「貴方には、これから私達の集落を巡ってもらうわ。 貴方という人間が新たにこの島にやって来たことを皆に伝えるのと、 貴方が住みたいと思う集落を自分自身で見つけてもらうためにね。 当然、案内役は付けるから安心して頂戴」 ちょっと命令口調で指示を出すアルディラさんと、それを直立不動の体勢で拝聴する私。 今まで何度も確認してきたことだが、現時点で何より必要なものは情報なのだ。「それは良いんですけど、ギギはどうするんですか?」 護人達が駆逐した筈の生物が集落に現れれば、騒ぎになることはまず間違いない。 アルディラさんはそれを承知しているから『貴方という人間』と表現したのだろうが、その場合、 ギギはここでお留守番ということになるのだろうか?「このジルコーダは、私達が人目につかない場所に連れて行くわ。 別に危害を加えようという訳じゃないけれど、何かの拍子に見失われると大変だから」「……そういうことなら、お願いします」 ギギは賢いので無闇に人を襲うようなことはしないと思うが、絶対にしないとは言い切れない。 私が最初に出会った時のように、いきなり興奮して襲い掛かるかもしれないからだ。 そう考えると、ギギを何処かに隔離しておこうという彼女達の結論にも納得せざるを得ない。「……でも、護衛獣や武器を持たずに森の中をうろつくのは危険かしらね。 貴方の荷物の中にも、サモナイト石はあっても誓約済みの召喚石はなかったし……」「え? 私の荷物があるんですか?」「ええ。貴方を保護したとき、キュウマが一緒に持って行った筈よ。 彼からそのことを聞かなかったかしら?」 荷物の『に』の字も聞いておりません。 これはどういうことかと、アルディラさんの右隣に立っている気配の薄い男を見る。 目が合った瞬間、露骨に視線を逸らされた。「キュウマさん……?」「い、いえ、その……忘れていたわけではないのですよ? ただ、ナイト殿がそのことについてお聞きにならなかったので、自分からは話題に出さなかっただけです」 ヒュー、スヒューと、下手な口笛まで吹いて誤魔化そうとするうっかり忍者。 他の護人達の視線が冷ややかなものになっていることに、気付く様子はない。「……できれば、その荷物を返していただけると有難いのですが」「は、承知致しました。 ではこれからすぐに持って参りますので、少々お待ちください」 妙な敬語を使いつつ、私の視線から逃げるようにして集いの泉から走り去るキュウマ氏。 速いことには速いのだが、この世界には、瞬身の術とかそういった忍術は存在しないのだろうか。「彼、普段は腕利きのシノビなんだけど……日に一度くらい、ああいうミスをするのよ」 迂闊な仲間を弁護する優しいアルディラさん。 だが、その内容はフォローになってるようでなっていない。「……それって、本当に腕利きなんですか?」 誰からも、返事は返ってこなかった。 因みに、戻ってきたカバンの中身は気絶する前と殆ど変わっていなかった。 口が閉じるギリギリまで詰めていた木の実が潰れてどえらい事になっていたが、些細なことだと涙を呑んだ。◇ カバンの中身を整理して、いざ行かんとばかりに森の前にやってきた私。 そこでヤッファさんに案内役だと紹介されたのは、小さな小さな女の子だった。「…………妖精?」「はいです。マルルゥっていうですよ」「こいつはフラフラと何処にでも遊びに行ってるから、案内役にはうってつけだ。 少し口うるさくて馬鹿だが、分からねぇことはこいつに聞くといい」「む~……シマシマさん、マルルゥはお馬鹿さんじゃありませんですよ?」「あ~、そうだったな。お前は物覚えが酷く悪いだけだ」「それも違いますよ~……マルルゥは、人のお名前を覚えるのがちょっぴり苦手なだけなのですよ~…」 ルルル~、と涙を流すマルルゥ。 今の掛け合いを見る限り、彼女とは仲良くなれそうな気がする。◇「4つの集落を見終わったら、一旦この場所に戻ってきて。 今度は私達も同行して、貴方の護衛獣を紹介するから」 これは、アルディラさんがギギを連れて行く前に残していった言葉だ。 その後、未だ眠っていた豪胆なギギをファルゼンさんが担ぎ、アルディラさんが先導する形で森の中に消えていった。 また、キュウマ氏も荷物を持ってきた後すぐに居なくなってしまったので、見送りはヤッファさんだけなのだ。「それでは、行ってきます」「ああ、気をつけてな」「はい。……それじゃあマルルゥ、道案内よろしく」「よろこんで~♪」 そう答えるマルルゥは、笑顔も返事も一級品だった。◇「ナゾナゾさんは、赤色と黄色と緑色だったらどれが一番好きですか?」「う~ん…………緑かな?」「それじゃあ、綺麗な花と大きな花と可愛い花だったら?」「大きな花がとても綺麗だったり、凄く可愛かったりしたらどう答えればいい?」「え? …………う~んと、え~と…………あや? あやや???」「ははっ、ちょっと意地悪な質問だったかな?」「うぅ~…」 あぁ……心が和む、癒される……。 集落へと向かう道すがら、私とマルルゥはクイズに興じているのだが……これがまた、非常に楽しい。 この世界に来てからこっち、誰かと遊ぶ余裕など無かったから余計に楽しいのかもしれない。 ついでに、『ナゾナゾさん』というのがマルルゥの私に対する渾名であることを説明しておく。 何故か人の名前が覚えられないマルルゥは、一人一人に自分で考えた渾名を付けて呼んでいるらしい。 そんなことができるなら人の名前を覚えるくらい簡単そうなものだが、どうしても駄目なのだと本人は語る。 私の渾名の由来は、『名も無き世界の人なのに、何故かメイトルパの匂いがするから』。 どうやら、ギギの匂いが一張羅のスーツに移ってしまったらしい。後で洗濯しないと。◇「ナゾナゾさん、着きましたですよ」 最初に案内された場所は、巨大な水晶が辺り一面に広がる、中々に神秘的な森の深部だった。「ここが、サプレスの皆さんが暮らしてる霊界の集落ですよ。 『狭間の領域』って呼ばれてる、ちょっと不思議な森なのです」 その不思議さを表現しようとしているのか、発音が奇妙なことになっているマルルゥ。 不思議なエナジーはさっきから肌で感じているのだが、敢えて教えてあげないのが私の優しさだ。「……集落っていう割には、随分静かな所だね」 一目見た感想としては、気配はすれども姿は見えず。 何か居るのは分かるのだが、何処に居るのか分からないのだ。「サプレスの皆さんは、お日様よりもお月様のほうが好きなのですよ。 だから、ほとんどの皆さんは、昼間は出歩かないのです」「……ああ、成る程」 サプレスの住人は、その殆どが精神生命体……簡単に言えば、幽霊のような生き物だ。 そんな彼らがリィンバウムという物質界に存在するためには、その命ともいえる魔力を用いて 自らの肉体を構成し、それを維持し続けなければならない。 夜になれば、月の光に豊富に含まれているマナ(=自然の魔力)を吸収することで自身の魔力を 回復できるのだろうが、太陽の出ている間はそうもいかない。 なので、今は魔力の消耗を少しでも抑えるために、どこかに身を潜めているのだろう。 ・ ・ ・ ・ 元の世界では見える人だった私にも、流石に隠れた幽霊は見つけられない。「ここの護人さんは、ヨロイさんですね。 ヨロイさんっていうのは、体が大きくて、白い鎧を着ていた人のことです」「ファルゼンさんか」 あの独特の声と風貌、そして繋がっていない間接は、よく印象に残っている。 彼なんだか彼女なんだかよく判らない人なので、どうやって接しようか悩んでいる所だ。「あの人、結局性別はどっちなんだ?」「マルルゥも気になっているんですけど、知らないのです」 残念。「それじゃあ、次の集落に行こう」「あや? もういいんですか?」「今こうして集落を巡っているのは、下見みたいなものだからね。 ちゃんと日が出てる内に集合場所に戻って、その後でゆっくり見に行くことにするよ」「そうですか。それなら、早速行くですよ」◇ 次に案内された場所は、世界遺産級の大樹を中心につくられた、これぞ集落といった感じの村だった。「ここがメイトルパの集落、『ユクレス村』です。 マルルゥも、ここに住んでるですよ」 マルルゥが何故か自慢げに説明しているが、正直に言うと耳に入っていない。 目の前に聳え立つ圧倒的な存在に、目と意識が釘付けになっているからだ。「で、でかい……一体何千年生きてるんだ、あの木は……!?」 独り言にしては声が大きかったが、そう言わずにはいられなかった。 この世界には、こんなギネス級がポコポコ生えているのか!?「マルルゥは知らないですけれど、きっと、と~っても長生きしてると思うのですよ? あの木はユクレスっていう名前で、お願い事を聞いてくれるんだってシマシマさんが言ってたのです。 この村のユクレス村っていう名前も、あの木に因んで付けられたそうなのですよ」「だろうね……」 村の象徴としては、これ以上ないくらいの代物だ。 私の心を鷲掴みにするユクレスの木は、不思議と郷愁を感じさせる気配を放っている。 この木が見れただけでも、ここに来た甲斐があったというものだ。 会話の後も丸々1分は眺めてから、私は漸く視線を外すことに成功した。「ここの護人さんは、さっき言ったシマシマさんなのです。 シマシマさんっていうのは、縞々模様の体をした亜人さんなのですよ」「ヤッファさんのことだね」 『集いの泉』に着いた時、私達はまず初めに、簡単な自己紹介を行った。 そのときに全員の名前や種族を聞いたのだが、彼は確か、フバーハだか何だかって種族の亜人だった筈だ。 喋り方、口調、台詞、態度からして、彼はかなりの面倒臭がりやだろうと半ば確信している。「シマシマさんはと~っても怠け者で、気が付くとどこかでお昼寝してるのです。 だから、マルルゥがちゃんと見てないと駄目なのですよ」「……へ~……」 予想的中。 だが、何故そんな男が皆のまとめ役のままなのだろうか。 ……もしかして、アレでもメイトルパの住人としては真面目な方なのか? 他の亜人達は、アレに輪を掛けて酷い奴等ばかりなのか……?「それじゃあ、今度はこっちに行くですよ?」 とりあえず、判断基準にマルルゥを用いるのは止めておこうと思った。◇ 三番目に案内された場所は、近未来的なフォルムの建築物が所狭しと立ち並ぶ、正に機械の街だった。「ここが、ロレイラルの皆さんが暮らしている機界の集落なのです。 『ラトリクス』って名前なのですよ」「…………ファンタジーな世界でも、こんな街が造れるんだ……」 これは全くの偏見だろうが、私は今まで、剣と魔法の世界とは往々にして科学が未発達なものだと思っていた。 この世界にも『召喚術』という魔法紛いのモノが存在する以上、多分に漏れないだろうと思っていたのだが……。 流石は機界・ロレイラル。 他の集落どころか、地球と比べても遥かに発達した科学力を持っているようだ。「ここの皆さんは、と~っても工作が得意なのですよ」 鉄板を切断している箱型歩行ロボットや、電撃によって溶接を行っている箱型飛行ロボットなどの 姿があちこちに見える。 どうやら彼らは、数多の建物の補修工事に従事しているらしい。「こっちでも、あっちでも、ね?」「うん、そうみたいだね」 どう見ても工作のレベルではないが、決してそこに突っ込んではいけないことを私は知っている。 気を取り直してキョロキョロと辺りを見ていると、少し遠くの方で、自身にケーブルを繋ごうとしている ロボットを見つけた。「マルルゥ、あそこのロボットは何をしてるんだ?」「ああ、あれはゴハンを食べてるのですよ」「ご飯って……ああ、補給してるのか」 私はてっきり、あのロボットを中心とした巨大ロボットでも動き出すのかと。「機界の皆さんは、ビリビリや黒い水をゴハンにしてるです。 あそこに行けば、いつでも好きなだけ、ゴハンが貰えるですよ」「す、好きなだけ!?」 ビリビリは電気、黒い水はオイルの類だろう。 電気はともかく、オイルの類がタダで、しかも幾らでも手に入るというのは凄い。 この集落見学が終わったら、すぐにでもポリタンクを探しにいこう。「ここの護人さんは、メガネさんですね。 メガネさんっていうのは、メガネを掛けた綺麗なお姉さんなのです」「……ああ、アルディラさんか」 集まっていた護人の中で、恐らく唯一の女性であろうアルディラさん。 知的でクールな感じが男心をくすぐる、美人なお姉様だ。 ぶっちゃけ、是非とも親睦を深めていきたいお方の一人である。「ナゾナゾさ~ん? 早く来ないと、マルルゥだけ先に行っちゃうですよ~?」◇ 最後に案内された場所は、戦国時代の農村のような、自然と調和した姿を見せる集落だった。「ここが、シルターンの皆さんが暮らしてる鬼妖界の集落なのです。 『風雷の郷』って名前の村なのですよ」「ああ、ここは少し知ってるよ。 何せ、一番最初にお世話になった集落だからね」 それ以外にも、シルターンの文化は日本のそれによく似ているので、他の集落に比べて捉え易いというのもある。「この集落には、お姫さまさんって偉い人がいまして。 その人を中心にして、皆さん仲良く暮らしてるです」「鬼や妖怪達のお姫様か……」「それでですね、この集落には……」 この集落の護人はキュウマ氏の筈だが、それとは別にリーダー的な存在も居るらしい。 多分、キュウマ氏はそのお姫様に仕えるシノビなのだろう。 ………………………しかし、人外の姫様か。 ……………どんな人だろう。 ………。 ……。 …。「畑でお野菜を育てたり、森で狩りをしたり……」「ん?」 鬼姫様の声や姿をモヤモヤと想像していたら、いつの間にかマルルゥの説明が進んでいた。 聞いていなかったと知られるのは問題なので、適当に相槌を入れてみる。「それなら、麦や米なんかの穀物もありそうだね」「はいです。 お米のゴハン、とっても美味しいですから、たまにマルルゥもご馳走になるですよ」 この世界では、花の妖精も普通に米を食べるらしい。 それは食べる必要があるからなのか、それとも他の生物の真似をしているだけなのか。 妖精の生態に関する興味は尽きない。「ここの護人さんは、ニンニンさんですね。 ニンニンさんっていうのは、角が生えてる鬼みたいな人のことなのです。 でも、ニンニンさんは怖い人じゃなくて、とっても優しい人なのですよ」「鬼みたいって言うか、実際鬼の一族だけどね、キュウマさん」 今のところ、四人の護人達の中で一番親しいだろうキュウマ氏。 冷静沈着な第一印象とは裏腹に、実はかなりのうっかりさんであることが判明している。 先程の一件然り、シノビなのに全く忍ぼうとしていないこと然り。 この先どんな一面を知ることが出来るのか、実に楽しみである。◇「これで、全部の集落に行きましたですね」「そうみたいだね。それじゃ、ちょっと急ぎ足で戻ろうか」「はいです」 4つの集落全てを巡り終える頃には、空が赤く染まり始めていた。 早めに戻ろうと思っていたのだが、どうやら予想以上に時間を喰ってしまっていたらしい。 特に時間を指定されていた記憶はないが、それでも早く集合場所に戻った方がいいだろう。 私がその旨を伝えると、マルルゥは近くに見える舗装された道を見向きもせず、すぐさま森の中に突っ込んだ。 少しばかり驚いたが、見失うと不味いので慌てて追い駆ける。「『集いの泉』へ行くなら、この辺りからだとこっちが近道なのですよ」「憶えておくよ」 私に豆知識を披露しながら、木々の間を縫うようにして飛んでいくマルルゥ。 私もいい加減歩き慣れてきたので、木の根っこなどをひょいひょいと躱しながら走っている。「……あれ?」 そうして軽快に森の中を進んでいると、前方に何やら怪しげな建物を発見した。 赤という色を前面に押し出した、中国とかにありそうな一軒家だ。「どうかしましたですか?」 位置的にはマルルゥにも見えている筈なのだが、彼女はあの家の存在を疑問に思っていない様子。 作品が作品なら、『ゴゴゴゴゴ』とか『ドドドドド』とか聞こえてきそうなのに。「ほら、あそこ。こんな森の中に、民家があるんだけど」「ああ、あれはへべれけさんのお家ですね。 へべれけさんのお家はお店屋さんになっていて、色んな物を売ってるです。 それと、へべれけさんは占いもやっていて、それはそれは凄いのですよ。 へべれけさんに会いに行くときは、お酒を持っていくと、と~っても喜ばれるですよ?」 素直で物知りなマルルゥは、私の質問にスラスラと答えてくれる。 今の話を聞く限り、あの家の主人は酒豪で、商売人で、占い師らしい。 酒豪で商売人というと、やはり太めの男性だろうか? いや、占い師というファクターがあるから……寧ろ女傑? …………いかん、正体が気になって仕方がない。 しかし、私の個人的な好奇心でギギや護人達に迷惑を掛けるのは……。「う~~~~~ん…………う~~~~~ん…………」「ナゾナゾさ~ん? 大丈夫ですか~?」 猫をも殺す凶悪な誘惑が、私の足をガッシリと捕まえている。 皆には悪いが、この疑問を抱えたまま集合場所に向かうことなど、私にはできない。 ……よし、今日のところは諦めて、ギギの紹介は明日にしてもらおう。「マルルゥ、私には少し用事ができた。先に行って、護人さん達にそのことを伝えてほしい」 そうと決まれば、早速偽装工作だ。 一応、護人の皆さんには私が遅れていくことを知らせておかねばなるまい。「それはいいですけど……用事って何ですか?」「誰にだって、人には言えない秘密の一つや二つはあるのさ」 例えば、ふと気になったり思いついたりしたことを、確認せずには居られない性格とかね。「ですけど、一人だと危なかったりするですよ?」 純粋な好意で私を心配してくれるマルルゥ。 自分の欲望に満ちている今の私には、彼女の真摯な視線が眩し過ぎる。「ここからなら道も分かるし、できれば急いで済ませたい用事なんだ。 私のことなら、心配しなくても大丈夫だから……ね? 頼むよ、マルルゥ」 私は、嘘なんて一言も吐いてない。 吐いてないったら吐いてない!「む~……分かりましたです。でも、本当に気をつけてくださいですよ?」 優しいマルルゥは、頻りにこちらを振り返りながらも飛び去っていった。 純朴な彼女を騙すのは多分に気が引けたが、何はともあれ、これで自由に動けるようになった。 勿論、皆を待たせていることに変わりはないので、なるべく迅速に行動し、逸早く集合場所へ向かわなくては ならないのだが。「さて、と……」 マルルゥが完全に視界から消えたのを確認し、店のある方向に振り向く。 その先には、森の中にあって一際異彩を放つ、真っ赤な建物―――――「気付かれるとは思っていなかったのだがな……。貴様、何者だ?」 ―――――ではなく、細身の剣を抜き放ち、鋭い視線でこちらを睨みつける女性の姿があった。 …………あれ?