前回の魔法少女リリカルなのはOOO/StrikerS は・・・
一つ!映司達が迷い込んだ研究所は非道な人体実験を行う違法研究所だった。
二つ!!違法実験を目の当たりにした映司達を襲ったヤミーは研究所所長シビエが新たに作り出したメダルの力で自らを変化させた姿だった。
そして三つ!!!嬉々として自分の非道な行為を話すシビエ。しかし自身の不用意な発言が映司達の逆鱗に触れてしまい変身を果たしたオーズの怒りの反撃が開始された。
第7話 メダルの力とアンクの体と機動六課への誘い
☆
side シビエ
・・・・何故、私が逃げなければならない?
・・・・私は『進化』した。人間などという下等なモノと決別し力を得た。
この爪はどんな岩盤も削り抜き地中を自在に移動でき、その一撃は鉄に爪痕を刻むほど鋭い。身体能力も魔導師達の強化魔法よりも高い性能を誇る。並みの魔法程度では傷すら付かず弾いてしまう変質した皮膚。
そう、負ける要素などありえない。・・・・・・相手が本物の『化物』でもなければ・・・・
鉄すら刻む自慢の爪に目を向ける。そこには、長く鋭かった爪は何本かが中ほどから砕け、魔法すら弾く鉄壁の皮膚はへこみ、爪痕のような傷が幾つも付いている。
既に再生が始まっているが傷が深いのか中々治らない。
「くそ!・・『化物』め・・よくも・・・」
そう言って先程の戦闘を思い出す。
いきなりの蹴りに驚いたが気を落ち着け相手に襲い掛かった。だが、簡単にかわされ反撃とばかりに顔面を殴られ床を転がる。
床をぶち抜き地中を高速移動し相手の背後などの死角から奇襲をかけたが全て紙一重でかわされ、相手の爪で切り裂かれ、さらにとんでもない脚力で蹴り飛ばされる。
なんとか蹴られて距離が開いた隙に部屋を抜け出し逃走したがこのままでは自分も自分の研究もここで終わってしまう・・・・嫌だ・・・これからなのに・・・ここから奴らを見返してやるはずだったのに・・私の才能を認めず、馬鹿にしてきた愚か者共にこの力で思い知らせてやるはずだったのに・・・・・・なんとか・・・何かないか・・あの化物を殺せるもの・・・!!・・そうだ・・『アレ』だ・・私と同じ境遇の『彼』がくれたアレを使えば・・・・くくく・・なら奴をそこまで誘導しないとな・・・待っていろよ化物め!
side シビエend
☆
その頃シビエを追うオーズたちは・・・・
「ったく・・もう少し考えて攻撃しろ、このバカ!」
「・・・仕方ないだろ・・ちょっと頭に血が上ってたっていうか・・・それよりアンク、アイツの気配は?」
「・・・・くそっ!またか・・」
「見失ったのか?」
「・・・どうやらあのヤミーは俺が知ってるヤミーとは少し違うらしいな」
「・・どの辺が?空港で闘った奴とそんなに違うように思えないけど・・」
「あの時ヤミーは爆発のとき偶発的に『ウヴァ』のメダルで生まれたもんだ・・コレに関しては俺の知ってるヤミーだ、だから気配も分かるしある程度だが行動パターンも読める。だが、さっきの奴は俺の知るヤミーとはほぼ別物だ。おそらく奴が言っていた『リンカーコアとの融合』ってのが原因だろうが、そのせいかヤミー化してるにも関わらず『親』の意思を強く残して・・・いや・・統合してるんだな・・とにかくその所為で感知し難いんだよ・・・チッ!コソコソ隠れやがって・・・」
吐き捨てるように悪態をつくアンク。とりあえずどうするかオーズが聞こうとした時、
<隠れるというのは聞き捨てならないね・・『腕』君>
「「!?」」
オーズ達の居る通路にあるスピ-カーからシビエの声が聞こえてきた。
咄嗟に身構えるが状況に変化がないことに疑問を感じる二人だったがその疑問も続いて聞こえてきたシビエの話で解消した。
<私は隠れたのではないよ。君達というイレギュラーをどう扱えば+に働くか考慮して準備を始めただけだよ>
尊大な雰囲気で話すシビエに
「ハッ!モノは言い様だな。モグラらしく土の中で震えてひきこもってるだけだろうが」
皮肉を叩きつけるアンク。それを聞いたシビエは、
<・・・・私は慈悲深い男だ・・・きみたちが愚かな抵抗を止め投降するのなら特別待遇で扱ってあげるよ・・・どうかね?>
「・・・えーと・・」
「・・コイツやられ過ぎておかしくなったか?」
先程あれだけ叩きのめされ、怯えながら逃げ出したにも拘らずいまだ上から目線で話すシビエ。二人は理解に苦しむがこのままでは状況が変わらないと判断したアンクは挑発するように話し出す。
「ずいぶんと強気だが隠れたまま吠えても説得力ないんだよ、クズが!」
すると、オーズ達の前に矢印のホログラフが現れ、矢印はそのままゆっくりと進みだした。
「ついて来いって事かな・・どうする?」
「どう考えても罠だな・・・が、選択肢なんぞ他にないだろ。まあ、あの程度の奴なら正面から力で叩き潰せばすぐ終わる・・・行くぞ」
☆
「・・・・なんか、どんどん下のほうへ行ってるけど・・」
「地下室って所だろうが・・・・いくらなんでも降りすぎだろ。まあ、モグラらしいといえばらしいが・・」
そう話しながら二人は誘導に従って地下への階段を下へと降りて行く。
そして、薄暗い空間で誘導が消えた先には大型の車両すら楽に通れそうな大きな扉があった。
二人が扉の前に立つと扉が左右に僅かに開いた。僅かといっても4mほどの幅があるのだが扉が巨大すぎてそんな錯覚を感じるのだが。
「入れってか・・」
「行こう」
そうして扉をくぐり先に進むとそこは真っ暗な場所だった。
「暗闇にまぎれて奇襲する気か?」
アンクの言葉に警戒するオーズ。
すると、突然猛烈な光が広がった。
「「!?」」
咄嗟に防御体制をとるが少ししても何も起こらないので周りを見回すとそこは、
「・・・・何・・ココ?」
「・・・・アレは観客席か?」
そこは、広い空間に直径100mの円形に整備されたグラウンドで周囲を8mはある壁で囲いその上に観客席のようなものが幾つもある研究所にしてはかなり異質なものだった。
疑問に思う二人にスピーカーからシビエの声が聞こえてきた。
<どうかね?私の自慢の試験場は?>
「試験場?」
<ああ。ココは調整した作品の力を試す場所なのさ、それと『スポンサー』に向けてのデモンストレーションの様なものも兼ねているがね>
「なるほど、要は闘技場か。・・・・で?ココでお前の自慢のオモチャと遊べとでも言う気か?まあ懸命だな、お前『ごとき』じゃオーズには勝てないんだしな」
アンクは挑発するように話す。アンクのとって未知のコアメダルとその情報を持つシビエは必ず掴まえておきたい相手だ。
確かに戦闘ではヤミー化したシビエはオーズにとって大した脅威にはならない。
だが、隠れる、逃げるということになるとかなり厄介で壁・床・天井を削って潜られるとこっちは奇襲に対応はできても追跡ができないので捕まえられない。
だからこそアンクは挑発でシビエを引っ張り出そうとしているのだ。
シビエは高い自尊心をヤミー化でさらに肥大化している。そのプライドを突けば怒りに任せて自ら出てくるとアンクは予想していた。
<・・・いいだろう。少し力があるからと附け上がったその態度を調教してから実験するとしよう>
「(ハッ!やはりクズだな。自分が何でやられてるのか理解すらできてない)御託はいいんだよ!とっとと出て来い!」
アンクは内心ほくそ笑む。
シビエの地中からの奇襲攻撃が悉く通じない理由はオーズの使うタカメダルの具現たる『タカヘッド』と呼ばれる頭部部分の緑の複眼『タカアイ』にあった。
タカアイは高度に発達した視覚器官で高角度・広範囲をカバーし最大で8km先の人間の識別を可能にし、奇襲を防ぐ最大の理由の最小識別距離は0.02mmの物を区別できる。
つまり、その力で地中から飛び出し攻撃するまでにオーズはそれを見切ることができるのだ。
しかも、近距離の攻撃を回避できるほどオーズの身体能力が高い為シビエの攻撃は当たらないでオーズの攻撃は当たるといった結果になっていたのだ。
シビエの攻撃がもっと速いか真下から攻撃すれば違うのだろうが、速度は既に最大なのでこれ以上は無理で真下の奇襲は万が一にも組み合ってしまう可能性があった為できなかった。
少ししてオーズ達の対面にあった扉が開くとそこからシビエ(怪人体・モグラヤミー)が現れた。
「やあ、先程は世話になったね」
なぜか余裕の態度のシビエに疑問を感じるがオーズはシビエに話しかける。
「・・シビエさん、自分の罪を認めて自首してくれませんか?」
「おい!なにバカなこと言ってやがる。さっさと叩き潰せばいいだろうが!」
「そういうわけにいかないだろ!」
「・・ちっ、このバカは・・おい!おま「待ってもらえるかな」・あ!?」
言い合いを始めた二人を止めたのは意外にもシビエだった。
「君達は私に勝つことを前提に話しているようだが・・・なめすぎではないかね?」
そう言ってシビエは軽く手を掲げる。
「・・確かに、今の私では君達に劣るかもしれない・・・だが!」
次の瞬間闘技場の壁に幾つもの四角い穴のような物が出現する。
「今の私を超える君の力を手に入れれば私は『あの存在』に近づける!あの圧倒的な存在に!だから・・・・・よこせ・・・・Gi・・よコセ・・・・がアGigi・・・よこせぇぇぇェェェェェェエ!!!!!!」
「!?・・なんだ、なにが・・!・・くっ!?」
「・・これは・・!?・・ちっ!おい映司!油断すんな!」
絶叫と共に豹変し襲い掛かるシビエの様子に驚くオーズだが攻撃を何とかかわし反撃に出る。
「この・・がっ!?」
しかし、いきなりの後ろからの攻撃にやられて倒れこむ。しかしすぐ起き上がり周りを見ると、
「なんだ、これ!?」
「・・・・あのクズが強気に出てた理由はコレか」
周りにはカプセルのような形をした機械(後にガジェットと呼ばれる機体・以下ガジェット)が何体も宙に浮遊していた。
そしてそれは一斉にオーズ達にレーザーを放った。
「うわっ!?」
「っくそ!」
なんとかレ-ザーをかわすがそこへ暴走したシビエが攻撃してきた。
「くあっ!?」
爪で引っかかれ仰け反るがオーズは何とか踏みとどまり体勢を立て直し周りを見るがシビエの姿は何処にもなかった。
「・・・どこに・・あ!そうか地中に・・」
また地中に潜ったことにきずいたオーズは下を警戒するが、そこへガジェットからの攻撃が襲い掛かる。
「・・!?・・っく!・・この!・・」
何とかガードして近くの一体をトラクローで破壊する。
しかしそこへ、
「GYUIiiiiiiii!!」
「ぐああぁぁぁ!!!」
地中からシビエが強襲しオーズは吹っ飛ばされた。
転がりながら何とか起き上がり体制を整えるがそこに再びガジェットのレ-ザー攻撃が降り注ぐ。しかも、先程開いた穴から次々とガジェットが射出されていてキリがない。
「くっ!このままじゃ・・・アンク何か手は・・・アンク?」
防戦一方のオーズはアンクに指示を求めるが返事がないので周りを見回すとアンクは何処にもいなかった。
☆
その頃アンクは・・・
「くそっ・・次から次にきやがって・・」
細い通路のような場所に居た。
「どこまで続いてんだこの通路・・!!・・おわっ!」
アンクが慌てて通路の隅に張り付くと、その上を先程襲ってきた機械が浮遊し滑るように通り抜けていった。
そう、ここは先程のガジェットを排出していた穴の中だった。
(あのままだとマジでやばそうだからな・・・あのガラクタさえどうにかすればヤミーはどうとでもなる。しかしまさか暴走するとはな)
アンクにとってシビエの暴走は予想外だった。暴走しヤミーとしての本能に飲み込まれた者はそのまま欲望を増大し見境なく暴れまわる。人間などのことはどうでもいいがここの施設にある情報は手に入れておきたいのでここが破壊される前に止めたいのだ。
しかし、暴走でパワーアップしたヤミーにオーズの邪魔をする機械。どちらかを止めないと戦況は不利のままだ。
だからアンクは外と繋がっていそうな場所から脱出し、機械を操る大元を破壊する為に行動していた。
「・・・ん?・・ここか!」
ようやくアンクは通路を抜け広い空間へ出る。そこは、
「・・・最初に見た保管庫か・・」
アンクがここを探っていたとき発見した実験体の保管場所だった。
立ち並ぶ人間の入ったカプセル、それに構わずアンクは部屋の外へ向かった・・が、突然細長いコードのようなものが襲ってきた。
「・・!!・・こいつは!?」
何とか回避したアンクが見つけた襲撃者はオーズを襲っているのと同じカプセル型の機体だった。
「ちっ、ガラクタが邪魔すんな!」
迫るコードを掻い潜って機体を攻撃するが少し後退したり装甲にかすり傷が付くだけだった。
「(・・くそ!腕だけの状態じゃマトモに戦えない・・どうす・)・!?・・ぐあっ!」
相手は考えをめぐらしていた隙を突くように数本のコードを束ね腕のようにしてアンクを殴り飛ばした。
吹っ飛ばされたアンクはそのまま並ぶカプセルのひとつに激突し余程の衝撃だったのかカプセルにヒビが入りすぐに割れて『中身』が液体ごとその近くに落ちたアンクに降りかかった。
そして、そこに機械が近づき・・・・
グシャ!!
鈍い音が部屋に響いた。
☆
一方オーズはいまだに防戦一方だった。
機械を何体か破壊したが次々出てくるのでキリがなく、その隙を突いてヤミーが攻撃を仕掛けダメージを受け再びレーザーが襲う。この繰り返しだった。
一回一回の攻撃はそれほど大きくはないがさすがに何度も喰らっているときつくなっていく。
「(・・このままじゃ・・・何とかしないと・・)・・!!・・くっ!」
状況を打開する為と考えようとした隙を突くようにレーザーが襲い掛かり、オーズは咄嗟にジャンプして避けるが、飛び上がった自分に向かってモグラ塚が延びているのを確認した。
「まずい!?」
咄嗟に高く跳び上がってしまったことでオーズは無防備を晒してしまう。
たとえオーズといえど空中では自由には動けない。
ヤミーはそれを狙って急速にこちらに向かって掘り進んでいる。
そして、地面が近くなったタイミングでオーズの背中側から弾丸のように地中から飛び出し襲い掛かった。
(やられる!?)
何とか向きを変えようとしたが間に合いそうになかった。
その瞬間、映司の脳裏に今までの過去が走馬灯のように流れた。
--------------------------------
燃える空港で出会ったアンクと青い髪の少女
旅先で出会った人の顔や出来事
映司と笑顔で握手する少女
-うわぁぁぁぁぁぁぁん-
瓦礫の中で泣きじゃくる少女と
手を伸ばす自分
そして・・・
炎に飲まれた・・・・・・
『ウワアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
----------------------------
「う・・・オオオォォォォォォー!!」
オーズが吠えたと同時にオーズドライバーが淡く光りだす。
そして次の瞬間、オーズの足元に直径30cm程の正三角形に剣十字を刻んだ小さな『魔法陣』が現れた。
オーズは咄嗟にそれを踏み軽く跳びあがる。
その結果、飛び掛ったヤミーの攻撃は空中でのオーズの軌道転換に着いていけず空を切りオーズはヤミーの空中で無防備をさらした背中を獲る形になった。
当然そんなチャンスを逃すはずがなく、トラクローでその背を切り裂きバッタレッグで蹴り飛ばした。
ヤミーはメダルを撒き散らしながら地面を転がり宙に飛び散ったメダルに混じってシビエがフラスコに入れて持っていたコアメダルがあった。
「・!・よっと・・・コレ使えるかな?」
フラスコを割ってメダルを掴み覗き込むがとっさにガジェットのことを思い出し周りを見るが
「・・・・え?」
そこには、機能を停止し地面に転がっているがジェット達の姿だった。
「・・なんで・いきな<おい!>・・!?・・アンク?」
唐突にスピーカーから聞こえてきた声はいなくなっていたアンクだった。
<ガラクタどものシステムは停止した!あとはヤミーだけだ、とっとと片づけろ!>
「どこに行ったかと思えば・・・よし!」
気合を入れ直して手にしたメダルを確認し、
「絵柄どうりの力なら・・たぶん、いける!!」
そう言うとベルトのトラメダルと手にしていたメダルを入れ替えスキャンする。
<タカ!><クマ!><バッタ!>
音声と共にオーズのオーラングサークルの黄色のトラの紋章が浅黒いクマの紋章に変わり、腕の部分のトラアームが変化し、浅黒く手から肘までを覆うような厚みのある手甲と太く鋭い爪を持つ『クマアーム』に成る。
オーズ・亜種形態『タカクバ』
ヤミーの方を見るとふらつきながらも地面を掘って攻撃に移ろうとしていた。
それを見たオーズはさらにメダルをスキャンする。
<Scanning Charge!!>
更なる音声と共にメダルの力が解放される。
オーラングサークルのクマの紋章が輝き其処から腕へと繋がるラインドライブに光が奔り、手甲からオーラが立ち昇る。オーラはクマアームの腕を拡大したような形で固定されオーズはそれを体ごと捻るように横に振りかぶり止まる。
更に、タカの紋章が輝き視覚が更に強化され、そしてそれは、地面の僅かな変化も瞬時に捉える。
オーズの正面の土がほんの僅かに盛り上がる瞬間を捉えたオーズは
「セイヤァァァァァァァ!!」
「Gyugiiiiiii!?」
溜めた力を解き放ち思い切り腕を振り抜く。
それはスウィングの軌道にある地面ごとヤミーを張り飛ばし、そのまま弾丸のような勢いで壁に激突したヤミーはその衝撃でメダルを撒き散らしシビエが使っていたコアメダルが飛び出した瞬間モグラヤミーはシビエに戻り、シビエもボロボロの状態で倒れて気絶した。
油断せず様子を疑ったがまったく起きる気配がないので近づいて撒かれたメダルの中からコアを拾うと、
「・・・はぁぁぁ~・・やっとおわった~・・」
ようやく警戒を解き近くに落ちていたがジェットのコードを利用してシビエを縛って自身の変身を解く。
そして自分の足元を見て先程の戦闘を思い返す。
-危機に際して発現した『魔法陣』-
「・・・・・・『また』使えるとは思わなかったな・・・」
俯き少し複雑そうに呟いたがすぐ気を取り直して顔を上げる。
「アンク!聞こえてるんだろ!お前一体何処にいるんだよ」
大きな声で呼びかけると、
<少し待ってろ・・誘導してやるからとっとと来い・・・後メダルは一枚残らず拾っとけよ!>
言い終わると映司の前に誘導のホログラムが現れ進みだし映司はそれに従って歩き出した。
☆
映司が誘導され付いたのは『中央電算室』と書かれた部屋だった。
中に入ると其処にはロープで縛られ床に転がされて気を失っている研究員らしき男達が数人。
そして、部屋の左奥で入院患者のような服を着た金髪の男が黙々とコンソールを操作していた。
「・・えっと・・」
状況が分からず立ち尽くすが
「ん?・・やっと来たか映司。メダル全部拾ってきたんだろうな?」
男の右側に赤い異形の腕を見つけ安堵する映司。
男の方に近づきながら疑問を口にする。
「拾ってきたけど・・・ていうかこの人、誰?・・もしかしてこの人が協力してくれたのか?」
その質問に男が立ち上がり振り替える。
「・・・・え?」
映司は、その光景に驚き声を失う。
少々目つきの悪い金髪の男の右側にアンク(腕)がいた。これだけならここまで驚かないが、男の腕に腕だけのアンクが一体化しているのは創造の右斜め上を行っていた。
「な!?・・なにが・・アンクどうなってんだよ!」
ようやく声を出した映司に男『が』答えた。
「どうしたもこうしたも・・・俺がこの人間の体を『使ってる』だけだ」
それを聞いた映司は寒気を覚えた。
「ま・・まさかお前・・アンクか?」
「ああ」
否定して欲しい可能性をあっさりと肯定するアンク。
剣呑な空気を纏わせて映司は更に問う。
「・・・その体の持ち主はどうしたんだよ・・」
「あ?今も眠ったまんまに決まってんだろうが」
「・・お前!?なんて事を!・・っこの!この人から離れろよ!」
「・・!?・・うお!?・・このバカ!よせ!」
アンクの返事を聞いた瞬間、映司はアンクの右手・・本体を掴み引き剥がそうと引っ張る。
アンクは抵抗し引っ張り合いになるがやがて、
ズルリ!
そんな音を立ててアンクの本体が腕から抜けた。
「あ!・・よかった~取れた!」
その結果に喜ぶ映司だったが、掴まれたままのアンクは、
「喜ぶのは良いんだがな・・・俺が離れたら十分持たないぞ『ソイツ』の命・・」
「・・・え?」
アンクの言葉にアンクが指差した方を見ると、糸が切れたように男は倒れていた。
「・・・え?・・ちょっ!?ウソ!・・ちょっと待って!!・・・・くっ付け・・くっつけて!」
映司は慌ててアンクと男をくっつける羽目になった。
☆
「・・・離れたらもたないって・・・じゃあもうその人は・・・」
残酷な現実に天井を仰ぐ映司。
「手に入れたのは偶然だがこの体は思わぬ拾いモンだったな」
そう言って滑らかな手つきでコンソールを操作するアンクを見て
「アンク、お前800年も前に封印されたんだよな?」
「あ?それがどうした?」
「いや、だとしたらなんでコンピューター使いこなせるんだよ。800年前のお前の世界ってそんなの在ったのか?」
「あるわけねーだろうが。だからさっき言っただろうが『思わぬ拾い物』だってな」
「?」
いまひとつ理解できない映司を見てアンクは溜息をつきながら説明する。
「いいか?俺が自由にできるのはな肉体だけじゃない。頭の中身もだ」
「!!」
「要するにこの体にはそういった技術知識が結構あったんでな、ここの情報も集めやすい」
「あ!だからシビエさんを連れて来なくても良いて言ってたのか」
「ああ、もうアイツに聞くことはないからな・・・ところで映司、集めたメダル全部出せ。変身に使った分もな」
「はいはい・・ほら」
そう言って映司は持っていたメダルをアンクに渡す。
アンクはメダルを掴んで取り込んでいき最後にシビエが造ったコアが残った。
「・・・あれ?このコアメダル・・こんな色だった?」
残ったメダルを見て疑問の声を上げる映司。
映司達が最初にシビエに見せられたとき黒縁に白い円盤、黒い線で描かれた絵柄だった。
だが、今ここにあるメダルは黒縁は変わってないが円盤は半透明の乳白色になり、絵柄の黒い線が白くなっていた。
「・・・・ふん、データどうりか・・所詮紛い物って事か・・」
「紛い物ってどういうことだよ?」
映司が質問するとアンクは表示されていたデータを切り替える。
そこにはシビエのメダルが表示され詳細なデータが記されていた。
「このメダルはな、元になった物のデータを使ってセルメダルの力を圧縮して造ってあるんだよ」
「セルメダルで?」
「ああ。だから、溜め込んだ力を使い切るとこうなって力を失う。また使うならいちいちセルをチャージしなくちゃならない・・こうやってな」
そう言ってアンクは足元にあったポーチほどの大きさの箱を見せた。
箱を開けると中はメダルのはめ込む窪みと投入口、何かを表示する為の小さなモニターがあった。色の変わったコアを窪みにはめ込み、セルメダルを数枚投入すると低く音を立てて起動しモニターに『Charge・6%』と表示された。
「しかも・・」
そう言ってアンクはもう一枚のコア『モグラ』を摘むとパキンッ!という音を立ててメダルが砕け消滅した。
「!?これって・・」
「オーズにやられたからだろうが・・強度にしても『俺達』のコアとは比べ物にならんほど脆い・・だから紛い物なんだよ。コアと呼ぶには程遠いな・・」
「・・・『フェイク・コア』」
「あ?」
「え?・・あ、いや・・もし呼ぶならこうかなーって・・」
「・・Fake(偽物)か・・まあそれでいいだろ・・呼び方なんぞどうでもいいしな」
そう言って再びコンソールを操作し始める。
「そういえばお前さっきから何を調べてるんだ?」
「・・さっき言ったがフェイクを造る為の『元になった物』だ」
「・・・元になった・・・まさか!」
「そうだ、こいつらどうやら『俺達』のコアメダルを使って研究してやがるんだよ。あのクズ野郎はさも自分だけが完成させた風に言ってたが・・デ-タを見る限り幾つかの研究施設に分散して実験してるな・・この分だと結構な規模の組織なのかもな・・・」
「・・・・ここのほかにも同じような場所が・・・」
それを聞いたエイジは顔を俯かせた。
幾つかの操作を済ませたアンクは手の平サイズの通信端末を接続する。どうやらデータを移動してるようだ。
「おい、映司ここのフロアに近くの町につながる転送ポートがある。作業が終わったら移動するぞ」
「移動するって・・何処に?」
「はあ~・・言ったろうがこいつらの組織はメダルを集めてる。だからそれを全部ぶんどってやるんだよ!」
当たり前のように物騒なことを言い始めるアンク。
「・・・それはいいけど・・・その前にここの通報とその体を病院で診てもらわないと・・」
映司アンクの体を差して言うが、
「冗談だろ、こんな都合のいいモン簡単に手放せるか。この体は俺が使う!」
「そんなわけにいかないだろ!お前が付いてなけりゃヤバイほど危険ならなおさら・・」
「お前・・バカだろ。いいか?この体は遺伝子レベルの違法改造措置の所為で体中に拒絶反応が出てる、それがこの体が持たない最大の理由だ。それを俺が押さえ込んでるから持ち堪えてるだけなんだよ」
「だから!その間に治療すれば・・」
「だからバカだって言ってんだ。俺が付いてる間異常が無いのにどうやって医者がそれを見つけるんだよ」
「・・・あ・・」
そう、アンクが付いていれば異常は出ない。だが医者はその異常が出てなければ何処を治療すればいいのか分からない、そういうことである。
「・・・だったら・・」
「『管理局』・・・って言う気ならそれこそ無駄だぞ・・」
「!?・・なんで・・」
「考えてみろ、この体は違法実験の証拠品だ奴らが何もしないとでも?というかそれ以前に俺自身がそいつらに関わる気が無い・・危険物扱いでメダルを奪われかねないんでな」
800年前の消失世界の遺物・・管理局が危険物として回収・管理している『ロストロギア』の定義にぴったりのオーメダルは間違いなく封印対象である。そんなことされるくらいならアンクは間違いなくこの体を捨てるだろう。そうなったら体はすぐに死んでしまう・・。
どうすればいいのか悩む映司にアンクはささやくように話し出す。
「『この体』を助ける方法が無いわけじゃないぞ」
「!?」
その言葉に顔を上げる映司。
「メダルを集めろ!特にコアメダルを!そうすれば俺は本来の力と体を取り戻せる。そうすればメダルの力で少しではあるがこの体も回復していくだろうな」
「・・・・ほんとうか?」
「俺にとってもこの体は必要でな、朽ちてもらっちゃ困るんだよ。それともほかに方法があるか?」
「・・・・・・」
「ふん、まっそういうことだ。とりあえずだが俺とお前の利害が一致したってことだ。・・・どうする?」
アンクの問いに沈黙し考える映司。やがて、
「・・・わかった。メダル集めに協力する」
「はっ!それでいいん「ただし!」・・あ?」
「メダルの為に人を殺したりしないし、させない・・・これだけは譲らない」
「・・・・本物のバカか?自分を殺しに来た奴らにもそう言う気か?」
「ああ!」
「・・・・・ふん・・とりあえず移動するぞ、とりあえずここのデータで分かった研究施設は9箇所一番近いところで4・5日って距離か・・」
そう言って出口へ歩き出すアンク。
「あ・・ちょっと・・まだ返事・・わっと!?」
映司が返答を求めると返事の変わりに端末が放り投げられた。
何とかキャッチした映司にアンクは、
「その資料に目を通しとけ。こいつらの組織の概要が大まかだが書いてある」
「・・なんか誤魔化されたような・・・って、これ・・」
内容は人体実験・人身売買・ets・・・などの情報だった。
「組織名『屍喰らい(グール)』・・・お人好しのお前にはやる気の出る内容だろう?」
嗤うアンクを他所に怒りに震える映司。
「・・・絶対・・止める!」
そうして二人は歩き出す。
こうして研究施設を襲い、情報とメダルを奪取しそれを元に別の施設を目指す。
その間に見つけたオリジナルのコアは結局研究施設間を盥回しにされていたカマキリコアだけだったが、セルメダルは大量に稼げたのでアンクはそこそこには納得していたようだ。
そして四年で裏の巨大組織に致命的な大打撃を与える事となる。
その四年間には、シュテル達に出会い彼女達と協力し戦うなど色々あった。
そして、つい数週間前完全に組織を壊滅することに成功し、ようやく一段楽したので映司とアンクはメダルを探す旅に出たのだった。
☆
現在
「・・・ん・・ん?・・あれ寝てたのか・・・ふぁぁぁあ・・もう朝か~・・」
大きく伸びをして窓のカーテンを開け、まだ寝ているアンクを起こす。
そんな時、ドアをノックする音が聞こえドアを開けると制服姿のフェイトが立っていた。
「あ、おはようございますフェイトさん」
「うん、おはよう映司。・・アンクは?」
「もう起きてますけど・・」
「じゃあ下の食堂で朝食にしようか。そこで、君達の処遇を話すから・・」
「はい、わかりました・・(どうなるのかな・・)」
☆
フェイトとヴィータに合流した映司達は用意された朝食を食べ始めた。
朝食がある程度進み落ち着いてきたところでフェイトはコーヒーを一口飲んでから話し出した。
「・・・処遇についてだけど、私達の上司に指示を仰いだら君達二人を機動六課まで連れてくるようにって命令を受けたんだ」
「そちらの部隊に・・ですか?」
「そこで正式な処遇を決めたいって。・・同行お願いできるかな?」
そう言って頼んでくるフェイトにアンクは、
「そっちの縄張りに入ったら即逮捕・・・なんてことにならないだろうな?」
「なんだと?」
アンクの言葉に身を乗り出しかけるヴィータ。フェイトはそれを制して、
「・・・それは私の権限で保障します。これじゃ不服?」
「不服だな。お前より上の階級の命令に逆らえるのか?フェイト・T・ハラオウン執務官殿?」
「・・・・・」
アンクの言葉に黙り込むフェイト。
「・・ふん・・話があるなら直接来るか行きたくなるような条件を出せってん「あと・・」・・ん?」
席を立とうとするアンクを呼び止めるフェイト。
「・・あと、伝言を頼まれてる」
「「伝言?」」
「『ライドベンダーなどの『メダルシステム』は役に立っているかね?もしそうなら今後の協力の話をしないかい?・・ああ、そうそう君の『同胞』の復活がつい先日確認されたよ。・・では『私』は機動六課で君達を待っているよ・・・『鳥の王』と『欲望の王』を・・」
「・・・・おい!コイツは何者だ?」
伝言を聞いたアンクはフェイトに詰寄り問いただす。だが、
「・・・私達もこの伝言の主が誰なのか聞いてないんだ・・正直私達の方が知りたいくらいだよ・・」
「・・ちっ!」
舌打ちして席に戻るアンク。すると映司が、
「・・だいたい一年位前にバイクに乗った人がライドベンダーやカンロイドの使い方を教えてくれたんですけど・・・アンク、お前もそのこと気にしてただろ・・だったら・・」
「・・・・・・くそっ、得体の知れない手の平の上の気分だが・・・情報は必要か・・・いいだろう・・行ってやるよ機動六課に・・」
ほっと息をつくフェイトとあまり乗り気じゃないヴィータ、とりあえず場が収まったことに安堵する映司としぶしぶといった様子で注文したアイスを食べるアンク。
こうして映司立ちの機動六課行きが決まり・・そして、
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!?」
新たなトラブルが発生した。
Count The Medals!
現在、オーズの使えるメダルは・・・
タカ×2
トラ×1
カマキリ×1
バッタ×1
チャージ中のフェイクコアメダル
???
クマ
???
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
-Interval-
とある森の中の研究所・・・
その中にある『資料保管庫』と表記された部屋
そこには、中身に無いカプセルが立ち並んでいた
その中の一つにガラスが砕けているカプセルがあり
その土台には文字の書かれたプレートがあった
プレートにはこう書かれていた
『No 1865 Tidus Lanster』
残酷とも奇跡とも言える邂逅は近い・・・