はじめまして。アスタリスクです。小説家になろうで仮面ライダーシリーズが禁止になってしまったのでこちらで投稿します。どうぞよろしくお願いします。
《前提》
・本作は『バカとテストと召喚獣』、『仮面ライダー響鬼』のクロスオーバーです。
・主人公、吉井明久は仮面ライダー響鬼の主人公、ヒビキの立場にあります。
・明日夢は瑞希がその役割を演じるかもです。
・響鬼のキャラクター一部年齢を変えて登場します。
†
揺れるような感覚。
そんな感覚を彼女、姫路瑞希は感じた。
うっすらと目蓋を開けると、朧気に一人の男子生徒が見えた。
『ど~お~し~て~世の中~う~ま~く~い~か~な~い~い・い・い・い言っても無駄だな頑張ろう~』
その男子生徒が歌う、なんとも調子ッ外れなかえるの歌の替え歌が耳にほんのりと残る。
「あ……ぅ……」
そんな呻きのような呟きを漏らしたためか、自身を抱える男子生徒が彼女を見た。
『お、大丈夫かい? もうちょっとで保健室だからね』
そう言う男子生徒の笑みを見て、瑞希は再び目蓋を閉じる。そして、普段より遥かに落ちている調子の頭で、記憶の糸を辿る。
その日は朝起きたときから感じる調子の悪さを瑞希は自覚していた。だが、この日は彼女が通う高校、つまりは今いるこの場所で大事な試験があった。
それは、言ってしまえば来年クラスを決めるだけの、『振り分け試験』と言うもので、別に成績に関係するような試験ではない。
だが、瑞希は良くも悪くも真面目であった。
本来なら、病気を理由に休んだとしても何を言われるでもわけではない。ただ来年自身の配属されるクラスが決まるだけだ。
それでも彼女は無理をし、心配する両親を他所に試験を受けに来た。が、結局体調の悪さに体が完全に負けて瑞希は椅子から転げ落ちた。
そこまでなら、瑞希は記憶している。そして、薄れ行く意識の中でこんなやりとりがあったのも記憶していた。
『姫路、保健室に行くか? 行くならテストは全科目無得点になるが』
『ちょっと先生さ。体調を崩して保健室に行くだけで無得点ってのは酷くない?』
「ぁ…………」
あの後どうなったのか、それは瑞希は分からない。だが、今こうして自身を抱えている男子生徒がテストの監督教師に意見をした生徒だというのだけは分かった。
『よし、着いた。すみませーん。急患でーす』
それを聞いた後、瑞希は意識を手放した。
†
「ん……ん、ぅ……」
「あら、瑞希ちゃん。気がついたかしら?」
目を覚ました瑞希の目に飛び込んできたのは、一人の少女、いや、女性だった。
「お母……さん?」
「よかったわ~目を覚まして」
「どうして、ここに?」
未だにぼんやりとした、半覚醒の意識を総動員して今の状況を理解をしようとする。
「保健室の先生から連絡が着たのよ。それで迎えに来たのよ」
そう言われて瑞希は納得した。確かに、保健室に誰かに連れてこられないとならない状態である今の瑞希は、熱を測ったりするまでもなく早退するのが当然だ。
そこまで来て、瑞希はハッとなった。自分をここに連れてきた(というより運んできた)男子生徒のことを思い出したのである。そして、それとほぼ同時に保健室の扉が開き、保険医が入ってきた。
「あら姫路さん。よかった、目が覚めたのね」
「あ、はい。ご心配をお掛けしました」
「一応、解熱剤を飲ましたし、診断では多分風邪だとは思うけど、今日は暖かくして寝てね?」
「……はい。あの」
「ん?」
「私をここまで連れて来てくれた人は……」
そう言われて、保険医は「あぁ」とポンっと手を叩く。
「吉井君ね? 彼だったら、ある程度の診察が終わった後帰ったわよ? どうせ自分ももう試験を受けたって仕方ないですからって」
「あ…………」
そう言われ、瑞希はようやく気づく。自分を、途中退席した自分をここまで連れて来たということは、彼も途中退席したということだ。そして、この学園の試験の特性上、途中退席は問答無用で無得点となる。
「…………」
「……瑞希ちゃん。体調が良くなったら、その吉井君って人にお礼を言いに行かなくちゃね?」
「はい……」
母親、姫路瑞穂の一言が、せめてもの救いだった。
†
その翌日、世間は春休みに入った。振り分け試験は終業式の翌日に行われるためである。そして、体調が良くなった瑞希は、瑞穂と共に学校で聞いた彼の住所、彼の住んでいるマンションへとやってきた。が……
ピンポーン ピンポーン
チャイムを押しても、出てこない。いないのだろうか? と思ったとき、隣の部屋の扉が開き、70歳ぐらいのお婆さんがひょっこり顔を出した。
「あんれま~、ヒビキちゃんなら今朝からいないよ~?」
「え? あの、ヒビキって……、ここって吉井明久君って人が住んでいると思うのですが……」
突然現れ、そう告げたお婆さんに戸惑いながらもそう瑞希は聞く。
「んん~? あ~そう、彼のことさねヒビキちゃんっていうのは」
「はぁ、そうなんですか……」
ヒビキ=吉井明久と言うのは分かった。多分愛称か何かなのだろうと瑞希はあたりをつけ、更に聞いた。
「それで、今吉井君はどこにいるか、知ってますかお婆さん?」
もうすぐ戻ってくるのなら、少しだけ待ってみようと思ったのである。が、
「あ~確か~……屋久島に行くって言っとったな」
「や、屋久島……ですか?」
意外な答えに、瑞希は瑞穂と顔を見合った。
一の巻 響く鬼 前編