた束姉をどこからともなく取り出した竹刀で瞬時に迎撃し言い捨てた。





その後、紅椿の初登場&搭乗が行われた。
皆が第四世代機のスペックに驚きを隠せない中、俺は箒の表情を伺っていた。
何を考えているのかは、まだ秘密。
ただひとつ言える真実がある。
『―――男は黒に染ま』
違った。
『嫌な予感が、しやがるぜ』
スターウォーズじゃあるまいし、毎度毎度なんなんでしょうね。
胸を盛大に揺らしながら参上した山田先生の発言は、これ以上なく俺の予感の裏付けとなった。































「2時間前、ハワイ沖で試験稼動にあったアメリカ、イスラエル共同開発の第三世代型『シルベリオ・ゴスペル』、
 通称『福音』が制御を失い暴走。監視空域より離脱したという連絡が入った」

畳の部屋でミーティング。
畳ってだけでなんだか心が安らいじゃう俺日本男児。
皆が真剣にスペックやら格闘性能やらの話をしている。
右から左へ流れるように安手のニュースが賑わっているのか?

「一回限りのアプローチ。でしたら、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」

和室にISスーツって違和感ばりばりですね。
とりあえず俺着替えてきていいかな。
肌触りあんましよくないんだよねこのスーツ。地肌に直だし、どうもなんかちょいと好きになれなかったり。

「あんた、ボケっとしてるけど今あんたの話題だからね?」

「零落百夜、ですか?」

「しれっと話だけは聞いてるのよね、あんた」

皆の視線が集まる。
ああ、うん、そう?
そういう流れ?

「問題はどうやって白式を運ぶかだ」
「攻撃のためにエネルギーを温存させないと不味いね」
「高感度ハイパーセンサーとブルーベリーが必要だな」

あの、ブルーベリーに動体視力を向上させる効果はないからね。
テレビに踊らされすぎなおまえ。

「あれ、俺が行くの決定してんの?」

「「「当然」」」

ステレオで答えんなよ。
たった一人。鈴だけが、織斑先生の動向を伺っていた。


「織斑。これは訓練じゃない、実践だ。お前は軍人じゃない。代表候補生ですらない。
 ―――覚悟がないなら、降りてもいい」


優しい優しい、姉の言葉。
左手がひとりでに開閉を繰り返す。
遊びじゃない。遊びじゃ済まない。
競技じゃない。リミッターも無い。
その上で、心臓に問いかける。


「降ります。義務もなければ熱意もない。自分が戦場に出ても足手まといです」


こんな馬鹿な事に命かけてたまるか。別に被害だって出てないですし。
まず最前線を教員じゃなくて生徒にやらせる所が信じらんねーよ。
あと話半分にしか聞いてないけど、敵が単機ならレーゲンのAICで動き止めて全員でぼこりゃ楽勝だろうが。

「そうか。ではこの件に関しては他言無用だ。ランクBの情報規制として受け止めろ」

「了解しました。―――おい箒、出るぞ?」

「待て、私は―――」

「専用機を貰ってたかだか5分も操縦してねえ癖に肩並べたとか誤解してんじゃねーぞ?
 おら、邪魔になんだろうが『素人』。俺と仲良く退場だ」

箒の手を握り、襖を開けて退室する。
天井裏から「な、なんだってー」と呟きが聞こえた様な気がした。

「これ以後敵性機の呼称は『福音』と呼ぶ。搭乗者は『ナターシャ・フィリス』、詳細なスペックデータと武装は―――」

作戦概要を話し始めた織斑先生の話は出来るだけ聞かないようにし、部屋を後にした。





























部屋に戻っても質問攻めに合うだろうと、一夏と抜け出して海へ来た。
二人で海岸線を歩く。
無言で。

私は、先程のことを考えていた。

『肩を並べた気になっているんじゃない』
『素人』

専用機を得たと言うのに、私はまだ一夏と対等ではない。
違うな。
一夏が私を対等と認めていない。

認めさせなければならない。
私を。
私という存在を。

刻み付けてやる。
篠ノ之箒と云う存在を。

「一夏、―――私と立ち合え」

「おおっと、突然の決闘フラグ。だが断、れないツラしてんなぁ……。どうしたってんだよ?」

「私を見ろ、一夏」

私を見ろ。
私という存在を見ろ。
お前が下に見ている者が、もうお前と同じステージに立っている事を認めろ。

「見てるよ。見てるって。ガン見だって。お前のISスーツ姿が魅力的すぎて目が離せん」

私は、本気で一夏の頬を殴りつけた。
一夏はさして痛がる風も無く、よろめいた体を立て直して軽く頭を振り、砂浜に赤い唾を吐いた。

「なぜ避けない。なぜ甘んじて受ける」

「そりゃ、殴られる理由があったから。ちょっとセクハラが行き過ぎてしまったとの反省も込め」

その態度が、私を苛立たせる。
私の拳を避ける必要が無いと。
それで丸く治めようしているのが、腹立たしい。

私の感情を感知し、軟派な言葉で怒りの矛先を変え、自身が受け止めることでその場の波風を立てぬようにする。
私とぶつかる必要すらないと云われているみたいで不快だ。

「一夏、私と立ち合え」

「……あーもう! お前は専用機をゲットして有頂天に成っているだけだって!
 元々俺はお前との立ち位置なんて気にした事がねえ! 人は平等じゃなくても対等だ!
 お前はそれをヤレどっちが上だのどっちが強いだの気にしやがって! 特に今は、
 ただの精神高揚で、ただの被害妄想で、お前は受動的にテンションに身を任せてるだけだ!
 一辺落ち着いて自分の事とソイツの事を考え―――」

「此処でするか?」

範囲攻撃型刀剣ブレード『空裂』を部分展開し、一夏に尋ねる。
紅椿と篠ノ之箒の同調率は、篠ノ之束の助力もあり乗り始めたばかりにも関わらず非常に高い数値を誇る。
私のやりたい事を、紅椿は再現してくれる。良い機体だ。

空裂にエネルギーを込め、返答を待つ。
こういう言い方をすれば、一夏は折れる。
こんな所でやらかした時の私の評価を気にして、場所を変えるだろう。

それが、私を下に見てると云うのだ。







































空に浮かぶ。
海岸から10km程離れた空にて、紅椿と白式が対峙する。
ようやく、白と紅が並び立つ。

紅椿は、私に力を与えてくれる。
私と云う存在に、力を与えてくれる。
私は、戦える。
紅椿、お前に感謝を。


「『紅椿アカツバキ』改め『紅椿クレナイツバキ』。いざ尋常に、参る」


私は、織斑一夏に篠ノ之箒の存在を刻み付ける為、この手に剣を執った。


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