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No.32613の一覧
[0] 【習作・打ち切り】魔法少女は物理で殴る【なのはsts・微転生オリ主】[不落八十八](2012/05/11 20:45)
[1] エピソードzero 神様に遭った少女の話。[不落八十八](2012/04/02 14:01)
[2] エピソードzero 女神に会った少女の話。[不落八十八](2012/04/02 14:09)
[3] エピソードzero 歪に、真っ直ぐに。[不落八十八](2012/04/03 18:52)
[4] エピソードzero 愚直に、正直に。[不落八十八](2012/04/02 22:50)
[5] エピソードzero それぞれの道の行方。[不落八十八](2012/04/04 14:48)
[6] エピソードsts それぞれのハジマリ。[不落八十八](2012/04/03 18:54)
[7] エピソードsts 力の大きさ。[不落八十八](2012/04/04 15:38)
[8] エピソードsts 懐いて、懐かれて。[不落八十八](2012/04/04 15:38)
[9] エピソードsts 力の代償。[不落八十八](2012/04/05 13:41)
[10] エピソードsts 新たな相棒と初めての任務。[不落八十八](2012/04/06 21:47)
[11] エピソードsts ツキを喰らう獣の名は。[不落八十八](2012/04/09 18:43)
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[32613] エピソードzero それぞれの道の行方。
Name: 不落八十八◆2f350079 ID:72db0074 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/04 14:48
「はぁ……はぁ……、ティアー、生きてるー?」

「……何とか」

 陸戦訓練場の端っこに存在する自主訓練用スペースでぶっ倒れている二人を見て、やれやれと言う顔で彼女達を見つめる少女が居た。
 名はツキフィリア・シュナイデン。彼女達のルームメイトであり、この度の模擬戦の勝者でもある。
 彼女達が出会ってからこの模擬戦は毎日行われていた。
 最初は軽い模擬戦だったのに関わらず、今では他の訓練生もおっかなびっくり逃げ出すような凄まじい模擬戦となった。
 それは訓練校の中で、幾度も繰り返された模擬戦の中で、彼女達の中で、一番充実していた時間だった。
 しかし、それも今日で終わり。明日にはこの訓練所を卒業することとなる。
 スバルとティアナは災害担当系の進路を、ツキはSTFと言う管理局の戦闘部隊の中で最高峰と呼ばれる陸戦チームへと進路を決めた。
 明日で、この模擬戦をすることができなくなってしまうのは寂しい、だから、今日こそ決着をつける、そう二人はツキに挑んだ。

「……さて、まだ立てるだろお二人さん? 私はまだ、倒れちゃいねぇぜ?」

「上……等ッ!!」

「当たり……前よッ!!」

 ふらふらと立ち上がり、二人は自分のデバイスを構える。
 ツキはそれを見て、楽しそうに冷酷な笑みを浮かべる。猛禽類のような鋭い瞳の中で、真紅の炎が再び燃え上がる。
 バトルグローブのガード部分をガチンッと重ね、魔法陣を作り上げる。
 銀色のウルフテールはゆらりゆらりと嬉しさに心を高ぶらせる狼の尾のように風に揺れる。

「さぁ、来い歴戦の友よ! 私を屈服させてみろ! 私の膝を地につけさせてみろ!!」

「「上等ッ!!」」

 発破をかけられた二人は笑顔で応えた。










 エピソードzero それぞれの道の行方 ~新暦73年5月・卒業式前日~









「ティアとスバルの連携の最高潮を魅させてもらいました。とっても楽しかったです」

「あんた……戦ってる時と口調が変わってるわよ……」

「でも……楽しかったなぁ」

 ぐったりとしてツキに俵を運ぶように両肩で抱えられた二人が呻いた。
 ティアナの幻術と冷酷無比な精確な射撃、それに加え爆発力を増したスバルの猛攻。
 たった一年でここまで成長できたのは、ツキの馬鹿げた強さと彼女達の精神力の強さである。
 最初はツキの才能に嫉妬していたティアナだったのだが、だんだんと箍が外れたようにめきめきと強くなっていく様を見続けたおかげで精神が大分図太くなって、今じゃ大抵なことでは狼狽えることは無くなった。
 ツキの化け物染みた自主筋力トレーニングの数々に懸命に食らいついて行ったスバルは、リボルバーナックルのカートリッジを使用せずとも壁を砕けるようになり、身体的にも著しく成長した。
 ……だが、彼女達は惜しくもツキから一本を取ることは敵わず、こうして運ばれているのだった。

「ティアは幻術のタイミングが少しだけ甘いです。ですが、並の魔導師ならあっさり騙されてくれるでしょうね。数年後が怖いです。
スバルは突破力と爆発力に磨きがかかってきましたね。でも、まだまだ威力が甘いです。もっと高みを目指しましょう」

 にこにこと反省点を語るツキは楽しそうながら酷く疲れているようにも見えた。
 実は、彼女達が後もう少しスタミナがあればツキは攻略されていたのだ。
 自分の限界を一切見せなかったツキのポーカーフェイスに彼女達は負けたと言っても過言では無い。
 いつもいつもいつも、ツキのスタミナがぎりぎりな所で彼女達は力尽きるのだ。
 自室に着いた時、ツキの両肩は震えていた。明日でこの楽しいメンツが別れてしまうと知っているからだ。
 永遠の別れでは無いとは分かっているが、迫り来る別れを悟っているから。

「……もう、泣かないでくださいよ。私だって……泣けてきちゃうじゃないですか」

「ぅあ、もっと、一緒に居たいよ。別れたく……ないよ」

 ツキは嗚咽を漏らさずに涙を流し、最後の力を振り絞って二人を自分のベッドへ投げ飛ばした。
 突然のことだと言うのに、体に染みついた防衛反応できっちり受け身を取る二人。
 視界を歪ませながらツキは言った。

「……今泣いたら、明日は干からびちゃいますよ?」

「……そうね。私達三人共ミイラになっちゃうわね」

 体を起こしたティアナは未だに泣き続けるスバルを起き上がらせた。
 ツキは「ココアでも入れてきますね」とキッチンへと赴いた。

「……ねぇ、スバル。この中で一番悲しいのは誰だと思う? 一人きりになるツキよ。あんたには私が居るでしょ」

「うん、分かってる。分かってるけど……、離れたくない。離れたくないよぉ……」

「……バカスバル」

 ティアナにスバルが抱き着いて、その胸に顔を埋めて泣いた。ティアナも再び嗚咽を漏らし、彼女を抱きしめて静かに泣く。
 キッチンの壁によりかかって、部屋から漏れる泣き声を聞いて貰い泣きしているツキの姿があった。
 彼女とて寂しくないはずが無かった。この一年、本当に楽しかった。楽しかったからこそ、一時の別れが惜しく感じられた。
 
「……寂しくないと言えば嘘になる。でも、仕方が無いことだ。そうあっさりと諦めてしまえばどれだけ楽だろうな、畜生」

 ツキはギリッと奥歯を噛み締めて、泣き事を吐くのを止めた。どんなに弱音を吐いても事実は覆らないからだ。
 ツキは数年後にはやてが設立するであろうそれに参加するために、できるだけ自分を虐め抜いて成長しておきたかった。
 だから、特殊専攻科を主席卒業すればSTF、スペシャルタンクフォース、別名 特攻戦車隊に参加できる切符を受け取ることが必要だった。
 しかし、それはスバル達と離れて激戦の地へ自分を送ることになってしまった。
 思っていなかった友人の別れにこんなにも心が揺れるなんて、とツキは泣きながらその事実を噛み締めていた。
 しばらくの間、32号室は涙が絶えなかった。
 翌日、卒業式を終えた三人は陸戦訓練場で集合した。
 総合科、特殊専攻科を主席卒業した人物達が集まっており、傍から見れば異様な光景でもあった。

「……卒業しちゃったね」

「そうですね」

「やけにあっさりしてるじゃない。隠れて泣いてたくせに」

「スバルを抱きしめて泣いてた人に言われたくないですね」

「ティアのは格別だよ。ツキちゃんも試してみたら?」

 そうスバルはやや卑猥に両手をにぎにぎと動かした。さっとティアナは胸を隠して離れる。

「って、私から離れるの!? スバルからじゃなくて」

「あんたならやりかねないからね。と言うか模擬戦の時、私が気絶してる間に二人で何かやってるのを知ってるんだからね!」

「「……てへっ」」
 
「え、あ、ちょ。カマかけたんだけど……マジ? と言うかあんたら私の体に何してんのよ!」

「「……ご馳走様でした」」

「何をされてたのよ私!?」

 最後の最後までいつも通りに過ごした三人は、空港で別れ、それぞれの道を歩んで行った。
 ……二年後に再会すると知らないで。




【ミッドチルダ南部・陸士386部隊本部隊舎・災害担当部配置課・応接室】 ~新暦75年4月某日~




「……ええ、2人ともうちの突入隊のフォワードです。新人ながらいい働きをしますよ。2年間で実績もしっかり積んでいます。
いずれそれぞれの希望転属先に推薦してやらんととは思っていましたが、本局から直々のお声がかりとはうちとしても誇らしいことですなぁ」

 応接室の客側の椅子に座る人物は新しく設立されたはやての城、機動六課の制服に身を包んだなのはとヴィータだった。
 彼女達は機動六課の行動部隊、スターズ分隊のメンバーをスカウトしに来たのだった。

「それで、その2人はどのような子ですか?」

「ええ、ではまず……スバル・ナカジマ二等陸士から。うちのフォワードトップ……武装隊流に言えばフロントアタッカーですな。
とにかく頑丈で芯のある頼もしい子です。足も速いしタテ移動も優秀、インドアや障害密集地なら下手な空戦型よりもよっぽど速いでしょう」

 目の前のモニターには先日の訓練の様子の記録が流れており、右手にナックルと両足にローラーブーツを履いたスバルが実戦を想定したエリアを走っていた。

「そして、『破壊突破行きますっ!』 このように突破力もあります。本人の希望は特別救助隊ですね」

「なるほど」

 カートリッジシステムがあるデバイスなのに、それを使わず一撃で大きな壁を破壊して突破している。
 確かにこれはレベルが高い、是非スカウトしたい人材だ。と、素直に実力の高さになのはとヴィータは感嘆した。

「で……、こちらはシューター……つまり放水担当ですね。ティアナ・ランスター二等陸士。
武装隊向きの射撃型の上に本人も将来的には空隊志望とかで、正直うちではどうかと思ったんですが訓練校主席チーム、さらに学長先生からの推薦もありましてね。射撃型だけあってシューターとしても良い腕ですし、何より覚悟がある。
飲み込みは早いし今やるべきことを完璧にこなすって気概があります」

 モニターの映像が変わり、射撃場での記録になった。
 放水用のウォーターシューターで決められた的に正確に当てている映像、それから先ほどの実戦エリアで臨機応変に動いていた。
 その映像を見ていてなのはがあることに気付く。

「あ、両利きですね?」

「ええ、魔力カートリッジ用のデバイスで自作だそうですよ。
ナカジマもランスターも魔導師ランクはCですが、来月昇格試験を受けることになっています」

 まるでその試験で絶対に受かるような自身が彼から察せられた。それほどまで鼻の高い隊員なのだろう。

「まぁ……何より訓練校からのチーム3年目ってことでこの2人の技能相性やコンビネーション動作は他の魔導師よりもずば抜けて……。
ああ、いや航空教官のヴィータ三尉や戦技教導隊の高町一尉がご覧になれば穴だらけだと思いますが……」

「いえ、素晴らしい子たちですね。それだけ指導が良かったのでしょう」

「はははっ、そう言って貰えると嬉しい限りです。
この二人以上に自身を持って出せるのはそういませんし、コンビネーションが大切である武装隊にはうってつけの人材かと思われます。
どうか、使ってやってください」

 そう配置課の男はそう言って頭を下げた。これまで見てきた中で一番優秀な子達であり、なのはとしても是非欲しいと思える人材だった。

(こちらとしても見逃すことは無いね。何より、芯のある子は私は大好きだし♪)

「はい、責任持ってこの二人をスカウトさせていただきます。今日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」

 なのはとヴィータはその場を後にし、はやてから指定された場所……クラナガンに位置するやや寂れている喫茶店に向かった。
 彼女曰く「あの子が暇にしてる時間はこの時間帯で、この場所だから」とのことで、詳しいことをはやてから伝えられていない。
 しばらく喫茶店の中で地味に美味しいコーヒーに驚きつつ待っていると、カランコロンと入口の方から古臭い音が聞こえてきた。
 
「ああ、今日は待ち合わせなんです。……お、居た居た。マスター、いつものよろしく」

 そう常連らしい客のハスキーな声を聞いたなのは達はつかつかと近づいてくる気配へ視線を向けた。
 そこにはあれから背 "だけ" が少しだけ伸びた黒タンクトップ&ジーパンのツキの姿があった。

「お久しぶりですね。なのはさん、ヴィータさん」

「あー、だからはやて言わなかったのか。納得したわ」

「ふふっ、そうだね。ちょっと驚いたよ」

 はやての指定した次のスカウト対象はSTFの銀狼と呼ばれているツキだったのだ。
 あれからツキはSTFの過酷な訓練に耐え、今では十四歳と言う若い歳で副部隊長として活躍していた。
 部隊ではめきめきと成長していく姿と手に負えない彼女の魔法火力、そして容姿の美しさから"銀狼"と言うコードネームで愛されている。
 
「んで、休暇の日にわざわざお二人が尋ねてくるってことは……何か依頼ですか? 身内ですし、安くしときますよ」

「ううん、違うよ。迎えに来たんだ」

「迎え?」

「あー、はやてからの伝言だ。『きちんと一枠空けといたで、さっさと入れ』だそーだ」

 ヴィータから伝えられた内容で、ようやくツキは合点がいったようで「ああ、それか」と掌を打った。
 立ち話も何だから……、となのはが着席を勧めた。「それもそうですね」と着席し、ちょうどいいタイミングで彼女の前にコーヒーが置かれた。
 それにミルクも砂糖も入れずにくいっと飲んで「うむ、美味い」と一言。
 コーヒーにミルクと砂糖を増し増しで入れないと飲めないなのはとヴィータはその大人らしい姿を見て「うっ」と呻いた。
 ヴィータが恐る恐る尋ねる。

「苦くねぇのか……それ?」

「いえ? 別に」

「そ、そうか……」

「えっと、スカウトの件ですがお受けします。機動六課に出向と言う形ですよね?」

「うん。私もフェイトちゃんもそうだよ」

「なら、構いません。隊長には肉体言語で語っておくので問題無しです」

「「え?」」

 通常の会話からそうそう出てきそうにない単語が出てきたために、なのはとヴィータは呆気に取られる。
 しかし、ツキは日常茶飯事だ、と言わんばかりに爽やかに言った。

「うちの隊って肉体言語が主流なんですよ。だから、お休み欲しくても私を倒して、隊長に直訴しない限り通りませんから」

 「まぁ、きちんとした理由があれば私が通しますけどね」と付け加えた。
 中々変な方向にシビアなとこだなぁ、と二人は呆れ、けらけらとツキは笑う。

「そうそう、スカウトメンバーってもう全員決まってたりします?」

「うん、概ね決まってるけど……どうして?」

「いやー、機会がありゃ友人を押そうかなーって思ってたんです。無理なら構いません」

「へぇ……、ツキちゃんのお友達かぁ。お名前は?」

「ティアナ・ランスターとスバル・ナカジマですね。訓練校時代のルームメイトで親友です」

「なのは……」

「ふふっ、そうだね」

「?」

 いきなり二人で顔を合わせて笑ったので、ツキは理解できず友人を馬鹿にされたのかと勘ぐってしまった。
 むっとした顔で睨んだツキになのはが違う違うと慌てて手を振った。

「実は、さっきその子達をスカウトしに行ったんだ。だから、おかしくってね。ね? ヴィータちゃん」

「ああ。まっさかツキの友人だったとはな。おったまげたぜ」

「……驚かさないでくださいよ」

 ごめんごめん、となのはは苦笑いしながらメニューを手渡して「奢ってあげる」とご機嫌取り。
 ツキは遠慮無くまだ取っていなかった昼食のサンドウィッチ三皿分と、お代わりのコーヒーを頼んだ。
 もっきゅもっきゅとサンドウィッチを食べつつ、ツキは二人に今後の予定を尋ねた。

「これから六課に戻って事務仕事かな」

「へぇ、奇遇ですね。私もこれからジムなんですよ」

「へ? ……ああ、事務じゃなくて、ジムか。ややこしい」

 してやったりと言う顔を見せてから「ご馳走様でした」と言ってからツキは立ち上がった。

「では、近いうちに合流させてもらいます」

「うん、楽しみにしてるよ」

 去って行ったツキの背を見送ったなのは達もお暇することになり、レジへ向かうと、

「先ほどのお客様がお支払になられましたよ?」

「かっこいいことしやがって……」

「あはは……」

 店員さんの言葉に「大人になったなぁ」と二人はしみじみと思い出に浸り……ふと気づく。

「あれ、ツキちゃんって昔から……」

「そういや、そうだった気がするな」

 エリオと遊んであげたり、フェイトを思いやったり、フェイトの介抱をしたり、八神家で料理を作ったり……。
 と、どれもこれも子供っぽい思い出が一切無かったことに気付く。

「大人びた子だったねぇ」

「そうだな」

 決して自分達が子供っぽいとは考えなかった二人は六課へ戻り、先ほどのツキの事を手土産に、報告と共にはやてに話した。
 話し終えた途端、げらげらとはやては机に拳を叩き付けるほど笑い「そら、そうや」と一言添えた。
 
(子供っぽい大人達に弱音を吐けんし、かっこ悪いとこ見せれんわ。それがなのはちゃんとヴィータなら尚更や!)

 と、はやては一人ツキに同情しつつも、愉快に笑うのだった。


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