プロローグ
西暦1998年
地球は未曽有の危機にあった
外宇宙から侵略者BETAに襲われたからだ
それは東の島国、日本にとっても例外ではなかった
今年の7月初頭、朝鮮半島からBETAが襲来した。
偶然かそれとも作為的なのかは解らないが台風が日本にさらなる困難をよんだ。
かつて台風は侵略者からこの国を守った
だが、この台風は逆に侵略者に味方した
嵐に乗じて上陸した悪魔は瞬く間に九州、四国、中国、近畿を壊滅状態に追い込ん
だ。
その時の犠牲者は、3600万人といわれている
そのわずか、数ヶ月後BETAは横浜まで迫っていた。
私は、BETAに捕らえれた
隣には、幼なじみの白銀武が必死になって私を庇ってくれている。
私は、それを嬉しく思うのだが、同時に情けないとも思っているのだ。
思えば、いつも私が危機にいるときは最後には彼が助けてくれる。
そんな時、私はいつもこの感情を持っているのだ。
だが、もうさすがにこの危機はどうしようもない。
私たちは地獄の中にいるのだから。
先頭の人たちが次々と悪魔に食べられていく。
私は生理的に受け入れられなくて、思わず目を伏せる
そうすると、武ちゃんが抱きしめてくれた。
死の寸前にいてくれるのがこの人で良かった
そしてその瞬間がやってきた。
私は悪魔に手を掴まれた。必死に抵抗するが14歳の女の腕力でどうこうできるわけ
がない。
その時、武ちゃんが殴りかかったが、次の瞬間、武ちゃんの右手が抱きしめてくれ
たり撫でてくれた右手が私を幸せにしてくる右手が消えていた。
悲鳴を上げたのは私の方が先だった。
武ちゃんが倒れこんで、すぐに見えなくなった。
グロテスクな顔が、大写しになったからだ。
私の体が食べられていく。が、痛みは感じなかった。
赦さない
ただ感じるのは、
私の愛しき男を奪われた怒り
赦さない
胸を焦がした炎が
燃え広がる
力が欲しい。
大切な、愛しき男を守れる力が欲しい。
炎が世界を越えた
新西暦
183年
白銀武は目を覚ました時、既に午前8時半であった。
いつもなら隣に住んでいる、幼なじみの純夏が起こしてくれる筈なのだが。
先に、学校にいってしまったのか?
近くに落ちているDコンで電話をかけてみる。が、出ない
不安になった武は、隣の家の窓を叩いた。
その瞬間、聞いたことのないほどの大音響の悲鳴が上がった。
ただ事ではない
躊躇っていられない
武は純夏の部屋に入った。
純夏はベッドにいた。
が、そのベッドが見るも無残な姿だった
シーツが力ずくで引き裂かれたように見える
しかも、引き裂いたのは純夏自身のようだ
なぜなら自分の腕を爪で傷つけていたからだ
武は純夏をベッドに押さえつけた
「純夏、止めろ!!」
突然、純香の体から力が抜けた
続いて泣きわめき始めた
もはや自分一人の手におえる状態ではない
泣きじゃくる純夏を片腕に抱きかかえ
救急車を呼ぶために、Dコンを取りだした
私の中に何故か言いようのない怒りが
突然こみあげてきた
あり得ない知識とありえない光景が浮かびあがってきた
私は鑑純夏
日本帝国生まれの14歳
違う、地球連邦日本国生まれの14歳だ
その記憶が寝起きの半覚醒の頭を支配しようとする
私はおかしくなりそうだった
14歳までの記憶がふたつある
ひとつはまぎれもなく自分自身の記憶だろう
机の上に証拠の写真もある
だが、もうひとつはなんだ
BETAってなんだ!?
横浜侵攻ってなんだ?
私が食べられたって嘘だ!!?
武ちゃんが殺されたなんてありえない!!!!
だが、この恐怖はなんだ
この胸を焦がす怒りはなんだ!!?
助けて武ちゃん
このままだと私この記憶にのまれちゃうよ
Dコンが鳴る
取ろうとする
だめだ
手が怒りで痙攣してDコンを落とした
シーツを引き裂く
時計をたたく電池カバーが外れた程度でよかった
体の自由が利かない
自傷行為まで私の体は、し始めた
窓をたたく音がする
わたしは悲鳴をあげた
後のことはよく覚えていない
力がほしい、わたしの唯一の人を守る力がほしい
奪おうとする者に勝てる力がほしい
だからわたしは銃を取った
EXTRAに当たる話を書くために
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