夏休みは至福の季節。クーラーがガンガンに効いた部屋でゴロゴロしながらテレビを見るのが俺流の過ごし方だ。世間の奴等は不純異姓交遊をして大人の階段を登ったり、発情期の猫のごとく異性を惹き付けようとアピールしている頃だろう。しかし、そんな奴等は邪道と言わざるを得ない。夏休みなんだから休まんかい!!青春している奴等はみんな死ね!!邪神様よ、発情している雌猫と雄猫共にどうか天罰を!!奴等に届け、俺の呪い!! 熱心に邪神様に祈りを捧げていると俺を呼ぶ声がした。振り向くとそこいたのはSクラスの美少女。彼女の名前は世界。俺の自慢の妹だ。
「お兄ちゃん。前にも言ったと思うけど、あたし明明後日から旅行でいないからね」
「ああ、そういえばそんなことを言ってたな…」
そうだ。そういえば世界は友達同士で旅行にいくんだっけ。確か2泊3日で行くとか言っていたな。男がいたら半殺しにしているところだが、幸いなことに女同士の旅行だ。事前に世界に詳しく説明を受けていてよかった。危うく男がいるものだと思って旅行のメンバーを闇討ちするところだった。
「旅行を楽しんでこいよ。ナンパには気をつけるように。そうだ!スタンガンを買ってやろう。男が近づいてきたら使え」
「そんなの必要ないから。それでさ、あたしがいなくなったらお兄ちゃんってひとりになっちゃうじゃない?そんな孤独なお兄ちゃんにとってもいい話があるの!」
「いい話?なんだよ、それ?」
えへへと笑う世界。なにか企んでいるようで気味が悪い。
「あたしの部活の後輩に楠木 誠(くすのきまこと)って子がいるんだけどね。その子があたしが旅行に行く日に合コンキャンプに行くんだって。それにお兄ちゃんも行ってみない?」
「合コンキャンプ?なんだそりゃ?」
世界の話によると合コンキャンプとは文字通り合コン兼キャンプのことだそうだ。ウチの学校にある"出会い推進委員会"(非公式の部活。活動内容は男女の出会いの場を提供すること。噂によるとウチの学校のカップルの3割は出会い推進委員会の活動により誕生したとか)が主宰したもので、男3・女3の男女別で申し込みキャンプ場でご対面って方式だ。本来なら楠木くんは友達2人と一緒に行く予定だったのだが、その内のひとりが盲腸で入院することになって人数が足りなくなったそうだ。
「それで楠木くんに相談されたんだ。お兄ちゃん、行ってみない?」
「合コンキャンプか…。う~ん、でもなあ…男側で俺だけ学年違うし、知り合いもいない状況なんて気まずいだろうしなあ。世界に悪いけど今回は遠慮しておくよ」
「そういえば出会い推進委員会の友達に聞いたんだけどね、楠木くん達と一緒に行く女の子達ってスッゴい美人らしいよ。夏って女の子は積極的になるからね。あたしの友達にも夏に彼氏が出来た子が多いんだよ」
「と思ったけど急にキャンプに行きたくなったな~。世界の後輩は俺の後輩も同然!そいつが困っているなら俺は是非とも助けてあげたい!!」
うん、夏はやっぱり出会いだよな!!家にいる奴とかマジでバカ!クーラーが効いた部屋にいるとか邪道だろ!!男子高校生たるものキャンプに行け!!
「そう?じゃあ楠木くんにはあたしの方から話しておくから。男チームは学校に集合だって。2泊3日で参加費はキャンプ代込みで1万5千円。格安でしょ?」
「2泊3日で1万5千円?随分安いな。なんでそんなに安いんだ?」
「出会い推進委員会のひとりが別荘を所有していてそこを提供しているんだって。じゃあお兄ちゃん、準備しておいてね」
「おう!」
別荘を所有とかブルジョワかよ!出会い推進委員会…底が知れねえ。グフフフフ!キャンプか~!一夏のアバンチュールとかあっちゃうんじゃないの?…俺も童貞卒業、か。ゴムとか持ってった方がいいよな。コンビニで買わなきゃ!3日後が楽しみだぜ!!
×××
3日後、旅行に出かける世界を見送りするために俺は玄関にいる。
「お兄ちゃん、行ってくるね。あ、それと楠木くんは家まで迎えに来てくれるって。明るくて社交的な子だから安心してね。それじゃあ、いってきま~す!!」
「いってらっしゃい!!寂しくなったらいつでも電話するんだぞ~!!」
さて、世界も行ったし俺もキャンプの準備をするか。まあ、準備といっても着替えるだけなんだけどな。着替えとか持っていくものはもう鞄にしまってある。え~と、着替えだろ、財布だろ、トランプだろ、そして昨日コンビニで買ってきたゴム!うん、準備は完璧だ。部屋で着替えて髪のセットをしているとインターホンの音がなった。多分、楠木くんがきたんだろう。
「は~い!今いきま~す!!」
扉を開けるとそこにひとりの青年がいた。中肉中背、前髪が目を隠すほど長くて口と鼻しか見えない。…あれで目が悪くならないんだろうか?
「僕、楠木誠って言います!誠って呼んで下さい!!世界先輩のお兄さんの八千塚先輩ですよね?本日は宜しくお願いします!!」
礼儀正しく一礼する誠。見た目に反して体育会系だ。あ、そういえば部活の後輩だって言っていたっけ。体育会系の部活は上下関係が厳しいからな。この態度も当たり前か。
「俺のことは宇宙でいいよ。こちらこそヨロシクな!」
「はい、宇宙先輩!それじゃあ学校に行きましょう!」
並んで歩く俺と誠。世界の言う通り明るい子みたいだ。
「なあ、そういえばもうひとりの男ってどうしたの?確か男女3人ずついるんだよな」
「はい!もうひとりの奴は柳田 光司(やなぎだこうじ)って言って僕の親友なんですけど、そいつは先に学校にいるんです!部活は違うんですけど、幼稚園の頃からずっと一緒なんです」
「ふうん、そうなんか。なあ、何で誠は合コンキャンプに参加しようよと思ったんだ?やっぱり彼女がほしかったから?」
「僕も参加するつもりはなかったんですけど、光司が勝手に申し込んだんです。断るとキャンセル料がかかるって言うし、せっかくだから参加しようかなって。彼女作りと言うよりは思いで作りのために参加しました!」
なるほど。友達の付き合いで参加したのか。ふむ、思いで作りが目的なら俺の『 キャンプでハーレムつくっちゃおうぜ☆大作戦』の邪魔にはならなそうだな。せいぜい俺の引き立て役にでもなってもらおう。
そんなことを考えている時だった。前方が何だか騒がしい。見ると眼鏡をかけた黒髪ロングの美少女がチンピラ風の男3人に絡まれていた。
「止めてください!私は急いでいるんです!!」
「イイじゃんイイじゃん!ちょっとお茶するだけだって!!変なことは絶対しないから一緒に遊ぼうよ~!!」
あちゃ~!可哀想に…助けてあげたいが、俺と誠では男3人には敵わないだろう。ここはお巡りさんを大声で呼んであげるか。たとえお巡りさんが来なくても、ビビってチンピラが逃げ出すかもしれないし。俺が大声をだそうとした瞬間、俺の横にいた誠が4人に近づいていった。
「止めろ、お前達!!女の子が嫌がっているだろ!!」
「ああん!?何だテメェは?」
チンピラ達に囲まれる誠。バッカ、何やってんだよ!!1対3で勝てる訳ないじゃん!そういうのは漫画の中だけだっちゅうの!!
「通りすがりの一般人だ!!そんなことより女の子を解放しろ!!」
「関係ないなら引っ込んでろ!!俺達の邪魔をするんじゃねえ!!」
あ!誠が殴られた!!どうしようどうしよう!?俺が行ってもたいした助けにならないだろうし、通報した方がいいのか!?だが、後輩が殴られたのに俺がなにもしないなんてカッコ悪すぎる!!ええい、突撃だ~!!
俺が突撃を決意したその瞬間、誠がチンピラのひとりに向かって拳を振るった。チンピラ1には右ストレート、チンピラ2には左ハイキック、チンピラ3には回し蹴りを一発!地面に倒れふすチンピラ達。つ、強い!!この子こんなに強かったの!?男を一撃で倒すとかスゴすぎる!!こんなのありえないだろう!!
「大丈夫でしたか?怪我とかありませんよね?」
女の子に向かって笑顔で手を差し出す誠。その姿はカッコよすぎて男の俺でも惚れそうだ。案の定、女の子は顔を真っ赤にして誠の顔を見つめている。
「ひゃ、ひゃい!ええと、大丈夫です!助けてくれてありがとうございました!!」
「お礼なんていいんですよ。僕が勝手にやっただけですから。怪我がないならいいんです。ナンパには気を付けて下さいね」
「あ。何かお礼を…」
「僕も急いでいるんで。貴女も急いでいるんでしょ?それにさっきもいった通り僕が勝手にやっただけですから。それじゃ!」
そう言って俺の方に向かってくる誠。か、カッケー!!何あいつ!?超カッコよくね!?漫画の主人公みたい!
「お待たせしてスイマセンでした、宇宙先輩!!先輩を待たせるなんて僕は最低です!!どんな罰でも与えてください!!」
「それは全然いいんだけど、誠って強いんだな。いつもああいう時って助けにいくのか?」
「目の前で女の子が困っていると体が勝手に動いてしまうんです!!光司にもそこは短所でもあり長所でもあるってよく言われます!!」
「…そっか。お前かっこいいな。じゃあ、学校に急ぐぞ!このままじゃ遅刻してしまう」
「はい!」
誠SUGEEEEE!男の中の男だぜ!!心の中で誠兄貴って呼ぼう!誠を尊敬の目でみながら歩いていると曲がり角に差し掛かった。ここを曲がって少し歩けばもう学校だ。…なんだか喉が乾いたな。自販機は確か角を曲がったところにあるんだよな。
「宇宙先輩!喉が乾いたんですか?さっきのお詫びに僕が買ってきます!!」
どうやら口に出していたらしい。
「お、おい!そんなことしなくていいって!!」
俺は止めるが、誠は既に走り出していた。うん?反対方向から誰か走って来るぞ?ええと、食パンを口にくわえた女の子?へぇ~、現実にいたんだ!っと、感心している場合じゃない!!このままじゃ誠と衝突してしまうぞ!!
『ど~ん!!』
静止の声をかけるが間に合わず、女の子と誠は衝突してしまった。
「イタタタタ!ちょっと、ちゃんと前を見て歩きなさいよ!!あんたのせいでぶつかっちゃったじゃない!?」
尻餅をつきながら文句をいう女の子。食パンも地面に落ちてしまっている。ちなみにパンツは雪の色だったと言っておこう。目の保養だ。
「ああ~!!アタシの朝食が!!弁償しなさいよ!!」
女の子の勢いに圧倒されていた誠もようやく冷静さをとりもどして、ムッとした顔で女の子に反論する。
「そっちがぶつかってきたんだろ!!君こそちゃんと前を見て歩きなよ!!それに食パンを落としたのは君のせいだろう!?」
「アタシのせいにするなんて最低!!男の癖に言い訳するんじゃないわよ!!」
いがみ合う誠と女の子。いかんいかん!ここは先輩として仲裁しなければ!
「はい、そこまで!二人とも熱くなりすぎだぞ。少し冷静になろうな」
冷静に仲裁する俺カッコよくね?これは女の子が惚れちゃうんじゃないの!?
「勝手に話しかけてくるんじゃないわよ!!気持ち悪い!あ、こうしちゃいられない!!待ち合わせに遅刻しちゃう!!」
立ち去っていく女の子。…気持ち悪いって。僕、何かしましたか?心に重大なダメージを喰らって立ち尽くしていると涙がでてきた。そんな俺を哀れに思ったのだろう、誠が必死にフォローの言葉をかけてきた。
「あんな変な女が言ったことなんて気にする必要なんかないです!それに先輩は全然気持ち悪くなんかないです!気にする必要はありません!本当に気持ち悪くなんてありません!」
ねえ、なんで気持ち悪くないって2回言ったの?ねえ、なんで?僕、気持ち悪いですか?キャンプに行く前に心に傷を負ってしまった俺だった。
学校たどり着くと校門に二人の人間が立っていた。一人は髪を金色に染めた短髪の中途半端なチャラ男。おそらくこいつが柳田光司なのだろう。もう一人はうちの学校の女子制服をきた女の子だった。スカートから見える長い足は雪のように白く、なで回したくなるような魅力的な太ももをしている。腰は折れそうなぐらい細く、Eカップはありそうな胸をより魅力的に引き立てている。顔は……え?なんで馬のマスクを被っているの!?馬人間!?気持ち悪!!
「あ、やっと来ましたね。お二人ともこちらでーす!!」
手を振る馬人間。スタイル抜群なのに馬のマスクが全てを台無しにしている。一種のホラーだ。
「えーと、楠木誠さんと八千塚宇宙さんですね。わたくし、出会い推進委員会の一員で今回の合コンキャンプの企画者でもあります。どうぞ気軽に馬仮面と呼んで下さい」
気軽に呼べね~!!突っ込みどころが多すぎる!!
「あの~、なんで馬のマスクを被っているんですか?っていうより暑くないの?」
今日の気温は30度を越えるって天気予報で言っていたぞ。マスク被っていたら死ぬんじゃねえの?
「暑い?ええ、暑いですとも!!息苦しいし、通気性皆無だし、声はこもるし、顔は汗だくですとも!しかし、わたくしの容姿は美しすぎるので皆さんのような思春期のドロドロとヘドロのような濁った性欲の対象になる可能性があります。それにわたくしの顔がさらされたら大騒ぎになります。だから本名も顔も明かすことが出来ないのです!!」
自意識過剰乙www!馬人間に欲情する奴なんて誰もいねえよ!!
「うぐっ!な、なん、で、殴った、の…?」
「なんだか馬鹿にされた気がしたので。取り合えず腹パンです」
勘が鋭い!うかつに悪口すら思えねえ!!
「では男性陣が揃いましたので合コンキャンプの説明を始めます。これから皆さんにはあちらにあるバスに乗ってキャンプ場に向かってもらいます」
馬仮面が指をさした方向にはツアーバスがあった。乗客が誰も乗っていないから一台貸しきったようだ。出会い推進委員会の総資産が知りたい!!
「女性陣は別ルートで向かっていますのでキャンプ場までどんな女性がいるかは秘密です」
そこで馬仮面は一拍おいた。…声がこもって物凄く聞き取りにくい。
「さて、基本的に合コンですので皆さんは女性陣に積極的にアピールしてください。ただし、性行為及びセクハラ行為は禁止とさせて頂きます。当委員会はあくまでも出会いの場を提供することを目的として活動していますので。もし性行為が発覚した場合、同意の上だろうと問答無用で警察と学校とご両親に通報させて頂きます。今は19歳と17歳が性行為をしても捕まる時代ですので賢い皆さんならどうなるかお分かりですね?さらにペナルティとして当委員会が全力を持って皆さんの今後の学校生活を潰しますので覚悟しておいてください。ちなみにわたくしも監視役兼進行役として参加しますが、わたくしのことは空気のようなものとして扱ってください」
馬マスクを被った人間を空気として扱うのは無理だと思います!!それより性行為は禁止だと!?なんだよなんだよ!せっかくコンビニで買ったのに!!スッゴい恥ずかしかったんだぞ!?買う必要のないお菓子を大量に買ったり、女性店員がいない時を見計らったり色々苦労したのに!!俺の努力と夢を返せ!!
「話は以上になります。あ、参加費の支払いは全日程が終わった後にしてもらいます。向こうにはお土産を買う場所もありますが参加費分だけは取っておいてください。もし参加費が支払えない場合は皆さんのご両親に来てもらいますから気を付けてくださいね」
親を呼ぶとか恥ずかしすぎる!!こいつは絶対に確保しておかなければ!!
「何か質問はございますか?なければ早速バスに乗りたいのですが…」
その言葉に今まで黙っていた柳田光司がスッと手を上げた。
「はい、柳田さん」
「あの、馬仮面に質問なんすけど、なんで馬のマスクなんすかね?顔を隠すなら他の方法があったんじゃ?それと何で夏休みなのに制服を着ているんすか?」
「これはわたくしの趣味です」
趣味なのかよ!!!
バスに乗ると馬仮面は到着まで自由にしてくださいといって俺達のことを放置した。一番前の席に座っている馬仮面の方を見ると、おそらくという言葉がつくが寝ているみたいだ。ちなみ俺は一番後ろの広い席をひとりで陣取っている。誠と柳田はそのひとつ前の席に並んで座っている。
「宇宙先輩!これが僕の親友の柳田光司です!ほら、光司、先輩に挨拶して!」
「わかってるって。俺も宇宙先輩って呼んでいいっすか?柳田っす。今日から3日間ヨロシクおねがいしやーす!あ、俺のことも光司でいいっすから」
敬語が出来ない子が来ちゃった!!こいつあれだろ?「~っす」が敬語だと思っちゃってる子だろ!?見た目通りの中途半端チャラ男だ!!まあ、俺はその辺全然気にしないからいいんだけどな。
「ああ。こちらこそヨロシクな」
その後、三人で大富豪をしながらキャンプについて話をする。おっ!4が4つそろってんじゃん!!革命をするべきか?
「合コンキャンプ楽しみっすよね!!美人ぞろいだといいんすけど!!2泊3日っすよね?女の子とお風呂バッタリとかあったりして!!キタコレー!!!!」
「あ、ああ」
この子テンション高いよ。そういえば、こいつが合コンキャンプに申し込んだんだよな。なんかギャルゲーのエロい親友ポジションっぽいな。
「いや~、それにしても宇宙先輩には助かっす!友達全員に声はかけたんですけどみんな予定埋まってたみたいで!宇宙先輩の予定が空いていて本気で感謝っす!」
…その言い方だと俺だけ暇人みたいじゃないか。俺だって色々予定はあるんだよ?邪神様にお祈りしたり、テレビ見たり、ゲームしたり、超能力開発に夏休みは色々と忙しいんだ。
「それは暇人というのですよ?」
うお!!馬仮面!?いつの間に側に!?ていうか起きてたのか!?なんで俺の考えていることわかるんだよ!?エスパーか!?
「なんとなくです。それにわたくしは世界さんから貴方のことはよく聞いていますので」
「え?じゃあ、世界の友達の出会い推進委員会の人って馬仮面なの?」
「ええ。わたくしと世界さんはマブダチです」
マジかよ!!あっれ~?世界と仲がいい子の情報は大体知っているはずなんだけどな。馬仮面の情報なんて知らねえぞ?
「わたくしが普段から馬のマスクを被っているとでも思っているのですか?噂通り残念な頭の持ち主みたいですね。童貞のお兄さん?」
「ど、どどどど童貞で何がわるいんじゃー!!!!!童貞が人様に迷惑でもかけたか!?童貞は何者にも汚されていない純白の証!!ヤリ○ン共の汚れたチ○ポよりよっぽど尊いんじゃー!!!」
「え?宇宙先輩って童貞なんすか?マジでウケル!」
お、お前、俺より年下の分際でお前は非童貞なのか!?お前の不幸を今日から邪神様に祈ってやる!!
「大丈夫です、宇宙先輩!!僕も童貞ですから!だから、落ち着いてください!それに光司も女の子と一度も付き合った事がないですから童貞のはずです!」
「あ!お前バラすなよ!!」
「光司~!!お前、童貞の分際で俺のことをバカにしたのか!?もう許さん!!くらえ!封印されし魔神の右腕!!」
「そこまでです」
何!?俺の封印されし魔神の右腕が受け止められた!?この馬仮面、かなり出来るぞ…
「いいですか?みなさんが童貞であろうと非童貞であろうとわたくしには関係ありません。女性の中には童貞は嫌だという方もいれば童貞の方がいいという方もいます。ただ、はっきり言ってしまえばそんなの関係ないのです。好きになった人なら童貞だろうと非童貞だろうと関係ありません。童貞を気にする前にまずは好きになってもらうことの方が重要なのです。みなさんはそんなこともわからないのですか?少なくとも、馬のマスクを被っているとはいえ初対面に近い女の子の前で自分は童貞だと叫ぶような人達のことを好きになる女子が存在するとは思えません。それが理解できたならその口を閉じていてください。この童貞共が!」
童貞の男共は馬仮面に何も言い返すことが出来ず車内はお葬式のような雰囲気なままキャンプ場に到着したのだった。
×××
そんなことがありつつキャンプ場に到着!!ん~!!空気が美味しい!!都会の汚れた空気と大違いだ。まあ、空気の違いなんてわからないんだけどね。田舎に来たときテンプレをやってみました☆何を言いたいかというと、テンプレをやっちゃうぐらい俺のテンションは上がっているってことだ!
「ここで夜はバーベキューをするつもりです。宿泊する別荘は5分ほど歩いた場所にあります。女性陣は既に別荘にいるなので早速向かいましょう。では童貞共、ついてきてください」
まだ童貞ネタを引っ張るか!!というか、バスの中で気づいたが馬仮面は結構毒舌だ。メンタルがコイキング並に弱い俺としてはまだ女性陣に会ってないのにHPがオレンジ色だ。まあいい、これから美人ちゃん達とご対面だ!!待ってろよ、俺のハーレム候補達!!
別荘はかなり大きくて豪華だった。絶対に家より金がかかっている。これ、確か馬仮面が提供したんだよな。どんだけセレブだよ!
「これが宿泊場所です。3階立てで各階層5部屋ずつ、計15部屋あります。1階は男性陣が、3階は女性陣に割り当てられています。わたくしは監視の為に2階の部屋に泊まりますので、童貞をこじらせて夜這いをしようとしても無駄ですよ。各部屋にトイレはついてますのでその辺は安心して下さい。お風呂に関しては大浴場が1階にありますのでそちらを利用して下さい。説明はこんなところですかね。では、早速中に入りましょうか」
ワッホーイ!!お!女性陣発見!!ふむふむ世界がいった通り全員美少女だ。あれ?どっかで見た覚えが…
「ああー!!あんたは今朝の言い訳男!!」
「あ!君は今朝の変な女!!」
ポニーテールの活発そうな女の子と誠がお互いを指差して大声をあげた。ああ!食パンの女の子か!!通りで見覚えがあると思った。スゴい偶然だなあ。俺が関心していると女の子のひとりが誠の側に抱きつく勢いで走っていった。
「あなたは今朝私を助けてくれた人ですよね!?また会えて嬉しいです!!」
「君はチンピラ絡まれていた女の子?君も合コンキャンプの参加者だったんだ…」
こっちは眼鏡の黒髪ロングの子か。今朝会った女の子2人と会うなんて偶然を通り越して奇蹟に近いな。…まさか3人目も知り合いじゃないよな?目をこらしてよく見るが金髪ツインテールのロリ娘に知り合いはいない。黒髪のロリ娘には心当たりがあるが、あいつはハワイに行っているはずだ。だからこの子は100%初対面だ。うん?何で誠がビックリした顔してるんだ?
「何で葵がここにいるの!?」
「誠がいるって聞いたからあたしも…ってそんなわけないじゃない!!たまたまよ!!別に誠がいるから参加したわけじゃないんだからね!!」
「ゴメン、最初の方聞こえなかった」
「っ~!何でもないわよ!バカ!!」
ツンデレキター!!ていうかツンデレ娘と誠って知り合いなのか?
「あの二人は幼馴染みですね。葵さんの方は楠木さんが参加すると聞いて合コンキャンプに申し込んだようです。素直になれないお年頃って奴ですね」
「情報ありがとう。ただ、耳元で話すのはやめてくれ。馬のマスクが頭に当たって物凄く不快だから。それと心を読まないように」
「心なんて読んでませんよ。なんとなくそう考えているんじゃないかって思っただけです」
さいですか。馬仮面は俺から離れると手を2回叩いて皆の注目を集める。
「どうやら知り合いがいる人もいるようですが、全員揃ったので自己紹介をしましょう。では、女性陣からお願いします。どなたからでも構いませんので。そうですね、名前と学年、それと合コンキャンプに参加した理由をいってください」
馬仮面の言葉に女性陣は顔を見合わせる。やがて眼鏡の女の子が自己紹介を始めた。
「橋本 菫(はしもとすみれ)、学年は3年生です。合コンキャンプに参加したのは葵ちゃんに誘われたからです。合コン初心者ですのでお手柔らかにお願いします」
へー、先輩だったのか。確かにお姉さまって感じだしな。胸もでかいし俺の好みかも。
「アタシは坂下 蓮華(さかしたれんげ)よ。学年は1年生。菫先輩と同じで葵に誘われたから参加したわ。言っておくけど、アタシは彼氏とか作るつもりないからアピールしても無駄よ」
食パン娘の名前は蓮華ちゃんか。胸はないけどスタイルいいな。スレンダーな魅力がある。ああいう男に興味ないって子を惚れさせるのも楽しそうだ。
「あたしは渡辺 葵(わたなべあおい)で学年は同じく1年生よ。参加した理由は……って言える訳ないじゃない!!とりあえず、キャンプ中は誠がスケベなことをしないか見張りをします!以上!!」
ツンデレ娘は葵ちゃんね。この娘、改めて見ると結構胸があるな。下手したら菫さんぐらいあるんじゃないか?ツンデレロリ巨乳、か。俺の中の何かが目覚めそうだ。
「はい、ありがとうございました。続いて男性陣お願いします」
男性陣の自己紹介は割愛させて頂く。何でかって?野郎の自己紹介なんて聞いていても面白くないだろ?ただひとつ言えるのは俺と光司が自己紹介している間、菫さんと葵ちゃんの視線は誠に向いていたってことぐらいかな。誠死ねよ!!
「自己紹介も終わりましたので、今日の予定を説明したいと思います。これからお昼までテニスをします。お昼はキャンプ場でバーベキューを、午後は近くの小川で水遊びをする予定です。水着はこちらで用意していますので、レンタルしたい人はわたくしに言ってください。水着になりたくない方も釣り具などを用意してますので楽しめると思います。では、わたくしは準備をしてきますのでしばし皆さんでご歓談ください」
イッヨッシャー!!アピールタイムだぜ!!ここは朝に会った菫さんと蓮華ちゃんの二人は会話がしやすい!!レッツ突撃!!
「ねえねえ、蓮華ちゃん!今朝も会ったよね!?あの後、ちゃんと間に合ったの!?」
「は?誰よあんた?アタシ、あんたに会った記憶なんてないんだけど。ていうか初対面の癖に馴れ馴れしく名前で呼ばないでくれない?気持ち悪い!」
ええ~!?俺のこと覚えてないの!?誠のことは覚えていたのに~!!しかもまた気持ち悪いって…ええい、この子は諦めて菫さんだ!
「菫さん!今朝は災難でしたね。あの後チンピラに絡まれたりしませんでしたか?」
「えっと、なんで貴方が今朝のことを知っているのかな?ひょっとして、ストーカー?…怖い」
あっれ~!この子も俺のこと覚えてないの!?これはあれか!俺の保有する999の能力のひとつ、"無価値無存在"《スルー・クリア》が無意識に発動してしまったのか!?あ、そういえば普段の学校生活でも常時発動してたっけ。このスキルはパッシブスキルだったんだな。…俺、なんで生きているんだろ。
「宇宙先輩!準備が出来たみたいですよ。馬仮面さんが外に来いって呼んでいます。? 宇宙先輩は何で泣いているんですか?」
「何でもない、何でもないんだ。ちょっと、自分の存在感を疑ってしまってな。それより早く行こうぜ」
×××
俺達はテニス、バーベキュー、水遊び及び合コンキャンプ初日を楽しんだ。さて、本来なら詳しい描写をさせてもらうところだが今回は割愛させてもらう。理由はただひとつ!何もなかったからだ。いや、正確に言うと『俺には』何もなかった。だから、俺の眼前で行われたラブコメの一部を紹介したいと思う。
ケース①
テニス初心者の菫さんに優しく教える誠
『誠くん。私、テニス初心者なの。良かったら教えてくれないかな?あ、それと誠くんって名前で呼んじゃったけどいいよね?』
『勿論です!僕も菫さんて呼んでいいですか?』
『うん!私も名前で呼ばれた方が嬉しいな…えへへ』
ケース②
バーベキューで孤立しがちな蓮華ちゃんに近づいていった誠
『なんでひとりでいるんだよ?僕と一緒に食べようよ』
『は?何よ、言い訳男。アタシは好きでひとりでいるんだから気にしないで』
『今朝は変な女とか言ってゴメンね。それと、君はひとりで食べたいかもしれないけど僕は君と一緒に食べたいんだ。だから、君がイヤだって言っても絶対に一緒に食べるよ。あ、僕のことは誠って呼んで。僕も君のことは蓮華って呼ぶから』
ケース③
泳げない葵ちゃんに水泳を教える誠
『葵、僕の手を離しちゃダメだよ。しっかり手を握って。? 顔が赤いけどどうかしたの?風邪でも引いた?』
『そんなの誠と手を繋いでいるから…って何でもないわよ!!誠の気のせいよ!』
『ゴメン。最初の方が聞こえなかった』
『もう!いい加減に気づきなさいよ!この鈍感!!』
ケース④
お風呂で女性陣とバッタリ遭遇。ラッキースケベな誠くん
『わぁぁ!ご、ゴメン。誰も入っていないと思ったんだ!!ホントゴメン!!』
『いいから前を隠しなさい!!それとアタシ達を見るな!!』
などなど誠には色々なラブコメイベントがありました。え?俺は何をしていたかって?俺は馬仮面と交流を深めていたさ。いや、マジで馬仮面と話が合ったんだよね。その一部を紹介したいと思う。
ケース①
テニスで孤立していた俺に近づく馬仮面
『パートナーがいないんですか?八千塚童貞さん?』
『もう童貞が名前みたいになっているから!!』
ケース②
バーベキューでにんにくを食べていた俺と話す馬仮面
『にんにくは精力がつきますよね。下半身は元気ですか?』
『食事時にシモネタ!?』
ケース③
川で遊ぶ女の子達を眺めていた俺と話す馬仮面
『菫さんはいい胸してますね。思わずむしゃぶりつきたくなります。おや?八千塚さん。股間が盛り上がっているようですが?』
『お前シモネタ大好きだろ!?』
…合コンに来て馬のマスクを被った変人と意気投合する俺って何なんだろう?あ、ちなみに馬仮面の素顔を見てやろうと思って風呂上がりの姿を監視したんだが結局顔を見ることが出来なかった。何でそんなに顔を隠すんだろう?きっとよっぽど不細工な顔しているんだろうな。気の毒に…
とまあそんな訳で2日目にも、誠は転んで菫さんの胸に顔を突っ込んだり、転んで蓮華ちゃんのスカートの中に突っ込んだり、転んで葵ちゃんに抱きついたりと色々なラッキースケベがありましたとさ。気が付けば女性陣の視線は誠に釘付けでした。え?柳田光司がバス以来、描写されてないって?主人公の親友キャラはプロローグ以外には出番がないだろ?それと一緒だよ。
×××
あっという間に合コンキャンプも終わり最終日の夜、俺は誠に相談したいことがあると部屋に呼び出された。
「宇宙先輩!お呼び立てしてスイマセン!どうしても相談したいことがあって…」
「いや、それは別に構わないんだけどよ。それで?相談したいことって何だよ?」
「実は…」
「何~!?女性陣全員に告白された!?」
「はい。お風呂に入る前にバッタリ会って。三人同時に告白されました」
マジかよ!!全員誠狙いかよ!このハーレム野郎が!!…殺してやろうかな。
「宇宙先輩!?なんでそんな殺気を放っているんですか!?」
「何でもないんだ。それで?誠は何て答えたんだ?」
「全員好きだから選べないって言いました」
「全員好き?」
「はい。葵は幼馴染みだし、小悪魔みたいなところがあってとっても魅力的なんです。菫さんはお姉さんみたいな人で包容力があって一緒にいると暖かい気持ちになるんです。蓮華は僕が一緒にいてあげないとって気持ちになるし、僕にはこの三人から選ぶなんて出来ないんです!」
「なるほど。だから全員断ったってことか。それで気まずいからどうしたらいいか俺に相談したいんだな」
「いえ。違います」
え?違う?
「僕がそのことを言ったら私達3人全員を彼女にしてくれって。僕、その提案を受けました。僕が誰かひとりを選ぶまで三人同時に付き合うことにしたんです。それで、宇宙先輩に相談したいのはどうやって三人同時に付き合えばいいんでしょうか?」
…こいつ、モテない俺に何て相談をするんだ。それにリアルハーレムだ~!?ダメだ!もうひとりの俺が目覚めそうだ。それにこいつは何もわかっていない。先輩として後輩に説教してやる!!
「なあ、誠。お前、三人同時に付き合うんだよな?本気で全員付き合えるって思っているのか?」
「当たり前です!!僕は全員好きですから!!」
「そうか。なあ、はっきり言ってやるよ。この日本という国では3人同時に付き合うなんて不可能だ。葵ちゃん、菫さん、蓮華ちゃんが合意の上だとしても絶対に無理だ。最初の方はいいかもしれない。でも、暫くしたら女の子達の間には競争心とか嫉妬心とかそういう気持ちが絶対に沸き起こる。あの仲がいい三人の関係は滅茶苦茶になるだろうな。仮にお前が誰も選べなくてずっとハーレム関係が続いたとしよう。その時には色々な問題が起こるだろうな。誰が本妻として籍を入れるか、子供が生まれたら父兄参観の時とかどうするのか、世間体は?ハーレムを維持するための資金を稼げるのか?一瞬でこれだけのことが考えつくんだ。実際にはもっと難しい問題が絶対に起こる。断言してもいい。それにお前がハーレムをつくって、後にひとり選んだ場合の話をしよう。選ばれた奴はいいよ。そのままお前と付き合えばいいんだから。でも、選ばれなかったやつは?お前とハーレムをしている間にいくつも出会いがあったかもしれない。お前がハーレムで楽しんでいる間にどんどん出会いは減っていくんだぜ?お前は選ばなかった女の子をどうするつもりなんだ?」
「そ、それは…」
「結局、ハーレムというのは全員を選んで誰もが幸せになれる選択肢なんかじゃない。誰も『選ばない』男だけが幸せになれる優柔不断で最低な選択肢なんだよ。知っているか?誰かを選ぶってことは誰かを選ばないってことなんだぜ。俺達は生まれてからずっと何かを選んできた。進路、友達、部活、色々なことを選んできて俺達はここにいるんだ。全部選ぶなんて都合がいい選択肢は存在しない。誰かひとりを選んだ方が女の子達のためでもあるし、なにより誠のためだとおもうぜ。俺が言いたいのはそれだけだ。俺が言ったことをよく考えておくんだな」
そう言って項垂れる誠を残して部屋を出る。嫉妬のあまりキツイ言い方をしてしまったかも知れない。ちょっと反省だ。
「そんなことはないかと。貴方の言ったことには概ね同意です。だから、八千塚さんは何も間違っていないと思いますよ」
「馬仮面…聞いていたのか?それと何度もいうが心を読むな」
「わたくしも何度もいいますが心なんて読んでません。なんとなくそんなことを考えているんじゃないかと思っただけです。…八千塚さんと楠木さんの話は聞きました。貴方は世界さんから聞いたとおりの性格をしていますね」
「はははは。あんまり良いこと言ってなかったろ」
「いいえ。とても誉めてましたよ?実は世界さんから話を聞いて貴方に興味を持っていたんです。この2日間、お話ししてますます興味持ちましたわ。ですから、わたくしとお友だちになりません?これはわたくしの電話番号とメールアドレスです。これは極少数しかしらないプライベートの電話番号なんですよ。だから光栄に思ってくださいね」
馬のマスクを被った変人の番号を教えてもらってもなあ。多分、変人だから友達も少ないんだろうな。顔も不細工だろうし。とはいえ、馬仮面は話が合う奴だ。毒舌だけど話していて楽しいやつだ。ここは素直に受け取っておこう。
「ありがたく受け取っておくぜ!!うぐっ!!な、何故ま、また腹を…」
「悪口を思われた気がしたので。話は以上です。それではまた明日」
馬仮面…キャラが掴めねえ。
×××
「皆さん。これで合コンキャンプは終わりです。残念ながらカップルは出来なかったみたいですが、また出会い推進委員会を利用していただけたら幸いです。それでは帰りましょう。帰りは全員同じバスです。では出発です」
帰りのバスは俺と馬仮面が主に喋り、光司は爆睡、残りの4人は沈んでいた。あの様子では誠は全員の告白を断ったのだろう。女の子達の様子をみると罪悪感がわく。でも、俺は間違ったことを言ったとは思わない。だから、これで良かったのだろう。
あっという間に学校に到着。これからは各自解散だそうだ。光司はバイトがあるからといって慌てて帰っていった。女の子達は3人一緒に帰った。誠はいつの間にかいなくなってたから多分光司と一緒に帰ったんだろう。つまり、校門にいるのは俺と馬仮面だけってことだ。
「お疲れ様。中々楽しかったよ。まあ、考えてみれば馬仮面としか仲良くならなかったけどな。そういえば、結局一度も馬のマスクを取らなかったよな。素顔を見せてくれないか?」
「う~ん。八千塚さんなら別に構わないんですけど…いえ、やっぱり止めておきましょうか。いずれわかることですから。ただ、名前だけ教えて差上げます。わたくしの名前は馬場園 麗香(ばばぞのれいか)といいますわ。本名を教えたのだから、わたくしも宇宙さんと呼んで構いませんよね?」
「ああ、勿論!これからもよろしくな、麗香!」
馬仮面の本名は麗香かよ!不細工に麗香とか似合わねえ~!!親も少しは考えて名付けろよな!!
「うぐっ!!また腹を…」
「失礼なことを考えるからですよ。では、いつでもメールしてください。最近は仕事が忙しいので返信するのが遅くなると思いますが必ず返信しますので。それではさようなら」
腹パンから始まり腹パンで終わる女。その名も馬仮面。合コンキャンプでは女の子の連絡先すら聞けなかった。そのかわり、俺は馬仮面との友情をてにいれた。顔が世間に見せられないほど酷くて毒舌だけど楽しい奴との友情を。だから、参加して良かった。
「宇宙先輩!!お話があるんです!」
「うお!って誠か?おまえ、帰ったんじゃなかったのか!?」
俺の質問に答えず、誠は真剣な顔をして俺に告白する。
「宇宙先輩に言われてからずっと考えていたんです。三人付き合うことがどういうことか真剣に悩みました。正直、僕の考えは甘かったです。宇宙先輩に言われて気づきました!でも僕の三人に対する思いは本気なんです!だから、僕は本気でハーレムを目指したいと思います。三人全員を幸せにしたいと思います!!僕はハーレムを維持するため最大限の努力をします!! まずは資金稼ぎです!!残りの夏休みはバイトと資金を稼ぐための勉強に費やします!資金がある程度揃ったら、改めて三人と付き合いたいと思います!女の子達に同じことを言ったら了承してくれました。それどころか女の子達もお金を稼ぐのを手伝ってくれるそうです!!資金面以外の問題は四人で話し合って穏便に解決することになりました。これらの問題に気づかせくれたのは、全部宇宙先輩のおかげです!!ありがとうございました!!それじゃあ、僕は勉強があるのでこれで!世界先輩にもよろしく伝えておいてください!」
風のように走り去っていく誠の背中をみて思う。ええと、つまりあれか?俺の説教は何も効果なかったと?結局、ハーレムを作ることに決定したと?ハハハ!主人公ってスゲエ。何だか疲れたよ。さっさと家に帰ろう。
「お兄ちゃん、おかえり!合コンキャンプは楽しかった?」
おお、世界だ!!2日ぶりに見る妹は相変わらず可愛い。寝っころがってテレビを見る姿もプリティーだ。馬仮面と会った後だから余計にそう思う。
「いや、なんか疲れたよ。結局彼女が出来なかったしな」
テレビには新人アイドルのプロモーションビデオが流れていた。この夏にデビューした新人アイドルのREIKA。おしとやかで清楚で謙虚な可愛い女の子だ。デビューシングルはミリオン達成で今大注目のアイドルだ。実は俺も大ファンなのだ。
「あ、そういえば馬仮面ってどんな顔なんだ?世界のマブダチなんだろ?写真とかないのか?」
「馬仮面?誰よ、それ?」
ああ、普段から馬のマスクをしているわけじゃないって言ってたっけ。
「ほら、あれだよ。出会い推進委員会で別荘を提供したブルジョアだよ。仲良くなって番号を交換したんだ。どんな顔なんだ?よっぽどの不細工なんだろ?」
「ああ。それならこの子だよ」
「おいおい、何でテレビを指差しているんだ?馬仮面が写っているわけないじゃないか」
「だから、このREIKAがあたしの友達で出会い推進委員会の人なの。あたしはデビューする前から仲が良かったけど、夏休みが終わって学校が始まったら大騒ぎでしょうね。REIKAの本名は馬場園 麗香ちゃん。ずっとお兄ちゃんと会いたがっていたから、楠木くんに相談されたとき真っ先にお兄ちゃん誘ったんだ。綺麗だったでしょ?」
「え!?」