シャルロット・デュノア2-------------------------------------------------------------------------------- 構わんよ、と言うのでハイパーセンサー展開。伯爵の背中を追いながら歩く。途中見かけた光景は先程まで職場だった晩餐会場である。其処は表現に困るほどの豪勢さだった。 ドレスを纏った女性、タキシード姿の男性、白と黒のタイルを敷き詰めたチェスの様な床、エメラルドグリーンのカーテン、金色の文様を施された壁、扉、ダイヤのような細工のシャンデリア、調度品はイタリア製か。流れる調べは、演奏家によるもので、仕草一つ一つが何処か芝居がかっている。 きらびやかな以外感想が出ない。あるのだな、こういう世界が本当に。 重ねたグラスに給仕がワインを上から注いでいる。溢れたワインがグラスを伝って光っていた。綺麗だがもったいない、と思い己の感覚がまだ保たれている事に胸をなで下ろし、貧乏性に涙した。「賑やかですね」「下らん宴だよ。心にも無い言葉を恥も外聞も無く放ち、身形だけは立派だと思い込んでいるところがまた滑稽だ」 厭世的なその言葉に共感を覚えた。伯爵とは言え色々な物に縛られている、と言う事だろう。夫人が居ないのも納得だ。「どこでもそうです」「確かにそうだ」 招かれた部屋はミューズの間と呼ばれる壁にタペストリーやら絵画が掲げられた部屋だった。煉瓦造りの壁、白い天井には4つの羽根を持ったシンプルな照明が煌々と部屋を照らし、風を起こしていた。煌びやかな部屋部屋の中、落ち着いた質素な部屋だった。歴史を感じさせる背の低い木製テーブルを本革のソファーが4方を囲む様に置かれている。 促されて腰掛けた。目の前にスーツ姿の白人中年男性が、碧い眼を油断無く光らせていた。黒の混じった金の髪を、軽く立てるほどに短くし、彫りが深く、目尻には相応に皺が入る。荒々しく感じるその顔立ちは、イギリス風味である。もちろんそんな事を言えば、気分を害させてしまうだけであろう。 テーブル上にはグラスにボトル、氷の瓶と水の入った瓶が置かれていた。伯爵はグレーのジャケットを脱ぎ、淡い紅のワイシャツを露わにするとネクタイを緩め、グラスに手を伸ばした。「呑むかね? と言っても君には水しか無いが」「スコッチですか。フランスの方はワインしか呑まないのだと」「良く言われるよ。私は出来が悪くてね、これもそうさ」「イギリスにも良い物があります」 壁の絵はイギリス人画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの風景画だった。陽を浴びたテレメール号が静かな海に浮かんでいる。淡いタッチの中に感じられる重厚さは幻想的。風景画家の中でも気に入っている画家だった。しばらく見ていると、詳しいのかと聞かれたので知っているだけですと答えた。「それでお話というのは?」 失礼かとも思ったが、促す事にした。伯爵は一口飲むとグラスを置いた。「君の事が分からない」「どのような意味でしょうか?」「君が申し出た理由だよ。知っての通り私は社の為、自分の為に愛娘を男装までさせて送り込んだ。君たちのデータを盗ませる為だ。娘が言うには、それを知った上で応じたそうじゃ無いか。それは何故かね?」「学友を助けたかった、ではいけませんか?」「学生同士の惚れた腫れたなら何も言うまい。言うまでも無いが君の行為で億単位の金が動く。はいそうですか、と扱える話では無い」「そこまで重要視されているのであれば、お嬢さんに聞かれるべきでしょう。彼女の情報処理能力は正確です」「言わないのだよ」「と、申しますと?」「頑として口を閉ざした。心配なほど私たちを優先するあの娘が、ここまで意固地になったのは初めてだ」 彼は僅かに表情を陰らせた、その碧い眼には嫉妬の色が混ざっていた。どれ程言葉を贈っても抱きしめても決して心を開かなかった娘が、他人に呆気なく成し遂げられれば当然とも言えよう。「君は特定の思想を持たない、信じる神も持たない。君の行動から人格、性質を追うため調べさせてもらった、データに信憑性がある入学以前の足取り、つまり“1年に満たない期間”で分かった事は用心深く、人間関係も損得で動く傾向にあると言う事だ。今回の君の行為は矛盾する」「友情は価値ある物と思いますが」「当然だ、だが程度による。君と娘が知り合いまだ3週間だ。想像してみたまえ。資金繰りに困り明日にも倒産しかねない状況で、初対面同然の人間が、理由も無く億単位の金を渡した、君ならばどうする? 窃盗の方がまだ納得ができる」 私は水を飲み干すと水瓶の代わりにボトルを持ち、注いだ。水で薄めなかった。数ヶ月ぶりのアルコールは、初めて呑んだイギリスの蒸留酒は辛く、胸と鼻を焼くように流れていった。「私は立場上咎めなくてはいけないのだがね」「私も出来が悪いんです」「そうかね」 氷が溶けてカランと音を立てる。その合図は準備が整った鐘の音だった。「伯爵の言うとおりですよ、最初私はシャルロットお嬢さんを、あなた方を見捨てるつもりだった。助ける理由どころか、逆に彼女を告発するべきと考えた。でも、ある奴に叱られたんです、何故助けないのか、助けるのに理由が要るのか、と」「随分、子供じみた感傷的な理由だと思うが、君はそれを受け入れたのか」「正直なところ理解はしていません。どれだけ考えてもそいつの考え、行動の整合性、つじつまが合わない。只言える事はそいつの、怒りか正義感かよく分かりませんがそう言った何かに何時も心が揺り動かされるんです」 グラスに浮かぶ氷から靄が流れていた。それをしばらく見つめた後もう一口呑んだ。「そしてその都度、自分がみっともなく、哀れに感じる。どうして俺はこうなのか、目の前のそいつと何が違うのか。何時も思います。いつかそうなれれば、そうなりたいと思っています。だからそうしました。今回もそうでした。申し訳ありません、これ以上の答えは持っていないんです」 思えば最初からそうだった。 初めてあいつと会ったとき、 優子さんと再開したとき、 青のお嬢様に謝りに行ったとき、 鈴の噂を確認し合ったとき、 3人の少女について頭を悩ましたとき、 対抗戦の後あいつに説教されたとき、 些細な事で大きな事で、自分でも驚くほど大きな声を出し、殴り合い、怒って笑った。揺り動かされた。 去年の私は両の指で説明出来るほど単調な物だった。だが入学してからこの3ヶ月間は、説明するのも大変なほど、起伏に富んだ激しい日々だ。こういうのを何というのだったか、記憶、出来事、回想、違う。もっと適切な言葉があったはずだが残念な事に思い出せなかった。 氷が溶け音を立てる。我に返った。ゆっくり呑んでいたつもりだったが、既に手に合ったグラスは空になっている。いつの間にか身体が熱く、熱を帯びていた。「いや、よく分かったよ」 伯爵は表情を緩ませ、今度は私のグラスに注いだ。「君が探している物は大事なものだ。人は一つ年を取る度にそれを失ってしまう。私もよく思うよ、何時から俺はこうなったのか、とね。君は、理由は分からないが年齢以上の何かを背負ってしまった様だな。背負い耐えているなら信頼に値する。それに酒の飲み方も知っているなら、文句など無いよ」「もちろんです、こんな事しらふじゃ言えません」「ふむ、君の情報が漏れた事どう思う?」「わざとでしょう? 株価は幾ら上がりました?」 其処に座るその男性は自然な笑みを浮かべていた。欠伸をする直前の犬の様に見えたがとても好感が持てた。「きみは本当に娘と同学年かね? とてもそうは見えんよ」「ご存じないのですか?」「なにをかね?」 差し出されたグラスに私も差し出した。堅い心地良い音が響く。「私はお嬢さんより1つ上なんです」 彼は声を上げて笑った。 それからの事は良く覚えていない、だた一夏の事を執拗に聞かれた事だけは覚えている。だから私はその都度「お嬢さんの見る眼は確かですよ」と答えた。----- ここは私の部屋である。窓には朝日が差していた。目の前にはデュノアである。「真」「はい」「僕は非常に悲しいです」「はい」「IS学園の生徒が、うぅん、僕の友人がこんなことするなんて」 あはは、と笑ってみた。睨まれた。目の前の彼女は腕を組み仁王立ち。眼は細く睨み下ろされていた。何故かと言えば私は正座だからだ。 見上げる彼女は、淡いグリーンのワンピース姿だった。白い大きな襟、服の緑と髪の金、3色相まり静かな気品を醸し出していた。そんな事を考えつつも刻はかちこちと進む。 あの後話が弾みISやら世界情勢やら伯爵の昔話やらに花を咲かせた。少しのつもりがボトルを開けてしまい、目を覚ますとそこにデュノアが立っていたと言う訳である。 フランスは16歳からOKなんだろ、と釈明するも聞き届けて貰えずこの有様だ。星の巡りが悪いのか、最近このような扱いが多い気がする、その理由を考えてみたがよく分からない。「僕は立場上先生に言わなくてはいけません。でもお父さんも、デュノア家も同罪だからそれはできません」 胸をなで下ろせば、じろりと睨まれた。初めて見る彼女の迫力に思わず息を呑んだ。こちこちこち、と刻を数える。彼女は重い口をゆっくりと開く。「反省していますか?」「しています」「もうしませんね」「こっそりやります……冗談です」「もぅっ」 仕方ないなとデュノアは溜息をつく。漸く開放か、と私は一息ついた。彼女は私の名を呼んだ。笑顔だった。「両手の平出して」「あのさ、その手に持っている、長細くてしなやかな40cm位の革製品はなに?」「鞭」ぴしりと鋭い音がして思わず顔をしかめた。「……可憐に笑いながら言う言葉か、それ」「真は口で言っても効かないみたいだし、なら仕方ないよね。大丈夫、安心して。僕も小さい頃悪い事したら、お母さんにこうして叱られたんだ」 デュノアを見ていると効果は抜群のようである。は、や、くとリズムを刻むように、優しく追い立てられ、渋々手の平を差し出した。「それ、譲って貰ったのか?」「そうだよ。お願いしたんだ。だって僕の子供が悪さしたら必要でしょ?」 そんな大切な物使ってはいけない、と言ってみた。返ってきたのは放免の言葉では無く、笑顔と手から腕、脳天に響く痛みである。その痛みは今までに経験した事の無いような物で、しばらく動けなかった。---------- その日の朝食はデュノアファミリーに招かれた。晩餐会のような、映画で見るような仰々しいものでは無く、普通の高級レストランを彷彿とさせる朝食だった。夫人の方針らしいその雰囲気は、親しみと暖かさを感じさせた。食事中、手の動きがおかしいと伯爵に聞かれ鞭の件が明るみになった。夫人には娘より年上の孫が出来た、と笑われたが伯爵は苦い顔をしていた。 食堂に響く、夫人とデュノアの楚々とした笑い声。口元を押さえうっすらと涙まで浮かべていた。そこまで笑わなくてもと憮然とし、話を逸らそうとデュノアに姉の事を聞いたら「仕事中」と答えたので会えないのかと聞いた。無言で睨まれた。喧嘩中なのかとエマさんに姉妹仲を聞けば、やはり「お答えしかねます」であった。「と、言う事が今朝あったんですよ。デュノアの意外な一面を見た感じです。理性的な女性って居ないものですね」と数歩前を歩く白衣姿のフランス人男性に言えば「何というか、あれだね。君は女性を怒らせる事が得意そうだ」ジャンさんは表情一つ変えなかった。「目の前のデュノアを放っておいて、姉に気を掛けるから不機嫌になったと? それ理論の飛躍ですよ。彼女と俺はそういう関係ではありませんし」「シャルロット君とはかれこれ2年になるが、私はお目にかかった事は無いよ。まぁ気をつけた方が良い。日頃物静かな女性ほど追い込むと後が怖い」「当の本人を目の前にして話す2人は相当ズレてると思うな。それより、いつの間に仲良くなったのさ」 右隣を歩くデュノアは頬を膨らませそっぽを向いた。 デュノア社 ランス=シャンパーニュ研究所。パリから150kmほど東のこの施設は元空軍基地で閉鎖に伴いデュノア社の手に渡った。ランス市からほどほどに遠く、周囲は一面農園で人家も少ない。制限はあるが区域外での飛行も出来る。ISの開発試験にはうってつけの場所であろう。 見渡せば地平線の所々に、民家やら山やらが“こぢんまり”しているのが見える。午前11時、太陽が既に勢いを増しアスファルトと私たちを容赦なく照らす。それを物ともせず、この渡仏の目的である、みやの改修を手がける人物が目の前を飄々と歩いていた。 ジャン・ビンセント。MIT出身の米系フランス人。デュノア社の開発主任で40代後半。黒髪のオールバックは雑に流し、無精ひげ。細面のその顔は神経質なドーベルマンに見える。白い襟無しシャツとベージュのチノパン、その上に纏う白衣は彼なりの美学なのだろう。普通はツナギだ。 元々フランスの航空機メーカーダッソー社のスタッフで伯爵とは旧知の仲であったらしい。ISメーカーとしてデュノア社設立に当たりスタッフと共に引き抜かれた。 国から支援された豊富な資金でも機械開発系企業を一から立ち上げるのには非常に労力を要する。その為ほぼ白騎士の劣化コピーであった第1世代はともかく第2世代では開発が非常に難航した。ラファール・リヴァイヴが最後発なのはその為だ。 余談だがISは航空兵器でも無く地上兵機でも無い為、フランス国内のどこのメーカーに作らせるかで非常に紛糾した。利権が絡んだのである。一向に決まらないため国がしびれを切らし起業に至ったらしい。 そのデュノア社の酸いも甘いも知り尽くしている人に私は愛機を預ける事になる訳だ。不安が無いと言えば嘘になる。変える時は慎重たれ、おやっさんの言葉だ。私は白衣の背中にこう言った。右隣のデュノアは静かに歩いていた。「ジャンさん、確認したい事が」「なんだい」「リーブス先生の件ですが、」「あぁそれなら大丈夫だ。改修スタッフは全て女性にしておいたよ」 右隣のデュノアを見た。笑っていた。男よりはマシ、と言ったところか。「改修の期間は?」「3週間を予定している」「……1週間で出来ませんか?」「これでも法外だよ、君も元技師だろ? 理解したまえ。改修作業に1週間、テストと調整で2週間だ。そうそう、改修に当たり社内設備、測定器や試験場といったそれらのスケジュールを強引に変えたから、気をつけたほうが良い。君はデュノア社の救世主だが、買うものは買う。もちろん買うものは他部署の反感だ」「お気遣い感謝します……」「礼には及ばないよ」 右隣のデュノアを見た。笑っていた。男の子ならがんばって、と眼で言っている様な気がする。「切り出しておいて何ですが、改修作業が一週間で出来るんですか?」「シャルロット君から事前に連絡を受けていてね、準備は済ませておいた。リヴァイヴIIのデータも部品も残っているから、機械的、ハードウェア的な作業は殆ど組み替えだけだね。部品も確認済みだし、ハンガーに入れれば直ぐ作業に取りかかれる。デバイスコード、ソフトウェアはシミュレーション上で確認済み、残っているのは組み込んでの確認と調整かな」 右隣のデュノアを見た。笑っていた。任せてよ、と心の声が聞こえた。「部品流用とのことですが、改修方針は? 聞いてませんけど」「学園の布仏虚君と打ち合わせをしておいた。君の稼働データと比較しても理にかなっているから問題は無いはずだよ。それにしても彼女は優秀だね、ほんの数時間で見事な仕様企画書を送ってきたのだから、是非デュノア社に欲しいな」 右隣のデュノアを見た。笑っていた。彼女の根回しだろう、本当に卒が無い。あの時みやの機体情報を見せた事がこういう風に繋がるとは驚きを隠せない。「先にざっと説明しておこうか」 彼は手に持つタブレットに指を走らせた。みやに送られるのは改修データである。送り先にはリヴァイヴIIも含まれていた。意識に浮かび上がる、その改修方針は確かに理にはかなっているが不満があった。簡単に言えば攻撃2、防御8だ。「先に言っておくけれど、攻撃力を上げろと言う相談は応じられないよ」「何故です?」「黛薫子君に“防御を軽視するから叩いてでも無視してください”念を押されてね」 右隣のデュノアを見た。笑っていたが威圧がある。そうはいかないよ、と眼が言っていた。「まぁ何というかあれだね」彼は初めて立ち止まり、振り返った。射貫かれる視線には咎めと嫉妬が含まれていた。私は思わず身を強ばらせた。「なにがです」「女神と良いこの2人と良い、優秀な女性に囲まれて妬ましい限り、と言う事さ」「そう言う関係ではありません」「君は何時もその調子なのか?」「……何がです?」「愛という物は、温もりを与える事、囁く事だけではない、逆に感じられない事の方が多い。これ程までに心ぱ―」「ジャンさん」 それは今まで沈黙していたデュノアだった。緊張と非難を含んだその声に、彼は一時目を瞑り静かに息を吸いこう言った。「……済まない、禁句だったね。これに改修仕様書が入っているから誰かに読んで貰うと良い」 私は視界によぎった影を無視し、彼からタブレットを受け取り、首のネックレスを手渡した。視界に夜が訪れる。「ジャンさん、みやを宜しくお願いします」「Miya?」「貴方が創ったそのリヴァイヴのパーソナル・ネームです。俺が付けました」 堅いが繊細、油の染みついた、彼の右手は確かによく知った物だった。彼も私のそれに気づいたようである。「確かに請け負った、君の愛機は私の誇りに賭けて生まれ変わらせよう」 震える右手を無言で押さえていたのはデュノアの左手だった。----- 改修方針を簡潔に説明すると、余分な物を外し、性能の良い部品に置き換える、と言う事だ。(※まとめれば~、まで飛ばして頂いても問題有りません) まず余剰装備の見直し。量子格納領域の無駄が大きいのである。私が使うのはアサルトナイフ、ハンドガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、対物ライフル、グレネード程度だ。サブウェポンやロケットランチャーも用意はしているが弾丸を含めても余りがある。デュノアのリヴァイヴIIが20以上の兵装を量子変換している事を考えれば想像しやすい。その為、拡張領域を半分に減らし、PIC(慣性制御)、エネルギーシールド、冷却装置、ハイパーセンサーやECCM(対電子妨害手段)を含めたTEWS(Tactical Electronic Warfare System:戦術電子戦システム)、搭乗者保護機能の強化に割り当てた。 一見地味な冷却器だが、これが馬鹿に出来ない。デバイスが増え後述の情報処理能力や推力の向上によりエネルギー消費量、発熱量が増大したのである。また各デバイスはアイドル時と戦闘時でも発熱量が異なる。高い冷却能力によりデバイス・リミッターの底上げが可能となった。 2つめ。情報処理系の強化。ISのコアはシェルという1次インターフェースを介し各デバイスをアクセスする。みやは初期型故に1次インターフェース以降が貧弱で情報処理の足かせ、ボトルネックとなっていた。その為情報の道路となる内部通信能力を強化した。改修により増大した情報処理量を含めても従来の3倍高速となった。 3つめ。初期型のA型には利点もあった。半試作機のため強度の安全率が高く、後継となるコストダウン目的のB型やそれ以降のモデルよりフレームの剛性に余裕を持っている。 それに伴い、多方向加速推進翼を大推力タイプに変更。但しリヴァイヴIIと異なり一対。最高速度は劣るものの質量が小さい分加速力に優れる。イグニッションブーストが使えない、というよりは一度エネルギーを放出し加速するという特性上、タメが生じると言う特性上、使い勝手が悪く学ばなかった私には非常に意味が大きい。 因みにデュノアのリヴァイヴIIは第3世代に対抗する為B型を改修したC型をベースにしている。リヴァイヴIIはD型、改修後のみやはE型になるそうだ。 4つめ。アビオニクスの強化。航法装置、FCS(火器管制)等の各デバイス間との独立連携を図りコアへの負担低減する。右肩部にLANTIRN-B(ランターンB型:夜間低高度赤外線航法および目標指示システム)を装備し全天候作戦能力を強化した。左肩部のスナイパーXR(センサーポッド:iAN/AAQ-33)にて敵機の探知・捕捉性能を強化。JTIDS(統合戦術情報伝達システム)を使用し最大32機の僚機、もしくは基地と戦術情報を交換し連携戦闘行動が可能となった。 5つめ。エネルギーパックの追加。脚部と背面に脱着可能のコンフォーマル型エネルギーパックを追加し従来の600から2000へと最大エネルギー量を増やした。言うまでも無く作戦行動量が増加する。 最後。薫子が念を押して要求したフルスキンモード。パイロットを覆う物理装甲の追加である。訓練機型ではほぼむき出しであった生身の胴体に、スキン装甲に加え、肩、胸と背中、二の腕に大腿部、頭部に物理装甲を追加している。モードと名打っているのは従来のISスーツのみの状態と切り替える事ができるからだ。つまり、これによって“訓練機と偽る”事が出来る。 まとめれば、燃料タンクを追加。物理、エネルギーシールドの強化。機体質量は増したがスラスター推力を増加させ総合的に加速力を向上させた。PICの容量を増やし反動の大きい大口径兵装にも対応。多目的センサーであるハイパーセンサーとは別に兵装用センサーを追加し、攻撃能力を上げる。全体的なイメージはリヴァイヴIIを翼一対にし、左腕の大型シールドを取り外した、と言ったところだろうか。 今まで長々と読み上げて貰ったデュノアが水を飲み一息いれた。呆れた様にソファーにもたれ掛かっている。「細かいところだと、腕や背中に多目的ラックマウント追加やソフトウェアの更新と最適化とかかな。いわゆる強襲型射撃特化型リヴァイヴ。なんかもうあれだね。攻撃力や推力という基本スペックでは第3世代機に劣るけれど、この子に乗った真と戦いたくない」「もう半軍用機だよな」「そう、それだよ!?」 デュノアはすっくと立ち上がり、私が仰向けに寝転がるベッドに駆け寄ってきた。顔が近いと言う間も無く詰め寄られる。垂れ下がる金の髪先がこそばゆい。「なぜ疑問系?」「完全にレギュレーション違反だよ! 公式戦とかどうするのさ?!」「俺もう学生じゃないし。公式戦とか関係無いし」「え?」「……聞いてない?」「聞いてないよっ?!」 部屋に舞い踊るのはデュノアの声である。私の頭で舞い踊るのは、狐耳を付けたディアナさんの笑い顔であった。--------------------------------------------------------------------------------秋雨の土日に耽る文字綴り改修ネタがまとまったら暴走し一気に作り上げました。2012/09/23※改修ネタについて補足色々凄そうな事書きましたがスーパーマシンではありません。仮にIS自体が持っているポテンシャルを数値化しシャルのリヴァイヴIIを10とすると、訓練機レギュレーションから外された事を含めて15~20程です。砲弾、誘導兵器(ミサイル)、兵器なら何でもござれのマルチロール仕様のリヴァイヴIIから幾つか機能を削除し、使用兵装を銃(砲弾)に絞り込んで、機体反応と射撃特化の情報戦術能力を上げた、こんな感じです。従って誘導兵器(ミサイル)は使えません。グレネードは従来通り。撃ちっぱなしのロケットランチャーは使えます。3倍ちょい増槽はしましたが、消費エネルギー量も増えましたので、真がフル戦闘すると実質2倍未満でしょうか。機体反応が上がる=クロックアップ→電力と冷却大変、こう言う理由です。あれです、増槽すると空気抵抗が大きくなって、逆に航続距離が落ちるとかそんな感じ。僚機とのリンク機能は……