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No.32666の一覧
[0] うたてめぐり とある吸血鬼と最後の人狼  * HELLSINGとのクロス[トフリ](2012/04/08 15:01)
[1] オリキャラ設定(進行次第で続々と更新していきます)[トフリ](2012/04/06 01:22)
[2] part1[トフリ](2012/04/08 00:53)
[3] part2[トフリ](2012/04/12 00:03)
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[32666] うたてめぐり とある吸血鬼と最後の人狼  * HELLSINGとのクロス
Name: トフリ◆2a3d8563 ID:b62b1693 次を表示する
Date: 2012/04/08 15:01
ご覧いただきありがとうございます。

これはFLATさまから発売された「うたてめぐり」と平野先生によって描かれた「ヘルシング」という漫画のクロスオーバーです。

基本は「うたてめぐり」のストーリーでそこに「ヘルシング」のキャラが関わっていくという形になります。(飛行船事件から約10年後の設定)
ちなみにオリジナル主人公です。

この小説は同タイトルでにじファンさまにも投稿しております。

二つのルートを書くつもりです。

なお、Ep1のヒロインは特に決めていません。 Ep2はもう決めていますが。

もしうたてめぐりのキャラクターの中でこのキャラをヒロインにして欲しいという方は感想欄にご記入ください。

そこからEp1のヒロインを決めさせていただきます。

もし特にご意見が出なかった場合は特定のヒロインがいないルートにしようと思います。

それではどうぞご覧ください。












本文Ep1 未定(誰のルートか決まってないので)





「39200円になります。」

運転手から言われた金額とピッタリの額を支払いタクシーは夜の藍見市を走り去っていった。

「ここか・・・」

僕は目の前のしばらく住むことになるマンションを見上げた。

貧乏学生が一人で住むのにはうってつけな小さな特徴のないマンションがそこにはあった。

(一人暮らしは初めてだな・・・まさかこんな遠い異国で初めての一人暮らしをするなんて、大丈夫かな?)

こんなところまで来て、こんなネガティブに考えているなんて少し情けないかもしれない。

そんなことを考えて苦笑していると、当てられた部屋の前までたどりついた。

「鍵は・・・と・・」

部屋の鍵を取り出そうとしていると、隣の部屋の扉が開き大きな荷物を持った一人の少女が出てきた。

「こんばんは」

「あ、こんばんわ・・・・どちら様ですか?」

「僕はこの部屋に今日引っ越してきた赤川海人といいます。」

「そうなんですか、私はこの部屋に住んでいる神無城琴子っていいます、赤川さんから見ればお隣さんってことになりますね。」

「そうですね、あの・・これからよろしくお願いします。」

「はい。こちらこそ」

神無城さんはとても丁寧に挨拶を返した。
人づきあいが苦手な僕としては隣の部屋に住んでいる人がこんな礼儀正しい人なのは有難いことだった。

「じゃあ、私はちょっと用があるのでこれで失礼します。」

「はい、あの・・これからよろしくお願いします。」

「はい、こちらこそ。」

神無城さんは再び丁寧に礼をしたあと、どこかへと向かった。




「ふう・・・」

荷物を置き、ベット(棺桶)の上に座り込んだ。
別に吸血鬼だからって棺桶で寝なければいけないなんて決まりはない。
ただ、僕の母も吸血鬼でそれ故に棺桶で寝ているから、自然とそうなっただけだ。

「・・・・」

カバンのクーラーボックスから血で満たされた輸血用のパックを取り出しそれにストロー指し静かに飲み始めた。
もしこの一連の動作を誰かに目撃されていれば人によっては正気を疑われるかもしれない。
だが、これは僕にとってはごく普通のことだった。
僕は吸血鬼だ、だから吸血鬼としての食事を行なった。
ただそれだけだ。
これを行うたびに自分が人外の者だと自覚させられる。

「ふう・・・・」

3分の1ほど飲み終えたあとパックを持ったままベランダへと向かった。
もう夜遅かったが、昼間寝ていたためまだ眠くなく、夜の藍見市の夜景を見た。
決して大都市でもなくば、特に名所があるわけでもない地方の街だが、自然が多く綺麗な街だと運転手は言っていた。
ここからでも明日から通うことになる宵葉学園が見えた。

「早く明日にならないかな・・・」

明日が待ち遠しくついそんな独り言をつぶやいてしまう。
初めての転校、初めての外国、初めての一人暮らしという三重の理由からまだまだ眠れず、夜は更けていった。





紹介します今日からみなさんの友達となる

「リベカ・アルベルトです。」

「赤川海斗です。 」

クラス全員の注目を浴びながら、僕ともう一人の転校生であるリベカさんは自分の名前を言い終わった。

転校生というものは注目されるのが当たり前とはいえ僕とリベカさん いや、僕は転校生というだけではないもう一つの理由で注目されていた。

それは僕はまるで真冬のように帽子をかぶりコートを着て、さらにフードを被っていたからだ。

もう一人の転校生はクラスの人たちと同じ制服を着ているが、僕は制服だけではなく手袋、帽子、長い靴下というまるで真冬のような格好をしているからだろう。

「小さい頃は日本に住んでいました。またこの国に住めてうれしいです。よろしく。」

「イギリスからきました。 こんな服装なのは先天性の病気で、あまり日光に当たれないからです。 みんなよろしくお願いします。」

ど、どうだろう・・・・

僕は一応吸血鬼なので、昼間出歩くにはこんな格好をせざるを得ないのだ。

しかし、端から見ればこんな春先にこんな格好をしていれば、変な目で見られるのは間違いないのだろう。

「まいねーむいず、カズマトチノギ 英語は a little」

二人は英語で話しているだろ、オウ、シッート」

変わった髪型の男子生徒と長くて赤い髪の少女がまるで漫才のようなやりとりをし、クラスは笑いに包まれた。

どうやら、あの男子生徒はいまいち盛り上がらないこの場をおどけてみせることでこの場を盛り上げさせようとしたのだろう。

どうやらそれは成功し、僕に対する興味と困惑が混じった視線は完全に消えていた。

僕は名前も知らない男子生徒に感謝した。

「それじゃ、リベカさんと、赤川君の席は・・・・」

そんな感じで僕の日本における学生生活は始まったのだった。






昼休み


「赤川」

昼休みになりカバンからお弁当を取り出していると、ホームルームであのやりとりを行なった椎さんが話しかけてきた。

「ええと、鏑木椎さんだったかな・・?」

「もう名前を覚えてくれたのか」

「うん、朝に一馬君とあのやりとりをしてたからね・・だから」

「なるほどな・・ところで一緒に食べないか?」

「うん、構わないけど」

「分かった、じゃあこっちに椅子を持って来てくれ」

言われたとおりに椅子を持ってくるとそこには鏑木さんの他に一人の男子生徒と後頭部に大きな白いリボンを付けた大人しそうな女子生徒がいた。

「俺は日高皐月、よろしく」

「私は織姫恋花、よろしくね」

話していると皐月君と恋花さんはとても気さくな人達だったおかげで、すぐに打ち解けることができた。

「海斗は日本語うまいな、日本人みたいだし、昔日本に住んでいたことがあるのか?」

「ううん、でもお父さんが家じゃ、日本語を話していたから英語だけじゃなく日本語も覚えたんだ。」

「英語の授業で先生に当てられても困らないね、いいなー」

皐月君と恋花さんとこんな会話をしながら、途中で椎さんが切り出した。

「なあ、赤川、日高、今日放課後は空いてるか?」

「うん、空いてるけど」

「ああ、特になにもないぞ」

「そうか、じゃあ日高、今日は赤川とリベカを学校の案内をしてくれないか?」

さっき放課後の予定を聞かれたのはそのためだったらしい。

「分かった」

「赤川もそれでいいか?」

「うん、いいよ」

こうして放課後に皐月君に学校を案内してもらうことが決まった。






放課後



僕とリベカさんは皐月君に学校を案内されていた。

この学校は環境がよく、大きなプールなど設備が充実し、まるでイギリスの大学のような所だと思ったのが僕の率直な感想だった。

「それにしてもこの学校は本当に広いね、日本は国土が小さいからこんな学校だとは思わなかったよ。」

「俺もそう思うよ、この学校は山を切り崩してそこにたてたって聞いたからな、だからこんなに広いんだろうな。」

「本当ね、こんな学校に通えるなんて結構ラッキーなのかもね、私たち」

こんな感じで、僕たちは和気藹々と話しながら学校を見て回っていたが、桜が咲き乱れている道で当然リベカさんが今までの話と脈絡のない話をし始めた。

「ねえ、皐月、最近この町で何か変わったことなかった?」

「変わったことって?」

「普段は起きないような事件、事故、夜中に学園内で不審者を見たとか」

「そうだな、特に変わったことはなかったな」

「強いて言えば外国人の美少女と英語がうまい帰国子女が転校してきたことくらいかな」

文脈から判断するに、美少女とはリベカさんのことで英語のうまい帰国子女とは僕のことだろう

「フフ、お世辞がうまいね皐月は」

それからリベカさんは皐月君に夜中に学園に忍び込んだことがあるか、なども質問した。

「あ、そういえば」

「ん、どうしたの皐月?」

「学園とは関係ないけど、藍見市で殺人事件があったんだ、6人も殺されて、大事件になっているらしい」

その事件は僕も今朝のニュースで知った。

「ええ、それなら聞いているわ、確かまだ犯人は捕まっていないんだってね」

「ねえ、皐月、海斗、2人は6人も殺した殺人犯が私たちと同じ人間だと思える?」

「考えたくもないな、こんな平和な街だってのにそんな奴が短にいたなんて」

「・・・・・」

「奴らは何も知らない一般市民の平穏を土足で踏み荒らしていくわ」

「善良な市民を皮をかぶった化け物が、私たちの生活のすぐそばにいるのよ」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」


リベカさんの瞳には蘭々と憎悪の炎が見えた気がしていた。
多分、皐月君も同じような感想を抱いたのだろう・・・
彼女は例の殺人犯を決して人間だと思っていないのだろう。
僕は彼女の言葉に僅かに悲しみを覚えた。
僕は人間じゃないのだから・・・
どんなに頑張っても僕は彼女やこの学校の他の生徒と同じものになることは叶わないのだから。
僕は・・・吸血鬼・・・いやある意味では吸血鬼以上に非人間的な存在なのだから・・・・・

それから次は僕たち3人は体育館へと向かった。
体育館では、ステージで椎さんが演劇部の部員として演劇の稽古をしていた。
そこで、少し椎さんと話したり、リベカさんが皐月君に抱きついたりしながら、体育館を後にした。


その後、弓道場にへと向かった。

「案内できそうな場所はここが最後になるな。」

「ここは弓道場、まあアーチェリーみたいなものかな?」

「ふぅん・・・」

古びた木の床が何となく日本を感じさせた。

「へえ、面白そうね。中覗いてみてもいい?」

「あれ、日高先輩?」

「お、琴子か?」

「先輩、こんちゃー」

ちょうど校舎側から言葉遣いから後輩と思われる二人の生徒がやってきた。

「日高先輩、この方・・・あっ、あなたは」

今気づいたが二人のうちの一人は昨日の夜に引っ越してきた先でお隣となった神無城琴子さんだった。

「か、神無城さんですよね」

「はい・・・まさかこんなに早く再会できるなんて・・・・」

突然の再開に驚いてうまく言葉が出てこなかった。

「何だ、二人とも知り合いなのか?」

「あ、うん。実は昨日この街に引っ越し先が偶然神無城さんの部屋の隣だったんだよ」

「ああ、なるほど」

僕の説明でその場にいる全員が疑問を感じていたようだったが納得した。

「それにしても、すごい偶然ですね」

「そうだね・・・同じ学園とも限らないし、転校初日にまた会えるなんて」

「もしかしたらこれは単なる偶然じゃなくて運命なのかもね」

リベカさんは僕と神無城さんが話している横で、何か納得した感じででうなづいていた。

「う、運命!?」

その言葉に一番先に反応したのは神無城さんではなく、神無城さんの隣にいるショートヘアーで赤い髪の女生徒だった。

もっとも、神無城さんも顔を赤くして何か言おうとしていたのだが、もう一人の女生徒に遮られる形となった。

「そう、見知らぬ街に初めて降り立った男は不安を感じながらも新居に足を運ぶ。そこで出会ったのは同じ学園の女子生徒、そしてすぐに学園で再会・・・偶然の再会に驚きつつも二人の仲は次第に深まっていく・・・・ってとこかしら」

「な、何ー」

リベカさんの言葉にさっきの少女がまた金切声を声を上げてこちらを睨んできた。
その眼には敵意がありありと映っていた。

「ちょ、ちょっとリベカさん!」

慌ててリベカさんのはた迷惑な妄想に近い独り言を止めにかかった。

「ふふ、ごめんなさい。まあ考え出したらなかなか面白かったからつい、ね?」

両手を合わせて「ごめん」を表した。





「こいつは、リベカ・アルベルト。 今日うちのクラスに転入してきた留学生だ」

「そしてこいつが、赤川海斗。 今日うちのクラスに転校してきた転校生だ」

「リベカ、海斗。、こいつは琴子、俺と同じ風紀委員でよくつるんでいる後輩だ」

「で、その隣のは日野原焔」

(じぃー)

さっきから、いや自己紹介をする前から日野原焔という少女から獣を警戒するような視線を向けられていた。

(まださっきのこと引きずっているのかな・・・)

「ねえ、赤川先輩・・・・!」

自分に向けられている視線に負けないほどのドスの利いた声で声をかけられた。

「な、何!? 日野原さん・・・」

その姿が少し怖くて、声がごく僅かに震えているのが自分でもよくわかった。

「一応言っとくけど、琴子ちゃんと出会ったのは単なる偶然だよ、ぐ・う・ぜ。ん!」

「わ、分かってるよ、同じ学園の生徒なんだからそんなに珍しいことでもないし・・・」

思わず作り笑顔で答えてしまうほどのオーラが日野原さんから発せられていた。

「ほ、焔。先輩相手に失礼だよ」

「僕が琴子ちゃんを守るんだ、琴子ちゃんに手を出す奴は絶対に許さない」

「神無城さんと日野原さんって仲いいんだね」

日野原さんの何一つ嘘の感じられないまっすぐな言葉からそう感じられた。

「当然!、僕と琴子ちゃんは5年以上前からの親友だからね」 

日野原さんは得意げにそう熱弁する。

「もう・・・焔ったら・・・」

神無城さんは困ったような口ぶりでそう言ったが照れくさそうで、それでいて嬉しそうだった。



「へえ、あなたがカンナギなのね」

唐突にリベカさんが神無城さんに声をかけた。

「はい、私をご存知なんですか?」

「ええ、それなりに。 あなたをっていうよりあなたの一族をって感じだけどね」

「――っ!」

「同業のよしみということでこれからよく顔を合わせることになると思うからよろしくね」

そう言ってリベカさんは手を差し出した。

だが、神無城さんは顔を強ばらせてその手を握ろうとしない。

「?」

「?」

僕を含めて、皐月君と日野原さんは不思議だった。

なぜ神無城さんはそんな表情をするのだろうかと。

「あら・・・私嫌われているのかしら?」

リベカさんはそう言って、差し出した手を所在無さげに揺らす。

「あ、す、すいません!」

我に返ったように慌てて神無城さんはリベカさんの手を握った。

「よかった、あなたたちとは仲良くやっいきたいしね、お互いのために」

「よろしくお願いします・・リベカ先輩、赤川先輩」

「それじゃ、さようなら琴子、焔」

そう言ってリベカさん弓道場の出口に踵を返した。

「お、おいリベカ!」

慌ててそれを追う皐月君。

「じゃ、じゃあね二人とも」

僕もそれに続いた。


このすぐあとに分かったことだが、リベカさんと神無城さんが一時少し険悪そうな感じだったのは、どうやら2人は両親が同業者というのが理由らしい。

ただそれだけではないような気もするが・・・






「明日からうまくやっていけそうか?」

「ええ、一馬も椎も海斗も皐月もみんな親切な人ばかりだし、日本はやっぱりいい国だわ」

「僕もそう思うよ、僕は結構人付き合いが苦手だけどみんないい人だからきっとうまくやっていけるよ。」

「・・・面白くなりそうね」

「ん?」

「え?」

「ううん、なんでもないわそう言えば2人はガールフレンドっているの?」

「それは恋人って意味で? だとしたら今はいないな」

「僕もそういう人はいないよ」

「あら、意外2人とも結構カッコイイし、皐月なんかはプレイボーイに見えたから」

「俺みたいに奥手で誠実な紳士を捕まえて、プレイボーイなんて失礼な」

「だって皐月の友達っていったら琴子に焔に椎に、そう言えば昼も女の子と食べていたみたいだし」

「よく見てんなあ」

「でも、2人ともフリーならちょうど良かった。お礼に夕食でも奢るわ、海斗もね」

「いいよ、そんなに気を遣わなくって」

「僕もいいよ、僕なんか何もしてないし」

「あら、私と一緒じゃ嫌?」

「いや、リベカみたいな美人のお誘いなんて俺にはもったいないくらいさ」

「僕も嫌というわけじゃないけど、転向してきたばっかりだから用事があるんで行けないんだ」

「そう・・・残念ね、じゃあ、今日は皐月にだけご馳走するわ」

「そうだな・・・ならご馳走になるよ」

「じゃあ行きましょう」

僕はリベカさん達と別れ、下駄箱へ向かった。






「やあ、君が例の転校生だね」

下駄箱で靴を取り出していると、白衣を着た先生に声をかけられた。

「えーと、たしか赤川海斗君だったね。イギリスから来た」

「あ、はい」

「ふーん・・僕は幸徳井聖、この学校の保健医だよ、ふむふむ・・・」

幸徳井先生は僕の全身を値踏みするように見た。

「な、何ですか?」

「いやいや何でもない、ただ君って随分面白い体をしているなと思って」

「っ!?」

この先生、もしかして僕が吸血鬼だってことを・・・!?

「せ、先生、そ、それって・・・」

「おっと、そろそろ帰らないと天才テ○ビくんに間に合わなくなってしまうのでここでおいとまする。」

「ああ、あと自家発電は定期的にね、さらばだ」

そう言い残して、幸徳井先生は颯爽と帰って行った。

「変わった先生だな・・・・」









2日後 放課後 


「というわけーでー!」

「我らが宵葉のヒロイン九条由衣音嬢の復学を祝して、まことにささやかながら祝の宴を取り仕切りたいと思います」

ワーワー、パチパチパチ

僕らの教室で、由衣音さんの復学を記念するパーティーが行われていた。
由衣音さんは約2ヶ月前から宵葉学園を休学しており、今日久しぶりに復学したのだそうだ。
教室の真ん中には巨大なケーキが置かれみんなが和気あいあいと切り出されたケーキを頬張っている。
教室には20人ほどが集まりたった一人の生徒のためとは思えないほど豪華に行われていた。
その中には神無城さんや、日野原さんといった学年の異なる人まで出席している。
これはきっと由衣音さんがそれほど人気のある人だということなのだろう。
由衣音さんは今クラスメートの人たちと談笑をしている。
僕は彼女と面識はないとはいえ、これから同じクラスの一員として学園生活を過ごしていくことになるので、これから彼女に話しかけようとしているところだった。

「こんにちは」

「ん? 誰?」

由衣音さんは僕の顔を見て不思議そうな顔をした。
こんな目立つ格好をしている生徒など忘れる訳はないのだからそうなるのも当然だろう、まあただ単にこんな格好をしているということ自体に不思議がっているのかもしれないが。

「彼は赤川海斗、この前私たちののクラスに転校してきた人だ」

僕が説明するよりも早く、椎さんが僕のことを由衣音さんに説明してくれた。

「赤川海斗です、イギリスから転校してきました。 よろしくお願いします」

そう言って僕は簡潔に自己紹介をした。

「そうなんだ。 私は九条由衣音、よろしくね、ところで・・・」

途中で由衣音さんは言葉を止めて、再び話し出した。

「どうして、そんな格好しているの?」

この質問が来るのは、想定していたのであっさりと答えることができた。

「実は僕、とある病気で日光に当たれないんです。 ちょっとくらいなら大丈夫なんですけど多く浴びると肌がすごく腫れるんです」

「そうなんだ・・・」

由衣音さんは以外にも僕に同情したり哀れんだりしなかった。
別に気にしているわけではないが今までこんな話をすると常に同情されたりするのが普通だったのでそれが僕にとっては新鮮だった。

「実は私もね病気なんだ・・・原因不明の」

「え?・・そうなんですか?」

僕はこの時初めて彼女が2ヶ月もの間休学をしていた理由を把握した。

「うん・・だから人に同情されたりするの嫌だから・・・・」

「あ・・・・・・はい」

彼女が同情しないのは僕と同じような境遇だったからなのか・・・
いや、僕は吸血鬼となった代償としてこうなったのだからしょうがないのだが、彼女は単なる病気だから僕とは全く違う。
きっと彼女は病気で同情されたりして辛い経験をしたことがあるのだろう。
だから僕は・・・・・・

「あの・・・・」

僕はそう言って右手を差し出した。

「お互いに頑張りましょう」

もしかしたら、これは僕のエゴかもしれない僕と彼女には雲泥の差がある・・・でも僕は・・・・

「・・・・ありがとう・・・」

由衣音さんは微笑んでその手を取ってくれた。





パーティの心地よくて騒がしい話し声が飛び交う中で、僕は知らずとここ宵葉のごく普通の生徒だと思ってしまった。
だが僕は吸血鬼だ、人外のフリークスで化け物だ。
でも・・・・この瞬間は・・・・この瞬間だけは・・・・・・僕は吸血鬼ではなく・・・・ひとりの学生としていることができた・・・・。




だから今僕は・・・このひとときの夢を僕は・・・楽しむことに決めた・・・・・・・・・・・・・




Side 皐月  買い出しの帰り道

俺はいまだにあと一歩を踏み出すことができなかった。
俺の視線の先には、隣には以前から憧れだった九条由衣音がいた。
前に告白しようとした時は直前に由衣音が倒れてしまい、由衣音は宵葉を休学することになった。
それで俺は告白するどころではなくなってしまった。
由衣音がいないとき
昨日椎から由衣音が復学するということを聞いたときは嬉しくてたまらなかった。
今俺の隣にただ由衣音がいるだけでも良かった。
・・・・・でも由衣音と二人きりになった時から、俺は自分の中にため込んでいた感情があふれ出て来ているのを感じていた。
俺はこんなにも九条由衣音という人に惹かれていたのか・・・

「どうしたの皐月?」

「っ! な、なんだ由衣音!?」

「さっきから話しかけていたのにずっと無視するんだもん・・もしかして他の女の子のことでも考えてたな?」

「な、何言ってんだよ。 そんなことねえよ」

「あはは、ごめんごめん、隣にこんなにかわいい女の子がいるのにそんなこと考えるわけ・・・いやもしかして私のことを考えて・・・」

「そんなんじゃねよ、それに自分でかわいい言うな」

こんな風に会話をしていると話題は自然に2人の転校生のほうへと向かった。

「確か海斗と、リベカだったよね来てたのは海斗だけだったみたいだけど」

由衣音がそう言うと俺はふと教室で海斗と由衣音が会話をしていたことを思い出した。

「ああ、そういえば教室で海斗と何か話していたみたいだけど何を話してたんだ?」

俺はなんとなく気になって聞いてしまった。

「んーちょっとお互いの病気について、海斗って病気で日に当たれない体ってことを聞いてね、私の病気のことも話したら、一緒にがんばりましょうって言ってくれたし、いい人だよね」

由衣音が上機嫌でそんなことを言うと俺は何とも言い難い焦燥感に襲われた。
由衣音はただ海斗をいい人といっただけだ。
それに海斗とはついさっき会ったばかりだ。
それに由衣音の口ぶりから考えても海斗に友情以上の感情を抱いてるとは思えなかった。
・・・・・・落ち着け・・・・・皐月
・・・・分かっていた・・由衣音にだれか好きな人でもいるのではないかと・・だからこんなことでこんなにも慌てふためくのだと・・・

俺は決意した。

由衣音に告白する、今しかない。

「由衣音、聞いてほしいことがある」

俺は立ち止まって由衣音に尋ねた。

「ん? どうしたの皐月?」

由衣音は俺の声がいつもとは少し違うことに気付いたのか少し緊張した様子で聞き返してきた。

「・・・・・・・・・・・・・・・実は俺はずっと由衣音のことが好きだった」

「っ! そ、それって・・・・・」

「・・・・・もちろん友人としてじゃない、女の子として好きなんだ・・・・由衣音・・返事を聞かせてほしい」

「皐月・・・・・・・・」

しばらく由衣音は驚いてただ黙っているだけだったが、次第に気まずそうに視線をそらした。

「ごめん、皐月を友人以上としては見れない・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・そうか」

突然自分の足場が崩れ落ちていくのを感じた。

俺は自惚れているつもりはなかったが、もしかしたら由衣音は俺に好意を抱いてくれているかもしれないと考えていた。
由衣音と俺は昼食を共にしたり、一緒に遊びにいったりと、異性の友人としては恋花と同じくらい親しいつもりだった。
でも考えてみれば当然だ、由衣音は大企業のお嬢様だ俺なんかでは釣り合わないのだろう・・・

「皐月・・・・・」

由衣音が痛ましげな視線を俺に向けてくる、俺はそれが非常につらかった。

「悪い由衣音先に学校に帰ってくれ、ちょっと用事を思い出した」

そう言って、俺は由衣音から背を向け宵葉とは反対方向に歩き出した。

「あ・・・・・・・」

由衣音は何か言いたげな様子だったが、俺は振り返ることができなかった。

「・・・・・・・・・・・・・・・ごめんね、皐月」

意識を集中していなければ聞こえないような由衣音の小さな声が俺の耳に聞こえた。

それでも俺は振り返らずにただ歩き続けた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






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