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No.32637の一覧
[0] アイソマシフト(マテリアルブレイブ)[mp3](2012/04/03 23:13)
[1] キングダム作戦リターンズ[mp3](2012/04/04 22:33)
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[32637] アイソマシフト(マテリアルブレイブ)
Name: mp3◆b8733745 ID:d4811367 次を表示する
Date: 2012/04/03 23:13
 やあやあ爆発くん、一つだけアドバイスをしてあげよう。葉のために首が長くなったのではない。首が長いせいで葉しか食べられないんだよ。必要に迫られて進化したのではなく、そうだったものが生き残ったというだけなんだ。アビリティとは定義しただけのものである。目撃した進化とは表面的なものだ。

「これまで発見すらされていなかった重力子をいきなり制御レベルにまで持ち込むのだから、アンリーシュトの規格外さが分かるものだね。でも爆発くん。重力の媒体となる力と定義したせいでロマンさに欠けてしまったけれども、実際のところ、この能力ってなんなのかな?」

 念動力と誤解したことから質量増減ではないのだろう。物体を果てしなく重くしたとして、それでも物は引き寄せられたりしない。むしろ床が抜ける。ならば重力係数を支配しているのだと考えたほうが自然である。

「重くしたり軽くしたりね。違和感あるよねこれ。むしろ引力としたほうがしっくりくるんだ。だって地球の質量とほぼ無関係だもの」

 これまであるとされ、未だに観測されない絆のようななにかがあった。それを制御することによって増減させる引力、または、斥力。傍からには物体を動かす力を取得したように見えたが、その実、最初からそうであったというだけ。チームを作ったときも、失ったときも、再び組んだときも、再び別れたときも、王城叶は最初からそうだった。

 鏑木遙歩との間にあった斥力とて、重全重美の絆が生んだものだろう。傷つくのが嫌だから遠ざける。だけどただ遠ざけるのはさみしい。さみしいから関係性を制御することで距離を置く。そして絆を否定して重力だと言い張る。まどろっこしくてめんどくさい。

 ダブルセイバーが叶とネオプラズムの間を裂いた。

 繋がっていたいのならば繋がっていればいいのだ。どうせ諦められないのならばそろそろ腹を括れ。叶は守らなければならない。理解せねばならない。首が長いせいで葉しか食べられないように。どれだけ一人になろうとも、彼女は根本からしてチームであったらしい。なにせ重力使いである。

「……なら勝手にしろ。勝手にする。利用するし利用されろ。のっぴきならない事情があるんだからさっさとアタシに力を寄こせ。どうせ運命共同体。見えない関係性で繋がっている。死ぬとき一緒ならもうずっと一緒にいろ。だから共に戦えッ、お前はアタシのものだ! ――エンゲージしろ、遙歩!」

 薄い唇から伝わる絆が物理的な威力を持って体内で脈動し、融合された鉱石を活性化させる。――コンストラクション、プログレス、アクティビティ。引き合う力と離れ合う力、繋がりを武器にするその能力名こそ。

「――圧壊しろ! パーフェクトグラヴィティ!」



 ――さて、そんなことがあったものだから遙歩と叶はやたらめったらに繋がってしまった。そもそもからしてさみしがりの彼女を癒そうと、求めてしまったら、それがアンリーシュト能力の強化へと結びついてしまい、ブーストのかかった「叶と愉快な仲間たち」は二年のミッションをこなすようになり、三年のミッションをこなすようになり、余計にエンゲージが必要になり、リビドーが溜まり、やって、強くなって、やったり強くなったりのインフレスパイラルがあって、その先にあったものは、紅瑠島・尖奉島・祥神島・御掛島の踏破であり、エヴォルツィオンだいたいの壊滅であったという。

 無茶苦茶に健康的になってしまった叶は病床に臥すこともなく、たいしたピンチもなかったせいでチームメンバーは増えず、エンゲージの恩恵が分散されなかったせいで大力無双を誇るようになり、そうしてうっかり世界は平和になってしまったのだ。

 暗躍しようとしていた学生会もこれにはさすがに焦る。王の寵愛がやばすぎたせいで計画がさっぱり進まなかった。それはそれでどうしようもないことだったので諦めていたところ、一人災禍大戦をしていた叶がネオプラズムをわりかし絶滅させたのちに、事件が起きる。

 叶が病床に臥したのである。あまりに強いという理由から特待生扱い、実習を免除させないとアンリーシュト・ナーセリーが大変な暇に陥るのでそのことは歓迎されたが、はて、ここで全人類が彼女の病気を訝しんだ。あのはちゃめちゃな健康優良児が、いかなるウィルスに負けたのだ?

 恐怖したという。新人類を超越した叶の膝を折るほどの、そんな超絶ウィルスが放たれたとな。なるほど分かった人類は絶滅する。ノアインダストリーコーポレーションは世界を守るために叶を病院に連れて行こうとした。本気でだだこねられたので悪戦苦闘したが、むしろ病院が来たので診療には成功する。それが健康だったという。この重力娘は仮病だったのだ。

 おおかた、人類の頂点に立って調子に乗ったのだろう。もうあとは休んでいればいいやーとか考えてだらだら隠居生活と決め込むつもりなのだろう。若いくせになにやってんだと世界中がツッコミを入れていると「うがー! ちがうわ!」と怒った。ならばそれではなんなのだ。何故仮病なんて使ったのだ。

「……そうして重力ちゃんはただの叶ちゃんに。無能力者になってしまったというわけだけれども」

 アビリティの消滅にともなって叶ワンマン状態が解除されてしまうと、そのうちチームユニゾンが出来あがり、エンゲージは適度に分散され、あんがい普通に物語は進んでいったという。



 鏑木遙歩の体液を触媒としてエニグマタイト因子を励起させる。結果、対象のアンリーシュト能力が著しく向上する。もちろんドーピングには副作用があるものだ。なにかとすればこれがまた発情ときたものだった。相手が横暴な小娘だろうとも、無感動であろうが自尊心旺盛だろうが感情がなかろうがそもそも人間ですらなかろうが、問答無用で彼に対する性的関心が催される。

 性行為を跨ぐことで衝動は収まるが、エンゲージを重ねようが重ねまいが、再発する。とんだ病毒である。

 進化と発情が隣り合わせにあるとき、まず考えられることはその個体が死に瀕しているということだ。強引な強化は身体に悪い。年齢と共にアビリティは失われるものであって、つまりエンゲージとはアンリーシュトとしての寿命を削っているとして良いだろう。エンゲージをやりすぎた叶が能力消失したことから、そのような推論が生まれた。

 先がないからこそ、種は子を残したがる。この場合の子とはなにかが問題であった。

 これは邪推なのだが。

 アンリーシュトの寿命とは、融合したエニグマタイトの寿命のことであり、かの魔法元素らは失活する前に、子を残したいのではないのか。

 ――そう解析したノアインダストリーコーポレーションの女所長のデータをそしゃった白藤・アンジェリーヌ・つぼみが思ったのである。

 ヒトが進化してよりまだ百年の歴史もなく、またアンリーシュト能力は年齢と共に低減する。そうだとしてもナーサリーに通う生徒は"ある日突然に能力が発現したもの"だけであり、アンリーシュトとアンリーシュトとが成した子供がまるでいないことは不可思議な点であった。鉱石と融合し、進化したものは極少数であるとはしても、男性の数が極端に少ないのだとしても、女性の数は極端に多いのだから、学生間での恋愛の末に子を孕んだとしてもおかしくはない。むしろ孕まないほうがおかしい。

 この疑問に一応、答えは与えられている。アンリーシュトとは「繋がれざる者」の意、子を孕まないとされている。一概にエニグマタイトとはしても単純に色分けされているように種類がある。融合した色によってそれぞれヒトから異なる進化を遂げる。だから結ばれようにも染色体の数が合わない。われわれはサルとミジンコほどに掛け離れた。遙歩と叶の間に子ができなかったことも、そういう理由があったからだ。……本当だろうか。

 ならばどうして発情させられるのだ。エンゲージ能力は繁殖に都合が良いものだった。どうしてその設定が生かされない。エニグマタイトによって引き起こされた性的興奮が、なんの意味もないものだったならば、それはそれで杞憂で終わる。とても訝しかったので、実験したのである。つぼみは、遙歩で、実験した。


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