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No.32567の一覧
[0] 機動戦士ガンダム Re:creation[ロサンゼルス](2012/03/31 22:27)
[1] プロローグ[ロサンゼルス](2013/03/13 01:06)
[2] 第01話 ガンダム大地に立つ[ロサンゼルス](2012/03/31 23:00)
[3] 第02話 ガンダム破壊命令[ロサンゼルス](2012/03/31 23:28)
[4] 第03話 謎のモビルスーツ[ロサンゼルス](2012/03/31 23:47)
[5] 第04話 大気圏突入[ロサンゼルス](2012/04/01 00:08)
[6] 第05話 再会[ロサンゼルス](2012/04/01 00:21)
[7] 第06話 ジャブローの風[ロサンゼルス](2012/04/01 00:32)
[8] 第07話 アムロ再び[ロサンゼルス](2012/04/01 01:15)
[10] 第08話 ジオンの脅威[ロサンゼルス](2012/04/01 01:36)
[11] 第09話 ラプラスの亡霊[ロサンゼルス](2012/04/01 01:34)
[12] 第10話 セイラ出撃[ロサンゼルス](2012/04/01 01:44)
[13] 第11話 アムロ脱走[ロサンゼルス](2012/04/01 01:54)
[14] 第12話 青の部隊(前編)[ロサンゼルス](2012/04/01 02:00)
[15] 第13話 青の部隊(後編)[ロサンゼルス](2012/04/01 02:28)
[16] 第14話 ランバ・ラル特攻[ロサンゼルス](2012/04/13 01:05)
[17] 第15話 ジブラルタル空域[ロサンゼルス](2012/05/13 00:54)
[18] 第16話 ジブラルタル攻防[ロサンゼルス](2012/05/27 02:14)
[19] 第17話 宇宙の渦[ロサンゼルス](2012/06/14 00:26)
[20] 第18話 戦場までは何マイル?[ロサンゼルス](2012/07/15 02:02)
[21] 第19話 復活のシャア[ロサンゼルス](2012/11/06 00:08)
[22] 第20話 女スパイ潜入[ロサンゼルス](2012/11/29 23:56)
[23] 第21話 誰がための戦い[ロサンゼルス](2013/01/04 21:57)
[24] 第22話 死闘!ホワイトベース[ロサンゼルス](2013/03/05 23:55)
[25] 第23話 生命散って[ロサンゼルス](2013/03/20 01:36)
[26] 第24話 茶色の瞳に映るもの[ロサンゼルス](2013/06/19 00:09)
[27] 第25話 虹の果てには?[ロサンゼルス](2014/01/07 00:28)
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[32567] 第10話 セイラ出撃
Name: ロサンゼルス◆23ada24c ID:cb4a37f7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/01 01:44
 孤立無援のまま、ホワイトベースはアフリカ西部をさ迷う。地球連邦軍の援護
が得られるかわからないまま、目の前の敵と戦うだけであった。

 アムロ少年は何やら、ガンダム4号機のコクピットの中で懸命に4号機の整備を
行なっている。そこにフラウが朝食を持ってやってくる

「アムロ、まだ終わらないの?」
「どれだけかかるかわからないさ」

 アムロ少年は4号機の配線周りで苦闘している。アムロ少年はガンダムの操縦系に
若干の違和感があったので修正していた。この作業を既に10時間以上
やっているわけだがまだ納得できていない。実は案外瑣末なことなのだが、
このわずかな違いが確かに命取りになる。

 シャア・アズナブル、ランバ・ラル。といった強敵、逃げることもままならない相手
の前には。

 しかし、戦わなければ死ぬ。戦っても死ぬ可能性は高いが、戦わなくては確実に死ぬ。
この状況に疲弊する余裕なんてないのだ。

 だが前にリュウ・ホセイが言っていたが、兵士は食べれる時に食べなければなならない。
それも兵士の仕事だ。自分のことを兵士というのは嫌だが、戦っていることに
間違いはない。それに腹が減っては戦ができない。

 アムロ少年は少し手を止めて、朝食のサンドイッチを口に頬張る。
若干顔をしかめる。味に違和感があると思ったがすぐに理由は分かった。
塩気がないのだ。

 そういえばコック長のタムラさんが塩が足りないと嘆いていたのを思い出す。
塩分が無くては滋養が出ない。兵士にとっては一大事だが、塩自体はリガズィが
補給物資と一緒に調達する予定だ。問題ない。

 だがこの間に敵の攻撃があったなら……
ホワイトベースは偽装して砂漠の中で待機している。だが素人に近い偽装なので、
見破られる可能性が高い。その時はリガズィ少佐抜きで戦わないといけない。

 やれるのだろうか?いや、やるしかないのだ。やるしか……。

 例え、リガズィ少佐抜きでも、補給物資がなくなっても、そんなことはお構い
なしに敵は襲ってくる。敵は待ってくれない。

 戦うしかないのだ。相手は降伏を許さない。ガルマ・ザビを殺害した
ホワイトベースはジオンの目の敵、八つ裂きにされても許されない相手なのだ。

 アムロ少年はため息をつく。現状の状況に落胆する。追い詰められてる状況にではない。
否応なしに、戦争というシステムに巻き込まれ、戦闘マシーンになることを
受け入れつつある自分自身に……。






 地元の住民より怪しい船が停泊しているという情報を受け、アフリカ解放戦線、
青の部隊のディドー・カルトハは数人の部下を伴ってその物体に調査に
訪れていた。

 西暦のころより戦い続けるアフリカ解放戦線は正規員以外の協力者も多い。
理念に賛同するものもいるが、脅迫されているもの、利益を得ようとするもの
も多い。長い歴史の中でアフリカ住民に取ってアフリカ解放戦線は
住民のなかに溶け込んでいった。

 ディドー・カルトハは、リーダーのガデブ・ヤシンの手段を選ばないやり方には
不満もあったが、今はそれを飲み込み、我慢しなければないと思っていた。
旧世紀に奪われた土地をフランク、即ちヨーロッパ人から解放する活動がここまで
来たのだ。ここに来てやり方の違いという理由で対立するのはナンセンスだ。

 そして今、ジオン公国の協力を得てついにこのトゥアレグ族が、いやアフリカ人が
ついに解放される時が来たのだ。

「間違いありません。地球連邦軍の新型巡洋艦です」

 部下のエロ・メロエが双眼鏡で捉えたものをディドーに報告する。その顔にはまだ
少年の面影すら残っている。

 このような少年すら戦いに駆り出さねばならなかった。しかしその戦いも時期に終わる。
苦渋の日々もようやく終わるのだ。それまでもう少しの辛抱だ。アフリカが開放されれば
、彼も普通の少年に戻る。兵士なんかではなく、真っ当な人間に戻れるのだ。

ディドーはエロから双眼鏡を受け取り、連邦軍の新型巡洋艦、ジオン側で通称木馬と
呼ばれるやつを覗く。ディドーは顔をしかめる。

 あれでも偽装したつもりなのだろうか?まるで素人だ。教本通りといえば教本通り
なのだが、砂漠における偽装というものが全く出来ていない。

「まるで素人のような偽装ですが、仕掛けてみますか?」

 しかしエロの進言に対してディドーは首を横に振る。明らかに怪しいのだ。あの
赤い彗星や青い巨星を撃退した猛者があのような素人のような偽装をするだろうか?
あれは我々を誘い出すための罠ではないのだろうか?と一瞬ディドーは思った。

 ディドーたちはまさかあの艦、赤い彗星や青い巨星を撃退してきた船を
運用しているのが年端もいかない民間人とは思っても見ない。

「いや、我々は資源も物資も限られている。それにこの戦いは負けるわけにはいかんのだ」

 いくらジオン公国の支持、援助を貰ったとはいえ自分たちはアフリカのゲリラ部隊だ。
連邦の最新鋭艦と真っ向勝負を挑んで叶うとは思っていない。それに、ここで
仕掛けて負けて、クライアントを失望させるわけにはいかんのだ。

「我々はスタンパ・ハロイからモビルスーツを供与されて日が浅い、MSの練度
 も低い。ここで無茶な戦いは挑まんさ。そうだな、ここは宇宙人に一仕事して
 もらうとするか」

 エロは不満げな顔を浮かべるがディドーは諭す。

「我々は資金も物資も正規軍に比べて劣っている。贅沢は言ってられないのだ。」

 最終的にこのアフリカからフランク、即ち連邦軍を追い出せばいいのだ。それを
成し遂げるのがアフリカ解放戦線ならなおいいが、ジオンにやってもらっても構わない。

 もっとも、ジオンと手を組んで戦ったあと、ジオンがこの地を蹂躙する可能性だって
ある。そうなったら、また戦うだけだ。当面は目の前の敵を倒すこと、残された問題は
敵を倒した後に考えればいい。

 目の前の敵を全力で倒せないものに明日はない。これがディドー・カルトハの考え方だ。

「エロ、ランバ・ラルに伝えるんだ。連邦の新型巡洋艦がガルダーヤの南方30km地点に
 偽装して待機していると」






 地上戦艦、ギャロップが砂漠を行く。先の戦闘で木馬を強敵と踏んだランバ・ラルは
長期戦になると踏み、空中航行するためにこまめな補給を必要とするザンジバルから、
燃費のいいギャロップに乗り換えていた。

 そのギャロップにジオンの協力組織、アフリカ解放戦線からの伝令が入る。
ラルはそれを見ると感心したように声を出す。

「しかし、アフリカのゲリラ屋も律儀なものだな、木馬の位置をすぐに
知らせてくれるとは」
「あなただってゲリラ屋ではなくて?」

 ハモンのイタズラっぽい笑みにラルも軽く笑みを浮かべ答える。
ハモンは妙齢の落ち着いた女性だが、こういう純粋な少女っぽぃからかいもする。
ラルはそれがたまらないと思っていたが、ここはそれを黙殺して努めて
冷静に回答する。

「わたしは宇宙のゲリラ屋だ。ガルマ様の敵討ちが終われば、すぐに宇宙に戻る」
「しかし、あなたもご存知のとおりゲリラ屋というのは……」
「心配するなハモン……」

 ラルがハモンを諭す。ラルはゲリラ屋の戦い方は熟知している。少ない戦力だと
いう自負がある場合、その少ない戦力を徹底活用する。使えるものはなんでも
使う。これがゲリラ屋の戦い方だ。

 ラルはアフリカのゲリラに使われていることを実感している。しかしそれでもいい。
こっちもアフリカのゲリラを利用している。利害関係だけで共闘が成り立つのが
ゲリラ屋だ。

 それにラルだって潤沢な戦力があるわけではない。ゲルググの修理パーツこそ来たが、
補給物資は思ったより少なかった。ここはキシリアの支配下だ。ラルの上司のドズルと
キシリアは政敵に等しいぐらい仲が悪い。補給物資もおそらくどこかでピンハネ
されているのだろう。ラルは政治に関しては素人だがそれぐらいのことはわかる。

 だが木馬だって苦しい。敵の勢力圏に等しいようなところで孤立無援に戦っている。
この戦い、持たざるものもの同士の苦しい戦いだ。すなわち、根負けしたほうが負け、
そんな戦いだ。

 だがラルには自信があった。持たざる戦いこそ、ランバ・ラルの真骨頂であり、
ゲリラ戦のスペシャリストたる所以なのだ。

「さて、この当たりで網を張るか」

 そのスペシャリストを載せたギャロップがホワイトベースに近づいていく。砂漠の
戦いの第2ラウンドが幕を開けうようとしている。






 地上戦艦が近づいてくるのはすぐにホワイトベースにも伝わった。

「2時の方向、地上1機できます。ただし機種はわかりません」

オペレーターが敵機の情報を伝える。ホワイトベースに緊張が走る。
 敵の戦力が不明、さらに最大の戦力であるリガズィ・リジェは補給物資の確保に
向かっていて不在だ。

「敵機が不明!?速度とか高度で割り出せないのか?」

 ブライトがいらだちの声を上げる。しかしオペレーターは首を横に振る。
どうやら識別のない新型らしい。苦渋の表情でブライトはアムロ少年に尋ねる。

「アムロ、行けるか?」
「戦力がわからないと辛いですよ。それにリガズィさんがいないでこちらから仕掛けるの
 は無謀すぎます」
「そうだな、まずは様子見するか、だが第1戦闘配備のまま待機しておけ!
 ガンダム4号機、6号機、ガンタンクはスタンバっておけ!」
「了解!」

 アムロらパイロットが出撃の準備のためにブリッジを後にする。それと同時に
ホワイトベースは偽装を外し始める。

 偽装を外し始めた様子はギャロップで待機しているハモンの目にも見えた。
だが動きが中途半端すぎる。おそらく様子見なのだろう。だがここではもう遅い。

「ランバ・ラル、ステッチの展開は終わりましたか?」
「はい、ご覧くださいラル様とステッチのMSが一気に奇襲をかけます。
 ギャロップは側面から援護に回ります」
「結構です」

 ハモンは口元を緩ませる。この勝負に勝機はある。連邦のMSが出てきたらやっかいだが、
体勢が整う前に奇襲をかければ驚異を半減することができる。

 相手は戦術のイロハも知らない素人に近い集団だ。この動きのもたつきから、ハモンは
この部隊を新兵器の性能とパイロットの腕に依存した部隊だと判断したのだ。

 ならばこの勝負、相手のMSが出てくる前に決着を付けられればいいのだ。敵のMSが
出てくる前に一気にカタをつける。それが今回の作戦だった。






 敵がホワイトベースに向けてまっすぐ奇襲をかけてくることに気づいたブライトは急ぎ
アムロとリュウに出撃命令を下す。もともとスタンバっていたが急な命令変更ともあり
アムロ少年は慌てた。それをリュウが静める。

「落ち着けよ、アムロ、落ち着かんと勝てる戦も勝てんくなる」
「わかってますよ」

 だがモビルスーツデッキについた次の瞬間、アムロ少年とリュウは目を見張った。
ガンダム5号機がカタパルトに上がっていたのだ。

最初アムロ少年はリガズィ少佐が今回の作戦を見越してあらかじめ奇襲に備えて準備
していたのだと思った。だがリガズィ少佐は補給物資の確保のために街に出ている。
だから5号機にリガズィ少佐が乗っていることはありえない。アムロ少年は思わず
メカニックのジョブ・ジョンに声を張り上げた。

「ジョブさん!5号機に誰が乗っているんです」
「セイラさんだ。特命だって、違うのかい?」

 アムロ少年の尋常ならざる顔を見てジョブジョンは戸惑いの表情を浮かべる。だが、
もっと戸惑っているのはアムロ少年だ。セイラさんはMS戦は素人だ。例えガンダムに
乗っていたって、相手は歴戦の兵。初陣の人間が戦果が上げられないどころか、
足でまといになってしまう可能性が高い。

 ふざけるな、こんな危機的な時に!

 アムロ少年の声が怒りに震えた。

「そんな命令あるものか!セイラさん、降りてください!」






 だが、しかしアムロ少年の声は5号機のコクピットいるセイラには届かない。

 カタパルトデッキに登るガンダム5号機。

「カタパルト装着完了、発進します」

 シグナルグリーン。5号機が勢い良くカタパルトデッキから打ち出される。

「あっ!」

 セイラは発信時のGに顔を歪める。しかし懸命に意識を持ちこたえさせる。
しかしなれないGの感覚はセイラから冷静さを奪う。5号機は空中で
バランスを失う。セイラはなんとか態勢を整え、着地体制に入るが
シミュレーション上ではなかった砂地での着地で足場を取られ、
着地に失敗。着地で嘔吐しそうになるがそれをかろうじてセイラは
抑えた。

「Gがこんなにすごいなんて……」

 セイラは焦る。だがこんなところで諦めてはいけない。

 兄の行方、キャスバル兄さんの行方を確認しなければ……。
キャスバル兄さんが何のためにジオン軍にいるのかは解らない。
だけど、あの優しいキャスバル兄さんが軍にいて人を殺す仕事を
しているなど。

 ありえない。何としても止めなければ、そのためにもまず

「なんとしても、ジオンの兵と接触しなければ……」

 5号機のコクピットに警告音が鳴る。ジオンの新型MSがまっすぐ
こちらに向かってくる。そして油断なくライフルを構える。
セイラはあわててライフルの照準を定めビームライフルを発射する。

 しかしジオンの新型MSは小刻な動きでそれをかわす。セイラは
ライフルを撃ちまくるがまったく当たる気配がない。

「狙っているのに、当たらない!?」

 ついにジオンの新型MSはランダム機動をやめ、まっすぐに突進してくる。
軽いパニック状態になりながらさらにライフルを連射するセイラ。しかし、
さっきのはおろか、回避運動をしない相手にすら当たらない。
実は砂漠の熱対流でビームが歪められているにだが、初出撃で戦闘の
素人であるセイラがそれに気づく余地があるはずが無かった。

「こんな射撃が難しいものだなんて……」

 一方のランバ・ラルは不慣れな動きを見せるガンダム5号機を見て怪訝に思う。
万全な急襲であったのに、先にガンダムが出現したときは焦った。しかし
相手は砂漠、いやモビルスーツの動きにすら不慣れな敵だったのだ。

 前回、あのモビルスーツは完膚なきまでに自分を打ち倒した。それが不慣れ
だというは絶対にありえなかった。パイロットを変えたのか?だが奇襲攻撃に
対し、そこまでのことを考える時間を与えていないし、その理由も無い。

「何かの作戦、あるいはミスか?……だが何考えていようが……」

 目の前の敵は倒す!

 ゲルググはビームナギナタを抜く。ビームライフルは熱対流で歪められるので
極力使わない。それを見越してまで攻撃する技能まではラルは無い。一気に
懐に飛び込み、5号機に対しナギナタを振るう。5号機はかろうじてそれを
シールドで受け止めるが、再び緩い砂漠の流砂に足場に取られ、バランスを
崩して転ぶ。

「トドメだ!」

 ビームナギナタを突き出し、一気にコクピットを狙う。しかしその攻撃は横からの
ビームにより妨害される。一旦後ろに飛び退き、5号機から距離を取る。アムロ少年
の4号機が間に合ったのだ。その後ろからはカイの乗った6号機が迫る。

「セイラさん、逃げて下さい!こいつは僕が相手をします。チッ、どうせ無線を
 切っているのだろう……」

 アムロは舌打ちする。やっぱり足でまといになったか……

 尚も立ち上がり5号機はゲルググに立ち向かおうとする。もう完全にセイラは
錯乱している。だが一方のラルは冷静だ。

「4対2か……。厳しい戦力差だが……」

 奇襲には失敗した。戦力は向こうの方が上。本来ならここで撤退すべきだが。ラルには
勝算がまだあった。

 5号機が零距離でライフルをゲルググに向かって撃とうとする。しかしそれを
ゲルググは左手で冷静に払いのける。そしてナギナタを振るい、5号機の左足
を両断する。セイラは恐怖しバルカンを連射するが、その隙にラルは後ろに回り込む。
そしてナギナタからライフルに持ち替え、5号機のコクピットに突きつけた。
アムロ少年は驚愕した。

「5号機が人質に取られた!?」
「これで迂闊には手を出せまい」

 さらにラルは右手でライフルを5号機に突きつけながら、器用に5号機の
メインカメラとサブカメラを破壊する。5号機のすべてのモニターが破壊され、
5号機の画面が暗転し、セイラは恐怖でパニック状態になる。

 そこで初めてゲルググが4号機に大して牽制のライフルを放つ。そして5号機を
開放する。セイラはモニターが見えない状況と恐怖でライフルを適当に乱射する。
そのビームはアムロ少年の4号機をかすめる。

「セイラさん!落ち着いてください!」

 アムロ少年はゲルググに狙いを定めるが、ゲルググは巧みに5号機を盾にし、
4号機に狙わせない。しかし2対1の戦いにラルも決定打を欠いていた。
ステッチは指示通り遠くから援護しかしないので仕掛けまでいたらない。
不利な戦いを人質を取ることによってなんとか五分まで持ち込ませていた
という感じだ。

「持久戦になりそうだな……」

 アムロがつぶやく。だがその声を聞こえていたのか、カイから通信が入った。

『いや、そうも言ってられそうもないぜ……、計器を見てみろよ』

 6号機のカイからの通信を受け、アムロ少年が計器に目をみやる。
早くも限界が違い。補給が不完全だったのだ。

 ここまでの激戦でホワイトベースの資源は底を付き始めていた。
 それは必須であるエネルギー面にも既に影響していたのだ。

 これが、満足に補給ができない。ということか……。

『こっちも似たようなもんだ。先手をうつしかないね』
「そうだな……」

 アムロ少年は意を決しビームサーベルを抜き、ゲルググに対して仕掛ける。

「先手必勝!」
「しびれを切らしたな!」

 ラルは人質にとっていた5号機を開放する。押し出された5号機に不意をつかれ、
咄嗟にアムロ少年の4号機は5号機を受け取ってしまう。パニック状態の5号機は
4号機の腕の中で暴れる。

「セイラさん!」
「受け取れ!」

 ラルは榴弾を4号機に投げつける。咄嗟にバルカンでそれを迎撃する4号機。
しかし榴弾は強い閃光を帯びて4号機の視界を奪う。MS用のスタングレネード
だ。強い閃光により負荷を超えた4号機のメインカメラは一時的に機能が麻痺する。

「しまった!」
「まずは2機!」

 視界を失った2機に大してラルが飛びかかる。サーベルに持ち替え2機を両方
両断しようとする。これでトドメ!

 しかし間一髪!ラルの最後の一撃はカイの捨て身の攻撃によって阻まれる。カイは
ビームサーベルを握り至近距離で振るう。かろうじて直撃を回避しようと試みるが
6号機の一撃は、ゲルググのビームナギナタを右腕ごと奪った。

 ゲルググは咄嗟に後退する。うかつだった。

「長距離援護用のMSでは無かったのか?」

 ガンダム6号機“マドロック”は肩にキャノン砲を背負っているため、
いかにもガンキャノンの用な支援用MSと思われがちだ。しかし本来の用途
は肩のキャノン砲はビームライフルチャージ中の射撃能力を補うためのものだ。
4号機、5号機という優秀なアタッカーがいるため、6号機は援護に回ることが
多いが、本来白兵戦MSである6号機はこれぐらいの動きはできる。

「俺だって、伊達にアムロのシミュレーターに付き合っていたわけじゃないんだぜ
 、1対1で何度もやってれば白兵戦だってこなせるさ」

 さらに6号機はガンダムハンマーを奮ってゲルググに追い打ちをかける。しかし
さすがラルもエースパイロット。不規則な攻撃を見切り、ハンマーの攻撃をかわす。

 ここらが潮時か……。

「ステッチ、引き上げだ。ハモン、ギャロップをよこせ、合流する!」






「さぁてと、女戦士のご帰還といきますか……」

 戦いが終わり、カイはガンダム5号機を起き上がらせる。モニターが死んだ
5号機が自力で帰還するのは難しい。セイラも音や雰囲気から戦闘が終わったと
察したのか、カイの6号機に5号機を委ねさせる。

 いや、茫然自失していたのだ。そこにブライトから通信が入る。

『セイラさん、後でブリッジへ』
「はい……」

 セイラが弱々しく答える。
結局何もできなかった。ただいいようにあしらわれただけではなく、
挙句人質に取られ味方に迷惑をかけたのだ。足でまとい以下だ。

 こんなことで、こんなことでお兄さんを探そうだなんて……
セイラは自分の無力さを呪った。そして涙した。

 その後ブリッジに置いて、ガンダム5号機を無断で動かしたため、
3日間の独房入りをセイラは命じられた。それにセイラが異議を唱える
ことは無かった。

「セイラさん」

 リュウに促されて独房へと歩を進めるセイラ。独房へと歩を進める中で、
フラウ・ボゥとジョブ・ジョンが食事を運んできた。おそらく先日の戦い
で捕虜にした。確かコズンとか言うジオンのパイロットのものだろう。
リュウがフラウに訪ねる

「捕虜に食事か?」
「はい……」
「2人だけじゃダメだ」
 
 おそらく、相手は百戦錬磨の兵、こっちは素人集団。窓を開けた瞬間にだしぬけられる
可能性がある。リュウはそう思った。だがセイラがフラウをここで制する。

「私がやりましょう。フラウ・ボゥ」
「すみません」

 結局セイラが食事を運び、リュウ達が外で待機することになった。リュウと、ジョブ・
ジョンが油断なく銃を構える中、セイラが捕虜のコズンに食事を運ぶ。

 この人なら、ジオン兵のこの人なら何か知っているかもしれない。

 セイラが食事をコズンの前に食事を置いたとき、小声でコズンに尋ねた。

「シャア、どうしたかご存知ですしょうか?」
「シャア?シャアって?」
「赤い彗星の、教えてくださらない」
 
 一旦リュウの方向を見やる。大丈夫、聞こえていない。そしてコズンは
ようやく聞かれたのが誰のことか理解したのか、セイラの質問に答えた。

「ああ、シャア・アズナブルね。ガルマを守りきれなかったもんで、失脚したよ
 。故郷へ帰ったとか、聞いたよ」

 安堵の色を浮かべるセイラ。故郷に帰ったということは、おそらく
無事だということなのだろう。とりあえずはよかった。

「そう、ありがとう……」

 捕虜の独房を後にするセイラ、リュウから何を話したか聞いたがそこは買収の
話を持ちかけられたと適当にあしらう。そして今度は自分の独房に入れられる。
さすがに若い女性を独房に入れるのは気が引けたのかリュウが心配そうに
声をかける。

「3日感だけですから、辛抱してください」
「心配しないで、リュウさん」

 リュウがその場を立ち去り、ついにセイラは一人きりになる。簡素な独房用
ベッドに、力が抜けたように座り込む。

 赤い彗星はあのキャスバル兄さん、そのキャスバル兄さんが生きていた。

 誰もいないところで、気の強い麗しの少女はついに緊張の息を切れたのか、
誰にも見られていないのを確認すると、再び涙した。






 一方のホワイトベースではモビルスーツデッキでガンダム5号機の損害報告を
受けたブライトが頭を悩ませていた。

「ガンダム5号機は中破、補修部品が足りないため、モニターの修理は不可能 
 か……」

 ブライトは頭を抱えた。なんということだ。ガンダムはなけなしのホワイト
ベースの主力戦力なのである。しかも5号機はあのリガズィ・リジェの機体
なのだ。
リガズィ少佐不在の間に別人が勝手に乗って壊したというのも頭が痛いが、それよりも
著しい戦力ダウンは指揮官としていかんともし難かった。

 だがそれでもなんとかしなければならない。ブライトはリュウに話を持ちかけた。

「理屈は正しいが、あまり、賛成はできんな……」
「だったら、リュウはリガズィ少佐を余らせておくのが良いと思っているの 
 か……」
「アムロだって、いい線は持っている」
「だがな……、我々はひとりの成長を待っているほど、
 のんびりはしてられないんだ」
  
 確かにアムロ少年にモビルスーツ操縦のセンスはある。それはブライトも解っている。
だがリガズィと比べたとき、どう逆立ちしても技量はリガズィの方が上だ。アムロが
成長すれば、どうなるかわからないが、ブライトの言うとおり、明日全滅する
かもしれない戦場で一人のパイロットの成長を待つ余裕などないのだ。

 だがリュウは一介のパイロットとして、ブライトの主張を忸怩たる思いで
受け止める。確かにブライトの言うことは理屈の上では正しいが、パイロット
本人としてみたら、プライドを踏みにじる行為だ。パイロット降格など、
断じて許される行為ではない。

 だがブライトは艦長であり、戦闘指揮官だ。

「ブライトは決めたんだろ、アムロをガンダムから降ろすって」
「ああ、それにアムロは扱いにくい」

 ブライトからしてみれば、あんな精神的にナイーブな奴は使えないのだろう。
アムロは一度出撃拒否をしている。今はどうだが知らないが、それでも可能性
はある。そんな出撃すること自体に不安があるやつなど、計算できなくて
使ってられない。この機会に永久にパイロット降格にしたいぐらいだ。

「しかしアムロは特別な奴だ。俺はそんな気がする」
「リュウ、賛成してもらいたいな」

 次の瞬間、歩いていたブライトが誰かと衝突する。ブライトが顔を見上げる。
それはさっき話していた当事者、アムロ少年だ。

 まずい、聞かれたか。一瞬焦るブライトだったが、やがて、
言わなければならないことだ。今ここで話してもいい。

 しかしアムロ少年は全てを聞いていたのか、ブライトの場所から一目散に逃げ出す。

「アムロ!」

 リュウがあわててアムロ少年を追おうとするが、リュウがそれを止める。

「やめたまえ。かえってくどくど説明する手間が省けたというものだ」
「そうかな……」

 リュウはこのとき、初めて憎々しげにブライトの顔を睨みつけた。
確かに効率よく戦える部隊の編成も必要だ。しかし、戦うのはパイロット
であり、人間なのだ。その人間を蔑ろにしてどうして戦えるものか!?
果たして自分たちは、兵たちを駒のようにしか見ていないこの未熟な
指揮官の下で戦えるのだろうか?とリュウは思った。






 アムロ少年は失意のまま自室に戻ると身支度を終え、部屋の掃除をし荷物を
整えて部屋を後にした。だがその様子は直ぐに見つかってしまう。それを
フラウ・ボゥがアムロ少年の姿を見たとき、既にアムロ少年は私服姿だった
。軍服を脱ぎ捨て、私服に着替えてあるアムロ少年に、驚きの声をあげた。

「アムロ、どこいくの?」
「ホワイトベースを降りるんだ。元気でな」

 極めて冷静に答えたつもりだが、アムロ少年の声は震えている。目も
うつろだ。それに更に驚いたフラウ・ボゥはアムロ少年が何を言ったのか
理解できず、聞き返す。

「えっ?なに?」
「船を降りるんだよ」

 ようやくアムロ少年が言っていることを理解したフラウ・ボゥは
慌ててアムロ少年に聞き返す。

「どうしたの?」
「ブライトさんとが僕は不必要だって言うんだ。だから、船を降りるんだよ」
「ちょ、ちょっと」
「止めるな!」

 アムロ少年はフラゥ・ボゥを振り切り逃げ出す。罪悪感がないわけではない。
それを振り切るように逃げ出したのだ。フラウがそれを追うがすぐに見失ってしまう。
アムロ少年はそのままモビルスーツデッキに向かいガンダムに乗り込むと、ハッチを
強引に開け、出ていってしまった。






 子供じみた行動だ。とアムロ少年は4号機のコクピットの中で
我ながら思った。不必要だと言われて、いじけて、4号機を持ち逃げするなど、

 だが脱走すると決めた以上、4号機は持ち出さなければなかった。
この砂漠地帯、敵だらけの中で保険は必要だし、4号機欲しさにブライト
達が連れ戻す可能性だってある。

 それに、自分が一番ガンダムをうまく扱えることを証明しなくちゃいけないのだ。

 だから、僕はガンダムを持ち出した。

 だけど、これからどうするか……。

 決まっている、自分の力を証明するんだ。どこか適当なジオンの部隊を叩いて、
否が応にもガンダム4号機のパイロットは自分だと認めさせるんだ!

 そのときであった。敵機を補足したのは、まっすぐにこちらへと向かってくる。
敵は1機、なにものだ!?

 やがてその敵機の機影が見える。左右に出っ張ったバインダーが特徴的だ。
ザクや、ゲルググとは違う。優美で女性的なフォルム。目はモノアイをしている。

 やはり敵!?

 敵機を確認した瞬間、それまでむしゃくしゃしていたアムロ少年の脳は一気に
研ぎ澄まされる。ブライトを恨んではいるが、まずは今目の前の新型を生き残る
ために倒さなければならない。そして。

 自分こそガンダムを一番上手く扱えることを、証明しなければならないのだ。


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