『 ―― 『オピオイド』と呼ばれる脳内麻薬の分泌によって発生する精神の拮抗状態 ―― 『最期の救い』だと睨んでおる。つまり過剰かつ長時間分泌されるアドレナリンはこの麻薬様物質と拮抗し、伍長の体は異常に傾いたそのバランスを平衡に戻す為にそれを発生させる ―― 』
* * *
宙を舞っている自分を納得させる確かな理由がコウには見つからない、今自分はグラベルを抜けて小高い丘を乗り越えようとしていたはずなのに、なぜ?
青白い世界に投げ出されたコウの進路を照らし出した光は横滑りで穴へと落ちていくモタードが放ったヘッドライトから。刹那に垣間見た地面まではあと幾ばくもない。「 ―― ! 」
声すら上げられないその時間で彼の体は反射的に保護姿勢を取った。両手を後頭部に回して衝撃に備え、全身の力を抜いて接地時の滑走距離をできるだけ抑える。大事な場所の骨さえ折れなければそれでいい。
地面に叩きつけられたコウの体はもうもうと土煙を上げながらおよそ数十メートルを滑走し、小高い丘の上の傾斜へ乗り上げたところでやっと止まった。鍛え上げた強靭な肉体の持ち主とは言えその衝撃によるダメージが皆無という訳にはいかない、痺れを伴った痛みは体のあちこちから連鎖的に生まれてコウの表情を歪ませた。丘の斜面で仰向けに横たわりながらコウは打撲の衝撃と自分の視界が落ち着くまでじっと耐えるしかない事が分かっている、三半規管が極限まで揺さぶられた状態ではいくらそういう経験を繰り返してきたコウといえども動くことすらままならないのだ。光を帯びてとくるくると回る星が煌めく夜空を見上げながらコウは、いつか見た同じ景色をその時の憤りと共に思い出しながら ―― いやほんとはずっと心の中で抱え込んだままだった ―― もう二度と答えが出るはずのない疑問を口にした。
「 …… なぜ、ガトーはあの時俺を助けた? 」
* * *
宇宙空間に浮かんでいる自分が実はまだステイメンの操縦席に座っているという現実を把握するのには数秒を要した。全天球モニターのあちこちが欠けているのに気がつかなかったらパニックを起こしていたかもしれない。
「ガトー …… 止めを刺さずに、行ったのか? 」
ぼんやりと見上げながらつぶやいたコウは無駄だとは知りながら各機能のチェックを始める。ステイメンの動力で動いている以外の全ての機能がダウン、つまりオーキスは ―― 死んだ。
「ここまでして、何もできなかったのか …… ニナを失くして、大勢殺して。それでも奴には届かなかったのか」悔しさのあまりコウの目から涙がこぼれた。血まみれになった手を震わせながら彼はこの宇宙のどこかへと消えてしまった宿敵の言葉を思い出す。
人殺しであるが故に大義を持つ ―― 奴は俺にそう言った。自分を殺してそれを成し遂げた時に俺の犯した罪は意味を成す。だがそれもできなかった。最後まで未熟者と怒鳴られながらあまつさえ命まで救われて俺はこの空しい世界に取り残されてしまった。
こんな事になるのなら。こんな思いをするだけなのならいっそのこと隊長やケリーさんと同じ場所へと連れて行ってほしかった。自分がしでかしたこの重い罪を抱えて生き恥を晒しながら、それでもお前は俺に生きる事を強いるのか?
たった一人で。
バインダーロックを解除してオーキスとの接続を切ったステイメンは奇跡的に無傷のままだった。モビルスーツとしての全機能を回復したミノフスキーレーダーに映る小さな光点、すぐそばにあるそれに向かってコウは少しづつアポジをふかしながらゆっくりと近付く。待っていたかのように手に吸い込まれたそれはオーキスが彼のためにたった一つ残した携行装備だった。一度も使う事のなかったそれは残弾フルの状態でいつでも使用可能であることを火器管制パネルへと表示する。
その時その隣にあるパネルが立ち上がって周囲の状況を探索するレーダーが作動した。彼のいる戦場 ―― そこはすでに動く者のない暗礁宙域だった ―― を中心に遠巻きに配置される多くの艦艇らしき影。味方の識別を示す青い点滅を見ながらコウはモニターの倍率を上げて顔を向ける、ほとんど無傷にも見えるその打撃群の中央にまるで王のように居座ったまま動かない、サラミス。
「あれは …… マダガスカル? 第一軌道艦隊旗艦がどうして」
こんなところに、と言葉を繋ごうとしたコウの背筋に悪寒が走った。慌てて周囲の空へと視線を走らせる彼の眼に映る残骸の数々、ジオンの物だけじゃない、連邦軍の艦艇も。
味方のジムまでっ!
その配置が味方を救助する事ではなく、自分達が放ったソーラシステムの損害評価のための観察行動だと理解した瞬間に彼の記憶の中の欠片が全て一つに繋がった。観閲艦艇たるバーミンガムがあの宙域で敵のザンジバルと中途半端に砲火を交えていた事、その時撃沈したムサイの情報士官が星の屑の作戦要綱を持っていた事。ガトーが核を放った後に接近してきたコロニーを邀撃しようとした観艦式の残存艦艇が敵の罠にはまってコロニー落着に間にあわなかった事。
そして阻止限界点の後ろで計ったように待ち構えていた無数の鏡。
陰謀と言う名の恐怖がモニターに映るマダガスカルの背後で大きく黒い翼を広げる。だがそれに臆するどころか人としてありえない速度で次々にステイメンの機能を戦闘モードへと移行するコウ。炸裂する怒りが理性を焦がして善悪すらも凌駕する。無意識のうちではあるが彼はこの紛争の裏側で暗躍した真の敵の正体に辿り着いていた。
「許さないっ! 絶対に、お前たちがした事の償いは必ず俺が! 」
「大佐っ! ガンダム三号機がロックオン! 」けたたましい警報音がマダガスカルの艦橋を埋め尽くして航法士官はすぐさま回避運動の準備にかかる。しかし艦長席に座ったままのバスクは薄笑いを浮かべたままはるか前方にいる三号機を睨みつけた。「進路そのまま、ガンダムを回収する」
「えっ!? 」驚きのあまりそう聞き返すのがやっと。副官は彼の背後で凍りついたままカタカタと顎を震わせている。「 ―― 復唱はどうした、ガスティス?」バスクに促された彼は慌てて各部署へと命令を伝える。背後での混乱をよそにバスクは遥か彼方で銃を構えて命を脅かすコウに対して凄味のある小声でつぶやいた。
「 …… 小僧、できるものならやってみるがいい」
* * *
遠い記憶が彼に再びあの日の怒りを呼び覚まして体の中に巣くったままの魔物が暴れ始める。血走った眼が夜空に隠れる敵の姿を追い求め、熱を帯びた両手の指が狂ったように地面をかきむしった。モタードを凌駕する獣の咆哮がコウの喉からほとばしり沈黙したままの荒野に響き渡って、次第に早くなる呼吸が横隔膜を痙攣させて鼓動は大きく胸を波立たせる。
理性を失った殺戮機械の全貌を具現化したタイプⅣはそのままコウの脳を乗っ取って自らの意のままに操る為のプロセスへと移行を始めた。抗う彼の意思が無力化されて黒く塗りつぶされていく意識、自分がここにいる目的も何もかもを殺意に塗り替える圧倒的なその力は彼を変貌させるまであと一歩のところまで迫っていた。
しかし冥くなる意識が閉じてしまう瞬間に一筋の光が瞼の隙間から彼の瞳へと忍び込んだ。青白く澄み切ったその輝きが彼の網膜から視神経を伝わって脳へと届いた時にコウはその光の持ち主の名を思い出す。
月。そして吠えるだけの口から零れた、その名。
「 …… に、ナ」
それを口にした途端に収まっていく動悸と呼吸、熱が彼女の名に吸い取られてそのままどこかへと消えていく。少しづつ元へと戻っていく視界の中央にぽっかりと浮かんだ青白い天体。
それは彼女の生まれ故郷であり、そして二人にとって忘れる事の出来ない大事な場所。ほんの少しの間彼らはそこに留まって大きな悲劇を味わい、それと引き換えに大きな決断をした。こみ上げる無二の感情に導かれて放たれたその言葉が今の二人の始まりだった。そしてそれは今も続いている。
あの日の二人が嘘じゃないという事を俺は証明しなくてはならないんだ、どちらかの命が尽きて全てが終わってしまうその前に。
ふらつく足を何度も叱咤しながらコウはやっとの思いでモタードが滑り込んだ穴の淵へとたどり着いた。一番底で横倒しのまま眠っている愛機に向かって滑り降りて彼は労わるように傷だらけのタンクをそっと撫でた。
「すまない、こんな目にあわせて」ぽつりとつぶやいたコウがハンドルを掴んで一息で重い車体を引き起こす。ヘッドライト以外の全ての保安部品が吹き飛んでフェンダーに至っては前後ろとも根元からちぎれている、コウの怪我がほとんどない事の代償がそれだった。
キーを戻してもう一度捻り、インジェクションをリセットしてからセルを回す。転倒時のマニュアル通りに操作するコウだったが果たしてモタードは何度かせき込んだ後に再びその鼓動を止めた。掛かりそうな気配はあるが押し掛けを試すには場所が狭すぎる、工具も持たない今これを動かす可能性は思い当たらない。
キーを抜いたコウはそのままポンとタンクを叩いてモタードを後にした。穴を這いあがって再びオークリーのある西へと目を向ける、距離にしてあと10キロ強。40分もあれば ―― 。
独特の野太い音と共に強烈な光源を持つ車が遠くの方からこちらへと向かっている。それを耳にしたコウははっと今来た道の方へと振り向いた。自分が吹き飛ばされた丘を乗り越える巨大な影、ライト全開で駆け下りてくるその光の強さに思わず目が眩んだ。
「頼む、止まってくれっ! 手を借りたいんだっ! 」慌てて両手を振りながら車の前に立ちふさがるコウだったが、そうするまでもなく車はあっという間に減速していた。彼のすぐ手前で停車した車は無骨なフォルムを持つ軍用の四輪駆動車、そしてコウはこの車に見覚えがあった。
「これは …… ヘンケンさんの」
モワク・イーグルⅣ。人類が二十一世紀と呼んだその初頭から制作されたスイス製の軍用軽車両。アメリカ軍のM1151と同じシャシーを持ちながら高出力のエンジンを搭載する事で防弾性・耐爆性と走行性能に置いて優位を示した当時随一の軍用四駆である。ヨーロッパの各国において採用されたそれは特に急峻な斜面を持つ山岳地帯で特に重宝された記録を持つ。
コウのモタードほどではないがヘンケンのイーグルもそれなりに歴史のあるクラッシックカーで普段は納屋の奥にひっそりと収められている。よほどの事がない限り持ち出さないと言っていたこの車が走って来た事にコウは驚きを隠せない。
「ウラキ君? どうしたんだこんなところで ―― っと」 車の助手席から降りてきたヘンケンは言葉を止めてライトに浮かび上がったコウのなりをしげしげと眺めた。全身赤土塗れのいで立ちにできたての擦り傷の数々、そして傍らの穴の底に置き去りにされようとしている彼の愛車。運転席から降りてこようとするセシルを目くばせで止めたヘンケンがコウに向き直った。
「 …… オークリーに向かってるのか」
「コウもオークリーに向かってるって? なんでまた」明るい声がヘンケンの背後からコウに向かって投げかけられる、その顔も農家を営む仲間としては見知った顔だった。
「パット。 …… それにキャンベルさんまで。どうして ―― 」コウに名前を呼ばれてにっこりと片手を上げた屈強な初老の男は農業組合の副組合長でヘンケンの下に当たる。歯に衣着せぬ物言いのヘンケンに対して温和な物腰のキャンベルが調整役を引き受ける、セシルがいない時の会合ではこの二人のやり取りが名物となっていた。組合の中で一番最初にコウが話しこんだ相手も彼である、機械好き同士の会話は他の人間が近寄れないほど専門的でカルトでマニアックな世界だった。
キャンベルがヘンケンの視線を追って穴の底へと視線を向ける、そこでぽつんと立たされたままのモタードと深刻そうな視線を向けるコウとの顔を見比べた彼はぽつりと尋ねた。
「 …… 乗って行きたいのか? 」
ワイヤーに繋がれて穴の底から引きずり出されたモタードをキャンベルがペンライトで丹念に調べる、その光景を背中越しに見つめながらコウはヘンケンに尋ねた。「なぜ、ヘンケンさん達がオークリーに? 」
「知り合いから連絡があってな、手を貸してくれって言われると断れない性分でね」
「か ―― 組合長、ライター」外したプラグを摘んだキャンベルがヘンケンに向かって禁断のアイテムを要求し、ヘンケンはセシルに見つからないようにと祈りながらこそこそとズボンのポケットからライターを取り出す。ライターの火で接点をあぶりながらキャンベルが言った。「多少フレームは歪んでるがエンジンはまだ生きてる。どうやらプラグが被っただけのようだな。とはいえ ―― 」不安な表情で見守るコウの顔を彼は見上げた。「それ以上の事はここでは分からん。一度昼間にもう一度 ―― 」
「かまいません、動けばそれで」希望に勇気づけられたコウの声が力強い。コウの言葉を聞いたヘンケンとセシルは驚いて顔を見合わせ、キャンベルはよし、と言ってコウの代りにセルを回した。三度目のトライで火の入ったエンジンからは再びあの獣の咆哮が暗闇へと轟き渡る。
「 ―― いい、エンジンだ。よく手入れが行き届いている、機械はこうでなくてはな」
モタードに跨ったコウの脇にするすると近寄ってくるイーグル、運転席の窓が下がって顔をのぞかせたセシルの笑顔にはいつもの屈託さが微塵も感じられなかった。ちらちらと見え隠れする凄味がサリナスでの彼女の立ち振る舞いを思い出させる。
「こちらが先導します。ウラキさんは後からついてきてください。ただしあまり車に近づいたり左右の轍に寄らないように、跳ねた石で怪我しますよ? 」
「セシルさん、なぜみんなでオークリーに ―― 」コウの問いにセシルはそっと彼の口に指を当てた。
「その話は後で。今は時間が無いのでしょう? お互いに」言うや否や猛然と駆けだすイーグル、250馬力は伊達じゃない。あっという間に遠ざかっていくテールランプに慌てながらコウは再びモタードへと鞭を入れた。
「乗っけてあげりゃあよかったのに、こーんなデカい車なんだし詰めりゃああと一人ぐらい何とでも ―― 」後部座席から後ろを振り返ってモタードのヘッドライトを確認するパットにキャンベルが言った。
「お前は何事にも器用だがそこがダメだな。もっと人の機微というものを理解しないと良い航海士とは言えんぞ? 」やんわりと叱られたパットはいつものようにえへへと笑って場を和ませる。
「彼はあのバイクに乗って行きたいと俺に言った。もし俺たちが通りかからなかったのなら走ってでもオークリーに向かったとは思うが、彼は与えられたチャンスにそちらを選択した ―― 機械好きならば当然」
「どう思う、セシル? 」キャンベルの言葉を受けて尋ねるヘンケンの表情は真剣だった。手慣れたように真っ暗闇の荒野をいとも簡単に手なずけるセシルの表情もどことなく浮かない顔をしている。「彼に …… ウラキ君に一体何があったんだ?」
自問自答を口にするヘンケンはじっとサイドミラーへと視線を向けていた。揺れながらただひたすらに追いかけてくるコウの姿を想像しながら彼の中で起こった劇的な心境の変化についてありとあらゆる考察を重ねている、しかしその答えは決してヘンケンが彼に対して望む未来ではなかった。どれ一つを取ってみても、だ。
「モビルスーツ、パイロット」
ぽつりとつぶやいたセシルの言葉にヘンケンの肩がわずかに動く。「どんなに機体が壊れても彼らは掲げられた目標のために全力を尽くす。ボロボロに壊れて動かなくなるまで何度でも酷使して、死ぬまで」
「やめろ、副長」
「それが私の、いえ」憂いのこもった声だった。「あなたの出した結論です、艦長」
そうなってほしくないと彼を諦めたあの日からずっと願っていた。平和な世界でつつましく、小さな建築用の機械を何とか操って多くの家を建て道路を作って未来を生きる。平凡ではあるが安らかな生活こそが過酷な戦場を生き抜いた彼に与えられるべき報酬であり、褒美だったはずだ。それがなぜこうならなければならない?
それが彼の持つ運命だと言うのなら神様とやらの慈悲はどこにある? なぜボロボロの彼をこのままそっとしといてやれない? 彼の気が済むまで ―― 彼がどこかの戦場で死ぬまでこき使うつもりなのか!?
「あなたの気持ちはよくわかります、でも今は結論を出す時じゃない」友人の変化に心を痛めるヘンケンを宥めるようにセシルが言った。「ウラキさんが変わってしまった事が吉と出るか凶と出るか。それにそうなったからと言って私たちの目的は変わりません。そしてそれは彼の目指すものとは、違う ―― ただし」
二人の会話がこれほど緊迫するのはスルガ以来だ、とキャンベル。パットは黙って後ろを向いたままモタードから放たれる光を見つめている。
「もし私たちの目的と彼の目的が重なったとしたら艦長はどうなさるおつもりですか? お互いに大事な者を救いたい、護りたい ―― それは戦況が悪くなるにつれて必ず重なり合う類の物だと思いますが」
「俺の何が聞きたい、副長? 」
「あなたの覚悟を。そうなった時にあなたはウラキさんを見捨てる事が出来ますか? 」
軍人にとっての勝利は絶対の条件だ。それを達成するためならどんなことでもするというのがおよそ不文律となっている。時には敵を欺き味方を見捨ててでも勝ちをもぎ取らなければ意味がない。それはその為に散って逝った多くの命に報いる事が出来なくなるから。
だがヘンケンはその考えに真っ向から反旗を翻す。そんなものはクソくらえだ、醜い勝ちにどんな意味がある? たとえ敗れても美しくあれという生き様だけが今の自分を支えてきた、それはこの先も変わらない。
多分、死ぬまで。
「もし俺がそういう凡百の指揮官と同じ人間だったとしたら ―― 」ため息混じりに吐き出すその言葉には彼なりの強い決意がにじみ出る。「なんで今お前たちはこの車に乗ってる? 」
聞き返された三人が小さく笑った。
* * *
「ミノフスキー粒子が戦闘濃度まで撒かれてるなんていよいよガチね」
緊張した面持ちでつぶやいたアデリアが演習用モニターに表示される地図を睨みつける。マルコの読みではこの先の森を抜けたすぐそばに敵が布陣しているはずだ、敵に気づかれない距離を保ちつつ自分達は敵が突入するタイミングに合わせて後ろから突撃する。レーダーが効かないくらいまでミノフスキー濃度が上がっているのなら敵も自分達も索敵は目視に頼る事になり、そうなれば後ろから攻撃を仕掛けるあたしたちの方が断然有利だ。
「 “ できれば三機、少なくとも俺とアデリアで一機づつは最初に仕留めたいところだな ” 」横に並んだマークスが声を押し殺してそう言うが、いかにも慎重な戦果予想にアデリアは八ッと笑ってカメラを向けた。「不意打ちかけといてそれだけって。せめて半分は持ってかないと ―― 」
その瞬間すぐ背後に浮かんだ影がアデリアの視界に忍び込んだ。反射的に彼女はマークスのザクを手で押しのけて自分はその反動を利用して反対側へと転がり、タッチの差で振り下ろされた大きな黒いマチェットが自分のいた場所に食い込むのが見える。「敵襲っ!? いつ後ろに! 」
いきなりアデリアにつき飛ばされたマークスは衝撃回避のシートベルトが肩に食い込んで思わず顔をしかめ、しかしその直後に目の前に落とされた黒塗りのマチェットに驚いた。「な、なんだ一体っ!? 」
横転してて敵との距離を離した後にすぐさまマシンガンを構えて引き金を引いたが、マークスのロックオンポインターは遥かモニターの外へと飛んで行ったままだ。林の奥へと消えていく曳光弾の光跡を追いかけながら慌ててトリガーから指を離した彼は唖然としてつぶやいた。「うそだろ、たった今までそこに ―― 」
言い終わる前に襲ってくる殺気が彼の目を自然にそこへと向けさせた。モノアイから投影されるモニターの中央、暗い林を背景にしてたたずむ棘だらけのクゥエルはマチェットを傍らにぶら下げたまま悠然とこちらを見据えている。黒塗りの連邦軍の機体など見た事がない、目が離せないプレッシャーに冷や汗が吹き出す。
「どっちが、アデリア・フォスだ? 」
外部スピーカーで尋ねてくるその声をアデリアが忘れるわけがない。連邦軍の機体に攻撃された事よりもそっちの方が彼女にとって由々しき問題だった。「まさか …… なんであんたがっ!? 」
語気を荒げて怒鳴るアデリアに驚いたマークスは二人と同じく外部スピーカーに切り替えて尋ねた。「お前の知り合いか? 」
「聞き方っ! 呑気すぎるっ! 」敵に放ったそのままの勢いで言い返されたマークスが思わず肩をすくめる。「ヴァシリー・ガザエフ大尉っ! あんたの体に穴開けた連中の親玉っ! ちょっとはムカつきなさいよ、全くっ! 」
「ああ …… へぇ」
間の抜けた生返事で答えたマークスがそのままずい、と二機の間に割り込んだ。「マークス・ヴェスト軍曹、オークリー基地所属。貴官とは初対面でしたね? 俺の僚機が以前大変お世話になったそうで」
「あの時の銀髪の坊やか。いっそのことあの時にさっさと殺しておけば無駄な名乗りを聞くこともなかったのだがな」
「同感です、いっそのことあの時にさっさと殺しておけば」そういうとマークスは火器管制モードを近接戦闘へとシフトした。あの至近距離でマシンガンの連射を躱したのなら主兵装は役に立たない。「こんなところで恥をかくこともなかったでしょうに」
ヒートサーベルを背中のハードポイントから抜いたザクはそのまま腰だめに構えた。ベイトの持ち技である吶喊一突、二の太刀いらずの捨て身技。
「ほう。変わった構えだ、それでこそこちらもやりがいがある。無抵抗のジムを後ろから一突きなんて勝ち方はつまらんからな ―― 」
「何? どういう意味だ? 」尋ねたマークスに向かってクゥエルの右手がすっと上がって黒いマチェットの切っ先がつきつけられる。「さっきこの山の上に向かっていたジムはお前たちの仲間じゃなかったのか? ぼんやりとスコープで景色を眺めていたところをとりあえず殺らせてもらった、どうせ重砲を狙いにでも行ったのだろうが俺が通りかかったのが奴の不運 ―― 」
突然マークスの背後からものすごい排気音が轟いてアデリアのザクが躍り出た。モニターに陽炎だけを残して飛び去る彼女はあっという間にサーベルを引き抜いてその勢いのままクゥエル目がけて振りかざす。
「死ねっ!! 」
怒声と共に叩きつけられた二本の刃から火花が散って夜空を染める。獣のようなうなり声を上げてクゥエルへと迫るアデリアの気迫はモンシア達と戦った時以上だ、全力で回るモーターとアクチュエーターの唸りに紛れてアデリアが吠える。
「ガザエフ、あんたはぁッッ!! 」
「そうだ、それでこそ俺を叩き伏せた『ベルファストの鬼姫』 」しかし明らかに押されているにもかかわらずガザエフの声には微塵の動揺もない。彼女の渾身の一撃が相手の掌下にあると悟ったマークスはとっさにバックパック全開で二人の下へと飛び込み、その勢いのまま腰だめにしたサーベルをクゥエルのわき腹目がけて突き出した。不意を突かれた二人がかりの攻撃にガザエフは後ろへ飛び下がって大きく距離を取り、いきなり掻き消えるように離れた支えは全力で押し込んだアデリアのザクをつんのめさせた。マークスの機体が地面に倒れこみそうになるアデリアを肩で支える。
「マークスっ! 隊長が、隊長がっ! 」
「分かってる、少し落ち着けっ! 」押しのけて突っ込もうとするアデリアを必死に止めるマークス、すでにパワーゲージはミリタリーを超えてマックスに近い。「ここで冷静さを欠いたら敵の思うツボだ、それに隊長が俺たちに与えた命令はこいつを倒す事じゃないっ。俺達までやられたら基地のみんなはどうなる!? 」
「 ―― 」言葉にならない彼女の叫びが接触回線のヘッドセットからマークスの耳へと流れ込む。だがそれでもマークスの言葉に理を悟ったアデリアの機体は少しづつ圧を下げながらマークスの背中に落ち着いた。相手との間合いを確かめながら彼は ―― それでも背後にいるアデリアの気配に気を配りながら ―― 外部の音を記録するためにレコードを開始する。
「一つ聞きたい、貴官はどこの部隊の所属だ? 」
それは多分オークリーで今戦っている全ての兵士が聞きたがっている事だ。ジオンの残党が襲ってきていると思い込んでいた自分達に突きつけられた真実を彼は記録して、できる事なら生き延びてこの証拠を持ち帰る必要がある。「どうした、俺は名乗ったぞ? 貴官も兵士としてのプライドが少しでもあるのなら、ここは名乗りを上げるべきだろう? 」
煽るように声を上げたマークスに向かって返って来たのは低い、嘲笑に似た含み笑いだった。「プライド …… プライドねえ。そんなものはとっくの昔にドブ泥の中に叩きこんできたのだが。まあ、いい。どうせ俺もお前たちもここで死ぬ運命だ、録音なんかしても無駄だぞ? 」挑発するマークスの意図を見透かしながらも敢えてガザエフはそれに乗って来た。
なんて自信だ、寒気がする。
「俺はヴァシリー・ガザエフ元中尉。ティターンズ所属バスク・オム中佐直轄の特殊作戦群、通称マザーグース旅団。「W・W・W」中隊が部隊の名だ」
「俺も、と言ったな? なぜ貴官がここで死ぬ必要がある? 」
「この前サリナスでお前たちを逃がしてしまったからな、その失敗の責任を取る形で俺とその作戦に参加した連中は今晩粛清される。多分この作戦が終わった直後に目標以外のお前たちを全員殺したその後で、な。俺たちはそういう性格の部隊だ」 ―― チェンの読み通りだ、やはりそういう連中だったか。
「目的はなんだ? こんな最後方の基地にそんな部隊が、しかも味方に攻撃を仕掛ける理由は? 」殲滅戦と聞いてマークスは思わず震えあがった。対ジオンの残党狩りでもそんな無慈悲な作戦要綱は聞いたことがないし、加えて味方殺しは軍法に照らし合わせても極刑に値する重罪だ。そこまでする彼らの目的とは一体何なんだ?
「技術主任、ニナ・パープルトンの確保及び本部への護送だと聞いている」
「ガザエフっ! 殺すっ! 」怒号と共に再びアデリアの機体が圧を強めてマークスへとのしかかった。パワーゲージがレッドラインを超えるギリギリのところで踏ん張る彼の機体は足を地面にめり込ませるほど耐えている。「こらえろ、アデリア。 …… ティターンズが彼女を必要とするなら正式なルートで書面を使って徴用すればいいだろう。それだけの権力を持つ組織がなんでこんな短絡的な手段に訴える? 」
「そんな事は俺達の頭の上での話だ。作戦とはそういうもんだろう? 」
思考も論理も全て一本筋が通っている。マークスはこんな士官がなぜサリナスのような大規模な破壊行動に打って出たのかが理解できない。それともう一つ。
「録音されていることが分かっていてここまでペラペラ喋ってくれるとは正直驚いた。その自信は貴官のどこから来るんだ? ヴァシリー・ガザエフ ―― 」マークスの挑発はそこまでだった。言葉を塗りつぶすような冥くて黒い笑いが彼の言葉をかき消して満天の星まで蹴り落とさんばかりに周囲を覆い尽くした。
「アーッハッハハハ ―― 」心の底から愉しくてしょうがないといった類の笑い ―― いや嗤い声だ。「そりゃしゃべるさ、だって俺には全っ然関係のない事だからなぁっ! 」
二人の視線にさらされる事などお構いなしにガザエフは大きな声で、隙だらけで笑い続けた。その不気味さが逆に二人を惑わせる。「殲滅? 拉致? そんなめんどくさい事はどっかのだれかが勝手にやってくれ。もうそれどころじゃない」そう言うとマチェットの切っ先がデザートイエローのザクに向けられた。「やっと、やっと俺をこの地獄から解放してくれる奴にもう一度出会う事が出来たんだ! 」
「あんたの言ってる事はあたしには全然まったくわかンないわよっ! あたしにタマを蹴り潰されてとうとう頭までおかしくなったっ!? 」
「アデリア、言い方」それを女の子が言っちゃあ、とあまりの罵詈雑言に眉をひそめてたしなめるマークス。しかしガザエフは彼女の言葉に満足げにうなずくとスッとマチェットを地面へと差し込んだ。
「 …… ひとつ、昔話をしよう」
暴走するテンションと落ち着いて話す時の振れ幅が異常に大きい、まるで二重人格者のようだ。
「その部隊は一年戦争終了後に発足した正規の精鋭部隊だった。目的はジオンの残党どもを操る司令部の背後へと秘密裏に降下してこれを叩き潰し、その後で本隊と前後から挟撃して殲滅すると言う戦術を主としていた。作戦の成功率、目標の達成率は当時の連邦軍全部隊中のトップ、彼らはジオンの出没する最前線へと常に赴いては味方の危機を幾度となく助け続けた」
「 …… なんてこった、ブラックウィドウ」マークスはその部隊を実際に戦場で出会っていた。それは初陣で敵に囲まれたあの時にどこからともなく現れて自分を救ってくれた迷彩塗装のジムの小隊。「だがあんたたちはその後の作戦で敵の罠にはまって全滅したと聞いたっ! そんな嘘を言ったところで ―― 」
「味方の、罠だよ」嘲るようにガザエフは吐き捨てた。「ある日情報部からもたらされた報告はなんの事はないただの小さな部隊だった、しかし精鋭ぞろい。俺達はいつものように敵の司令部を特定してその背後に降下、いつものように味方の前線がタイミングを合わせて挟み撃ちにする予定だった。だが俺達が降りた場所は大部隊で構成された敵陣のど真ん中だった …… 敵に包囲された俺達は何とか味方に連絡してこちらを援護するよう何度も要請した、しかし返事はなかったのさ。仲間は最後の伝令に俺を指名して、俺は仲間の犠牲でようやく前線の司令部へとたどり着いた …… そこで何を見たと思う? 」
思わせぶりなセリフの後にガザエフは八ッと笑って後を続けた。「俺の前に出た伝令が殺されて埋められているところさ ―― 奴らは端から俺達を全滅させるつもりだったんだ。急に力をつけてきた俺達をやっかんだ連中がガセネタを掴ませてジオンの残党ともども皆殺しにしようと企んでいた。ただ計算違いだったのは、俺が『モビルスーツに乗ったまま』そこに乗り込んで来たって事だ」
マークスにはそれが話半分の戯言だとは思えなかった。事実自分もそれと同じ目にあって何度も死にかけている。「前線の司令官は俺のマチェットで頭から真っ二つ、当然軍法会議にかけられた俺はなぜかお咎めなしの無罪放免。たった一人生き残った俺の戦歴を見たティターンズが救いの手を差し伸べたってわけだ」
「それとアデリアにつきまとう事とどういう関係がある!? 」
「ティターンズはとんだおせっかい野郎だ。俺は死んで皆のところへ行きたかっただけなのに」
「それから何度も俺は戦場で死のうと試した、だが死のうとする度に俺の仲間がどこからか出てきてこうささやくのさ、「ガザエフ、お前はまだ死ねない」ってな。勝手に俺の体が動いてあっという間に敵を斃して、気がついた時にはまた俺は仲間に置いていかれる。もう戦場で死ぬ事をいよいよ諦めようとしていた時、突然そいつは俺の前に現れて初めて命を脅かした」
「それはあんたがあたしの部下をっ! 」
「俺だけじゃない、『俺達』だ」言い直されてアデリアの怒りに火がつく。彼女が今まで解き放った事のない真の闘争心が燃えがって今にも全身を焼き尽くしそうだ。
「そうそう、その意気だ。その調子でもっと俺を憎んでくれ、あの時のお前じゃないと俺は絶対に殺せない。あの日お前は今までどの戦場でも先頭に立って斬り込んでも死ななかった俺をその一歩手前まで追い込んだ。俺の股間を狂ったように蹴り上げるお前の顔は俺を殺すに値する、実にいい顔をしていたぞ …… だから病院のベットの上で痛みと共に目が覚めた時にはお前がここにいない事を心の底から恨んだ」
思い出と心情を吐露するガザエフの論理は正しいようで正常ではない。それはシリアルキラーにありがちな欲求不満を解消する理不尽な手段の正当化だ。
「お前に殺して貰えなかった事に絶望した俺は病院から出た後、今の部隊に志願した。自分の過去にも経歴にも何の興味も持たない傭兵集団だ、どこで死んでも覚えている奴も思い出す奴もいない。だから俺は今度こそ死ねるという思いでこの部隊の先鋒を務め続けた ―― それはお前が俺に『死ぬ』事の可能性を示してくれたからだ。仲間の呪いでどうしても死ねなかった俺が見た唯一の希望 …… それを教えてくれたのがお前だ、アデリア・フォス」
「そんな軽く意味不明な理由でなんであたしがあんたと心中しなきゃなンないのよっ、人に迷惑かけンじゃないわよ! 死にたいんならさっさと一人でおっ死ね! 」殺気がマークスの背中にビンビンと伝わってくる、話に集中するどころじゃない。
「なあ、アデリア・フォス。 …… お前はあの後どうなった? 」
「あんたにそんな事は関係ないっ! 」叫んだアデリアがついにマークスの制止を振り切って前に出た。バックパック全開でガザエフに斬りかかるその渾身の一撃が彼のマチェットによって再び押しとどめられる。「あんたがあたしの大事なものを全部奪っていくつもりならっ! あたしはあんたを絶対に殺してやる、死にたいんならあんた一人で地獄に行けっ!! 」
「どうしてお前を一人で置いていける? 俺を殺せば俺にかけられた呪いはそのままお前に受け継がれる、俺を救おうとしたお前が俺と同じ目に遭う事に俺が耐えられないっ! 」はじめて声を荒げたガザエフが思いっきりアデリアを跳ね飛ばした、クゥエルとザクⅡの出力差はスペック以上に大きい。危うく尻餅をつきそうになった彼女は右足を大きく後ろに下げて何とか踏ん張り、サーベルを眼前へと構えなおした。
「マークス、ここはあたしがっ! 奴の狙いは間違いなくあたし、だからあんたは早く他の奴の所へ行ってっ! 」
怒りに飲み込まれながらもアデリアは冷静さの欠片をわずかに残していた。ここにこいつがいる限り自分達は前に進む事ができない、ならばここは自分が囮となってこいつを足止めして後顧の憂いを断ち切らなければっ!
「行ってっ、早くっ! 」
覚悟を決めて叫ぶアデリア。しかし彼女が聞いたのは拍子抜けするほど冷静な彼の声だった。「この作戦の要はあくまで重砲の撃破、隊長が殺られたのならそれは俺かお前のどちらかが引き継ぐしかない」
焦るでもなく、急ぐでもなく。いつの間にか歩み寄ってきていたマークスはぞんざいに二人の間合いへと割り込んだ。「ガザエフ中尉、俺からも大事な話をしよう」
アデリアのモニターからクゥエルの姿を遮ったマークスはサーベルをぶら下げてじっと佇んだままだった。「俺は昔、あんたたちに助けられた事がある。ニューギニア戦線で作戦遂行中にたった一人で敵のど真ん中で孤立した俺は絶体絶命、でもあんたたちが来てくれたおかげで何とか生き残る事ができた」そう言うとマークスはゆっくりとサーベルを腰だめに構えてガザエフと向き合った。
「とても、いい、人たちだった。 …… 気さくで、明るくて。俺の見た目なんか全然気にしてなくて。 …… あの後この基地に辿り着くまで俺の周りにそんな人たちは全然いなかった、お前たちが今潰そうとしているのはそういう人たちが大勢集まった、俺にとっての楽園だ」
「何が言いたい? 」
「俺にもあんたを殺す理由ができた、と言う事だ」低く構えて突撃体制を取るオリーブドラブのジム。暗闇で鈍く光るサーベルが長さを縮める。
「なんだ、復讐か? そんなもので俺の邪魔をするというのなら道行にお前も殺して ―― 」
「違う」彼の言葉からにじみ出る辛さがアデリアには分かる、心の中でマークスは泣いている。
もう恐怖も怯えもどこか遠くへ行ってしまった。俺がそうなりたいと願っていたあの人たちはもうこの世にいない、それが味方の裏切りによるものだったなんて。そしてただ一人の生き残りは俺と同じようにあなた達に憧れたが故にこんな姿になってしまった。
基地も皆ももちろん大事だ。アデリアの言う事は間違ってない、でも俺はどうしてもやらなければならない。
あの人たちが生き残れと願った彼の魂がこれ以上深く穢れてしまう前に ――。
「あんたの仲間 ―― 俺を助けてくれた人たちの名誉を守る為に」そう言うとマークスは一気にフットペダルを踏み込んだ。至近距離でのスーパーアタック。
「あんたを、殺すっ!! 」