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No.31760の一覧
[0] なでしこっ! (いぬかみっ!二次創作)[闘牙王](2012/05/06 11:39)
[1] 第一話 「啓太となでしこ」 前編[闘牙王](2012/02/29 03:14)
[2] 第二話 「啓太となでしこ」 後編[闘牙王](2012/02/29 18:22)
[3] 第三話 「啓太のある夕刻」[闘牙王](2012/03/03 18:36)
[4] 第零話 「ボーイ・ミーツ・ドッグ」 前編[闘牙王](2012/03/04 08:24)
[5] 第零話 「ボーイ・ミーツ・ドッグ」 後編[闘牙王](2012/03/04 17:58)
[6] 第四話 「犬寺狂死曲」[闘牙王](2012/03/08 08:29)
[7] 第五話 「小さな犬神の冒険」 前編[闘牙王](2012/03/09 18:17)
[8] 第六話 「小さな犬神の冒険」 中編[闘牙王](2012/03/16 19:36)
[9] 第七話 「小さな犬神の冒険」 後編[闘牙王](2012/03/19 21:11)
[10] 第八話 「なでしこのある一日」[闘牙王](2012/03/21 12:06)
[11] 第零話 「ドッグ・ミーツ・ボーイ」 前編[闘牙王](2012/03/23 19:19)
[12] 第零話 「ドッグ・ミーツ・ボーイ」 後編[闘牙王](2012/03/24 08:20)
[13] 第九話 「SNOW WHITE」 前編[闘牙王](2012/03/27 08:52)
[14] 第十話 「SNOW WHITE」 中編[闘牙王](2012/03/29 08:40)
[15] 第十一話 「SNOW WHITE」 後編[闘牙王](2012/04/02 17:34)
[16] 第十二話 「しゃっふる」 前編[闘牙王](2012/04/04 09:01)
[17] 第十三話 「しゃっふる」 中編[闘牙王](2012/04/09 13:21)
[18] 第十四話 「しゃっふる」 後編[闘牙王](2012/04/10 22:01)
[19] 第十五話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 前編[闘牙王](2012/04/13 14:51)
[20] 第十六話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 中編[闘牙王](2012/04/17 09:57)
[21] 第十七話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 後編[闘牙王](2012/04/19 22:55)
[22] 第十八話 「結び目の呪い」[闘牙王](2012/04/20 09:48)
[23] 第十九話 「時が止まった少女」[闘牙王](2012/04/24 17:31)
[24] 第二十話 「絶望の宴」[闘牙王](2012/04/25 21:39)
[25] 第二十一話 「破邪顕正」[闘牙王](2012/04/26 20:24)
[26] 第二十二話 「けいたっ!」[闘牙王](2012/04/29 09:43)
[27] 第二十三話 「なでしこっ!」[闘牙王](2012/05/01 19:30)
[28] 最終話 「いぬかみっ!」[闘牙王](2012/05/01 18:52)
[29] 【第二部】 第一話 「なでしこショック」[闘牙王](2012/05/04 14:48)
[30] 【第二部】 第二話 「たゆねパニック」[闘牙王](2012/05/07 09:16)
[31] 【第二部】 第三話 「いまさよアタック」[闘牙王](2012/05/10 17:35)
[32] 【第二部】 第四話 「ともはねアダルト」[闘牙王](2012/05/13 18:54)
[33] 【第二部】 第五話 「けいたデスティニー」[闘牙王](2012/05/16 11:51)
[34] 【第二部】 第六話 「りすたーと」[闘牙王](2012/05/18 15:43)
[41] 【第二部】 第七話 「ごきょうやアンニュイ」[闘牙王](2012/05/27 11:04)
[42] 【第二部】 第八話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 前編[闘牙王](2012/05/27 11:21)
[43] 【第二部】 第九話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 中編[闘牙王](2012/05/28 06:25)
[44] 【第二部】 第十話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 後編[闘牙王](2012/06/05 06:13)
[45] 【第二部】 第十一話 「川平家の新たな日常」 〈表〉[闘牙王](2012/06/10 00:17)
[46] 【第二部】 第十二話 「川平家の新たな日常」 〈裏〉[闘牙王](2012/06/10 12:33)
[47] 【第二部】 第十三話 「どっぐ ばーさす ふぉっくす」[闘牙王](2012/06/11 14:36)
[48] 【第二部】 第十四話 「啓太と薫」 前編[闘牙王](2012/06/13 19:40)
[49] 【第二部】 第十五話 「啓太と薫」 後編[闘牙王](2012/06/28 15:49)
[50] 【第二部】 第十六話 「カウントダウン」 前編[闘牙王](2012/07/06 01:40)
[51] 【第二部】 第十七話 「カウントダウン」 後編[闘牙王](2012/09/17 06:04)
[52] 【第二部】 第十八話 「妖狐と犬神」 前編[闘牙王](2012/09/21 18:53)
[53] 【第二部】 第十九話 「妖狐と犬神」 中編[闘牙王](2012/10/09 04:44)
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[31760] 【第二部】 第十三話 「どっぐ ばーさす ふぉっくす」
Name: 闘牙王◆53d8d844 ID:e8e89e5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/11 14:36
日が沈み、辺りもすっかり暗くなった中、灯りがともったアパートの一室がある。それは犬神使い川平啓太の部屋。一か月前、立て直しが行われたその部屋は真新しさを失っていない。だがその生活までは何一つ変わっていない。

朝起き、そのまま朝食を済ませた後、学校に行き、帰ってきた後に夕食を済ませ、そのままのんびりとした後、また眠りにつく。

そんな当たり前の日常。四年前、なでしこが自分の犬神になった時からずっと続いてきた生活。今、啓太はちゃぶ台の前で胡坐をかきながら新聞を読んでいる。それは夕食後の啓太の日課。朝は忙しくなかなか読むことができないためゆったりとしたこの時間にそれを読むことが啓太の密かな楽しみだった。だが啓太はなぜか難しい表情を見せたまま新聞と睨みあっている。まるで何かを必死に振り切ろうとするかのように、食い入るように新聞を凝視している。だがその内容は全く啓太の頭には入っていなかった。何故なら


「それでね、今日はいっぱい街を探検してきたの! ちょこれーとけーきもちゃんと買えたんだよ、すごいでしょ!」


自分の周りを飛び回りながら纏わりついてくる一匹の犬神がいたから。それは言うまでもなく啓太のもう一の犬神(見習い)ようこ。どうやら今日、街で出かけたことがよっぽど楽しかったらしくそれを矢継ぎ早に自分に向かって告げてくる。まるで初めてお使いにでもいってきた子供のよう。それはある意味間違ってはいないのだろう。現にようこはこれまでずっと山に封じられ、外に出たことがなかったのだから。そんなようこにとっては街に行くことは本当に楽しみだったに違いない。だから多少騒がしくても構わない。いつもならゆったりとした時間を過ごしたいところだが今日ぐらいはいいだろう。自分もそこまで子供ではない。だがどうしても見逃すことができない、無視することができないことが、事態が二つある。それは


「ちゃんとケイタの分も買ってるから! それとね、こんなもの見つけたの! ゆうえんちってところがあるんだって! わたし、ここに行ってみたい! ねえ、いいでしょ?」


近いのである。もう近いというかくっついている。宙を漂いながらもようこは後ろから啓太を抱きしめるように手を回しながらもたれかかってきている。全く遠慮なく、恥じらいなく。そうするのが当然だと言わんばかりに。それによって啓太の背中に柔らかい二つの物体が押しつけられ、その感触が伝わって来る。それだけではない。その息づかいが、女の子の匂いが襲いかかって来る。だが啓太はそれを感じ取りながらも必死にそれに耐えていた。それは啓太にとってまさに拷問に近い責苦だった。


あの……これ、一体何なんですか……? 何で俺、こんな状態に陥ってんの……? 何とか学校を終えて帰ってきて、家の無事に安堵して、夕食を済ませて一安心と思ったら何でこんな訳分からん状況に陥ってんだ? いや、うん、正直おいしい。確かにめちゃくちゃなところが多いが間違いなくようこは美少女。そのプロポーションも並はずれている。本当ならこっちからちょっかいを出したいところだ。しかしここまで露骨に密着されると逆に裏を疑ってしまう。その証拠にようこはどこか楽しそうにこちらの反応を伺っている。自らの体を押しつけながら。間違いなく確信犯だった。

ち、ちくしょう……! こ、こいつ、俺を弄んでやがる、いや、誘ってやがるのか!? なんて素晴らしいことを、じゃなかった、けしからんことを……! よ、よし、こうなったら一つ、躾をしてやるとしますか! うん、犬神使いとして犬神の躾はしっかりしないとな!


心の中でそう自分に言い聞かせながら、啓太がその誘惑のままようこに向かって手を伸ばそうとした瞬間、


ガチャン!


一際大きな音が台所から響き渡る。その音によって啓太の体はまるで条件反射のようにびくっと震え、動きを止めてしまう。啓太は思わず息を飲む。知らず背中に嫌な汗が、冷や汗が滲んできている。そのまま手に持っていた新聞に隠れるようにしながらも恐る恐る啓太は覗き見る。台所にいるもう一人の犬神、なでしこを。


「………」


なでしこは今、夕食後の洗い物を片付けているところ。それはいつもどおり、なにもおかしいことじゃない。うん、だが心なしかその洗い物の音がいつもより荒々しいような気がするんですけど……あの、なでしこさん、明らかに何か黒いオーラが後ろ姿から、背中から滲みでてるんですけど!? ちょっと、ちょっと待てっ!? ヤバいって!? ヤバいって何がヤバいか分からんぐらいヤバいって!? 表情を伺えないのが逆に怖すぎるんですけど!? 間違いなくなでしこが爆発しかけている! 今までようこに遠慮してたようだがどうやら今の状況は許容範囲を超えちまったらしい! な、何とかしなくては……!


「ねえ。聞いてるの、ケイタ? わたし、今度ゆうえんちに行ってみたいの! ねえってば!」


そんな啓太の心境を知ってか知らずかようこは啓太に肩車した状態でぽかぽかと啓太の頭を小突いてくる。そのふとももで啓太の顔を挟み込みながら。もはや狙ってやっているにしてもやりすぎだった。瞬間、ピシッと何かが割れるような音が聞こえてくる。もはや一刻の猶予ものこされてはいなかった。


「だ―――っ!? いい加減にしろっつーの!? これ以上纏わりつくんじゃねえっ!?」


啓太は新聞を放り投げ、叫びを上げながら自分に肩車されているようこをそのまま後方のベッドに向かって振り落とす。なりふり構わず、まさに今この場でなでしこという名の爆弾が爆発することを防ぐため。爆発物処理班顔負けの気迫が、もとい必死さがそこにはあった。


「きゃっ!? もう、いきなりなにするのよ、ケイタ!」
「そりゃこっちのセリフだっ! 暑苦しいんだよっ!」
「そんなこと言って、ケイタだって喜んでたくせに♪」
「なっ!? んなわけねえだろっ!?」
「ふふっ。いいじゃない。犬神ってすきんしっぷっていうのするんでしょ? それと同じだもん」

だがそんなことなど露知らず、いや恐らくはそれを知った上でようこは楽しそうに啓太に向かって絡んでくる。いくら追い払っても離れようとしない。くすくすと笑いながら啓太となでしこの反応を楽しんでいるのが傍目から見ても明らかだった。


こ、こいつ……間違いない! 間違いなく狙ってやってやがる……! なでしこが自分に強く出れないことを分かった上でちょっかいをかけてくるとは……恐ろしい奴! というかただ単に構ってほしいだけなのかもしれんがとにかくこのままではまずい! 主に俺の精神的な意味で、さらに最終的にはこの部屋の安全的な意味で……。ち、ちくしょう……誰だ、ハーレムが夢なんて言った奴は!? 夢どころか悪夢、天国どころか地獄なんですけどっ!? しかも一人増えただけでこの惨状……マジでしゃれにならん……くそっ……今からでも遅くない、過去の俺に馬鹿なことは考えるなと警告できれば……じゃなくて!? とにかくこの状況をなんとかせねば……


啓太が定まらない思考の中でも何とかこの修羅場を乗り越える策を必死に模索していると



「啓太さん、お風呂が沸きましたけどどうします?」


いつの間にか洗い物を終えたなでしこが笑いながら俺とようこの元に近づいてくる。いつも通りの笑顔で、雰囲気で。だがそれが逆に怖かった。これならまだ不機嫌な様子を見せていてくれた方がマシだと思えるような不気味さだった。だが啓太は顔を引きつかせながらも思いつく。ある意味で渡りに船ともいる状況が生まれたのだから。


「そ、そうか! じゃあようこ、お前先に入って来い! 今日は出かけてたんだろ?」
「む……」


強引にようこを引きはがし、押し出すように啓太はお風呂を勧める。うむ、こういえばようこも引き下がざるを得ないだろう。マジで助かった。これで一息つきながらもなでしこのご機嫌も取れる。まさに一石二鳥の策だった。もっともそれはなでしこの狙いでもあったのだが啓太は知る由もない。だがようこはそのまま何かを考え込んでいる。お風呂場と啓太、なでしこを何度も見比べている。啓太もなでしこもそんなようこの様子に首をかしげることしかできない。もしかしてお風呂の使い方が分からないのだろうか。そう思い、啓太は口を開こうとした瞬間


「じゃあ一緒に入ろ、ケイタ♪」


ようこはさも当たり前のようにその場で上着とスカートを脱ぎ捨て啓太に迫ってきた。そう、紛れもない下着姿で。そのあまりに突飛な、そして常識はずれな言動と行動に啓太はもちろんなでしこも固まってしまう。というか何をようこが言っているのかしばらく二人には理解できないほどだった。


「お、お前、何言ってんだっ!? っつーかここで脱ぐんじゃねえ!? 脱衣所があんだろうが!?」
「そ、そうです、ようこさん! そんな恰好しちゃいけません!」


それでも何とか我に返った啓太となでしこは慌てながらもようこに向かって制止の声を上げる。なでしこに至ってはまるで手のかかる子供に諭す母親の様な有様。もっとも外見年齢でいえば変わりはないためそれが余計不思議な光景を作り出していた。啓太もなでしこに続くようにようこを嗜めようとするもその視線はようこの下着姿に釘づけだった。

見えそうで見えない谷間。なめらかな腰つき、ライン。全裸とはまた違う魅力が、美しさがそこにはあった。分かっていても逃れられない悲しい男の性だった。なでしこにそれがばれていないのだけが唯一の救いだったと言えるだろう。だがそんな二人の制止を受けながらもようこはどこか不機嫌な、不満げな様子を見せている。


「わたしがどんな格好しようと勝手でしょ? そんなに気に入らないならあんたも一緒に入ればいいじゃない」
「そ、それは……」
「おい、待て!? 何で一緒に入ることが前提になってんだっ!?」


そんなむちゃくちゃなようこの反論に啓太は必死に異論を唱えるもようことなでしこには届かない。もはや訳が分からない事態の連続でなでしこも冷静な判断ができなくなってしまっているらしい。というかまず啓太が一緒に入ることが既に確定事項になっていることが一番の問題なのだが既にそんなことはなでしこの頭にはなかった。既になでしこはその内容を妄想し、顔を赤くしてしまっている。恋する乙女そのままの姿。


「ふーん……分かった! あんた身体に自信がないんでしょ? だからそんなに怒るんだ!」


だがそんななでしこの姿を勘違いしたようこはどこか勝ち誇りながら、自信満々で告げる。その美しい肢体を見せびらかしながら。それは優越感。家事という面ではどうやっても敵わないことは分かっていたがこっちの面では負けてはいないと、勝っていると言わんばかり。


「ち、違います……! そういうわけじゃなくて、その……」


なでしこはそんなようこの言葉に反論しようとするも流石にそういう話題を啓太の前ですることが恥ずかしく、黙りこんでしまう。ある意味で羞恥プレイのようなもの。古い貞操観念をもつなでしこにとっては当たり前の反応だった。だがそんななでしこの様子にようこはどこか妖しげな、楽しげな表情を見せる。まるでいいことを思いついたかのように。


「ふふっ、いいよ。じゃあ確かめてあげる♪」


ようこはそのまま楽しそうに笑いながらその指を振るおうとする。なでしこはそんなようこの動きに気づかない。それが一体何を意味しているのか。


「や、やめろ、ようこっ!?」


それを瞬時に理解した啓太は咄嗟にようこを止めようとするもそれは間に合わない。啓太はそれによって起こる事態を悟ったが故に凄まじい必死さを見せているもようこはそのまま無慈悲にその力を振るう。その瞬間


「………え?」


そんなどこかぽかんとしたなでしこの声が漏れる。一体何が起こったのか。フリーズしてしまったかのようになでしこはその場に固まってしまう。だがすぐに気づく。自分がどうなってしまっているのか。そこにはようこ同様、服が無くなってしまっている自分の体が、下着姿あった。

ようこの力の一つ、しゅくちによってなでしこは割烹着とエプロンドレスを奪われてしまったのだった。


「きゃああああっ!?」
「ぶっ!? な、なでしこ大丈夫かっ!?」
「け、啓太さん……そ、その、あんまり見ないでください……」
「え? あ、わ、悪い!? そ、そんなつもりは……」


そんななでしこの姿に思わず鼻血を出しそうになりながらも啓太は何とか耐える。しかしその視線が釘付けだった。ある一点に。それを感じ取ったのかなでしこは顔を真っ赤にし、両手でそれを隠そうとするも隠しきれていない。そんな二人の姿とは対照的にようこはその場に固まってしまっていた。だがようこはなでしこを下着姿にするためにしゅくちを使った。なのに何故固まってしまっているのか。それは


「あ、あんた、何でノーブラなのよっ!?」


何故かなでしこがノーブラだったから。そう、何も付けていなかったから。誰がそんなことを想像できるだろうか。確かに胸が小さければ付けていない女性ももしかしたらいるかもしれない。だがそれはあり得なかった。大きかった。もうそれ以外の言葉が出てこないぐらいデカかった。間違いなく超がつく程の巨乳。その両手で隠そうとするもこぼれでしまうほどの巨大な二つのメロンがそこにはあった。なのに何故ブラを付けていないのか。

冗談にも程がある事態にようこは驚愕し、口をパクパクさせることしかできない。恐ろしく着やせするなでしこに、そして間違いなく自分の胸を、おっぱいを凌駕するなでしこに戦慄していた。


「え!? そ、それは……その……」


なでしこはようこが言わんとしていることを理解するものの、それを口にすることが恥ずかしいのかそのまま視線を啓太へと向ける。自分がブラを付けていない理由へと。啓太はそんななでしこの視線に、そして同じように自分に視線を向けてくるようこによってその場に固まってしまう。そう、啓太はなでしこがノーブラであることを知っていたからこそ必死にようこのしゅくちを止めようとしていたのだった。


「っ! じゃあわたしもノーブラにする! ケイタはノーブラが好きなんでしょ!?」
「よ、ようこさんっ!?」


ようこは何度も啓太とノーブラのなでしこを見直した後、凄まじい勢いで自らのブラを外し、啓太に向かって晒してくる。大きさはなでしこには及ばないものの間違いなく美乳であるそのおっぱいを。啓太はとうとうその光景に鼻血を吹きだしてしまう。当たり前だ。何故かなでしこだけでなくようこまでその胸を晒してきているのだから。本当なら気を失いかねない程の絶景だった。


ちょっと、一体どうなってるわけ!? あれよあれよと間に何故か俺の犬神達が半裸になってるんだけど!? っていうかなでしこさん、何普通に俺のせいでノーブラにしてるんですっていう表情を見せてるわけ!? これじゃあ俺、自分の犬神にノーブラを強要してるみたいじゃん!? 完璧にどヘンタイじゃねえか!? い、いや……確かにノーブラは素晴らしいが決して無理やりやらしていたわけでは……っていうかお前、初めから付けてなかっただろう!? ノーブラの趣味、性癖なんてもっとらんっつーの!?


「な、何を訳の分からんこと言っとんだっ!? っていうか前を隠せっ!?」
「何でよ!? こっちの方がいいんでしょ? それともなでしこぐらい巨乳じゃないとダメなの!?」
「よ、ようこさん、落ち着いてください!」


そんな啓太の混乱など何のその。ようこはなでしこへの対抗意識でブラを外し、啓太へと迫って行き、なでしこはそんなようこを何とか抑えようと必死になっている。啓太はそんな二人に挟まれたままもみくちゃにされるしかない。傍目からも見れば羨ましいことこのうえない状況だったか巻き込まれている啓太にとってはそんなことなど関係なかった。


「なんでそうなるっ!? とにかく服を着ろっ!? こんなところ誰かに見られでもした……ら……?」


啓太が息も絶え絶えにその場を脱出しようとした瞬間、ふと気づく。それは玄関。先程まで誰もいなかったはずのその場所に人影がある。見覚えのある人影が。いつもとかわらない白い着物を着た犬神、はけがそこにはいた。


「「「………」」」


そのことに気づいたなでしことようこも動きを止め、はけへと視線を向ける。半裸のまま。啓太を間に挟んだもみくちゃの状況のままで。はけはそれをしばらく見つめ、そして深く目を閉じた後


「失礼しました。私はこれにて……」


そう静かに告げた後、すうっとその姿を消しながらその場から立ち去って行く。まるで何事もなかったかのように。まさに気遣いができるはけだからこそ可能な見事なスルーっぷりだった。


「ちょ、ちょっと待て、はけ――――っ!?!?」


啓太は絶叫を上げながらはけの後を追って行く。というか追いかけざるを得なかった。当たり前だ。新しい犬神を持った途端にこんな状況を見られたのだから。こんなことが祖母にバレたらどうなるか。最悪勘当させられかねない。なでしこはようやく自分が何をしていたのか気づいたのか慌てて服を着直している。ようこはそのままどこか不満げに啓太の様子を見つめているだけ。まるでいいところで邪魔が入ってしまったと言わんばかり。啓太は頭を抱えながらも必死に夜道の中、はけの後を追って行くしかないのだった―――――



(ったく……酷い目にあったぜ……)


啓太は心の中で愚痴をこぼしながらも電気を消し、自らの布団にくるまる。時刻は既に十二時を回ろうかというところ。明日、学校の啓太はそのまますぐ横になる。そして思い返す。散々だった今日一日の内容を。


あの後、何とかはけを見つけ、誤解を解いた後、再び啓太は家にはけと共に戻ってきた。どうやらようこのことが心配で様子を見に来たらしい。それ自体は嬉しいことなのだがいかんせんタイミングが悪すぎた、ある意味完璧だったといるのかもしれん。もうこいつは俺を驚かすタイミングでしか部屋に入ってこないに違いない。とりあえず俺もはけと話したいこともあったのでそのままようことなでしこを同時に風呂へ放り込んだ。有無を言わさず。ようこが何かずっと文句を言っていたが全て無視してやった。その間に俺ははけと話しあった。今の現状とこれからのこと。簡潔にいえばこのままではようこを俺の犬神にはできないということ。別に俺にちょっかいをかけてくる分には構わない……いやよくはないのだがまあそこはいいとしよう。だがやはりなでしことの関係は見過ごせない。今は表面化はしていないものの、二人きりの時にはどうなるかは分からない。それにいつまでもなでしこも我慢はできないだろう。最悪、二人とも潰れてしまいかねない。その前に俺がストレスで死にかねない。後一週間以内に何かしらの決着、妥協案を見つけない限りようこには悪いが山に戻ってもらうしかない。はけもそのことは了承している。元々そうなってしまう可能性は考えていたとのこと。同時にはけから伝言があった。それは薫からのもの。どうやらたゆねがちゃんと伝言を伝えてくれたらしい。薫からは明日の夕食に招待された。もっとも相談が本来の目的なのだが。何かいいアドバイスをもらえることを願うしかない。


啓太はそのままふと目を向ける。その両隣りにはなでしことようこがそれぞれの布団で横になっている。どうやらもう寝てしまっているようだ。本当なら女の子二人に挟まれて寝ると言う夢のようなシチュエーションなのだがもはやそんな余裕などないほど啓太は疲れ切ってしまっていた。啓太はそのまま深い眠りにつく。それがもう一つの戦いの狼煙になることに気づかないまま―――――



静寂があたりを支配している。時計の音だけが時間を刻んでいる闇の中、音もなく動き始める一匹のケモノがいた。ケモノはそのまま完璧に気配を消したまま、布団から姿を現す。


(ふふっ……やっと寝たみたいだね、ケイタ♪)


ケモノ、金色のようこはその名の通り、その両目に金色の光を宿しながら自らの主、いや獲物へと妖しい笑みを浮かべる。その目的を果たすために。そう、ひと言でいえば夜這い、もっと直接的に言うなら啓太を寝取るために。ある意味でもっとも単純かつ、確実な方法。

どうやらなでしこはそういった行為は啓太とはまだしていないらしい。奥手ななでしこらしいといえばらしい。ならそこに自分が付け入る隙がある。なでしこにはない積極性が自らの長所であり、武器であることをようこは知っていた。そしてきっと啓太はそうなれば責任を取ってくれるはず。ちょっとずるいような気もするが仕方ない。もともとあっちが先に抜け駆けをしたのだからおあいこだ。なでしこも寝てしまっている今が最大の好機。


ようこはそのまま自らの寝巻をはだけさせながら啓太へと距離を詰める。扇情的な、妖艶さを感じさせる姿を見せながら。知らず、ようこは息を飲む。体が昂る。震える。それは女の、ケモノの本性。雄を前にした雌の姿。


(いただきます♪)


ようこが抑えきれない本能のまま、啓太へと襲いかからんとしたその瞬間


「へぶっ!?」


ようこは何かに足を掴まれ、そのまま宙から地面、布団へと叩き落とされてしまった。顔面からヘッドスライディングをかますかのように。ようこはしばらくそのまま何が起こったのか分からないまま悶絶するもすぐに体を起こし振り返る。そこには


どこか言いようもない圧迫感を、必死さを見せているなでしこの姿があった。その手がしっかりとようこの足を掴んでいた。決して離さないと言わんばかりの力を以て。

その姿にようこは圧倒されてしまう。それは今まで見たことのないような姿。どこか自分に遠慮しているかのようないつものなでしこの姿ではない。ようこは悟る。なでしこがこうなることを分かった上でずっと寝た振りをしながら自分を監視していたのだと。いつもの姿からは想像もできない程の深謀遠慮ぶり。なでしこの本質を垣間見た瞬間だった。だがこのまま黙って引き下がるわけにはいかない。


『ちょっと、離してよ。これからいいところなんだから!』


ようこはどろんとそのお尻に大きな狐の尻尾を出し、それと共に身振り手振りをしながらなでしこへと話しかける。一言も言葉を発することなく。それは犬語と呼ばれる物。犬神たちは尻尾や、身振り手振り、表情の変化で声を出すことなく会話をすることができる。人間で言うならば手話に近い物、だがその内容は手話を大きく超えるもの。ケモノであるがゆえに可能な伝達手段だった。啓太を起こさないようにするためにようこはそれによってなでしこへと話しかける。自分の邪魔をするなと。


『駄目です、ようこさん! 啓太さんが寝ている間にそんなこと!』


なでしこも自らの尻尾を現しながら犬語によって反論する。そこにはいつもの遠慮がちな姿は全くない。絶対に譲れない、見過ごすことができないラインを越えようとしているようこへの対抗心だった。


『なによ、あんただって昨日ケイタに近づこうとしてたじゃない! それと同じよ!』
『そ、それとこれとは話が違います! それにようこさんだってずっと啓太さんといちゃいちゃしてたじゃないですか!』
『ふん、だったらあんたもすればいいじゃない。今までずっとそうしてたんでしょ? いい子ぶっちゃって』
『そ、それは……でも……』
『そのお化けみたいな巨乳で迫ればいいのにしなかったのはあんたでしょ? わたしはわたしのやりたいようにするから邪魔しないで』
『お、お化け……!?』


犬語によって激しく言い争いながらも二人は平行線のまま。身動きが取れない。端からみれば少女二人がよく分からない動きをしあっているようにしか見えないのだがその中では譲ることができない女の戦いが、応酬が行われていた。だがこのままでは埒が明かないとしびれを切らしたのかようこが実力行使に出ようとする。


『ああもう! うるさい! ちょっとどっかに行ってて!』


ようこが我慢の限界を超え、そのまま指を振るいながらその力、しゅくちの力を振るう。服を脱がせるためではなく、なでしこを遠くへと飛ばすために。その間に目的を達成しようと言う狙いだった。だがその瞬間、凄まじい霊力がなでしこを包み込む。


『なっ!?』


その光景にようこは驚愕する。なでしこの霊力に。かつて三百年前、自らの父と戦った時以来にみるなでしこの霊力だった。だがその力に戦慄する。そう、なでしこはその霊力によって力づくでしゅくちを払いのけたのだった。普通ならあり得ないような事態だった。まさになでしこの執念が、女としての執念が形になったかのような事態。それに気圧されながらもようこは必死に啓太へと迫ろうとするも、同じく必死にそれを阻止せんとするなでしこ。

そんな自分を、自分の貞操を巡る攻防が繰り広げられているとは露知らず啓太は眠り続けている。だが本能でそれを悟っているのか、どこか辛そうな表情をみせながらうなされている。どうやら悪夢を見ているらしい。恐らくはこれまでの日常と変わらないであろう悪夢を。


結局その攻防は日が登るまで続き、啓太が起きたことでようやく終わりを告げる。その際、何故か両目の下にクマを作ったなでしことようこに啓太が驚愕することになった。一体何があったのか。何となく想像はつくものの、啓太は結局それを聞くことはできなかった。


余談だが、この日を境に啓太が寝ている間には手を出さないという休戦協定が二人の間に結ばれたのだった―――――


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