「……ねぇ、姉さん。なんで僕らは神様から嫌われてしまったんだろうね」
ミッドチルダの一角にある保護施設カミールの一部屋で赤髪の少年、エリオ・モンディアルはベッドに座って足組む少女へ言った。
彼女は首裏で安い栗色のゴムで纏めた銀のウルフテールを、窓から入る日光に輝かせて言った。
「そりゃ、神様がこの世のことに興味が無いからさ。あいつは世界がきちんと廻っていればいいんだ。言うなれば"世界の管理者"だよ、奴は」
まるで彼女は神様に一度会ったことのあるように語った。彼女の眼は煉獄の炎のような真紅の色をしていた。
ツキフィリア・シュタイゲン。それが彼女の名だ。
実は、一度神様に会ってもう一度生を受け取った奇跡的な"男"だった少女だ。
しかし、彼女の生前の記憶はすでに幾多の実験により混濁としており、無いと言っても過言では無い。
エリオは名の一致しない姉を慕い、安定を求めた。ツキフィリアことツキは名の一致しないガキの御守をすることで、自分の居場所を作った。
決して血の交わりの無い彼らの存在は歪であり、また、真っ直ぐでもあった。
「いつも言っているだろエリオ。"この世に本当の救いは無い"んだって。死人が平気な顔で市場を歩く世界だ、救われたもんじゃねぇだろ」
そうツキは自嘲するように、微笑を浮かべた。エリオもまた、その意味が分かっているために「それもそうだね」と頷いた。
彼女達の生まれは鉄の子宮からだった。同じ施設で作り上げられ、似たような思想で創り上げられた、救われることの無い"人造"の人間だ。
弟は疑心暗鬼に陥り、姉以外を拒絶した。姉は全てを受け止め、明確な殺意を持って全部を拒絶する。
二人で一つ、一心同体。そんな綺麗な関係だったなら、彼らは救われているはずだったのだろう。
彼らは真っ直ぐで、歪だった。
だからこそ、お互いに寄生するように生きてきた。弟は心を、姉は居場所を求めるために。
そんな彼らにも社会的な救いの手はあった。フェイト・T・ハラオウン執務官の手だ。
弟は姉に選択を任せ、姉はその手を握ったのだ。そのため、彼らは次の実験が来ないことに安心して生活ができている。
エリオはその生活によって心を安定させ、姉への依存度を減らすことができた。
昔は姉のボディガードのようにぴったりとくっついていたのに、今では学校の友人と遊びに行くくらいあっさりとしている。
……だが、この生活はツキには良い影響を与えなかった。
彼女はエリオがやるはずだった実験を全てその身に受け、さらに自分へ迫りくる実験にも自分を費やした。
「……エリオ、そろそろ出かけるんじゃなかったのか?」
「あ! そうだった。カルロとジェーンと遊びに行くんだった。それじゃ、行って来るね、姉さん」
「ああ、いってらっしゃい」
ひらひらと手を振って、笑顔で部屋から出て行った弟を見送り、彼女は本来の顔を曝け出した。
"この世"に居る誰一人として見せたことの無い猛禽類のような瞳は、密かに獲物が来るのを待っていた。
来ることの無い追手や、秘密の組織からの刺客、何なればフェイトを失落させるための工作に携わっている黒服でも良かった。
――来ないと分かっているのに、悟っていると言うのに、"死"を待ち望んでいた。
そう、彼女には平和は枷にしかならなかった。彼女の心は一度死んだ時から軋み始めていた。
幾千の実験を受けているうちに心が変わり始めていたのだ。生前の知識を、知恵を持っていたことで、理性は軋むだけで済んだ。
何も知らぬ赤子で生まれたのなら、彼女は理性を失い、楽に人間の域を脱して、壊れてしまえたのだ。
壊れて、しまえたのだ。
「……暇だなぁ」
闘争を待ち望む彼女の笑みはとても妖艶で、それはもう酷く冷たい笑みだった。
エピソードzero 神様に遭った少女の話 ~新暦71年 4月28日~
『あ、フェイトちゃん? 今何処?』
フェイト・T・ハラオウン執務官は現在、ミッドチルダ北部の第八臨海空港のロビーに居た。
今日、彼女の保護した子供達が遊びに来てくれることになり、数日も前から秘書のシャーリーに惚気ていたほどこの日を楽しみして待っていた。
「うん、今さっき空港のロビーについたところ。ツキとエリオはまだ見たいだね。時間的にそろそろだと思うけど……」
九歳の頃に劇的な出会いをして、友人、今では親友となった高町なのは二等空尉と楽しげに電話をしている最中に、お目当ての二人の姿が見えた。
「お久しぶりです、フェイトさん」
「フェイトさんお久しぶりです! 約束通り元気です!」
「ふふっ、そうだね。なのは、後でまた」
『いいなー、私もそっち行きたかったよ』
「今から頑張れば午後から来れるでしょ?」
『うん、頑張って終わらせてくるね!』
まだ少しだけ仕事が残っているなのはは午前中は追加したお仕事のため不参加、フェイトは少し残念そうな顔で電話を切った。
黒いタンクトップにグレーのカーゴパンツに身を包んだツキと、青いラフなTシャツとジーパンのエリオは正反対な格好でとても目立った。
周りの人達の視線に人一倍敏感なツキは、それらの視線を感じてフェイトに脚を進めることを催促した。
「それじゃ、今日は一日よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします」
「うん、今日のためにきちんとプラン練って来たから楽しんで行ってね」
「はい!」
「楽しみです」
なのはとフェイトは元々親友である八神はやて二等陸佐の研修先の近くの温泉に遊びに行くために休暇を取っていたのだ。
しかし、フェイトにツキとエリオが来ると言う用事ができてしまったのに加え、はやての方でも緊急の用事が入ってしまったのだ。
そのため夜に予定が変更され、空いた時間を有効に利用することになり、なのはとフェイトはツキとエリオと会うことになったと言うことだ。
……だが、フェイトの連絡よりもなのはの仕事書類の受け取りが早かったために、彼女は急ピッチで仕事を済ませることにしたのだ。
「午前から行くの!」と駄々をこねたなのはを止めるために、ユーノとアルフが必死に説得したのは余談である。
「カルロはいつも魔法式の計算を間違えるんだ。それでこの間も酷い目に遭ったよ……」
「あははは……、それは災難だったね。でも、エリオもたまにミスするでしょ?」
「あ……アハハハハ……。で、でも少ないよ!」
傍目から見れば仲の良い親子にしか見えないフェイトとエリオの姿を横目で確認しつつも、ツキはやや険しい顔をしていた。
それはエリオにフェイトを取られているから、と言う嫉妬からでは無く、先ほどから嫌な予感が彼女を緊張させていたからだ。
まるで、襲撃者を返り討ちにしようと意気込む暴力者のようにツキは辺りをやや薄目で睨んでいた。
エリオは久しぶりに会ったフェイトと世間話をしたい、それをツキは察しているため話に割り込まない。
フェイトはそれを察しながらも、彼女がそれを望んでいることだと分かっているためエリオと話す。
やはり、彼らの在り方もまた歪で、真っ直ぐだったようだ。
ミッドチルダの市場に寄りウィンドウショッピングを終え、フェイトが予約していたバイキング形式のお店へ入り、舌鼓を打った。
「……フェイトさん。これ、何て言う料理ですか?」
「これは"から揚げ"って言って、第97管理外世界……地球の料理なんだ。実はここ地球料理バイキングのお店なんだよ」
「へぇ……」
ツキは見たことの無い形の、自分の記憶の物とかけ離れたから揚げをはしで摘まんで口へと入れた。
「美味しいです! 地球ってフェイトさんの第二の故郷ですよね? 是非行ってみたいです!」
「ふふっ、それじゃ今度なのは達も含めて旅行に行こうか」
「わーい!」
皿が空いたので、ガタッとツキは嬉しそうな顔でから揚げの入ったトレイの方へ向かって行った。
彼女は闘争の中で踊るのも好きだが、美味い物を喰うのも好きだ。むしろ、そちらの方が好きだと言っても過言では無い。
皿いっぱいに、から揚げと焼きそばを取って席へ戻り、もきゅもきゅと幸せそうに頬張る姿を見てエリオとフェイトは微笑んでいた。
(やっと笑ってくれた……)
フェイトは終始それを気にしていたので、初めて見せた彼女の本心の笑みが嬉しかった。
そして、次から彼女達と会う時には美味しい物を用意しておこうと心の内に決めたのであった。
昼食を終え、仕事を終えて合流したなのはと共にアスレチック系のアミューズメント施設へ向かう。
「姉さん! これやろこれ!」
「ん、構わんぞ」
「シューティングスターかぁ、懐かしいねフェイトちゃん」
「うん。射撃魔法の訓練ゲームとして有名になった時に、はやてに連れてかれたっけ」
シューティングスターは室内系ゲームで、出てくる的に魔力球を撃ち、当たった数と箇所によって得点が変動するルールだ。
ちなみにこの施設のランキングのTOP3にフェイト、なのは、はやての順で並んでいるのは秘密である。
「FTH、708、YFねぇ……」
フェイト・T・ハラオウン、なのは、八神ファミリー、と省略されて書かれてあるのだがそれには気付かずツキは定位置につく。
ここでは貸出のストレージデバイス、又は自前のデバイスが許可されている。勿論非物理設定、非殺傷設定が原則である。
「あれ、ツキちゃんってデバイスあったっけ?」
「うん、あるよ。自前で組んだのが一つ。インテリジェンスのが。後、私が作ったストレージを持ってるよ」
「うん! 姉さんは自分で作っちゃったんだ! 皆凄いって言ってた!」
しかし、ツキはデバイスを使う事無く、右手で拳銃の形を作って腕を上げた。
ビーッ! と開始の合図、彼女は出てくる的に標準を合わせた。
「さぁーて、お手並みはいけ……」
ズドンッ! ズドンッ! と人差し指から銀色の射撃魔法弾が放たれ、それらが全て的のど真ん中に吸い込まれていく。
一つも外す事無く、完璧に全ての的のど真ん中を貫いた。
なのはは最初はニコニコとそれを見ていたが、あまりにも精確過ぎるテクニックに若干引き始める。
『パーフェクトッ!』
したり顔で戻ってきた彼女が一言。
「中々楽しめた。もっと速いのやってみたい」
「あ、あはははは……。わ、私の記録を抜かれて……」
「……どんまい、フェイトちゃん。と言うか、凄過ぎるよツキちゃん……」
「姉さん凄い! 次は僕!」
「ま、頑張れ」
その後、エリオは残念ながらランキングに乗る事無く、頭をポリポリと掻きつつはにかみながら帰って来た。
アミューズメント施設で楽しんだ四人は最後に大通りで早めの夕食を取って空港へ行こう、となった時だった。
「動くんじゃねぇぞ!!」
怒声が騒がしかった大通りを貫いた。
そちらを見やれば大きなカバンを震える少女に持たせ、彼女の首にナイフを突きつけて怒鳴る中年の男の後ろ姿があった。
彼の前には警備隊の魔導師部隊が居り、どうやら強盗をやって逃げているようだった。
後ろを振り返った犯人は、自分の退路が野次馬によって埋められていることに気付き、立ち止った。
『無駄な抵抗を止めて、人質を解放しなさい』
「うるせぇッ!! てめぇらに何が分かる! 必死に上司に頭下げて、嫁に逃げられて、つい先日クビにされた俺のよぉ!」
なのはとフェイトが後ろに居ることも知らずに彼は大声で世界に対する愚痴を吐露し始めた。
二人が捕縛しようとデバイスに手をかけた時だった。
「……くだらねぇ」
「「え?」」
ツキが音も無く飛び出し、勢いよく犯人の首裏に後ろ回し蹴りを叩き込んだ。
「神様なんてぐぼふぁっ!?」
吹っ飛んで地に這いずることになった犯人の背に着地し、止めとばかりにナイフを握っていた右手を踏みつけた。
「ぎゃぁあああああああ!」
「あー……、うぜぇ。手間かけさせんじゃねぇよ屑野郎。なぁ゛?」
語尾を強め、ギリッと踏み潰す脚に力を込め、悲鳴を上げさせる。それだけで彼女がどれだけ苛ついているのかが分かる。
左脚が彼の延髄を潰すように乗っているため犯人は逃げ出すことはできない。
「てめぇが不幸になろうが、一欠けらの興味も同情もねぇ。せっかくの人の休日ぶっ壊してんじゃねぇよ糞が」
彼女は右足を外してナイフの柄を蹴る。からんっとナイフは回転しながら道路を滑る。
魔導師の一人が声を張り上げた。
「か、確保ッ!」
「ご苦労さん」
するっとツキは魔導師達の横を通り、何事も無かったように戻ってきた。
フェイトは彼女がこういう性格であることを知っているため「ああ、やっちゃった」と言う感じで迎え、知り得るはずも無いなのはは口をぽかんと開いて唖然としていた。
「さすが姉さん! 見事な後ろ回し蹴りでした!」
「んむ、当然」
「え、あ、え?」
「……うん、なのは。これがツキだよ。保護施設に居た時からずっと変わっていない」
「そうでしたっけ?」
フェイトは悲しそうに途中から語尾を下げ、ツキはしれっと言って見せた。
なのははその二人の様子を見て悟った。彼女はまだ、フェイトによって全てを救われたわけではない、と。
彼女は確かに救いの手を差し伸ばされたから握った。そう、握っただけなのだ。
社会的に救われた彼女は本当の意味での救いを受け取っていない。いや、受け取ることを拒否している節があるとなのはは聞いていた。
幾多の実験によって軋んでしまった彼女の歯車は、未だに動きを止めている。
彼女の歩みはその場で足踏みをしているのと同じだ。決して進むことが無いただの足踏みだ。
「……ツキちゃん」
「なのはさん、私はエリオに昔言い続けていたことがあります」
「え?」
そう語り始めたのにも関わらず、彼女はその場から離れるように踵を返して歩き始めた。
「フェイトさんは確かに救ってくれました。煉獄の淵のようなあの場所から、私達を救い出してくれました。
彼らが実験と称したたくさんの虐殺行為や人体改造、それらから救ってくれたことを私は感謝しています」
その言葉を聞いてフェイトの口元が綻んだ。久しぶりに会った彼女の口から喜ばしい言葉を聞けたから。
「エリオはどうだ?」
「うん。僕もあの場所から姉さんと僕を助け出してくれた時のことはよく覚えてる。
あの頃は心が不安定だったけど、今なら助けてくれて良かったと思ってるよ」
「エリオ……」
「それに、友達もできたんだ! カルロやジェーン! マクィエルにスベルフスト! まだまだいっぱいいるんだ!」
エリオは弾けんばかりの笑みを浮かべ、心から喜んでいることが感じられた。
その言葉を聞いて感極まっているフェイトは泣きそうだった。……対照的になのはは悟ってしまった。
そう、"エリオだけ"は救われているのだ、と。
「本当にフェイトさんやなのはさんには感謝し切れません。あちらに帰っても今日のことは忘れないでしょう」
空港が見え始めた時、なのはがそれを口に出した。
「……ツキちゃんは救われたの?」
「え? なのは?」
「………………………………」
フェイトはその言葉の意味が分からずきょとんとしていた。長い沈黙の後、返事が返った。
「"いいえ"」
「――ッ」
フェイトの瞳が見開かれる。
「……なのはさんも酷いですね。せっかく良い話で締めくくろうと思っていたのに」
「ごめんね」
「いえ、察していましたから」
ツキは彼女が絶対に問い掛けてくると分かっていたからこそ、最初に布石として言ったのだ。
何も言わなければなのはもフェイトと同様にその事実を黙殺することになってしまう、そんなことをなのはが許せるはずが無いと知ってのうえでツキはあの時言葉を続けなかったのだ。
「今現在エリオは、あの頃のように疑心暗鬼に陥ることも無く、私が居なくても自由に行動ができています。でも、私は駄目だった。
心が許してくれないんです。エリオのように自由に舞う鳥のようになれなかった」
「……つ、ツキ……」
「あの場所で手にかけた子供達の顔が忘れられない。あの子達の断末魔が、悲鳴が、笑顔が、死顔が忘れられないんですよ。
まるで亡霊のように私の隣に居て、心に居座って、心配そうに私に言ってくれるんです。
――『幸せになれた?』と。あの子達は心優しい子だったから、私を今でも恨んでいるとは思えないし、許してくれていると思う。
でも、あの子達が許せても私自身が許せなかった。
あの子達に手をかけたことを仕方が無いことだと割り切った自分が、途中からあの子達を蟲を殺すように感じていた自分が、許せない」
ツキの右手は強く握り込まれており、皮膚が爪で裂けてつぅと赤い液体が流れた。
「……"この世に本当の救いは無い"。エリオ、覚えてるか?」
「うん。姉さんに神様の在り方について愚痴った時にいつも言われてたね」
「フェイトさんは確かに救いをくれた。エリオにとっては文字通りの救いだった。でも、私には"社会的な救い"でしかなかったんです」
「………………………………」
「人はお金持ちであっても、至福の幸せを掴み取ることはできない。パンが食べれて、水が飲めて空腹を満たせても、心を満たせない」
「――ッ」
「これは私の我が儘なんです。一生かけてあの子達に償わなくてはいけないことって"決めた"んです。
だからフェイトさん、そんなに悲しまないでください。私を"哀れな子"だと決めつけないでください」
「そんなこと――」
「はい、フェイトさんがそんなことを本心で思っていないとは分かってます。でも、自分の幸福が誰かの不幸である、そう私は思ってしまいます。
自分の中の幸福論が全ての人に当てはまるなんて言う馬鹿げた綺麗な思想を持たないでください」
これからも私のような子を救ってくれるのなら、そう彼女は言葉を締めくくった。
空港で二人を見送った後もフェイトの顔色は優れず、とても悲しそうだった。
「……フェイトちゃん。ツキちゃんは強い子だよ」
「なのは……」
「フェイトちゃんが気に病まないようにずっと隠してきたんだよあの子は。
……フェイトちゃんも分かってたはずだよ、ツキちゃんが何かを胸の奥にしまっていたって」
「……うん、分かってた。でも……怖かった。嫌われたら、拒絶されたらどうしようってずっと思ってた」
「……だからこそ、ツキちゃんは言ったんだね。自分は"社会的に救われた"って。でも、エリオくんみたいに"精神的に救われた"子も居るって。
フェイトちゃんがこれからもツキちゃんのような子を救うことに懸命になると知っていたからこそ、言ってくれたんだよ。
それってね、信頼を認めてるってことだよ。ツキちゃんはまるで心を閉ざすような生き方をしているけど、本当は誰かに心を開きたいんだと思う。
それがフェイトちゃんじゃなかった、私じゃなかった、ってだけのことなんだ」
「……でも、私は……」
「……うん、分かってる。フェイトちゃんはきっとこれから、あの子と付き合っていくことで成長し合えると思うんだ」
「……うん」
フェイトは優しげに抱きしめる親友の胸を借りて密かに泣いた。