<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.32270の一覧
[0] ISネタ【天災さんの行動に疑問持ったので補完してみた】完結&投稿[ppp](2012/04/09 22:12)
[1] 好評なので第二話 これで完結。[ppp](2012/03/29 00:04)
[2] 期待に応えてみせましょうと第3話[GAP](2012/04/09 22:10)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[32270] ISネタ【天災さんの行動に疑問持ったので補完してみた】完結&投稿
Name: ppp◆773ede7b ID:b5aa4df9 次を表示する
Date: 2012/04/09 22:12
 1人、空を見上げる。
 
 

 夕暮れ時の赤く染まった風景の中、周囲には誰もいない。
 動くものもない。
 あるのは嘗ての町並を想像できない程に破壊された瓦礫の山と、そこから立ち上る煙だけ。
 破壊の痕跡のみとなったのは、全て自分達と敵の戦いの結果だった。
 


 IS、インフィニット・ストラトス。
 「無限の蒼穹」と言う名の通り、嘗て宇宙開発のために開発されたパワードスーツはその優れ過ぎた性能から、開発者の理想を退けて戦争のための道具として使用された。
 既存のあらゆる兵器を凌駕するそれは、戦場の新たな主役として世界各国に配備された。
 
 当初、日本の年若い女性科学者が開発・発表したそれは、全く評価される事は無かった。
 しかし、彼女の理論の正しさをしかと認識したとある国の軍部の人間が彼女とその家族を誘拐、彼女に兵器開発者としての労働を強制した。
 
 5年後、中東の某国にてクーデターが発生。
 独裁政権は撃ち破られたものの、軍部が即座に政治を掌握し、クーデター前と殆ど変らない情勢が続いた。
 他国からは毎度の騒ぎとして注目されなかったものの、国内では即座に軍への反感が募った。
 しかし、それは直ぐに消えた。
 軍政権が数世紀前から険悪だった隣国へ突然の宣戦布告と開戦。
 僅か数日で隣国首都が陥落した。
 その最中で活躍したのがISであり、世界が一気に某国へと注目を開始した切っ掛けだった。


 各国は即座に情報網を駆使し、その新兵器の情報収集に乗り出した。
 しかし、ISの性能を知れば知る程各国高官の顔が青くなっていくばかりだった。
 極め付けなのがISと既に滅びた隣国に配備されていた戦闘機の戦闘記録だった。

 一個大隊を誇る戦闘機部隊が、たった一機のISに駆逐されていく。
 その間、僅か10分。

 各国は、血眼になって情報収集に走った。
 そして、ある大国が女性科学者の家族の監禁場所を知り、即座に特殊部隊による奪還作戦を試みた。
 無論、某国も精鋭で固めた守備隊と最新の防衛設備を配備しているため、発生した戦闘は必然的に大規模なものとなった。
 更にそこに第三国の部隊も介入、状況は混沌と化した。
 結果、脱出しようとしていた科学者の家族が搭乗していた車両が偶然にも流れ弾で吹き飛んでしまった。
 戦闘は収束したものの、混乱は更に加速していく。

 科学者が家族の死を知った時、彼女は数日間を呆然として過ごした。
 そして、以前よりもIS開発に精を出した……それこそ狂的な程に。

 そして、某国が世界の敵として祭り上げられるのは、必然の出来事だった。
 ISをして制圧しきれない国内の慢性的な内戦と経済不況、それを誤魔化すための戦争に次ぐ戦争。
 その悉くに勝利した某国が危険視されるのは、当然の事だった。

 IS登場から5年、某国には経済制裁とそれに続く形で武力制裁が行われた。
 国連加盟国の全てが参加した訳ではないが、かなりの大部隊が組織された。
 そして国連軍の名を借りた各国軍と某国軍は初戦から盛大に激突した。
 各国軍は収拾した情報から劣化コピーした少数のISとIS関連技術で強化した既存兵器で、某国軍は搭乗経験と性能で勝るIS部隊で戦闘に突入した。
 戦闘は苛烈なものとなり、1年以上経過しても被害が増えるだけの膠着状態が続いた。

 そんな中、近年発展著しい大国の一つが、海を挟んで隣にある経済と技術で知られる島国に宣戦布告もせずに攻め込んだ。
 そして大問題だったのが、大国の戦力の中にISが、それもかなり完成度の高いものがあった事だった。
 長らく戦争の無かった島国の首都はあっさりと陥落し、大国によって蹂躙された。
 だが、島国も馬鹿ではなかった。
 同盟を結んでいた大国から給与された劣化ISでの地の利を生かしたゲリラ戦を展開。
 国土の半分を焦土としながら、何とか大国の軍勢と渡り合っていた。
 そんな状態が既に数年も続いていた。




 そして、日常となってしまった戦闘がまた一つ終わる。


 「終わったなぁ……。」


 今日の戦闘のおかげで、暫く向こうも攻めてこないだろう。
 こちらは囮部隊こそ壊滅したが、それも既に織り込み済み。
 そう遠くない内に後続が押し返してくれる事だろう。

 「帰りたかったなぁ……。」

 下を見やれば腹から止めどなく鮮血が溢れている。
 最早手遅れだろう。
 
 思うのは、最愛の姉や友人達の姿だ。
 こうして日常が壊れてしまった今でも、しっかり思い出せる。
 それを守りたかったからこそ、こうして戦場へ出てきたのに。
 今やもう、それを見る事は敵わないのだ。

 「まぁ、後は任せたぜ……。」

 そして、彼は生命活動を停止した。




 【搭乗者の死亡確認】

 彼が逝ったと同時、停止していたISに光が灯る。
 元々彼が乗っていたISは大国のものを鹵獲したものであり、その大元は某国で科学者が初期に生産した機体だった。
 科学者オリジナルに最も近いそれは、その人工知性の基幹プログラムに沿って行動を開始する。

 【量子転送プログラム作動開始】

 灯った光がより強くなっていく。
 搭乗者保護も出来ない程に損傷したISが、なけなしのエネルギーを使って最後の使命を果たそうと稼働する。
 これを果たせば、既に大破寸前の自身も完全に破壊される。
 それを知っていても人工知性は止まらない。

 【転送準備完了】
 
 最後に、無事なセンサーで搭乗者の死に顔を観察する。
 愚直な人だった。
 人工知性では理解できない意志の元、自身の危険も顧みずに戦った最後の搭乗者。
 たった数カ月の付き合いだったが、人工知性には何故だかその顔が安らかに見えた。

 【転送開始】

 そして、一機のISがこの世界から消え失せた。





 
 

 その日、彼女の人生は変わった。

 
 何時も通り自前の隠しラボへと行く道中に見つけた、奇妙なガラクタ。
 珍しく興味を持ったそれを調べた結果。
 それが、彼女の人生を大きく変えた。
 

 「どうしよう…このままじゃ箒ちゃんもお父さんもお母さんも……。」


 自室で三日もうんうんと悩みながら、彼女は漸く結論を出そうとしていた。
 歴史を変え得る頭脳を以て、彼女は現状の打開を図る。
 しかし、どう考えても『誰も犠牲にせずに』事を成す事はできない。
 ならば


 「でも、『犠牲を最小に』する事はできる。」


 自分も、両親も、妹も、親友とその弟も、その他大勢の人間の人生に暗い影を落とす事になるだろう。
 それでも

 
 「それでも、犠牲が最小になるのなら、やらないと。」


 見て見ぬふりはできない。
 

 


 

 私の娘は天才だ。
 剣の才なら次女もかなりのものだが、ことに長女の頭脳は確実に歴史に名を残すものとなる。
 ダヴィンチやアインシュタインといった歴史に名を残し、今日の世界を作った天才たち。
 長女は何れそういった者達と同じ場所に立つ事だろう。
 それが良いか悪いかは未だ定かではないが。
 だから、その長女がある時三日も悩み続けていた事に驚いた。
 その時は単純に驚いたが、今なら解る。
 あの子はあの時、何らかの深刻な事態に直面したのだと。
 そして、それを解決するために死地へと、危険な場所へ赴く事を決意したのだと。

 あの日、世界を変えた「白騎士事件」の一週間前。
 夕暮れ時に私の元に来たあの子は、何の前振りもなく「ごめんなさい」と謝ってきた。
 
 「これから私は一杯親不孝をします。たくさんの人を不幸にします。」

 だから、ごめんなさい。
 涙声で頭を下げた後、あの娘は私が声をかける寸前に姿を消した。
 それが私があの子の姿を見た最後だった。

 その後は語るまでも無い。
 あの「白騎士事件」以後、私は妻と次女と共に日本政府の要人保護プログラムにより国内各地を転々とした。
 次女は途中で別行動となり、もう何年も会っていない。
 長女も、既に10年近く会っていない。
 
 だが、私はある種の確信を持って言う。
 あの子は、束は今も戦い続けているのだろう。
 何と?と問われると、私には解らない。
 だが、確かに戦っているのだと、私は言う。
 
 私は今日も祈る。
 何時かあの子の戦いが終わった時、またあの頃の様に家族と共に居られるように。
 娘達の友であるあの姉弟と居られる事を。
 私は今日も祈る。



 待っているよ、束。










次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.032529830932617