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No.32471の一覧
[0] 魔法の世界の魔術し!(ネギま!×Fate)[泣き虫カエル](2012/03/28 09:21)
[1] 第2話  黄金の少女[泣き虫カエル](2012/03/31 09:21)
[2] 第3話  こんにちは異世界[泣き虫カエル](2012/03/31 09:25)
[3] 第4話  絡繰茶々丸[泣き虫カエル](2012/04/07 11:58)
[4] 第5話  仕事を探そう[泣き虫カエル](2012/04/07 11:59)
[5] 第6話  Shooting star[泣き虫カエル](2012/04/13 20:44)
[6] 第7話  ライラックの花言葉[泣き虫カエル](2012/04/18 06:32)
[7] 第8話  開店準備はドタバタで[泣き虫カエル](2012/04/24 22:22)
[8] 第9話  創作喫茶 『土蔵』[泣き虫カエル](2012/05/08 21:11)
[9] 第10話  桜咲刹那 ~その誓い~[泣き虫カエル](2012/05/11 22:24)
[10] 第11話  答え[泣き虫カエル](2012/05/16 09:13)
[11] 第12話  もう一つの仕事[泣き虫カエル](2012/05/19 15:20)
[12] 第13話  視線の先に見えるモノ[泣き虫カエル](2012/05/21 21:38)
[13] 第14話  友一人、妹二人[泣き虫カエル](2012/05/24 19:03)
[14] 第15話  帰るべき場所[泣き虫カエル](2012/05/28 18:15)
[15] 第16話  ネギま![泣き虫カエル](2013/06/13 21:43)
[16] 第17話  とあるお昼休みの出来事[泣き虫カエル](2013/06/13 21:47)
[17] 第18話  それ行け、僕等の図書館探検隊 ~前編~[泣き虫カエル](2013/06/13 21:50)
[18] 第19話  それ行け、僕等の図書館探検隊 ~後編~[泣き虫カエル](2013/06/13 21:51)
[19] 第20話  その身に秘めたるモノ[泣き虫カエル](2013/06/13 21:53)
[20] 第21話  決別の時[泣き虫カエル](2013/06/13 21:55)
[21] 第22話  停滞の時[泣き虫カエル](2013/06/13 21:57)
[22] 第23話  闇の福音[泣き虫カエル](2013/06/13 21:58)
[23] 第24話  狂気と変わらぬ誓い[泣き虫カエル](2013/06/13 21:59)
[24] 第25話  譲れぬ想い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:01)
[25] 第26話  束の間の平和と新たな厄介事[泣き虫カエル](2013/06/13 22:04)
[26] 第27話  魔の都[泣き虫カエル](2013/06/13 22:06)
[27] 第28話  観光に行こう![泣き虫カエル](2013/06/13 22:07)
[28] 第29話  Party time![泣き虫カエル](2013/06/13 22:11)
[29] 第30話  胎動[泣き虫カエル](2013/06/13 22:14)
[30] 第31話  君の心の在処[泣き虫カエル](2013/06/13 22:15)
[31] 第32話  暗雲[泣き虫カエル](2013/06/13 22:16)
[32] 第33話  奪還[泣き虫カエル](2013/06/13 22:17)
[33] 第34話  それぞれの想いと願い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:19)
[34] 第35話  試練[泣き虫カエル](2013/06/13 22:21)
[36] 第36話  君の想い[泣き虫カエル](2013/06/13 22:22)
[37] 第37話  買いに行こう![泣き虫カエル](2013/06/13 22:24)
[38] 第38話  紅茶は好きですか?[泣き虫カエル](2013/06/13 22:26)
[39] 第39話  紅い背中[泣き虫カエル](2013/06/13 22:28)
[40] 第40話  茶々丸の衛宮士郎観察日記[泣き虫カエル](2013/06/13 22:29)
[41] 第41話  修練[泣き虫カエル](2013/06/13 22:31)
[42] 第42話  オモイオモイ[泣き虫カエル](2013/06/13 22:32)
[43] 第43話  君のカタチ[泣き虫カエル](2013/06/14 00:14)
[44] 第44話  You And I[泣き虫カエル](2013/06/13 22:44)
[45] 第45話  襲来[泣き虫カエル](2013/08/10 18:45)
[46] 第46話  止まない雨[泣き虫カエル](2013/08/10 18:46)
[47] 第47話  白い闇[泣き虫カエル](2013/08/10 18:48)
[48] 第48話  晴れの日[泣き虫カエル](2013/08/10 18:50)
[49] 第49話  世界樹[泣き虫カエル](2013/08/10 18:51)
[50] 第50話  日常に潜む陰[泣き虫カエル](2013/08/10 18:53)
[51] 第51話  Girls Talk & Walk[泣き虫カエル](2013/08/10 18:55)
[52] 第52話  『    』[泣き虫カエル](2013/08/11 20:34)
[53] 第53話  麻帆良祭 ①[泣き虫カエル](2013/09/02 22:08)
[54] 第54話  麻帆良祭 ②[泣き虫カエル](2013/09/02 22:09)
[55] 第55話  麻帆良祭 ③[泣き虫カエル](2013/09/02 22:10)
[56] 第56話  光と影の分かれ道[泣き虫カエル](2013/09/02 22:12)
[57] 第57話  超鈴音[泣き虫カエル](2013/09/02 22:13)
[58] 第58話  超鈴音 ②[泣き虫カエル](2013/09/02 22:14)
[59] 第59話  Fate[泣き虫カエル](2014/03/09 20:48)
[60] 第60話  告白[泣き虫カエル](2014/03/16 22:56)
[61] 第61話  the Red[泣き虫カエル](2014/06/03 21:38)
[62] 第62話  Pike and Shield[泣き虫カエル](2014/11/19 21:52)
[63] 第63話  Bad Communication [泣き虫カエル](2015/05/16 22:01)
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[32471] 第12話  もう一つの仕事
Name: 泣き虫カエル◆92019ed0 ID:4af99eb6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/19 15:20

 早朝、俺は郊外の森の中にいた。
 それと言うのも、
 
「――っふ!」
「おっと!」
 
 静寂の空間に、竹と竹の当たる乾いた音が鳴り響く。
 刹那が弟子(?)になってから、およそ2週間。
 俺達はこうして朝の鍛練をするのが日課となっていた。
 
「ふう……よし! 今日はここまでにしよう」
「はぁ、はぁ、はぁ…………あ、ありがとうございました!」
 
 刹那は乱れる呼吸を必死に整えようとしているが、まだもう暫くかかるだろう。
 俺は近くの大きく張り出した木の根に竹刀を置くと、スポーツドリンクの入った容器を刹那へと放った。
 
「ほら、刹那。幾ら冬でもちゃんと水分補給しないとぶっ倒れるぞ。それに汗もちゃんと拭いとけ。じゃないと風邪をひく」
「あ、ありがとうございます…………っふう! しかし流石ですね」
 
 刹那は大きく深呼吸をすると、こちらに向き直った。
 
「ん? なにがだ?」
「この数週間、何度も手合わせ願いましたが、未だに一太刀も浴びせる事ができていませんから」
「そりゃ、な。仮にも教える身としては、格好悪い所は見せられないからな。……それより本当によかったのか?」
「……士郎さんも拘りますね」
「拘りもするさ、俺なんかがなにを教えれるっていうんだよ」
 
 この2週間、俺がいつも思ってきたことだ。
 教えるにしても、俺には確たる流派なんてものはなく、基本的な所は別としてほぼ我流だ。
 それに対して、刹那はきちんとした伝統も実績も歴史もある、由緒正しい流派。
 
「考えてみれば刹那に教えられる事なんて、俺、ないと思うんだ。刹那はちゃんと自分の剣筋を持ってるし……、そこに俺の我流なんか混ざると、かえって駄目になってしまうんじゃないかと思うんだ、俺は」
「そのようなことは決してありません。その証拠に私はこの2週間、勉強になる事ばかりです」
「……だと、良いんだけどな」
「ええ、私の目に狂いはありませんでした。それで何かご指摘などありますか?」
「ん、そうだな……、やっぱり正直すぎるかなって感じだな」
「それは……、以前にもご指摘頂いたのと同じことですか?」
「うん、何も常に”奇”を狙った事をしろとは言わないけど、”正”に対して”正”だけで挑むと自身の被害も大きくなる。だから”正”の中に”奇”を混ぜてやれば、効果的に全てが機能すると思う」
「…………成る程」
「ごめん、なんか上手く説明出来てないな、俺……」
「いえ、勉強になります。ありがとうございました」
「じゃあ今日は終わろう。そろそろ準備しないと……学校だろ?」
「ええ、では失礼します」
 
 刹那は一礼すると、踵を返して森を抜けていった。
 それを見届けるてから、俺も家へと帰るべく足を向けた。
 その途中、汗で冷えた身体を温めるため自販機でホットの缶コーヒーを購入。
 その場でコーヒーを一口飲んでホウ、と息を吐き出すと、暖められた息が空中でいっそう白くなった。
 
「今日も冷えるな……」
 
 一人ごちて少し呆けていると、ここ最近聞き慣れてきた、タッタッタッという軽い足音が背後から聞こえて来る。
 
「衛宮さん、おはよーございまーす!」
 
 朝早いと言うのに、とても元気な清々しい挨拶。
 そんな様子に自然と頬が緩むのを感じる。
 
「ああ、おはよう、神楽坂さん」
 
 振り返りながら答える。
 長い髪を両サイドで纏め、それをベルのついたリボンで結わえたツインテールの髪型。
 活発、快活さを表すかのような明るい表情。
 更に特徴的なのは左右の目が違う色彩を放っているそのオッドアイ。
 
「相変わらず朝早くからゴクローさんだな」
「あはは、まぁ、バイトですからね。でもそれを言ったら衛宮さんだって十分早いじゃないですか」
「そりゃそうだ」
 
 彼女の本名を、神楽坂明日菜と言うらしい。
 彼女とは、刹那と朝の鍛練を始めるようになってから、その帰り、度々出会って挨拶を交わすうちに自然と会話をするようになっていた。
 彼女とこんな早朝に会うのは、神楽坂さんが新聞配達のバイトをしているらしく、この場所を通る時間帯が丁度俺と被っているかららしい。
 
「でも衛宮さんも真面目ですよね、こんな朝早くから剣道の練習なんて」
「ん、なんか朝早いほうが気が引き締まる感じがして、好きだからな」
「ふ~ん……、そんなもんですか?」
「そんなもんさ」
 
 本当は剣道というよりは剣術なんだけどな。
 やっている事は精神論より技術その物だし。
 
「っと! 私まだ配達の途中だったんだ。じゃ、もう行きますね!」
「あいよ、今度店に遊び来るといい」
 
 「はい」と元気良く返事をし、長い髪を翻しながらタッタッタッ、とまた配達へと戻っていく背中を見送る。
 ……ふむ。
 そこでふと思い立ち、手早く自販機に小銭を入れホットミルクティーを購入。
 
「――神楽坂さん!」
 
 あっという間に結構な距離を走っていた背中に呼びかける。
 新聞と言えどそこそこの重量だろうに、かなりの健脚だ。
 俺の呼びかけに気付いたのだろう、神楽坂さんはその場で足を止め振り返った。
 それを確認すると、俺は手にしたホットミルクティーをオーバースローで放り投げる。
 山なりで飛んでいくそれを、神楽坂さんは危なげなく片手でキャッチすると、一瞬呆けたように手にした物を見やった。
 でも、次の瞬間にはパッと笑顔で表情を彩る、とブンブンと手を振って走り去っていった。
 その溌剌とした様子に俺も気分を明るくさせられた。
 軽い足取りで帰宅の道を歩く。
 その後、いつも通りに皆で朝食を食べ、そんなこんなで今日も一日が始まる――
 
 
 こちらの世界に来てから、およそ2週間。
 エヴァにも手伝ってもらい、こっちの『魔法』を調べてみたが、帰る手がかりになりそうな物は未だ見つけられてなかった。
 そもそも、何故、どういった理由、経緯があって俺がここにいるのかも、推定の可能性はあっても、断言できる材料がまるでないので、対抗策も思いつかないのが現状だ。
 更には、その内思い出すと思っていた記憶。
 それが全く思い出せない。
 未だにバラバラのパズルピースがそこにあるだけだ。
 しかし、幸いかどうかは判断が微妙だが、通常生活にはまるで問題がないのが救いといえば救いか……。
 それとは逆に店、『土蔵』はなかなか好評を得ているようで客入りも上々。
 あの日、三人組みに指摘されたように、俺が砕けた話し方をしていても、それを気にしたりする人は皆無だった。
 むしろ取っ付き易いと反応は良い。
 この日も、ランチタイムには客足が途切れることなく、店が順調であることを形として表してくれる。
 
”『創作喫茶 土蔵』 和洋取り揃えて皆様の来店をお待ちしております。当店自慢の各種お茶と一緒にどうぞ。夜には店長が気が乗った時だけお酒も出します。ちなみに毎週月曜、日曜は定休日なのであしからず――”
 
 こんなキャッチフレーズを作ったのは誰だったか……。
 エヴァだっけか?
 でも丁寧な説明から察するに茶々丸が第一候補か。
 ……チャチャゼロは……うん、無理。
 アイツは基本、物騒な事しか言わないのである。
 ちなみに後半の、取ってつけたかのようなアルコール類とか休みの件は、エヴァが独断と偏見で俺の許可もなしに無理矢理ねじ込んだ。
 ――休み過ぎだと思う。
 何故かと聞いても顔を赤くして”家主命令だ!”の一点張り。
 そう言われては住まわせて貰ってる身としては、何も言えなくなるのだが……。
 でも、思うんだ俺。衛宮の屋敷では俺が家主な訳なんだけど……俺、そんな権限なかったよね?
 ――か、悲しくなんて無い! 恐ろしきはあの伏魔殿に棲む連中が、桁違いに色々”アレ”なだけだ!
 ……フフフ、ああ……今日も玉ねぎが目に染みるなぁー。
 そんなこんなで、この世の世知辛さに、ちょっぴり心挫けそうなのをなんとか踏みとどまり、仕事の忙しさもピークを乗り越えた十五時ころ。
 
「さて、そろそろ一息入れるかな……」
 
 扉に『準備中』の札をかけ、鍵を閉めて空を見上げる。
 これもここ最近で習慣化した事。
 何といっても、ここは異様に広いのだ。
 こうして時間を見つけては歩き回らなければ、道を覚える事も出来ず、『学園広域指導員』の仕事に支障をきたしてしまうだろう。
 しかし、それを抜きにしても、こうして知らない所を歩くのはとても新鮮で楽しい。
 冬の抜けるような青空の下、柔らかな日差しを浴びながら当ても無く歩く。
 目的もなく、気が向く方へ足を向かわせる。
 暫くそうやって歩いていると、一際広い広場のような場所に出た。
 辺りを見回すと色々な人達がいる。
 露天を開いている者。
 歩きながら楽しそうに会話を交わす集団。
 オープンテラスに座り、ゆっくりとお茶を楽しむ者。
 それこそ人の数だけ、それぞれがこのひと時を楽しんでいるようだ。
 
「――へえ、こんな場所もあったんだな……」
  
 流石、巨大学園都市だ。
 学生向けがメインとはいえ、相当な規模がある。
 
「――! …………!!」
 
 と、
 ボーッと辺りを観察をしていると不意に、喧騒に混じってそれとは種類が違った騒がしさが聞こえた。
 
「……なんだ?」
 
 不思議に思い、その喧騒の発信源だと思わしき場所へと足を運ぶ。
 すると、近づいて行くにつれて喧騒も大きくなり、内容もはっきりと聞こえてくる。
 どうやら喧嘩のようだが……。
 現場と思わしき場所は、人垣でいっぱいだった。
 どうやら事の成り行きを遠巻きに眺めているようだ。
 
「ちょっと……すいません」
 
 群れを成す人垣を掻き分け、最前列へと躍り出る。
 ――なるほど。
 どうやら二つのグループが、なにやら対峙しているようだ。
 いかにも喧嘩っ早そうな男連中で、体格も良い連中が多い。
 
「…………ん?」
 
 そんな光景の中、いかにも場違いな集団が、少しだけ離れた位置に落ち着かない様子でいる事に気付く。
 ――あれは確か……。
 職務をまっとうして、この場を収める為、その場違いな集団を引き離す為、群集から抜け出し騒ぎの中心地へと向かう。
 
「――なにやってんだ?」
 
 まず、少し離れた位置にいる場違いな集団から小声で話しかけてみる。
 
「え!? ――あれ? あなたは確か……衛宮さん!?」
「へ? 衛宮さんって……あの喫茶店の?」
「……本当だ、どうしたんです? こんなとこに」
「――や、それは俺の台詞なんだけど……」
 
 その場違いな集団は、以前店に来てくれた、エヴァ達のクラスメイトの三人組みだった。
 どう考えてもこんな物騒な雰囲気にそぐわないのに、こんな中心地でなにをしているというんだろうか?
 
「で、こんなとこで何してんだ?」
「え、え、えっと! ですね……!」
「ウ、ウチが悪いんですーー!!」
「――あの、実は、ですね……」
 
 三人のうち二人は取り乱してアワアワ言っているが、その中で比較的冷静な、身長が高く、長い髪をポニーテールで結っている娘……大河内さんと言っただろうか、彼女が状況を説明してくれる。
 
「実は、私たち三人で歩きながらアイスを食べていたんですが……亜子が、この子がつまずいてアイスを放り投げてしまったんです。そうしたら運悪く前を歩いていた大学生の人達にそれをぶつけてしまって……」
「――君らが因縁を付けられてしまったと?」
 
 なんともベタだが、あり得そうな話だ。
 
「あ、いえ……。そうではなくてですね……」
「え、ちがうのか?」
「……はい。そのぶつけてしまった人は謝ったら洗えば落ちるからと、笑って許してくれたんです。――でも、問題はここからで、その後から来た別の大学生の人達が、その状況を見て、私たちが絡まれていると勘違いをしてしまって……どうやら両方の方たちは仲が悪いらしくて、お互い誤解したままいつのまにかこんな状況に……私たちも止めたんですが、聞いてくれなくて……」
「――なるほどな」
 
 つまり善意と善意による僅かな行き違いと、それに乗じたお互いの不仲が原因ってことか……。
 ――そういう事ならできるだけ穏便に済ませたいもんだけど……うまくいくだろうか?
 
「事情は分かった。ここは俺が引き受けるから君等は下がっていてくれ」
「引き受けるって……あの! この人達は工科大と麻帆大の格闘団体なんです! 危ないんじゃ……!」
「あー……そりゃ面倒そうだ。……けど、こういうのは慣れてるし、それに――これも俺の仕事なんで」
「――え?」
 
 そう言って騒ぎの中心へと歩を進める。
 後ろでは俺の言う事が理解できないといった風に、三人とも立ちすくんでいる。
 両陣営、睨みあっている中心に近づくにつれ、一触即発の空気が漂ってくる。
 そんな雰囲気の中、咳払い一つコホンとして、割って入るように真ん中へと身体を入れる。
 
「あー、君達? お互いただのすれ違いなんだから、こういった事はここらで止めにしないか?」
「……なんだ、お前は?」
 
 訝しげな声が聞こえる。
 突然の闖入者に戸惑っているようだ。
 
「退いてろ坊主。怪我するぞ」
「そうもいかない。あんた等がこの騒ぎを止めてくれなきゃ、俺も引くわけにはいかないんでな」
「わけわんねぇ事言って無ぇーでさっさと下がってろ。――おい、お前ら。さっき面白い事言ってたじゃねぇーか? 打撃が寝技に劣るってぇのか!? ダボがぁ!!」
「事実だろうが、ああ!? なんならお前らの身体で直接証明してやってもいいんだぜ?」
「――上等だコラァ!! ルール無しの路上勝負だ!!」
「………………」
 
 ……俺を無視して勝手に盛り上がる両陣営。
 や、俺みたいな第三者にはまだある程度好意的というか、変に絡んで来ないあたり、結構人間的には出来てるっぽいが。
 けれども敵対する相手にはそうでもないのだろう。敵愾心むき出しで、こうなると最早言葉では止められないのは経験済みだ。
 すると言うが早いか、場の雰囲気に耐えられなくなった両陣営の気が短い者が一人ずつ駆け出してきた。
 
「――これでも喰らって寝てろや!」
 
 話に出た打撃系の選手なのだろう。
 体重の乗った右ストレートを低く構えた相手の頭、正確には顎を狙い、打ち抜こうとする。
 それに対し、寝技主体と思われる人は、低姿勢で相手の胴を目掛けて、一直線に組み付こうとタックルを敢行。
 
「――――」
 
 そして俺はそんな両者が交差するであろう中心へと、誰よりも早く駆けつける。
 そう、俺は、衛宮士郎は、こんな事を防ぐ為にここにいるのだから。
 
「――ふっ!」
 
 まずは右ストレートの処理から。
 勢い良く繰り出される拳を、その勢いを殺すことなく右手で捕らえ、相手の前方へと流す。
 それと同時に右足で相手の軸足を蹴り上げ、それに合わせ、左手を相手の腹に当て、持ち上げる。
 
「「———へ?」」
 
 するとストレートを放った人物は、俺の左手を支点に空中でクルリと大きく回転した。
 それに驚いたのは……両者だろう。
 空を舞っている方は当然の事ながら、タックルを仕掛けた方もいきなり目の前から目標が消えたのだ、驚いて当然だろう。
 俺は蹴り上げた右足をそのまま、タックルを仕掛けようとした人に向け足掛けするように置いた。
 それに掛かるより一息早く左手を相手の後頭部に手を置き、蹴躓くのと同時に、左手を突進の勢いを利用するように下方向に向け流れを操作する。
 
「――よっと」
 
 そして、そのまま今度は左手を天に向けて掲げるかのように大きく一回転。
 そして――、
 
「――――」
「――――」
 
 タン、という軽い着地音が二つ。
 正面切ってぶつかり合う筈の二人は、いつの間にか背中合わせの状態で、呆然と直立のまま立ち尽くしていた。
 シン……と、静まり返る空気。
 当事者も周囲の人達も含めて、目の前で起きた事が理解できず、呆気に取られている模様。
 
「はい、そこまで。アンタ等もいい大人なんだから、人の話くらいちゃんと聞けよな……」
 
 両陣営は唖然としながらも無言で頷きあう。
 こういう喧嘩の治め方は熟知している。
 ようは頭に血が上りすぎているのだ。だからそれを何かしらの手段で冷静にさせればいいだけだったのだ。
 
 
◆◇――――◇◆
 
 
 で、話し合うこと5分ほど。
 お互いに誤解した事を詫び、その場は無事に解散となった。
 分かれる際に、こちらをチラチラと観察されていたのはご愛嬌。
 とりあえず、そちらは意識の外に放り出して、
 
「さて、君達も災難だったな」
 
 未だに茫然自失としていた子達に話しかける。
 
「――あ、いえ、助けていただいてありがとうございまし……た?」
「……はぁ~、スゴかったんやな、衛宮さんって。さっきのなんだったん? あの、ぐる~んって回ったやつ」
 
 大きく手を回し、身振り手振りを交えて興奮気味に話す亜子と呼ばれていた娘。
 その仕草が微笑ましくて、思わず少し笑ってしまった。
 俺のやった事は、只単に、力の流れに逆わらずに意図的に操作しただけだ。俺の力はほとんど使わず、彼ら自身の力で回ったに過ぎない。
 簡単に言ってしまえば、授業中に手遊びでペンを指で回すヤツを思い浮かべてもらえれば分かりやすい。原理はあれと全く一緒なのだ。
 
「あー、あれは合気とか中国拳法とかのミックス。殴ったりしたら痛いだろ?」
「はえ~、拳法かぁ~……。ウチのクラスのく~ふぇとどっち強いんやろな?」
「?」
 
 く~ふぇ?
 話の流れ的に名前っぽいが……あだ名とかだろうか?
 
「あ、それより衛宮さん衛宮さん! さっきの『俺の仕事』ってなんだったんですか?」
「あ、それか? だって俺、学園広域指導員だし……」
 
 ほら、と身分証明書を見せてみる。
 見た目がこんなんだから、怪しまれないように学園長に頼んで作ってもらったものだ。
 
「学園広域指導員って…………ええ~~っ!? し、知らなかった! じゃあじゃあ、衛宮さんって先生なんですか!?」
「ああ、違う違う。俺は先生とかじゃなくて、あくま外部ので助っ人みたいなもんだ」
「……助っ人、ですか? だとすればやっぱり衛宮さんも高畑先生みたいに強いんですか?」
「う~む、弱くはないと思うんだけど……」
 
 タカミチさんか。あの人は只者じゃないって事だけは分かるんだけど、いかんせんどの位かとかはいまいち不明だ。
 
「って、やっぱり強いんだ? タカミチさんって」
「ええ、聞いた話によれば、なんでも『デスメガネ』って恐れられているとか……」
「…………そうか」
 
 『デスメガネ』ってなにさ。
 ライダーみたいに、見ただけで倒してしまうとでもいうのだろうか? ……恐ろしい。
 
「そういえば衛宮さん、こんな所で何してたん? お店とか大丈夫なん?」
「今は休憩中。それにこっちに来たばっかだし、イマイチ地理にも明るくないんで、こうやって散歩がてら色々回ってたとこだ」
「あはは、そっか~。たしかにここ広いもんなぁ~、ウチ等でも全部は覚えてへんし」
「……って、アコアコ! 時間時間! ヤバイ事なってるって!!」
「時間? って……うわ、ホンマや! はよいかな叱られてまうっ!?」
 
 今までのんびりと談笑していたが、ふと思い出したように時計を見やると一気に慌て始める。
 
「どうかしたのか?」
「あ、私達部活に行く途中だったんです! ああ、もう行かなきゃ。あ、アキラは今日部活休みだっけ?」
「……うん、今日はプールの点検日だから」
「そっか、じゃあ衛宮さん、私達は急ぎますんで! あ、また今度遊びに行きますんで、そん時はサービスよろしくぅ!」
「あっ、ユーナ、ちょお待ってぇな! ほなアキラに衛宮さんもまたな!」
 
 バイバイ、と手を大きく振ってその場を去って行く二人を見送る。
 それに答えるように、大河内さんは胸の前で小さく手を振っていた。
 
「さて、それじゃあ俺もそろそろ学園探索の続きでも行くから」
 
 じゃあ、と手を上げてその場を離れようとすると、
 
「……あの、」
 
 と言う、一言で引き止められてしまう。
 
「どうかしたか?」
「探索って……もしかして、衛宮さんはここに来たばかりなんですか?」
「”来た”というかなんというか……まあ、ここに来たのは極々最近だな。そのせいで、こうやって時間を見つけては、日々歩き回っているってとこだけど」
 
 それがどうしたというのだろうか?
 俺の言葉を聞いて、大河内さんは軽く考える素振りを見せると、
 
「……良かったら案内しましょうか?」
 
 と提案してきた。
 
「案内って……そりゃしてくれるって言うんなら正直助かるけど。でも、悪いし遠慮しとくよ」
「……いえ、助けてもらいましたし、遠慮なんかしないで下さい」
 
 大人しい感じの声色だが、しっかりとした強い意志を感じる言葉。
 あの三人の中では、比較的大人しく喜怒哀楽が表に出ないタイプだと感じていたが、思っていたより我は強いのかもしれない。
 流石に、そんな善意を無下に扱うのは忍びなく思ってしまう。
 
「えっと、じゃあお願いしても構わないか?」
「……うん、任せてください」
 
 そう言って小さく微笑む。
 ……訂正。喜怒哀楽が出にくいんじゃなくて、その出方が少しだけ大人しいだけみたいだ。
 そういう所は少しだけ桜に似ているかもしれない。
 
「……何処から案内しましょうか?」
「そうだな。……って言っても俺も店があるからそんなに時間があるわけじゃないんだよな」
「……あ、そう言えばそうですね」
「ん、じゃあ前から探していた場所を、一箇所だけ案内してもらえるか?」
「……ええ、良いですよ。どこですか?」
「えっとな――」
 
 


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