「あちっ」「も、申し訳ありませんお嬢様」 IS学園最外層にある人用射撃場、その近くには朽ち果てた古い公園がある。ひびが入り割れた噴水、塗装のはげたベンチ、砕けた石畳。学園の歴史を知る古い人物のみが追懐と共に思い出す忘れられた空間。 夕暮れ。紅に染まるその静かな場所で、人目を憚るようにお茶会を楽しむ二人の少女が居た。一人は虚。もう一人は喉元に1年を表わす青いリボンを付けていた。 陽によって青く光る短めの髪、癖はあったが艶があり、美しく輝いていた。虚よりは小柄ながらも、その鍛えられた身体に無駄はなく、それでいて女性らしさを醸し出す。その表情には愛嬌も凜々しさもあった。うかつに手を出せばひっかかれる、例えれば暗闇に眼を光らせる黒い猫が適当だろう。1年1組、更識楯無だった。 彼女らは下級生と上級生の間柄であるが、今この時間だけは本来の関係、主従関係だった。虚は更識家に使える従者なのである。 ティーカップを手に楯無は小さく舌を出した。「温度が高すぎ。珍しく失敗したわね、何か気がかりでもあるの?」「お嬢様、分かって聞いていますね」「あん、怖い顔♪」 学園はその性質上絶えず外部からの脅威を受けている。表だったものではなく裏の脅威に対し、更識家は学園の設立以来それらを一手に引き受けてきた。そして楯無は齢15にしてその当主である。彼女であれば従者の身の回りの出来事を把握するのは造作もない。 もっとも。その楯無にとっても黒之上貴子の実力は完全に予想以上であり、今までに3度仕掛けるも、後塵を拝している。楯無と貴子、二人が睨みを利かせていれば学園中の少女が足早に去るそんな犬猿の仲だが、連敗が続く楯無の風辺りは少々厳しい。「申し訳ありませんお嬢様。私は生徒会長と、」「良いのよ」「私とお嬢様の仲は既に公然の秘密です、ご不便をかけてなければ良いのですが」「相変わらず堅いわねぇ、多少のやっかみは予想の範囲よ。それに、必死な虚が初めて見られたし気にしてないわ」「初めてですか?」「CADを引かせれば美術品、舞踊を踊らせれば工芸品、紅茶を入れさせれば芸術品、布仏家の最高傑作にして、鉄仮面の微笑とまで言われた虚があんな必死にしているんだもの、今ならくすぐられても許しちゃう」「お嬢様……」「ほらほら怖い顔。女の子は笑っていないと、彼に逃げられるわよ♪」 楯無は持ってきた雑誌をぱらぱらとめくり、ページを止めて読み上げた。「水のあるところに幸運あり。海、池、湖がお薦め。体内浄化にも一役買うのでミネラルウォーターを心がける。ラッキーカラーは青。学園は3方を海に囲まれているから完璧じゃない」「恋愛運はどうでしょうか」「えーとなになに……まぁ占いなんて適当だから気にしない気にしない」 楯無は取り繕うように雑誌を閉じた。「なんと書いてありました?」 じっと見つめる虚の眼差しに楯無は渋々閉じたページを空で読み上げた。「……一目惚れしちゃうかも。恋に恋するは要注意。恋愛運はバツ」 音もなく注がれるハーブティ。ポットを持つ虚は深く重い息を一つ吐いた。「お嬢様」「なに?」「会いに行ければどれほど楽か。自分の心がこれほど思い通りにならないとは、初めて知りました」 虚は目を伏せ手元を見つめた。楯無の従者であり友人が初めて見せる自信の無い姿、彼女は扇子を軽く鳴らすと、虚の頬をつついてこう言った。「良いこと教えてあげる、今後の彼の動向には注意した方が良いわ」「どの様な意味です?」「保守派って言って良いのかな? 彼、そんな連中に不評かっているみたい。特に1年、“目を離さない”方が良いわよ」 ◆◆◆“茶器の片付けをします、先にお戻りください” 虚に送り出された寮への帰り道、楯無は当てもなく歩いていた。射撃場からアリーナ、体育館に部活棟、グラウンドに学習棟。本棟の近くに至った時に既に陽は落ちていた。辺りに人の気配はなく、虫の音だけが響いていた。東の空には丸い月が見える。神か悪魔か、まるでこの世界を外から覗いている眼、彼女にはその様に見えた。彼女は立ち止まりその眼に鋭い一瞥を投げるとまた歩き出した。(あの虚があんな顔するなんてね) 彼女にとって虚は冷静沈着を象徴する存在だった。決して慌てず騒がず、声を荒らげた事などここ数年記憶にない。最後に聞いたのは何時だっただろうか、そう彼女が記憶の糸を手繰れば、まだ主従関係も家の務めも関係無かった幼い頃、更識家と布仏家、2姉妹揃って遊び笑った頃まで遡る。 虚は彼女にとって有能な従者であり、理解のある友であり、憩いの時を与えてくれる優しい姉であった。更識家当主になった今ですら、今でこそ虚の沈んだ表情は見過ごせないものだった。(蒼月真か、さーてどうしてくれよう) 鋭い笑みが、柔らかい人当たりの良い物に変わる。現れた人影が楯無の足下を陰らせる、その人物は笑いもせず静かにこう言った。「更識、散歩か?」「織斑先生、ごきげんよう。良い月夜ですね」 明治のガス燈を模した半導体照明、それが下ろす光りに月明かりが混じる。影が落ちる煉瓦道には木々と2人の影が動いていた。 2人には互いの存在が数十歩前に分かっていた。だから。唐突に出会った2人は、驚く事なく静かに淡々と挨拶を交した。楯無はスカートを摘まみ僅かに腰を落とす、優雅と言って良い彼女の立ち振る舞いに千冬はあきれを織り交ぜて、壮大な態度で立っていた。「ふん、ごきげんようときたか。猫かぶりもそこまで来ると芸の一つだな」「あらそんな、仮面は誰しも被るものです。織斑先生も一枚どうですか? 直実も結構ですが、殿方を振り回すのも楽しいものですよ」「くだらん。用が無いならさっさと寮に戻れ」(あら、意外と余裕。男性経験は無いと聞いているけれど……やっぱり興味が無いのかしら) 視線、仕草、声の抑揚、何一つ変わらない千冬の様子に楯無は意外性を感じた。どちらかと言えば純朴な千冬の質を考えれば無理もない。 生徒たちに様付けで呼ばれ、男役とし見られていることは千冬自身知る事実だが、彼女はそれを快く思っていない。それを思い出した楯無は上品にほほえんだまま、知らない事実があるのだと内心肩をすぼめた。「先生はこれからどちらに?」「職員室で残業だ。お前らが騒がしくてな、一向に気が休まらん」 背を向け手をひらひらと振る千冬後ろ姿。楯無は何の脈絡も無く「織斑先生。蒼月真さんをご存じですか?」と聞いた。先日雨降る中見た真と共通の何かを持っている、そう感じたからだった。千冬は足を止め振り返った。「もちろん知っている、それがどうかしたか」「いえ、学園では時の人ですので」「伝えるべき事は無いな。余計なことを考えずに訓練に励め。それと彼は仕事で来ている、誰かのように馬鹿な事はしてくれるなよ」「もちろん理解しています」「なら、いい」(足を止めて体ごと振り向いた、か。声のトーンも堅かったし、ただの業者さんって訳じゃなさそうね。それにしても流石織斑先生分かりやすい、リーブス先生は用心深いから迂闊にちょっかい出せないのよね) 彼女は両腕を上げのびをした。「寒くなってきたし、私も部屋に戻りますか……って別れの挨拶忘れた」 虫の音が響いていた。 ◆◆◆「薫子ちゃん、やっほー」「たっちゃん、やっほー」 翌日の授業後、楯無は友人を呼び止めた。授業以外はレンズの大きなカメラを手に学園内を徘徊する少女、黛薫子である。1年1組所属。普通に声を掛けて撮っては構えられるという理由で、隠し撮りする事が多い。もっとも学園誌などへの掲載は本人の許可を得る、使わない写真は消去、絶妙なプライバシー判断で余り問題になっていない。「今日もカメラを手に精を出しておりますな」「うん、楽しい。新聞部のエース目指してびしばしショットをとるわよ。と言う訳で、一枚ぷりーず」「いえーい」「いえーい」 カメラのディスプレイを覗き、写真を確認する。そこにはピースサインの楯無が写っていた。構図、ブレに異常が無いか確認をする。一連の作業をする薫子に楯無はこう言った。「聞いたわよ、整備科へって先生に言ったんだって?」 彼女は手を止めた。2年から操縦科と整備科に別れるが、1年の内から授業の一部を選択することが出来る。整備科の授業量は多く、早いほうが有利だからだ。彼女もまたそれを選んだ。「耳が早いわね、新聞部入らない?」「私には大いなる野望があるの、目指せ生徒会長ってね。掛け持ちは難しいかな」「貴子先輩は手強い?」「今だけよ」「生徒会長になったら我が新聞部をごひいきに。現政権はジャーナリズムに理解が乏しくて老朽化した機材の更新が中々進まないのよ。見てこのカメラなんて8年選手」「広報部としてこき使ってあげるから覚悟しなさい」「ジャーナリズムは権力に負けません」 屈託無い笑みを浮かべる薫子に、僅かな影が見て取れる。“私はIS操縦に向いてないみたい” そう言って悔しさとやるせなさを滲ませた薫子の表情、楯無はそれを思い出した。薫子とてアリーナを駆ける自分を夢見てここに来た。ブリュンヒルデに憧れてこの地にやって来た。入学式のクラス発表、“1組”になったとはしゃぐ薫子の姿は、楯無の心に強く残っている。 だが操縦実技は下から数えた方が早く、他の少女たちに大きく差を付けられた。そして座学理論に優れるという彼女の成績は、その夢を砕くに十分だった。彼女は夏の休みの間、塞ぎ込むように考え抜いたあと決断をしたのである。 じっとカメラを見つめる友人の表情に楯無は、軽率な発言への謝罪としてこう言った。「そうだ。整備科に進級したらM.L.の調整お願いして良い?」「もちろん。でも、諦めた訳じゃないからね、たっちゃん達を写真に納めてその夢を果たすんだから」「格好良く撮ってね」「お任せあれ」「っと、そうだそう。彼のこと知ってる?」「ん? 蒔岡機械の人の事なら余りしらないよ。報道規制が掛っててカメラ持って近づくと直ぐ警告で」「報道規制って学園から? 生徒会じゃなくて?」「出所は分からないけれどそうみたい。いやー 参った。貴子先輩の打鉄を記事にしたかったのに、突然“そこの生徒何をやっている!”って」「前にはあったの?」「取材した後に検閲が入った事はあったそうだけれど、生徒対象でシャットアウトは先輩も知らないって」「他に何か気になる事ある?」「ジャンボストロベリーパフェ」 にんまりと笑う薫子に楯無は仕方ないと両手を挙げた。対学園的な活動であれば既に動いている楯無であったが、学園内の少女らに対する影響力は未だ無い。貴子がいる為だ。 生徒会に加われば学園が保持する情報に一定の範囲でアクセスできる、そうすれば活動範囲が広がるがそれは貴子の指示下に入る事を意味する。更識当主である楯無には個人的にも対外的にも憚られた。 そのため。少女たちの噂を集めては吟味し、必要あらば自前の諜報部隊を動かしていた。もっとも、1年の彼女にその機会は少なく、今のところ貴子の調査のみである。「そうだなー 先輩たちに聞いたんだけど、雰囲気変わったって静かに評判だよ」「だれの?」「もちろん織斑先生とリーブス先生。私たちの入学前はピリピリしてたらしいんだけれど、最近どこか丸くなったって。私たちは4月以降しか知らないからそんな風としか思わなかったのだけれど」 楯無が千冬に初めて会ったのは千冬が学園の教師として赴任した年である。千冬が21歳、楯無が13歳の時であった。言われてみればと、楯無の記憶にある当時の千冬とだいぶ印象が異なる。年を取ったからだと彼女はその様にしか思っていなかった。(蒼月真が学園に訪れたのは2学期から。彼が蒔岡に入社したのは中途半端な時期の6月。年齢から中途採用とは考えにくい。宗治おじーちゃんと織斑千冬は昔から面識がある、直前に蒔岡邸に訪問もしている。時間差はあるけれど4月に出会って、何らかの意思決定がなされ蒔岡に入社したとしてもおかしくはない。問題は何故そんな事をしたのか……臭うなこれは)「たっちゃん。悪い顔してる」「失礼ね」 ◆◆◆ 木々も黄色く染まり始めた10月中旬。水平線に太陽が触れようとしていた時刻。第7ハンガー内では裕樹の指示を受けて、真が右へ左へと忙しなく動いていた。夕日に照らされた二人の影がハンガーの壁に写っていた。 ハンガー内の反重力エリアで浮かぶのは装甲が取り外された打鉄である。37番機、通称“みな” その脇にはユニバーサル・マウンターに取り付けられたスカート形状の装甲兼スラスターユニットがあった。真はエネルギーケーブルを流れるように接続する。 接続終了と真が告げると裕樹は接続状態を確かめ、満足そうに頷くとこう言った。「打鉄はスラスター類が下半身に集中している。注意しなくてはならないのがスラスターを固定するフレームがスカート形状のムーバブル(可動式)フレームになっていると言う事だ。出力だけに注意するのではなく、複数箇所有るスラスターのバランスを考えて調整する必要がある。これを怠るとPICとの内部イナーシャ計算に乱れが生じまともに飛べない。テストさせてみろ」 真は黙って頷くと「スラスターにダミー信号送ります」といった。機材の画面に指を走らせると“スタンバイ”から“テスト”にモードが移る。A番からF番まで6機有るスラスターに赤い光りが灯った。微弱の同一推力を指令しているにもかかわらず、スラスターには出力のムラ、つまり違いがあった。「この場合、手間は掛るが必ずスラスター側で1機1機調整する事。航法管制システム側で微調整させると余分な計算をさせる事になる。水平定格飛行なら良いが機動戦闘をさせると相当のロスだ」「分かりました。エネルギーキャパシタとレジスタンスコイルを持ってきます」 真がタイヤの付いた荷台に足を向け段ボールを漁る。段ボールに納められた部品を手にしたとき彼はふっと立ち上がり、はす向かいのハンガーの影をじっと見た。その距離50m程である。「どうした」「視線を感じました。人が居たようです」 裕樹は極めて珍しい事に笑いながらこう言った。「真、お前は地味だが目立つらしい。彼女らの誘いを受けるのも程ほどにしておけ」「誘いですか?」「お誘いだろう。男子ならば誇るべきかもしれないが、お前が騒がれると気をもむ人が居る。自重しておいた方が良い」 言っている意味が分からないと真は首を傾げる。部品を裕樹に手渡した。影から覗いていた楯無は音もなく足早に立ち去った。その表情には驚愕と憤慨が混じっていた。(あの距離で私が気づかれた?!) 楯無はあれから真の調査をしていた。蒔岡にIS学園、ディアナに千冬と彼を巡る状況に不可解な点が多かったからである。虚が入れ込んでいる相手、ゴシップ的な興味もあった。ところがいざ調べてみると彼女の予想を大きく上回るものだった。 氏名、蒼月真。年齢15歳。住所、神奈川県三浦市東岡町。身長171センチ。医療記録なし、学歴不明、出生不明、家族親族、そのほか一切。分かっている事は必ず学園が壁になりそこから先の調査が出来ない、と言う事だった。楯無が不信感を抱いたとしても無理はなく、どの様な人物か接触しようと機会を伺っていれば瞬く間に悟られたのである。 彼女は足を止めた。そこはハンガー区画とアリーナの間にあるちょっとした公園だった。芝生と、等間隔に植えられた背の高い木々はまるで石柱、石造りの神殿の様だった。「涼しくて過ごしやすくなってきた。諜報活動にはもってこいだそう思わないか、楯無」 木陰から現れたのは貴子だった。流れる銀の髪、腕を組みつまらなさそうな視線を楯無に向けていた。「彼が何者か知っているのですか、貴子先輩」「知らないし、知っていたところで教えない、理由もないしな」「知らないなんて、学園の長である生徒会長にあるまじき発言ですね。貴女なら彼が普通ではないと気づいていないはずがない」「王者は細かい事を気にしないものだ。そんな重箱の隅を突くようなまねをするから、楯無。お前は私に勝てない」 秋風が吹いた。ドーム型アリーナを背景に役目を終えた木の葉が舞う。木の葉が空に浮かぶ夕方の月をかすめた時、2人は踏み込んでいた。一撃目、楯無。左の短く鋭い一撃、ジャブを打つ。貴子は曲げた右腕を掲げ、楯無の腕をかいくぐり、もぐり込む。(速い!) 楯無の予想を上回る貴子の踏み込み。貴子は楯無が反射的に打ちだした迎撃の、右腕に構う事なくそのまま突進した、体当たり、貴子の肩が楯無の左胸を襲う。鈍く重い音が鳴る。一拍。静寂の中、楯無は5メートル後ろに下がり構えていた。貴子は左腕はだらりと下げ、右腕は腰に添えていた。「当たる瞬間跳躍して衝撃を殺したか。良い判断、良いバネだ」「相変わらず無茶な事をします。ほんの僅かタイミングがずれていたら拳が頭部に直撃ですよ」「当たっていないから問題ない」「ならば!」 楯無が左ジャブ、躱される。続けて右ストレート、貴子が左にステップ、躱される。霞むような鋭い一撃にそれを上回る身体捌き。凡人であれば何が起こっているか理解すら出来ない次元の攻防である。「どうした! 仕舞いか!?」 楯無は右拳を、虫を払うように、舞いのように左から右に流した。彼女の身体が左足を軸に右にねじれる。その反動を利用し、右回し蹴り。膝が下を向いていた、足の甲を下に打ち下ろす、ブラジリアンキックだった。 楯無の蹴りが貴子の頭部を上から襲う。堅い衝撃音。手応えあり、楯無がそう思った瞬間彼女は眼を剥いた。貴子は頭部から血を流しながら、楯無のスネを噛んでいた。貴子の双眸が光る、楯無の右足は牙で固定されていた。ぞくりと悪寒が走った。貴子は無防備な楯無の左足を、不安定な踏ん張りが利かない体を、右足で払う。身体が宙に舞い背から地面に落ちた。 楯無が見たものは、踏み下ろされる貴子の右足だった。雷鳴と土煙。足は楯無の左頬を掠めるように撃ち抜かれていた。大地がえぐれていた。「勝負あったな。4勝目だ」「認めます」「よーし、よし。帰って飯だ。楯無お前も寄り道せずに帰るんだぞ」「……一つ聞いて良いですか、貴子先輩」「なんだ」「理由も知らずどうして彼を庇うんです?」「私に勝ったら教えよう」 貴子は笑っていた。こめかみから血を滴らせ白い学園の制服と銀の髪を血で汚す。それにもかかわらず笑っていた。真っ黒な夜空に浮かぶ白く蒼い月を背に楯無は静かに見下ろされていた。嘲笑もせず、勝ち誇りもせず、ただ追い越して見せろとその眼は言っていた。「今に見てなさい」「おう」 彼女は背を見せて、あははと笑いながら立ち去った。楯無は大地に身を横たえたまま空の月を見ていた。(お月様に嫌なイメージが付きそう) 彼女は溜息をついた。 ◆◆◆つかみ所が無くて楯無の口調が難しいです。2013/04/03突然ですがアンケート、ご協力下さい。女性読者の方っておられますでしょうか。もしいらっしゃったならば、一言頂けると幸いです。ISだし、少女キャラが沢山だし、薄い本だし、そんな事を思いつつ、ちょっと気になったもので……下ネタとか、はい。