「千雨ちゃん! そっち行ったよ!」
「あいよー。」
なのはとスクライアの出会い。物語的には第1話があった日の翌日。私はなのは、スクライアと共にジュエルシードが発動しているという神社へとやってきて、封印の手伝いをしていた。
といっても特にやれることは無く、十字架を掲げて魔法の射手を打ち込んで気をそらし、突っ込んできたら障壁を張り、なのはがレイジングハートで封印するためのスキを作るだけ。
私の魔法じゃこれが精一杯だ。これが夜ならまたちょっと話が違うんだろうが、魔法の射手なんか効いてる感じは一切無いしな。正しく豆鉄砲だ。
「リリカル、マジカル! ジュエルシード、シリアル16!」
結局私の障壁も犬みてーな化け物の動きを止めることは出来ず、ちょっと動きが鈍った程度。そのスキになのはが後ろから魔法を使いリボンみてーな物を出し、犬みてーな化け物を縛り上げた。
多分こうなると私の出番は無い。障壁を解き、化け物の様子を見る。全体に黒くて、目が4つあって、ごつごつしい。なんかカードゲームに出てくるモンスターみてーだよな。攻撃力1300って所か。生贄は要らないな。
私は欠伸を一つし、封印されつつある化け物を見送る。そして。
「封印!」
『Sealing』
なのはとレイジングハートがそう言うと、化け物の体が光の粒子へと変わり、ジュエルシードになりましたよ、っと。
これで2つ目か。めんどくせーが、処置できる爆弾の横でのうのうと過ごす趣味も無い。仕方ないよな。
まぁ、それにしても。
「お前らって本当役に立たないよなぁ。」
『僕等は戦闘用に作られたわけじゃないっす!』『ああ! そんな蔑む様な目で見ないで!』『ちう様見捨てないで!』
私は手元に有る羽の生えた形の魔法の杖……いや、バトン? と、私の周りに浮かぶトンヌラ達に視線を移す。
本当の姿はこんな如何にも魔法少女のステッキですと言わんばかりなくせに、戦闘用じゃないって詐欺だろ。魔法少女は戦う者だぞ?
「千雨ちゃん、お疲れ様~。」
「おう、頑張ったな、なのは。」
「なのはは凄いよ。」
そんな事をしている私達のもとへ、ジュエルシードをレイジングハートの中へと取り込んだなのはとスクライアが戻ってきたので労いの声をかける。
本当凄いよな、私いらねーんじゃねーか?
「悪いな、なのはばかり苦労させて。」
「ううん、大丈夫! 魔法使うの楽しいしね!」
『問題ありません』
既にユーノはなのはの肩に乗り、レイジングハートは宝石状態だ。
私も力の王笏を宝石状態へと戻したが、トンヌラ達は周りを浮かんだまま。人来るかもしんねーから隠れてほしいんだけどな。
ていうかこれなら持ってくる必要も無かったか。次からは家に置いて来るか?
『あのネズミより私のほうが役に立ちます』
そして、レイジングハートはなのはに向かいこんな言葉を言い始める。相変わらずトンヌラ達のことは嫌いらしい。
『分野が! 分野が違うっす!』
『負け犬の遠吠えです』
『ちう様から解析の許可さえ出れば、そんな事言えなくなるっすよ!?』
『訂正します この負けネズミ』
「にゃ、にゃはは、レイジングハート、そのくらいに……。」
「はぁ。こんな性格だったかなぁ……。」
皆が呆れる中、レイジングハートに言い負けたトンヌラ達がその姿を消す。消すのは良いが、私にだけ聞こえるように言い訳や泣き言を言うなよな。鬱陶しいことこの上ない。
まぁ中には泣いて悔しがっている奴も居るからな、そんな事は言わねーが。
それは兎も角。無事二つ目のジュエルシードを封印した私達は、全員で私の家へと移動を始める。そこではすずかとアリサが待っているはずだ。今日学校では魔法の事とスクライアの事を少し喋っただけで、詳しい説明は放課後ゆっくりすると約束してたからな。
さて、そもそも何故私となのははこんな事をしているのか。
神社の階段を下りながら、隣を歩くなのはが頻りに話しかけてくるが、私は適当に返事をしつつ昨夜の事を思い返していた……。
◇◇
「はぁ。兎に角こんなのが後20個近く散らばっていて、封印するにはなのはちゃんとレイジングハートが必要、と。どうしようかしら。」
何やら公園の隅でうんうん唸って悩んでいたシャークティだが、悩み終わったのか諦めたのか、とにかくスクライアとトンヌラを引き連れて私となのはの所へと帰って来た。
そしてこれからどうするか決めることになったんだが。
「御免なさい。ここの魔力は僕に合わないようで、回復には1週間くらい掛かりそうなんです……。」
「ユーノ君は悪くないよ! 大丈夫、私がちゃんと手伝うから!」
封印の手段がなのはとレイジングハートしか無い以上、こいつらがメインで動き回ることは確定。なのはも乗り気だし、スクライアもマスコットらしく後をついて回るんだろう。
そうすると、自然に私とシャークティはどうするかっつー話になるんだが。私達の魔法でも戦闘になったときの補助は出来るんだから、シャークティが一緒について回れば良いんじゃねーか?
と、そうは言ってもバイトも有るし。辞めちまえばいい気がするが、そうじゃなくても何やら調べ物がしたいらしい。勿論空いた時間は手伝うが、ずっと一緒にやれる訳じゃないんだと。
そして。皆の視線は、自然と私へと集まって……。
「な、何だよ?」
「千雨ちゃんはどうするの?」
わ、私? 私は関係無いだろ? 大体魔法だって習い始めて1年も経ってないし、戦闘だって慣れていない。なのはみてーに封印出来るわけでも無い。シャークティが一緒に居るならいいじゃねーか。
あー、つってもずっと一緒に居るわけじゃないか。シャークティが居ない時。でも私が居て役に立つか? 立たねーだろ?
でも。そうするとなのは一人で封印することになるのか。それはそれで心配……だよな。こいつに何か起きるくらいなら……。
って、何考えてる。わざわざ危険に首つっこむ必要もねーじゃねぇか!?
「わ、私が居ても何も出来ないだろ?」
「あら。そうでもないと思うけど……たしかに不安は残るわよね。」
そう! そうだ! 私が一緒に回ったって仕方ない!
「じゃあ、パクティオーの主従を逆にしましょうか。そうすれば、何かあれば私を召喚してくれれば良いわ。」
「んな!?」
もちろん、千雨ちゃんがよければ、だけど。判断は任せるわ。そうシャークティは言う。
そうか、召喚か。それなら私が一緒に回る意味も出てくるのか。勝てないと判断したら、召喚すれば良いだけだしな。
いや、でも……わざわざ首を突っ込む必要も……けど、こいつ等だけで集めて回って怪我でもしたら……怪我で済めば良いけど……そ、それなら私がついて回ったほうが……?
ああ、もう! なんで私が悩まねーとなんねーんだよ!?
私がそう頭を抱えて考え込んでいたら、なのはが私の顔を覗き込んでこう話す。
「千雨ちゃん……大丈夫、私だけでも頑張れるから、ね?」
「っく、なのは……。」
く、くそ。逆効果だ。本心なんだろうが、それは100%逆効果だ。いや本当に本心か? こいつ狙ってやってねーか!?
ああ、もう!
「な、何かあればすぐ呼ぶからな!? シャークティ!」
「ち、千雨ちゃん? 良いの!?」
し、仕方ねーじゃねぇか!? 知らん所でケガでもしてるんじゃねーかって心配してるくらいなら、ついて回ったほうがまだ安心出来る。ぜってー本人にはそんなこと言わねーけどよ!
ああ、くそ、苦笑してるシャークティが無性に腹立つなおい!
そんな事を考えながらシャークティを睨むと、シャークティは肩をすくめて砂場に魔法陣を書き出した。
ま、魔法陣? 何で、って、おい、まさか……
「さぁ、それじゃ契約をしなおしましょうか。」
「お、おいおい、またするのか? 本気か? こ、こんな所で?」
私達の会話を聞きながら、なのはは首を傾げている。そりゃ知らん奴がみれば首も傾げるだろう。
けどよ、こんな外で、なのはやスクライア、ついでにトンヌラ達が見てるっつーのにアレをするのか? こいつには羞恥心って物がねーのか!?
あ、いや、アレは範囲外なのか。つーかシャークティが良くても私がダメなんだよ! 2人っきりでも恥ずかしいっつーのに、なんで人が見てる中やらなくちゃいけねーんだ!?
なんて、そんな事を考えているうちに。シャークティは魔法陣を書き終わり、それが発光を始めやがった。
「さぁ、思い立ったが吉日とも言うでしょう?」
「そ、それにしたって、こんな、こいつ等が見てるじゃねーか……!」
両頬を押さえられ、私が目を瞑っているうちにムリヤリされた、あのしっとりした柔らかい感触が蘇る。初めてだっつーのに強制されて、でもそこまで嫌かっつーとそうでもなくて、シャークティの良い匂いがして、ドキドキして……
だ、大丈夫かな? 私これでもここ来るとき走ってきたから、少し汗かいてるんだけど。に、臭ったりしねーか……?
「ち、千雨ちゃん? 何なの? 顔赤いよ?」
砂場を前に躊躇っていた私へ、なのはが声をかけてくる。
……っは、今私何を考えていた? あ、汗臭い? 馬鹿じゃねーか!? なんでシャークティ相手にそんな事を気にしなきゃなんねーんだよ!?
って、いやいや、気にするのは当然だが。なんつーか、恋する乙女じゃねーんだから。なんか、こう、違うだろ?
ああ、もう! 親愛だ! 決してそんな感情は無い! 私は今ガキじゃねーか!
「さ、さっさと済ませるぞ!」
「はいはい。」
そして相変わらず余裕なシャークティ。っく、いつか、ぜってーいつか反撃してやる。首洗って待っておけよ!?
そんな事を思いながら、私も魔法陣の中へと入る。
後から聞いた話だが、この魔法陣には契約を促すために気分を高揚させる効果もあるらしい。普通は魔法陣の中に入った時点で有る程度覚悟してるんだから、そんな効果いらねーと思うんだけど。
私みてーに魔法陣に入ってから聞かされるなら話は別だが……っは、ひょっとして常套手段なのか? あれが?
なんて。そんな半分現実逃避とも言えることを考えているうちに、シャークティの両手が私の頬へと伸びてきて。
「あら。目は瞑らないの?」
「負けた気がするから嫌だ。」
そして。シャークティの唇と、私の唇の距離が。ゼロとなった。
「う、うわ、うわぁ……キ、キスしてる……。」
そんな私達を見て、そう声を漏らすなのは。私はちらりと横目でその様子を見るが、両手で顔を隠して、でも指の間からしっかりと見ている。何の意味もねーな。
なんて物が見えたのもつかの間、魔法陣が強く発光して外の様子が見えなくなる。取り敢えず成功か。
この発光も一瞬の物で、光が弱くなった所で私はシャークティから離れようとしたんだが。
ペロリ、と。最後にシャークティは私の唇を舐め上げた。
「……! て、てめぇ!」
「ふふ、真っ赤ね。千雨ちゃんの負けかしら。」
や、やっぱりこいつアレだ! わ、わたしはそっちの趣味はねーぞ!? 絶対、絶対にだ!!
ああくそ、暑い、なんてことしやがるんだ! しかも私今ガキだぞ!? 悪乗りが過ぎるっつーか、ひょっとしてそっちの趣味もあるのか!?
あ、あれか? 私のコスプレを頻りに可愛いっていってたのも、そっちの人だからか!? 私を助けるのも落すためか!? ぜ、ぜってー負けねー!!
私は多数派の中で一生を過ごすんだ! 絶対にだ!
「冗談よ、冗談、って……聞いてないわね……。」
◇◇
「ち、千雨ちゃん? 顔赤いよ?」
……っは!?
いかん、いかん。なんであんな事を思い出して顔を赤くしてるんだ私は。まるで意識してるみてーじゃねぇか。
ダラダラと喋りながら歩いて帰って来た私達は、何時の間にやら私の家の前へと到着していた。まだ十分に明るいが日は傾いており、もうそろそろ空が赤くなり始めようかという時間だ。
今日は改めての話し合いのため、シャークティと茶々丸も速めにバイトを切り上げさせてもらって私の家に来る予定になってはいるが。玄関に入っても3足しか靴が無いことから、未だ来ていない様だ。
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす!」
勝手知ったる友達の家、とでも言うべきか。私は一度リビングへ行き飲み物を用意するが、なのははそのまま2階の私の部屋へと向かう。
部屋も散らかしてはいないし、勝手にクローゼットなんかを荒らす奴らでも無いからな。心配することは何も無い。つーかそもそもコスプレの件は知ってるしな。
ちなみに例え真夏だろうが真冬だろうが、うちで出てくる飲み物は麦茶一択だ。たまにジュースの日もあるが、私達4人で飲んでちゃ直ぐに無くなるからな。
普段から紅茶やら高そうな物ばかり飲んでそうな奴らだ、私の家でくらい麦茶で良いだろう。嫌なら持って来いという話だ。
「おまたせー。」
「こら! 待ちなさい!」
「キュ、キュー!?」
お盆に麦茶を載せて私の部屋へと入ると、そこにはアリサにおもちゃにされるスクライアの姿があった。
このフェレットが人と同じ人格を持っていることは学校で話してあるんだが、それでもペット感覚だろうな。所詮見た目が全てだ。
私はテーブルの上に麦茶の載ったお盆を置くと、すずかがそれぞれに配ってくれた。ちなみになのははアリサとスクライアを見て苦笑している。
「お前等、出てきていいぞ。」
どうせ殆ど話すんだし、と。そう思い、私は力の王笏に向けて声をかける。すると私の周りにトンヌラ達が現れた。
「あ! この子たちが学校で言ってた精霊さん? 初めまして!」
『はじめまして!』『我等は電子精霊っす!』『ちう様の僕っす!』
「あー! そっちも可愛い! もう、千雨ばっかりずるいじゃない!」
ずるいって言われてもなぁ。
好き勝手言って飛び回るトンヌラ達と、1匹2匹手に乗せて会話をするすずか。手の中のスクライアと電子精霊を見比べて悩むアリサに、うずうずしながらも電子精霊を目で追うだけで何もしないなのは。
そんなカオスな……いや、賑やかな空気の中で。昨夜から始まった、私達が関ることになった事件の説明が開始された。
「違う世界に、ロストロギア、ジュエルシード、ねぇ……。」
「あ、危なくないの? なのはちゃんは大丈夫なの?」
30分ほど説明していただろうか。途中からシャークティと茶々丸も来て、一通りの説明が終わった後。
「大丈夫だよ! 千雨ちゃんとシャークティさんも手伝ってくれるし、何よりレイジングハートは頼りになるし、ね!」
『問題ありません』
そう啖呵を切るなのはとレイジングハート。
まぁ私は予備みてーなモンだがな。いざって時にシャークティを呼ぶのが仕事みたいな所があるし。戦力として期待されても困る。
「私はどうすれば良いでしょうか?」
と、そんな事を考えていると、茶々丸が首をかしげながらこんなことを言い出した。
ちゃ、茶々丸がどうするか? ロボットだし力が強いのは知ってるけど、戦えるのか? 魔法とか出来るのか? 出来ねーだろ?
「でも、茶々丸さん武装が無いじゃない?」
「はい。しかし実体を持つ相手であれば、標準の武装でも十分戦闘可能かと。」
だが、シャークティは武装さえあれば茶々丸も戦えるような口ぶりで、茶々丸に至っては実体さえあるなら問題ない、と。
そうか、茶々丸も戦えるのか。じゃあ手伝ってもらうか? シャークティとバイトの時間をずらして貰って、どっちかが常に一緒に行動するようにすれば安心出来るよな。
じゃあ翠屋の人たちにも説明しなくちゃいけねーのか? うーん、そもそもなのはが関ってる時点で説明する必要は有るんだろうが。どうするか。
つーか私の親にも何かそれらしい説明を――
「ち、ちち、千雨……。」
と、ちょっと顔を伏せて考えていた時。
何やらアリサが声を震わせて私を呼ぶので顔を上げてみると、すずか、なのは、アリサの3人が身を寄せて私を見つめていて。茶々丸は無反応、シャークティは頭を抑え。
なのはが、声だけじゃなく体全体を震わせ、何かに怯えながら私を指差す。な、何だ?
「う、後ろ……。」
後ろ?
私は特に何の警戒もせず振り返る。すると、そこには。
「「「お、お、おおおばけーーーー!?」」」
「何だ。煩いな。」
半透明で宙に浮く、エヴァンジェリンの姿があった。
「え、エヴァンジェリン!? 何てタイミングで出て来るんだよ!?」
「ん? 来ては不味い事でも有ったのか? あと茶々丸はどこだ?」
「千雨! 離れなさい! お化けよ、とり憑かれるわよ!?」
ついさっきまで3人揃ってテーブルの周りに座っていたのが、いまやベットに座るシャークティと茶々丸の後ろへ逃げて隠れている3人組み。辛うじてアリサの声がするが、他の2人は声も出ないほど怖がっているようだ。
……あ、いや、訂正。すずかは面白がっている節があるな。口角が上がってやがる。なのはとスクライアは完全にダメだな。おいおいベットの上で漏らすんじゃねーぞ?
つーかこの状況、どうしよう。何て説明しよう。
まさか本当の事を言うわけいかねーし、うーん、うーん……えーっと……
「しゅ……守護霊だ!」
「ハァ?」
ええい、くそ、話を合わせろよ!? 唯でさえややこしい話が、テメーが来たせいで余計ややこしくなったんだぞ!?
私はそんな思いを込めてエヴァンジェリンを睨みつける。すると、エヴァンジェリンは一つ頷き、ニヤリとあくどい笑みを零した。……失敗したか?
「しゅ、守護霊?」
「ああ、そうだ。私は長谷川千雨の守護霊だ。」
その言葉を聞き、アリサがシャークティの裏から顔を出す。ああ、もうこの際アリサだけでいいや。なのはは後からどうとでもなる。つーか頼むから喋る人数を減らしてくれ。
「守護霊って、ご先祖様とかじゃないの? 千雨とは似ても似つかないけど……。」
「私は600年以上前に生まれたからな。だが、こいつは半分私の子供のようなものだぞ?」
ほっ……。取り敢えず話を合わせてくれるみてーだな。このロリガキの子孫っつー設定も気に食わないが、この際この場が収まればどうでもいいや。
アリサは少し興味を持ったのか、未だベットの上からは降りないがシャークティの裏にいるのは辞めたようだ。
すずかもシャークティを挟んで反対側から顔を出すが、未だなのはの姿は見えない。すずかにしがみ付いているだろうことは簡単に予想できるが。
「守護霊って誰にでもいるの? 例えば、私とか。」
「ん?」
その言葉に、エヴァンジェリンは少々考えながらアリサを見つめる。半透明の存在に見据えられてアリサは居心地が悪そうだが、それでもその場を動かずにエヴァンジェリンを見つめ返す。
不意打ちでさえなければ、こいつの肝の据わり方は大した物だよな。私が逆の立場ならあんな反応できねーぞ?
「ああ、見えるぞ。お前と良く似た姿で薬物投与の果てに強姦されて非業の死を遂げたが、死んでも死に切れず幽霊となった少女の姿が――」
「ちょっと! それ絶対悪霊じゃない! それは守護霊じゃなく背後霊よ!」
「おいおい……。」
何をどう間違っても子供に対する台詞じゃねーな。理解しているアリサもアリサだが。
明らかに嘘っぽいその言葉と、人間らしいその表情に――まぁ生きてるから当然なんだが――エヴァンジェリンを怖がる事をやめたアリサは、ベットから降りエヴァンジェリンに向かい文句を言う。
これはこれで話が進まなねーな、怯えて話しにならないのとどっちがマシだったんだろうか。
それにしても――
「エヴァンジェリンは何しに出てきたんだ?」
「ん? ああ、お前とシャークティに話が有ったんだが……。」
と、そこでエヴァンジェリンは言葉を切り、アリサ達へ視線を滑らせた後に、再度私を見る。
ああ、なるほど。こいつらが邪魔なわけね。
「中途半端でわりーけど、続きの話は明日にしてくれ。」
私はそういい、渋るアリサを部屋の外へと押し出す。ちなみにすずかは普通に手を振りながら、なのはは脱兎のごとく部屋を出て行った。
さてさて、ジュエルシードがどうこうよりも、正直こいつの話のほうが私にとっちゃ重要だからな。今度は一体どんな話が飛び出すのやら……。