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No.32471の一覧
[0] 魔法の世界の魔術し!(ネギま!×Fate)[泣き虫カエル](2012/03/28 09:21)
[1] 第2話  黄金の少女[泣き虫カエル](2012/03/31 09:21)
[2] 第3話  こんにちは異世界[泣き虫カエル](2012/03/31 09:25)
[3] 第4話  絡繰茶々丸[泣き虫カエル](2012/04/07 11:58)
[4] 第5話  仕事を探そう[泣き虫カエル](2012/04/07 11:59)
[5] 第6話  Shooting star[泣き虫カエル](2012/04/13 20:44)
[6] 第7話  ライラックの花言葉[泣き虫カエル](2012/04/18 06:32)
[7] 第8話  開店準備はドタバタで[泣き虫カエル](2012/04/24 22:22)
[8] 第9話  創作喫茶 『土蔵』[泣き虫カエル](2012/05/08 21:11)
[9] 第10話  桜咲刹那 ~その誓い~[泣き虫カエル](2012/05/11 22:24)
[10] 第11話  答え[泣き虫カエル](2012/05/16 09:13)
[11] 第12話  もう一つの仕事[泣き虫カエル](2012/05/19 15:20)
[12] 第13話  視線の先に見えるモノ[泣き虫カエル](2012/05/21 21:38)
[13] 第14話  友一人、妹二人[泣き虫カエル](2012/05/24 19:03)
[14] 第15話  帰るべき場所[泣き虫カエル](2012/05/28 18:15)
[15] 第16話  ネギま![泣き虫カエル](2013/06/13 21:43)
[16] 第17話  とあるお昼休みの出来事[泣き虫カエル](2013/06/13 21:47)
[17] 第18話  それ行け、僕等の図書館探検隊 ~前編~[泣き虫カエル](2013/06/13 21:50)
[18] 第19話  それ行け、僕等の図書館探検隊 ~後編~[泣き虫カエル](2013/06/13 21:51)
[19] 第20話  その身に秘めたるモノ[泣き虫カエル](2013/06/13 21:53)
[20] 第21話  決別の時[泣き虫カエル](2013/06/13 21:55)
[21] 第22話  停滞の時[泣き虫カエル](2013/06/13 21:57)
[22] 第23話  闇の福音[泣き虫カエル](2013/06/13 21:58)
[23] 第24話  狂気と変わらぬ誓い[泣き虫カエル](2013/06/13 21:59)
[24] 第25話  譲れぬ想い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:01)
[25] 第26話  束の間の平和と新たな厄介事[泣き虫カエル](2013/06/13 22:04)
[26] 第27話  魔の都[泣き虫カエル](2013/06/13 22:06)
[27] 第28話  観光に行こう![泣き虫カエル](2013/06/13 22:07)
[28] 第29話  Party time![泣き虫カエル](2013/06/13 22:11)
[29] 第30話  胎動[泣き虫カエル](2013/06/13 22:14)
[30] 第31話  君の心の在処[泣き虫カエル](2013/06/13 22:15)
[31] 第32話  暗雲[泣き虫カエル](2013/06/13 22:16)
[32] 第33話  奪還[泣き虫カエル](2013/06/13 22:17)
[33] 第34話  それぞれの想いと願い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:19)
[34] 第35話  試練[泣き虫カエル](2013/06/13 22:21)
[36] 第36話  君の想い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:22)
[37] 第37話  買いに行こう![泣き虫カエル](2013/06/13 22:24)
[38] 第38話  紅茶は好きですか?[泣き虫カエル](2013/06/13 22:26)
[39] 第39話  紅い背中[泣き虫カエル](2013/06/13 22:28)
[40] 第40話  茶々丸の衛宮士郎観察日記[泣き虫カエル](2013/06/13 22:29)
[41] 第41話  修練[泣き虫カエル](2013/06/13 22:31)
[42] 第42話  オモイオモイ[泣き虫カエル](2013/06/13 22:32)
[43] 第43話  君のカタチ[泣き虫カエル](2013/06/14 00:14)
[44] 第44話  You And I[泣き虫カエル](2013/06/13 22:44)
[45] 第45話  襲来[泣き虫カエル](2013/08/10 18:45)
[46] 第46話  止まない雨[泣き虫カエル](2013/08/10 18:46)
[47] 第47話  白い闇[泣き虫カエル](2013/08/10 18:48)
[48] 第48話  晴れの日[泣き虫カエル](2013/08/10 18:50)
[49] 第49話  世界樹[泣き虫カエル](2013/08/10 18:51)
[50] 第50話  日常に潜む陰[泣き虫カエル](2013/08/10 18:53)
[51] 第51話  Girls Talk & Walk[泣き虫カエル](2013/08/10 18:55)
[52] 第52話  『    』[泣き虫カエル](2013/08/11 20:34)
[53] 第53話  麻帆良祭 ①[泣き虫カエル](2013/09/02 22:08)
[54] 第54話  麻帆良祭 ②[泣き虫カエル](2013/09/02 22:09)
[55] 第55話  麻帆良祭 ③[泣き虫カエル](2013/09/02 22:10)
[56] 第56話  光と影の分かれ道[泣き虫カエル](2013/09/02 22:12)
[57] 第57話  超鈴音[泣き虫カエル](2013/09/02 22:13)
[58] 第58話  超鈴音 ②[泣き虫カエル](2013/09/02 22:14)
[59] 第59話  Fate[泣き虫カエル](2014/03/09 20:48)
[60] 第60話  告白[泣き虫カエル](2014/03/16 22:56)
[61] 第61話  the Red[泣き虫カエル](2014/06/03 21:38)
[62] 第62話  Pike and Shield[泣き虫カエル](2014/11/19 21:52)
[63] 第63話  Bad Communication [泣き虫カエル](2015/05/16 22:01)
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[32471] 第17話  とあるお昼休みの出来事
Name: 泣き虫カエル◆92019ed0 ID:4af99eb6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/06/13 21:47

 
「えっと、ここら辺……か?」
 
 ネギ君が学園に来てから5日後。
 店が定休である月曜日、俺は散歩がてらに都合三人分の弁当が入ったバスケットケースを持って歩いていた。
 それと言うのも、話はエヴァが昼食も暖かい物を食べたい、と言い出した事から始まった。
 だったら食堂に行けばいい話だとは思うのだが、まあ、こう言うのは藤ねえで慣れているから問題は無いわけである。
 で、その場の話の流れであれよあれよと、俺が休みの日は出来立ての弁当を持っていくことになり、俺もその場に同席する事が決定してしまった。
 繰り返すが、それは別に構わない。
 問題は別にある。
 
 ――グルリ、と首をまわす。
 昼食時と言う事もあって多くの人達が思い思いに楽しんでいる。
    
 しつこい様だがそれは構わない。
 楽しんで食事をするのは大切な事だと思う。
 更にこの陽気だ。外で食べるのはさぞかし気持ちの良い物だろう。
 問題は、
 
「――――なんで待ち合わせが女子校エリアの中庭なのさ……」
 
 そう、問題はここが女子校エリアであると言う事だ。
 本来なら、男である俺は、特別な事でもない限りこんな所にまで入ってこれる訳は無いのだが、不幸にも俺はその”特別”を有してしまっていた。
 ――学園広域指導員。
 そう、不幸にも俺がそんな肩書きなモンだから入る事を堂々と許可されてしまっているわけである。
 エヴァのヤツもそこら辺を見越して言ったのだろうが、……ある意味職権乱用じゃないだろうか、これって。
 が、それはそれとしても……、
 
「……………………落ち着かない」
 
 ぼやいてみてもこの男女比率100:1を軽く上回るであろう状況は変わらない。
 言うまでも無く、男が1で女が100だ。いや、この場合女の子と言い換えてもいいか。
 見渡す限り目に映る人は全てが女性。
 先程から思いっきり奇異の視線がビシバシ突き刺さる。もはや物理的圧力すら感じそうだ。
 気分は動物園の檻に入った珍獣のそれに近い。
 いや、入った事無いけど。
 でも、今度動物園にでも行く機会があったら動物達を見る目が変わりそうだ。
 彼らはこんな苦行じみた状況にひたすら耐え続け、一挙手一投足を観察されている生活を強いられているのだ。
 ――尊敬してしまいそう。
 じゃなかった。
 こんな所で現実逃避してないで、早く二人を探し出さねば。
 
「――おい、士郎。こっちだ」
 
 が……その必要も無く見つけてくれた。
 聞きなれた声に振り返ると、そこにはエヴァと茶々丸がいつものように並んでこっちに歩いて来ていた。
 まあ、考えてみればこれだけ目立ってるんだから当たり前と言えば当たり前か。
 
「ああ、二人とも。探したぞ」
「お疲れ様です、士郎さん。お荷物、お持ちします」
 
 茶々丸が俺の荷物を見てそれを持とうとする。
 
「いや、女の子に荷物持たせるわけに行かないだろ?」
「そ、そう――ですか?」
「ああ、それより早く食べる場所に案内してくれ。……できれば余り人目に付かないとこで」
 
 茶々丸の申し出をやんわりと断り先を促す。
 それより俺はさっさとこの状況を打開したいのです。
 
「ああ、こっちだ。付いて来い」
 
 エヴァは俺達を誘導するように先を歩き出す。
 それに伴い周りから受ける視線が幾分柔らかくなった気がする。
 多分、エヴァ達と一緒にいる事により関係者かなにかだと思われたのだろう。
 
「ふむ、ここら辺でいいか……」
 
 エヴァが選んだのは、中庭の中でも少し外れにある木陰だった。
 適度に人目から遠く、喧騒が丁度いいBGMに聞こえる。
 確かにエヴァの言うとおり、いい場所だった。
 
「ん、分かった。――茶々丸、準備手伝ってくれ」
「はい、士郎さん」
 
 茶々丸と二人テキパキとシートやコップなどを準備する。
 エヴァは基本的に見てるだけ。
 本人いわく、
 
『私は長だぞ? 何故動かねばならん、メンドい』
 
 らしい。
 その時の様子をもっと詳しく言うなら、”偉そうにふんぞり返りながら見下すように”と続く。
 そんな事で威張られても……とは思う。
 でも、まあ――、
 
「あ、エヴァ。シートの端を押さえるから適当な石持ってきて」
「ん、分かった。四つでいいよな?」
「いいよ」
 
 ってな風に、言えば結構素直に手伝ってくれたりする訳なのだが。
 これもある意味素直じゃないとでも言うんだろうか?
 そんなんでパパッと手早く準備を整えて、いざ昼食。
 
「で、初めての弁当って事で今日はオーソドックスに攻めてみました」
 
 パカリ、と器を開ける。
 中身はお結び、野菜のサンドウィッチ、鳥のから揚げ、玉子焼き、ミニハンバーグ等、定番中の定番で固めてある。
 勿論デザートにはウサギの形の林檎と完璧だ。
 お茶は二種類、日本茶である緑茶と、食後に飲むであろう紅茶。
 どちらも家を出る直前に淹れてきた物だ。
 
『いただきます』
 
 それぞれが微妙に違う挨拶をして食事を始める。
 茶々丸が両手でお箸をしっかりと挟んでお辞儀をして食べ始めるのに対し、俺は言葉だけ言って早速今日の弁当の出来を確認する。
 ――エヴァは言葉を言い終えると同時にから揚げを頬張っていた。
 感覚的に言うならば「いただきまふっ」って感じである。
 
「うむ、流石に作りたてだな。から揚げもまだ暖かい」
「そりゃ、時間合わせて作ったからな。あ、茶々丸そこにある黒い魔法瓶取ってくれ」
「はい、士郎さん。……これですか?」
「うん、それ中身、緑茶だから」
「なるほど、では私がお配りします…………どうぞ」
「ん、サンキュ」
「マスターはいかがしますか?」
「もらおうか」
「ほらエヴァ、玉子焼きがかなり出来が良かったんだ。食べてみろよ」
「ほう? どれどれ、…………ん、このふわふわ感がなんとも」
 
 そんな感じでノンビリと昼食を楽しむ。
 天気も良いし、頬を撫でる風は気持ち良い。
 降り注ぐ日差しは生い茂る木々の葉によって遮られ、木漏れ日となって優しく落ちている。
 そんな太陽の水玉が、エヴァや茶々丸の長くて綺麗な髪に零れ落ちてキラキラ煌く。
 あー……、なんて言うか和むなー……。
 
「コラーー、君達まちなさーーーい!」
 
 と、まったりとした空気を楽しんでいると、それまでの雰囲気とは真逆の空気を纏った声が聞こえる。
 それは女の子とは少し違った感じで、それでいて最近聞いたような声が遠くから聞こえた。
 
「なんだ?」
 
 お結びをモグモグ食べながら声が聞こえた辺りを見る。
 ――うむ、梅干はやはり紀州南高梅に限るな。肉厚が違う。
 
「僕のクラスの生徒をいじめるのは誰ですかっ? い、いじめはよくないことですよっ!? 僕、担任だし怒りますよ!」
 
 遠目にワタワタ手を振る子供が見える。
 あれは……。
 
「ネギ君? ……なにやってんだあれ?」
 
 エヴァ達とは違う制服に身を包んだ女の子達の前でなにやら力説しているようだ。
 その近くには大河内さんと明石さんの姿も見える。
 
「どうした士郎、なにか見せ物でもやってるのか? ムグムグ……ん? アレは、坊やか?」
「みたいだな、見ようによっては見せ物に見えるかも……あ、茶々丸、お茶くれ」
「はい、どうぞ士郎さん」
「私にもだ、……む、何やら小娘ドモに揉みくちゃされているな」
「――ズズゥー……、はぁ。だな、あれは完璧にオモチャとかヌイグルミみたいな感覚で扱われているに違いない」
「っ! 熱っ! むー……舌がヒリヒリする……あ、何処からか飛んできたボールが小娘共の一人に当たった」
「ん? エヴァ、舌見せてみ? んー……少し赤いけど大丈夫そう、かな? って、おばサマ? 今、なんかおばサマって聞こえたけど、なんだ高校生ってもうおばさんなわけか?」
「ガキの間違いだろう? ん……少し違和感があるが……問題ないか」
「お、アスナだ。一緒にいるのは……見たこと無いな。茶々丸分かるか?」
「あれは雪広あやかさん、私共のクラスの委員長をされている方です。――マスター、お結びはいかがですか?」
「ん、貰う。……やかましい二人が来てしまったな」
「ん……このハンバーグにチーズ入れるのもありかもな……しかし、アレだな。昨今の女の子ってのは皆あんなに背が高いのか? 茶々丸だって高いし、あそこにいる大河内さんと……雪広さんだっけ? あの子も高いしさ。アスナでやっと俺と同じくらいだぞ」
「ムグムグ……っんく、…………それは暗に私が子供だと言いたいのか?」
「違うって。単純に背が高い子が多いって話」
「……ふん」
 
 とまあ、完全に傍観モードの俺達。緊張感もへったくれも無い。
 学園長からある程度力を貸してやってくれとは頼まれたが、別にこの程度の喧嘩の仲裁だったら彼に任せてみるのが良いだろう。
 
「――おや? 三人揃って昼食かい?」
「あ、タカミチさん」
「……げ、タカミチか」
「こんにちは高畑先生」
 
 そんな騒ぎを聞きつけてかそうでないのか、タカミチさんがひょっこりと顔を出した。
 タカミチさんはこの学園の先生だし、この場にいるのも当然だろう。
 
「良かったら食べます?」
 
 そんな彼に向かってお弁当箱を差し出し、勧めて見る。
 
「お、いいのかい? ではこのオニギリを一つ、――これは昆布の佃煮か。いや、なかなか通な選択をするじゃないか士郎君」
「あ、それ自家製の佃煮です」
「それはすごい、流石士郎君だ。……っと、おや? アレは2−Aの子と聖ウルスラの子じゃないか。なにやってるんだい?」
「ちょっとした喧嘩っぽいですけど……、まあ、ネギ君もいるし、とりあえず彼に任せてみようかと。あ、から揚げも食べます?」
「ありがたく頂こうか。……お、これもなかなか。そうか、彼の手並み拝見といこうか」
「タカミチ、貴様人の家の弁当をばくばく食べるな。……む、これも美味いな。士郎、これはなんだ?」
「あ、それは豚ひき肉を辛味噌メインで味付けしたやつ。――って、おいおい、女の子が取っ組み合いの喧嘩か? ……ったく、しょうがないな……」
 
 よっ、と腰を上げ観戦モードを終える。
 流石に実力行使に出たとなってはノンビリ見ている訳にはいくまい。
 
「なんだ士郎、出張るのか? あんなモンほっとけばいいものを」
「や、そんなわけにもいかんだろ」
「よかったら僕が行こうか? ”元”とは言え僕の生徒だったんだし」
「いえ、これも俺の顔を覚えてもらういい機会です」
「士郎さん、お手拭をどうぞ」
「ん、サンキュー茶々丸」
 
 茶々丸から貰ったウエットティッシュで手を拭い、小走りに現場へと向かう。
 その間もアスナと雪広さんを中心に騒ぎは広がってしまってきている。
 それを見かねたのか、大河内さんと明石さんまでもが加勢に向かおうとした所で、
 
「はい、ストップ」
 
 それに追いつき二人の肩に手を置いて踏み止まらせる。
 
「なに……って、ありゃ? 衛宮さん?」
「……え、え、衛宮さん!?」
 
 俺という突然の登場に首を傾げる二人。
 ……それはそれとして大河内さんの驚き様はちょっと行き過ぎだと思う。
 俺、なんかしたか?
 
「全く、君等と会うのはこんなんばっかだな……。ま、いいや。ここは俺が受け持つからちょっと下がっててくれ」
 
 肩に乗せた手でそのままポンポン、とあやす様に叩いて渦中へと進む。
 目の前の乱闘騒ぎは先程よりけたたましさを増していた。
 キャーキャー、ワーワー、と掴み合う2対多数の女の子達。
 その2対多数の状況で引けを取っていない辺り、アスナがアスナたる所以なのだろうか。
 と、まあ、感想はこの位にして――、
 
「――そこまでだ、アスナ。元気なのはいいが度を過ぎるとみっともないぞ」
 
 アスナと雪広さんの襟首の後ろを掴んで、転ばない程度に後ろへと引っ張る。
 まるで猫の首を掴むような仕草になってしまったが、この際そこは勘弁してもらいたい。
 
「っ! ……何よっ! ――って、シ、シロ兄っ!?」
「は、離しなさいっ! 一体誰ですのアナタは!?」
 
 俺だと気が付くと大人しくなるアスナと、見知らぬ俺の手から逃れようともがく雪広さん。
 とりあえず、それらは無視して話を進めるコトにする。
 
「いい加減にしろっ。さっきから見ていたがいつまで続ける気だ」
 
 若干語気を強めに言う。
 それに聖ウルスラの生徒達は怯んだが、そのリーダー格らしき子はそれに負けじと食いついてきた。
 
「……誰よアナタ、突然入ってきて随分な物言いをするじゃない。大体なんでここにアンタみたいな男がいるのよ、ここは女子校エリアよ」
 
 通報してほしいのかしら、と続ける女の子。
 それが頭にきたのか、それを聞いたアスナがまた暴れようとしたが片手で抑える。
 
「そうか、名乗るのが遅れたな。俺は衛宮士郎、学園広域指導員だ」
 
 大人しくなった二人から手を離し身分証明書を見せる。
 
「……うそ、――本物?」
「この際俺が本物とか偽者かってのはどうでもいいさ。それより、だ。今回の件は、手を出したこの二人だってもちろん悪い。そこは弁解の余地すら与えられない。――けど、君らにだって非はあるんだろ?」
「う……」
 
 やはり何らかの自覚はあるのか押し黙る女の子。
 
「だとしたらここは、可愛い後輩相手に大きな器を見せるのが先輩ってものじゃないか?」
「は、はい……」
 
 学園広域指導員と言う肩書きが効いたのか、意外なほど素直に従ってくれた。
 前々から思っていたが、基本、ここの生徒は物分りのいい子が多いようだ。
 
「うん、ありがとう。さ、君達、そろそろ行かないと次の授業が始まるんじゃないか?」
「……はい、わかりました」
 
 最後に一瞥を向けると素直に立ち去っていく。
 
「――さて」
 
 そこでやっと2ーAの生徒達に向き直る。
 
「皆、怪我とかしてないか?」
「私達は大丈夫だけど……」
「そうか。……ったく、駄目だろ? 女の子が取っ組み合いのケンカなんかしたら」
「で、でもシロ兄! 元々悪いのはアイツ等なのよっ」
「だからって手を出していい理由にはならないさ。気に食わないから実力行使、なんて言うのは女の子としてどうかと思うぞ」
 
 ポフポフと、血が上った頭を叩いてあやしてやる。
 アスナは不服そうに「うー……」と唸っていたが気にしない。
 
「……ちょっと、アスナさん?」
 
 すると、今まで成り行きを見守っていた雪広さんがアスナの肩を叩いていた。
 
「……この方、どなたですの? 紹介して下さらない?」
「へ? なに、いいんちょ。今まで会った事無いの?」
「……会ってたら紹介なんてお願いしませんわ」
「ふ~ん、ま、いいわ。えっと……この人は衛宮士郎さん。学園広域指導員で寮の前にある『創作喫茶 土蔵』の店長さん。ほら、この前やった歓迎会の時に私が持って行ったケーキあったじゃない? アレ作った人よ」
 
 アスナがそう言うと、雪広さんは得心いったという風に手をポンと合わせた。
 
「まあ、まあ。そうでしたの? あのケーキは大変美味しかったですわ。そうですか、アレを貴方が……。それにお店をやりながら学園広域指導員のお仕事まで……素晴らしいですわ衛宮さん。――あら、私とした事がご挨拶がまだでしたわね。私、雪広あやかと申します。以後、お見知りおきを」
「あ、これはどうも丁寧に……。俺は衛宮士郎、今アスナが言ってた通り色々やらせて貰ってる。宜しく」
 
 なんか話し方といい、物腰といい、いかにもお嬢様っぽい感じの子だ。
 なんかこっちに来てからそういう感じの子と知り合う機会が多いな……。
 個別のイメージ的にはエヴァがお姫様、このかがお嬢さん、雪広さんがお嬢様って感じだろうか。
 ……”さん”と”様”にあるイメージの差は押して知るべしである。
 しかしあれだな、こっちの世界の子ってやたらと綺麗な子が多いな……。
 俺も美人とか可愛いって括りの知り合いは多かったけど、まさかここの世界でもそうだとは思わなかった。
 身近な所から言ってもエヴァ、茶々丸、刹那、アスナ、このか、大河内さん。それに今しがた出会った雪広さんもそうだ。少しでも話をした事がある子すべてかもしれない。
 もの凄い確率である。もしかしたらこれがこの世界での標準レベルだったりして……。
 ……まあ、俺も健全な男であるわけなのでして……そう言った知り合いが多いのは素直に嬉しい訳ではあるのだが。
 
「衛宮さん……」
 
 と、何時の間にやらネギ君が傍らに来ているのに気が付いた。
 
「よおネギ君、大変だったな」
「あの……、ありがとうございました、助けてくれて。……それとごめんなさい、僕先生なのに止められなくて……」
「いや、誰にでも失敗はあるさ。大事なのはそれを繰り返さない事、人は失敗からだって学べるモンだぞ」
 
 特に俺の場合はそっちの方が多い気がする。
 
「う、うん。ありがとうございます……」
「よし、それが分かれば大丈夫。ほら、皆もそろそろ行かないと次の授業に遅れるんじゃないか?」
 
 俺がパンパン、と手を叩きながら言うと『はーい』と返事をして校舎へと向かって行く。
 そんな中、控えめに掛かる声があった。
 
「……あの」
 
 声のする方を向いてみると、スラリと手足が長く背も高い、長い髪をポニーテールに結んだ子。
 大河内アキラさんがいた。
 
「大河内さん。災難だったな、怪我とかしてないか?」
「……は、はい。ありがとうございます。大丈夫です……」
「それは良かった。そんなに綺麗なんだ、傷痕とか残ったら大変だもんな」
「――――っ!」
 
 瞬間。
 ボン、と音がしそうな勢いで大河内さんの顔が真っ赤になった。

「――し、失礼しますっ!!」 
「え!? お、大河内さ、」
 
 正に脱兎。
 もの凄い勢いで逃げていった。
 引き止めようと伸ばした手も空を切る。
 
「…………えっと、何か用があったんじゃ……?」
 
 呟いた言葉にカラスがカァーと答えた。
 
 
 
「ん、帰ったか士郎」
 
 スゴスゴ帰って来た俺にエヴァが、紅茶を手渡しながら労った。
 
「いやいや、お見事だったよ士郎君」
「ありがとうございます、あんな感じで良かったですかね?」
「あれなら問題ないだろう。僕がやっても同じようにしただろうからね」
 
 男子相手ならまた違うかもね、と続けるタカミチさん。
 それは差別等ではなく相手の出方によっては対応も変わるという意味だろう。
 
「って、そんな事よりエヴァはこんなにのんびりしてていいのかよ? 他の人たち皆行っちまったぞ」
「なに、まだ予鈴も鳴っておらんのだ。問題ない」
「そうか? まあ、別に俺は構わないけど。それにしても、ネギ君はちゃんとやれてんのか? 今の感じだと不安に思うんだが」
「ハハハ、まあ今はまだ研修中だし来たばかりだ。しばらくは様子を見てあげるさ」
 
 確かに、まだ年端もいかないkれに完璧を求めるのは酷過ぎるというものか。タカミチさんはそう笑って暖かな視線で見守っていた。
 そこで鐘の音が鳴り響く。
 
「お、もう時間か。それじゃ僕もそろそろ行くよ。お弁当美味しかったよ」
 
 タカミチさんはじゃあ、と後ろ手に手を振った。
 
「仕方ない、私達も行くか」
「マスター、少々お待ちを。今片付けますので」
「あ、別にいいよ、これくらい。俺が片しておくから二人は授業に行っていいぞ」
「そう、ですか……? スイマセン、ではお願いします」
「ではな、士郎」
「ん」
 
 二人を見送り空になった食器類を片付ける。
 気が付くと他の生徒は一人も残ってはいなかった。
 さて、これから何するかな…………、
 
「――士郎!」
 
 と。
 遠くから、今しがた校舎に向かったエヴァが叫んでいる。
 顔を上げてそちらを向くと、それを確認したエヴァがもう一度叫んだ。
 
「――今日はお前の和食が食べたい! 用意しておけ!」
「………………はは」
 
 ……ったく、ウチのお姫様は……。
 
 苦笑を漏らし、手を振って答える。
 それに気を良くしたのか、エヴァは満足気に頷いて踵を返した。
 
「さてさて……、それじゃリクエストもあった事だし買い物して帰るか――」
 
 急遽、振って沸いた用事だ。
 この後やる事もないし凝った物を作るのもいいかもしれない。
 気持ちのいい青空の下、今晩の献立を考えながら商店街へと向かう。
 今日も一日、穏やかな日々だ。
 
 
 ◆◇――――◇◆
 
 
 その後、聖ウルスラの子と2−Aの子達とでもうひと悶着あったことをエヴァから伝え聞くが、それはまた別のお話――





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