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No.31760の一覧
[0] なでしこっ! (いぬかみっ!二次創作)[闘牙王](2012/05/06 11:39)
[1] 第一話 「啓太となでしこ」 前編[闘牙王](2012/02/29 03:14)
[2] 第二話 「啓太となでしこ」 後編[闘牙王](2012/02/29 18:22)
[3] 第三話 「啓太のある夕刻」[闘牙王](2012/03/03 18:36)
[4] 第零話 「ボーイ・ミーツ・ドッグ」 前編[闘牙王](2012/03/04 08:24)
[5] 第零話 「ボーイ・ミーツ・ドッグ」 後編[闘牙王](2012/03/04 17:58)
[6] 第四話 「犬寺狂死曲」[闘牙王](2012/03/08 08:29)
[7] 第五話 「小さな犬神の冒険」 前編[闘牙王](2012/03/09 18:17)
[8] 第六話 「小さな犬神の冒険」 中編[闘牙王](2012/03/16 19:36)
[9] 第七話 「小さな犬神の冒険」 後編[闘牙王](2012/03/19 21:11)
[10] 第八話 「なでしこのある一日」[闘牙王](2012/03/21 12:06)
[11] 第零話 「ドッグ・ミーツ・ボーイ」 前編[闘牙王](2012/03/23 19:19)
[12] 第零話 「ドッグ・ミーツ・ボーイ」 後編[闘牙王](2012/03/24 08:20)
[13] 第九話 「SNOW WHITE」 前編[闘牙王](2012/03/27 08:52)
[14] 第十話 「SNOW WHITE」 中編[闘牙王](2012/03/29 08:40)
[15] 第十一話 「SNOW WHITE」 後編[闘牙王](2012/04/02 17:34)
[16] 第十二話 「しゃっふる」 前編[闘牙王](2012/04/04 09:01)
[17] 第十三話 「しゃっふる」 中編[闘牙王](2012/04/09 13:21)
[18] 第十四話 「しゃっふる」 後編[闘牙王](2012/04/10 22:01)
[19] 第十五話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 前編[闘牙王](2012/04/13 14:51)
[20] 第十六話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 中編[闘牙王](2012/04/17 09:57)
[21] 第十七話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 後編[闘牙王](2012/04/19 22:55)
[22] 第十八話 「結び目の呪い」[闘牙王](2012/04/20 09:48)
[23] 第十九話 「時が止まった少女」[闘牙王](2012/04/24 17:31)
[24] 第二十話 「絶望の宴」[闘牙王](2012/04/25 21:39)
[25] 第二十一話 「破邪顕正」[闘牙王](2012/04/26 20:24)
[26] 第二十二話 「けいたっ!」[闘牙王](2012/04/29 09:43)
[27] 第二十三話 「なでしこっ!」[闘牙王](2012/05/01 19:30)
[28] 最終話 「いぬかみっ!」[闘牙王](2012/05/01 18:52)
[29] 【第二部】 第一話 「なでしこショック」[闘牙王](2012/05/04 14:48)
[30] 【第二部】 第二話 「たゆねパニック」[闘牙王](2012/05/07 09:16)
[31] 【第二部】 第三話 「いまさよアタック」[闘牙王](2012/05/10 17:35)
[32] 【第二部】 第四話 「ともはねアダルト」[闘牙王](2012/05/13 18:54)
[33] 【第二部】 第五話 「けいたデスティニー」[闘牙王](2012/05/16 11:51)
[34] 【第二部】 第六話 「りすたーと」[闘牙王](2012/05/18 15:43)
[41] 【第二部】 第七話 「ごきょうやアンニュイ」[闘牙王](2012/05/27 11:04)
[42] 【第二部】 第八話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 前編[闘牙王](2012/05/27 11:21)
[43] 【第二部】 第九話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 中編[闘牙王](2012/05/28 06:25)
[44] 【第二部】 第十話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 後編[闘牙王](2012/06/05 06:13)
[45] 【第二部】 第十一話 「川平家の新たな日常」 〈表〉[闘牙王](2012/06/10 00:17)
[46] 【第二部】 第十二話 「川平家の新たな日常」 〈裏〉[闘牙王](2012/06/10 12:33)
[47] 【第二部】 第十三話 「どっぐ ばーさす ふぉっくす」[闘牙王](2012/06/11 14:36)
[48] 【第二部】 第十四話 「啓太と薫」 前編[闘牙王](2012/06/13 19:40)
[49] 【第二部】 第十五話 「啓太と薫」 後編[闘牙王](2012/06/28 15:49)
[50] 【第二部】 第十六話 「カウントダウン」 前編[闘牙王](2012/07/06 01:40)
[51] 【第二部】 第十七話 「カウントダウン」 後編[闘牙王](2012/09/17 06:04)
[52] 【第二部】 第十八話 「妖狐と犬神」 前編[闘牙王](2012/09/21 18:53)
[53] 【第二部】 第十九話 「妖狐と犬神」 中編[闘牙王](2012/10/09 04:44)
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[31760] 【第二部】 第三話 「いまさよアタック」
Name: 闘牙王◆53d8d844 ID:e8e89e5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/05/10 17:35
「おお、川平、待っていたぞ!」

そんな聞き慣れた、渋い声が俺を出迎えてくれる。そこにはいつもと変わらない白いコートとスーツを身に纏った男、特命霊的捜査官仮名史郎がいた。今、俺たちは待ち合わせに指定された公園にいる。連絡を受けてからすぐに来たのだがどうやら待たせてしまったらしい。恐らく依頼した手前遅れるわけにはいかないということなのだろう。性格の真面目さがにじみ出ている、仮名さんらしさだ。まあそれだけなら尊敬に値するのだがいかんせんこれまでの前科があるので油断はできない。


「久しぶりだな仮名さん。元気そうでほんとによかったぜ」
「う、うむ……そこはかとなく恨みを感じるが君も元気そうで安心したぞ。死神相手に大立ち回りをしたと聞いた時には耳を疑ったが」
「それはもういいっつーの……で、今回の依頼は? 確か除霊とか言ってたけど」
「そうなのだが……川平、たゆね君はどこに? 一緒ではないのか?」
「ああ……それなんだけどさ……」


仮名さんの言葉に俺は事情を説明することにする。たゆねが幽霊を苦手にしていること。そのため除霊の依頼には連れてくることができなかったこと。ともはねは除外とのことだったのでともはねも置いてきたこと。もっとも、ともはねは着いてこようとしたのだがたゆねの手前悪いが今回は遠慮してもらったのだった。


「そうか……しかしそうなると別の方法を考えるしかないか……」
「よく分かんねえんだけど……俺と仮名さんじゃダメなのか?」
「いや……うーむ……」


俺の言葉に仮名さんはあごに手を当てながら何かを考え込んでいる。まるでそれを俺に伝えていいものかどうか思案しているかのように。そしてその時点で俺の第六感が、危機察知アビリティが感じ取る。この依頼がまともなものではないということを。既に電話の時点からそれはうすうす感じてはいたのだが。そもそもなんで女性の犬神の協力がいるのか。しかも俺とセットで。ともはね以外で。明らかに不自然だった。

そんな俺の猜疑の視線についに観念したのか一度深く目を閉じた後、仮名さんが話し始める。今回の依頼の内容を。


「今回の除霊相手は栄沢汚水と言う男の霊でな。生前は売れない小説を書いて生計を立てていたのだが……まあそれはいいとして、奴はカップルを、羨望を通り越して死ぬほど妬んでいた。その恨みの念のせいで悪霊と化し、カップルに被害を与えているのだ。何人かの捜査官が挑んだのだが返り討ちにされてしまい、今回私に任務が来たと言うわけだ」
「……何かどっかで聞いたような話だな。でもただの悪霊がそんなに手強いのか? 仮名さんだけで十分だと思うんだけど」


呆れかえりながらも一応尋ねる。まあそういう手合いだろうとは思ってたのでそれぐらいでは驚いたりはしない。この人からの依頼がまともだった試しがないし。でもそんな仮名さんでも実力は本物。それが俺に助力を求めるほどとなるとただの悪霊とは考えづらい。俺のもっともな疑問にどこか顔を引きつかせながらも仮名さんはその答えを口にする。それは


「うむ……実は非常に言いづらいのだが奴は私の先祖の魔道具を手に入れていてな。それと……その……奴の趣味はストリーキン」
「帰る」


俺を一瞬でこの依頼から手を引かせるのにあまりある事実だった。


「ま、待て!? 待ってくれ川平!? 黙っていたことは謝罪する、だがどうしても君の力が必要だったのだ!」
「やかましいっ! 何が除霊だ!? ただのヘンタイ退治じゃねえか!? そんなもんあんた一人で何とかしろ! 俺は帰る!」
「お、落ち着け川平! 奴はその怨念と魔道具のせいで魔王と成り果てている! その強大な力を打ち破るには私一人では……! それに君ならああいう手合いの扱いは詳しいだろう? 裸王と呼ばれているらしいではないか!」
「うるせえ―――っ!! 結局ヘンタイの後始末をさせたいだけじゃねえか!? あと次その名前で俺を呼んだら本気で爆砕すんぞ!」


仮名さんのヘンタイ魔道具にストリーキングのヘンタイ。まさに悪夢のような組み合わせ。ウルトラCじゃねえかっ!? ふざけんなよっ!? もう俺が全裸になる未来しか見えねえわ!? これは未来視どころのレベルじゃねえ、確定事項だ! 間違いない! 元々は自分の責任なんだから後始末ぐらい自分でしろっつーの!


「君はヘンタ……犬神使いだろう!? 正義を為すことが使命の君だからこそ頼んでいるのだ!」
「ちょっとは本音を隠せよあんた!? 喧嘩売ってんのか!? そんな正義は持っとらんから離れろ―――!?」


だが帰ろうとする俺の体に仮名さんが縋りつきながら止めようとしてくる。何とか振り払おうとするのだがそのたくましい肉体の力によって振りほどくことができない。何でこんな場所で、しかも昼下がりに仮名さんとくんずほぐれつせにゃならんのだ!? やっぱりこの人はピ――に違いない! 一刻も早く脱出しなければ! 俺は、俺はノーマルだ! 俺には、俺にはなでしこがいるんだあああ!

そんな心の声を上げながらも啓太はその状況から脱出することができないまま、人だかりができてくる。当たり前だ。昼下がりの公園で奇声を上げながら抱き合っている二人組の男たちがいるのだから。啓太は自らの運命を呪いながらも仕方なく仮名の依頼を受けることになるのだった―――――



「……ったく、それで何で女性の犬神の協力がいるんだよ?」
「うむ、奴はかなり神出鬼没でな。だが必ずカップルをターゲットにしている。そういった意味で君となでしこ君が適任だと思ったのだが……」
「あっそ……」


もはや突っ込む気にもならない。どうやらこの人は俺となでしこに囮捜査をしてほしかったらしい。ともはね以外の犬神と言ってたのにも納得がいった。ともはねと一緒に歩いてても兄妹にしか見えないだろうし。だがそんなヘンタイをおびき寄せるためになでしこを協力させる気だったとは……なでしこが出かけててほんとによかった。たゆねも連れてこなく正解だったな。ただでさえ幽霊が苦手なのにそいつがヘンタイとか最悪すぎる。そんなの目の前にしたらきっとトラウマになり、気を失ったであろう光景が目に浮かぶ。しかしこのまま男二人で考え込んでても仕方ない。何とかしなければ。一応依頼だし。報酬も弾んでもらえることにはなった(これまでの前科も消してもらえる)のでやることはやらなければ。


「さて、どうしたものか……」
「もうその辺でナンパでもするしかねえんじゃねえ?」
「ナンパ?」
「そう。ここでじっとしててもしょうがねえし、仮名さんなら警察だから協力してくれる人もいるんじゃねえ?」
「うーむ……確かにそうかもしれんがナンパか……そういった行為はどうも……」
「俺も手分けして探すからさ。捜査なんだし気にすることねえって!」
「そうだな……背に腹は代えられんか。よし、なら君は向こう側を頼む。一時間後にここに集合でいいか?」
「了解。じゃあ頼んだぜ、仮名さん」


なし崩し的ではあるが仕方ない。しかし仮名さんはどこか緊張した、ガチガチの後ろ姿を見せながら去っていく。やはりこういったことには耐性がないのだろう。まあ、彼女がいれば俺たちに依頼してくることもなかったんだし、当然といえば当然か……

おっとこんなことばっかり考えてる場合じゃない! 俺もナンパに……と言うと語弊があるが協力者を探しに行かなければ! だが心なしか興奮している、楽しんでいる自分に気づく。うん! 何か久しぶりだけど俺って元々こういうキャラだったよな! 最近めっきり真面目になっちまったような気がしていたのでいい機会だ! ここらでいっちょ勘を取り戻すとしますか。見れば可愛い女の子も結構目につくし、これは期待できるかも。俺、モテ期がきてるような気もするし、案外あっさりいけるんじゃねえ? よし、これは浮気じゃない! 仮名さんからの依頼をこなすためのミッションだ。やましい気持ちは何一つない。ではいざ、ナンパへ―――――!



啓太はよく分からない言い訳をしながらも、上機嫌に走り出し―――――そして撃沈した。



その過程すら描写する必要がないぐらいばっさりと、容赦なく振られまくった。啓太は勘違いしていた。なでしこと結ばれたことで自分がてっきりモテるようになったのだと、そう錯覚していたのだった。しかし少年の儚い、短い夢はものの一時間で消え去った。啓太はトボトボと、背中に哀愁を漂わせながら待ち合わせ場所へと戻って行く。


なんてこった……俺は……俺はなんて勘違いをしてたんだ……うん……きっと調子こいてたんだな。いや、罰があたったのかも。なでしこという女の子がいるのにナンパに浮かれてた俺への天罰に違いない。でも……でも、やっぱり悲しい。やっぱり男として一人の女性に縛られるのは抵抗がある。決してなでしこをないがしろにしているわけではないのだが、やはりそこは男のロマンだ! でも……うん、叶わないからロマンなのか。ちょっとなでしこにおみやげでも買って帰ろうかな。主に俺の精神衛生上の理由で。


まあそれはとりあえず置いておくとしてどうすっかな……そういえば仮名さん上手くやったかな。黙ってればいい男なんだし、警察だって言えば協力者の一人や二人捕まえられるか。ほんとにあれでも警察なんだし。


そんなことを考えながら待ち合わせ場所についた啓太を



「川平、遅かったな。どうだ、協力者を見つけることはできたか?」


どこか誇らしげに、一人で仮名史郎が出迎えてくれた。間違いなく失敗したであろうことが伺える状況だった。結局二人揃って誰一人捕まえることができなかったらしい。もっともヘンタイをおびき出すために協力させられる女性もたまったものではないのだが。


「か、仮名さん!? 一人も捕まらなかったのか!?」
「ああ。話しかけたのだが皆すぐに逃げて行ってしまった……やはり初めてだからか? 何が悪かったのか……」
「ちゃんと警察だって言ったのかよ!? そうすりゃ話ぐらい聞いてもらえるだろっ!?」


悩んでいる仮名に向かって啓太は詰め寄って行く。自分も誰一人捕まえることができなかったのはとりあえず置いておいて突っ込まざるを得ない。仮名は自分とは違いちゃんと警察であるというアドバンテージ? がある。なのに話すらできずに逃げられるなんてどう考えてもおかしい。一体どうして。だが


「うむ。女子高生ぐらいの少女たちに極秘の依頼として頼んだのだが……報酬を提示したのがいけなかったのだろうか?」


仮名の言葉が全てを物語っていた。その言葉に啓太は口を開けることしかできない。だがすぐに我を取り戻し、仮名へと追及していく。


「なんだそりゃっ!? なんでよりによって女子高生ばっかりに声かけてんだよ!? 他にも女性がいるだろうがっ!?」
「? 何かおかしいのか? 君の相手なのだから女子高生が相応しいと思ったのだが……?」
「おかしいことだらけだろうが!? あんたが女子高生に声掛けまくったら逃げるに決まってんだろう!?」


この人何考えてんの!? 確かに俺に合わせれば女子高生になるかもしれんが自分がそれに声かければどう見えるか、思われるか分かってねえのか!? コート着た怪しいおっさんが怪しい仕事で報酬くれるとかどうみてもピ――かピ――にしか見えねえわ!? いくら警察だって言っても信じてくれるわけねえ! 普通に余計なこと言わずに警察として同じぐらいの歳の女性に声かけりゃいいだけなのに何やってんのこの人っ!? 間違いなくヘンタイだっつーの!? しかもまだ理由が分かってないみたいだし、ほんとはこの人馬鹿なんじゃ……


もはや間違いを正すこともしたくないとばかりに啓太は大きな溜息を吐きながら頭を抱える。こういったことにはどうやら仮名さんは当てにはならないらしい(自分のことはとりあえず置いておく)。 どうしたものかと啓太が途方に暮れかけた時


「「お困りのようですね、啓太様! 私たちがお力になりますよー!」」


そんな甲高い、ハモった声が啓太達に向かって響き渡る。もうそれだけで声の主の性格が分かるような、お気楽そうな、はちゃめちゃな雰囲気がある。啓太と仮名はそのまま声の主、いや主たちへと振り返る。そこには瓜二つの、双子の少女の姿がある。左右で髪を結んでいる違いがあるがそれ以外は全く同じ容姿。入れ替わっても絶対に分からないであろうほどのそっくりさがある。


「君たちはたしか川平薫のところの……」

「はい! 序列七位のいまりと」
「序列八位のさよかでーす!」


仮名の言葉に続くようにいまりとさよかが元気よく、楽しげに自己紹介をする。仮名は突然の二人の登場に驚き、戸惑っているようだ。それは啓太も同じ。だが啓太はそのまますぐにジト目で、訝しむような表情でいまりとさよかを見つめ始める。まるで何かを疑っているかのように。だがそれを知ってか知らずか双子はいつものペースを崩さない。仮名はどこか様子がおかしい啓太の姿に気づき、しゃべらない啓太の代わりに代表して事情を聞くことにする。


「そ、そうだったな……ところで君たちはどうしてこんなところに?」
「たゆねに聞いたんですよ、啓太様が依頼で困ってらっしゃるって!」
「だから私たちが頼りないたゆねの代わりに啓太様のお手伝いに来たんです!」


仮名の言葉に迷うことなくいまりとさよかは答える。そこにはおかしいところ何もない。少なくとも仮名には感じられない。だが啓太はやはり変わらずどこか怪しむような、冷たい視線を二人に対して向けたまま。明らかに疑ってかかっている。流石に気づかないふりは難しいと感じたのか、双子もどこか居心地が悪そうな様子を見せている。そんな沈黙がしばらく流れた後


「……で、一体何しに来たんだ? 何か魂胆があるんだろ?」

「えっ!? な、何言ってるんですか、啓太様!?」
「魂胆だなんて、そんなものあるわけないじゃないですか!? 私たちは啓太様の力になりに来たんですから!」


啓太がぽつりと、だがどこか低い声で双子に向かって問いかける。その言葉にいまりとさよかはギクッという反応を示すものの、何とか平静さを装いながらそれを誤魔化さんとする。だがどっからどうみても怪しかった。きっと小学生でも騙せないようなしらばっくれだった。啓太はそのままじ~っと二人を見つめ続ける。当たり前だ。いまりとさよか。この双子の犬神は薫の犬神の中でも自分を嫌っていた犬神。それがいきなりフレンドリーに、しかも依頼を手助けに来るなどありえない。怪しさ満点、これを信じるくらいなら自分は間違いなく頭の病院送りになるだろう。どうせろくでもないことを考えてるに違いない。それは確信に近いものだった。

そんな啓太の視線に、態度に観念したのかいまりとさよかはあちゃ~という表情を見せた後、かしこまった態度をやめ、いつもどおりの雰囲気に戻っていく。悪戯好きな子供の様な無邪気さがある姿へ。


「ばれちゃいましたか。これを見破るとは流石啓太様!」
「やかましい! わざとらしすぎんだよ!? あんだけ露骨に嫌ってたのに一体どういう風の吹き回しだ!?」
「え、えっと、それは~その~」
「……そう! 今私たちの間では啓太様がブームなんですよ!」
「ブーム……?」


何言ってんだこいつら? 頭おかしくなったんじゃねえか? フラノもびっくりの天然になっちまったのか……可哀想に。一刻も早くごきょうやに、いや天地開闢医局に診てもらった方がいいんじゃないか?


そんな啓太の内心を知ることなく、いまりとさよかは白状する。それは一か月前。啓太が死神を倒してからのことだった。

それまで薫の犬神の中には二つのグループがあった。川平啓太を慕っているグループと嫌っているグループ。元々自分達は全員啓太に対してマイナスのイメージしかもっていなかった。儀式の珍事もそうだが、落ちこぼれ犬神使いとして川平家では問題児扱いされていたのだから。だがそんな中、少しずつ変化が生じてくる。

まずともはね。偶然知り合いになってからともはねは何故か啓太に懐き、遊びに行くようになった。だがともはねは小さな子供。そういうこともあるのだろうぐらいにしか双子は思っていなかったのだがごきょうやたち三人が啓太と一緒に依頼をこなしてからそれが大きく情勢が変わってきた。ごきょうやは元々啓太に関しては良くも悪くも言っていなかったのだが、フラノとてんそうもどうやら啓太のことを気に入ったらしい。それによって勢力はほぼ半々となった。せんだんは中立に近い立場だったので除外。残りは自分達とたゆね、いぐさ。

だがそれも啓太となでしこが屋敷に泊まりに来たこと、そして今回の死神の一件で激変してしまう。いぐさは元々男性恐怖症の気が強かったのが大きかったのだが、啓太が自分のことを覚えていてくれたこと、褒めてくれたこと、そして死神という存在を倒したことで認識を改めたらしい。もっともおどおどしていることには変わりないが。極めつけがたゆねだった。あれだけ散々悪口を言って嫌っていたにもかかわらず、ここ最近の変わりようはもう凄まじかった。お前本当に同一人物か、ツンデレにも程があるぞってぐらいの変わり身。面と向かっては言えないが。(裏切り者~!と言いながらからかったらたゆね突撃で追いかけ回されてひどい目に会った)そしてふと双子は気づいた。

あれ……? いつの間にか自分達だけ取り残されてるんじゃない? 他の子たちはどこか楽しそうにしながら啓太のことを話題にしたり、交流を図っている。なのに自分達はその輪に入っていけない。

いまりとさよかは基本的にお調子者であり、楽しいことが大好きである。その点ではフラノに近い。それに加え、流行にも敏感だった。みんなが知っていること、やっていることは自分達も加わらないと気が済まない、好奇心旺盛な性格。だが自分達は啓太と全くと言ってもいいほど接点がない。

このままではいけない! 何とかしなければ! そう思いながらもなかなか機会に恵まれず、今日ついにその機会(めちゃくちゃ強引なもの)を得ることができたのだった。


「だから啓太様、ちょっと私たちと仲良くなって下さいよ~!」
「私達も流行に乗りたいんです~!」
「なんじゃそりゃっ!? お前ら俺を何だと思ってんだよっ!?」


何なんだこいつらっ!? 人のこと何だと思ってんだ!? 現金すぎるにも程がある、というかそういうことを本人の前で言うんじゃねえ!? ある意味フラノを超える騒がしさ、はちゃめちゃさだ! しかも全く悪びれていないのがさらにタチが悪いっつーの!?


「ねえケイちゃん、ちょっと私たちを指揮してみてくんない? ちょっとだけでいいからさ~」
「そうそう、私達も若返ってみたーい!」
「だれがケイちゃんだっ!? っていうか何の話だ!? なんで俺が薫の犬神のお前らを指揮せにゃならんのだ!?」
「いいじゃないですか~減るもんじゃないし! はけ様は指揮したんでしょ~?」
「だから私達も、ねえいいでしょ~?」
「いいから離れろっ! うっとうしいんだよ!」


啓太は左右から纏わりついてくるいまりとさよかを振り払おうとするが二人は巧みにそれを躱しながら啓太をもみくちゃにしていく。


二人がここまでやってきたのは啓太とお近づきになるためもあったがもう一つ、大きな理由があった。それは啓太の指揮を受けてみたいという狙い。

きっかけは先日、屋敷にはけ様がやってきた時のこと。その際、啓太様の話題が、死神との戦いの話題が上がった。やはりみんなそのことは気になっていたらしい。あの時、啓太様にははけ様が憑いていた。だが今になって思うとそれは本来あり得ないこと。何故ならはけ様は人嫌いであり、宗家様以外の主を持ったことのないほど、宗家様に心酔している犬神。そんなはけ様が宗家様以外の誰かに一時的とはいえ憑くことなど前代未聞だった。そしてはけ様の話もいつもとは違っていた。端的にいえばベタ褒めだった。まるで宗家様のことを語る時のように啓太様のことをベタ褒めしていたのである。その光景にあのせんだんですら呆気にとられていた程。それがいぐさやたゆねが啓太様に対する認識を改めた大きな要因の一つになったのは言うまでもない。だがいまりとさよかにとってはその内容にこそ興味を惹かれた。

それは啓太様の指揮、犬神使いとしての力。はけ様の言葉によればそれはまさに神ががっており、まるで若返るかのような凄まじい感覚だったという。

いまりとさよかは外見こそ幼い(本人たちは認めていない)がその年齢は百歳を超えている。犬神の中ではそれほど歳をとっているわけではないのだがそれでも『若返る』というフレーズには興味を惹かれないわけにはいかなかった。そこで依頼の手伝いにかこつけてそれを体験してみたいと言うのが双子の企みなのであった。


「私達が啓太様の恋人役をすればいいんですよね? 任せてください! 両手に花ですよ、啓太様!」
「……え? 花? どこに花なんてあんの? 俺そんなものこれっぽっちも見えないんだけど?」
「またまたそんなこと言ってー! ほら、目の前にいるじゃないですかー!」


本気で困惑している啓太に向かっていまりはその胸元を広げ、さよかはそのスカートを見えそうで見えないところまでまくりあげ、セクシーポーズをとる。啓太を悩殺せんばかりの勢いを以て。だが


「どうする、仮名さん? ナンパ続ける? それともなでしこが帰ってくるまで待つ?」
「そうだな……しかしそうなると時間がいつになるか……」


だがそんな二人の姿にまったく意識を割くことなく啓太と仮名はこれからのことを相談している。まるで木でも見ているかのような視線を向けながら。


「ちょ、ちょっと啓太様!? 無視しないでください! ほら、こんなに際どいポーズをとってるんですよ!?」
「そうです! 煩悩の塊の啓太様なら失神ものの姿ですよ!」

「いや……別に何とも……」


まるで反応を示さない、いやあきれ果てている啓太の姿にいまりとさよかは驚愕し、戸惑いを隠せない。彼女たちにとって啓太は煩悩の塊。少しサービスすればころっとお願いを聞いてくれるとばかり踏んでいたからだ。啓太からすればともはねに毛が生えた程度の二人のそんな姿を見せられても嬉しくとも何ともなかった。二人以外の犬神ならば話は違っていただろうが。


「そんな……これに反応を示さないなんて……啓太様、やっぱりピ――だっていう噂は本当だったんですね……」
「ということは……なでしこも可哀想に……結婚早々ピ――になるなんて……」
「おいっ!? てめえら何好き勝手言ってんだっ!? 俺はピ――でもピ――でもねえええ!!」


啓太は勝手に勘違いし、さらに凄まじい誤解をしていく二人に向かって叫ぶが二人は我知らずとひそひそ話をし始める。その騒ぎと会話によって周りの人々が遠ざかって行くのだがそれに気づいているのは仮名だけ。


こいつらなに好き勝手に言ってくれてんの!? っていうかそんな言葉をぽんぽん使うんじゃねえ! その容姿でそんな言葉を平然と使われると危なすぎるわ! 年齢でいえばおかしくないもかもしれんが端から見ればヤバすぎるっつーの!


啓太がそんなめちゃくちゃな二人に振り回されながらもこれからどうしたものかと悩み始めた時



「けーた様―――!」


そんな少女の声が啓太達の間に響き渡る。だが皆、その声に呆気にとられるしかない。何故なら皆、その声に聞き覚えがなかったから。だが啓太様という呼び方をする以上それは薫の犬神であるはず。だがその声はその中の誰にも該当しない。そのまま啓太達は視線を声の主へと向ける。

そこには一人の少女がいた。慌てながらもこちらに向かって走ってきている。歳は十七、八程だろうか。だがその服装が普通ではない。ホットパンツに丈の短いTシャツ。まるでたゆねのような格好。だがそれはたゆねではない。

胸の大きさは恐らくはたゆねと同じぐらい、だが手足はたゆねよりも長く、すらっとしている。そして長い髪をツインテールにし、それを揺らしながらこちらにむかって走ってくる。間違いなくなでしこに匹敵するほどの美少女だった。だが啓太はそんな少女に全く心当たりがない。こんな美少女なら会っていれば忘れるはずがない。なら一体。そう困惑した瞬間


「見てください、けーた様! こんなに大きくなりましたー!」
「ぶっ!?」


啓太はそのまま突っ込んできたツインテールの少女によって抱きつかれる。まさかそのまま突撃してくるとは想像もしていなかった啓太はそのまま地面に押し倒されてしまう。いや、それだけではない。少女は興奮したように啓太にのしかかりながら抱きついてくる。その露出が多い格好によって胸の感触が、肌の感触が、匂いが啓太へと襲いかかる。啓太はそれにされるがまま。ショックでフリーズしたまま、身動きを取ることができない。


「川平……なでしこ君という女性がありながら、ふしだらな……」
「これって修羅場って奴? 私初めてみちゃった……」
「告白してすぐに浮気なんて、やっぱり啓太様は……」

「ちょ、ちょっと待てお前ら!? 好き勝手言ってないで何とかしろっつーの!!」


どこか引き気味に事態を眺めている三人に向かって啓太が息も絶え絶えに反論するもその少女の抱きつきから脱出することができない。それは決して啓太が非力だからでもその感触を味わっているからでもない。少女の力が明らかに人外のものであるため。その証拠にそのお尻から尻尾が生えている。頭のツインテールのように二つに分かれた尻尾が。


…………ん? あれ? 俺、この尻尾、どこかで見たことあるような気がするんだけど……そういえば、この女の子の顔、何かどっかで見たことあるような……


啓太は改めて目と鼻の先にある少女の顔を凝視する。大きな瞳、整った顔立ち。だがそこに面影がある。そう、いつも目にしている小さな少女の確かな面影が。


「お、お前………もしかして……?」


「はい! ともはねですよ、けーた様!」


少女、ともはねはその大きな胸を張りながら自信満々に返事をする。瞬間、啓太達の時間が止まる。凍りつく。まるで信じられない物を見たかのように。いや、実際にそれを目の当たりにしたことによって。長い沈黙の後



「「「えええええええええ―――――!?!?」」」


公園に四人の絶叫が木霊する。


ともはね(推定十七歳)の乱入によって啓太はさらなる混乱へと巻き込まれることになるのだった―――――


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