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No.31660の一覧
[0] 厨二病の兄と本物の妹[さくま](2013/06/21 20:27)
[1] 厨二病の兄と同性愛者の親友[さくま](2012/03/23 22:33)
[2] 厨二病の兄と天使の転校生[さくま](2012/06/08 23:30)
[3] 厨二病の兄と歪な三角関係 【前編】[さくま](2012/04/11 21:01)
[4] 厨二病の兄と歪な三角関係 【後編】[さくま](2012/04/16 17:00)
[5] 厨二病の兄と王道の主人公[さくま](2012/04/24 22:53)
[7] 厨二病の兄と邪神の後継者[さくま](2013/06/21 20:30)
[8] 厨二病の兄と偽者の始まり[さくま](2013/07/27 17:35)
[9] 厨二病の兄と設定集【ネタバレ有り】【超短編も含む】[さくま](2012/06/08 23:17)
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[31660] 厨二病の兄と本物の妹
Name: さくま◆0390c55b ID:78025d0f 次を表示する
Date: 2013/06/21 20:27
「闇よりも暗きもの、血の流れよりも紅きモノよ!!我の願いに答え、今こそその力をここに顕現せん!!」

純白の聖域にダークマターで魔方陣を描き、生け贄の血を差し出し邪神様へ祈りを捧げる。

「邪神様、どうか、どうか何卒俺にそのお力の恩恵を」

一心に祈りを捧げて、邪神様の降臨を待っていると何処からか視線を感じた。

「ふっ!ついに俺に監視がつくようになったか。もうこの場所にはいられないな。家族に迷惑がかかる…」

「何言ってんだあんたは!!あんたに監視なんかつくか!!」

ツッコミの言葉と同時に頭を叩かれた。

「むっ!なにやつ!?」

振り替えると、そこには双子の妹である世界がいた。今年度も同じクラスになった可愛い妹。文武両道で才色兼備である自慢の妹だ。俺と妹は仲がよく、生まれてから一度も喧嘩をしたことがない。

「いけない、頭を叩くのはいけないぞ、我が愛しの妹よ。俺の封印が解けたらどうするつもりなのだ?世界が滅びるかもしれないのだぞ…」

「はぁ~?またワケわかんないこと言ってるよ…。お兄ちゃんさぁ~、高校2年生にもなってそんなこというの恥ずかしくないの?」

「恥ずかしくなどないぞ!何故なら全て事実なのだからな!」

俺は胸を張って答えた。そんな俺を妹は汚物を見るような冷たい目で睨んだ後に、諦めたかのようにため息をついた。

「…あたし、知ってるよ。お兄ちゃんみたいな頭の可哀想な人のことを厨二病って言うんだって」

「まて!!俺はあんな妄想族と違って本物だ。その証拠に今邪神降臨の儀式をしている最中だ!見ろ、あの禍々しい魔方陣を!!」

「…コピー用紙に鉛筆で書いてある魔方陣に邪神は降臨しないと思うけど?ていうか、何でケチャップをコピー用紙にかけているの?馬鹿なの?死ぬの?」

「いや、あれはだな、まさか現世で本物を用意する訳にはいかないだろう。前世の俺なら簡単に用意出来たのだがな…。おっと、これ以上は聞かないでくれ。お前に迷惑がかかるかもしれん」

まさか妹に俺は転生者で異世界人の生まれ変わりだと言う訳にもいかないだろう。真実を告白したら妹の命が危ない。

「知りたくもないし、何もきいてないから。それにお兄ちゃんと同じクラスってだけで十分迷惑だからね?」

「ふふっ!照れるな、照れるな。素直にこの兄と同じクラスになれたことを喜べ」

全く、可愛い妹だ。照れ隠しで思っていることと逆のことを言ってしまうんだな。ツンデレというやつだな。頭を撫でてやればきっとデレるに違いない。

「勝手に触んな!!はぁ~。何でこんな風になっちゃたんだろう…。昔はまともだったのになぁ」

そんなに冷たい目でみるなよ。新しい何かに目覚めてしまいそうになるじゃないか。ひょっとして、俺ってドMだったのか?妹の冷めた目が心地いい…。

「はっ!!危うく世界の精神攻撃にやられるところだった。まさか世界が"誘惑する魔性の瞳"《フェロモン・アイ》の使い手だったとは…。だが、魔眼は俺には通用しないぞ!!」

「お願い…、お願いだから、あたしをお兄ちゃんの同類扱いしないで…」

何故妹は涙目なのだ?まさか魔眼の副作用か!?

「なんであたしの目を凝視してるのかわかんないけど、あたしもう学校にいくね。お兄ちゃんも遅刻しないようにね」

「まて!!俺も一緒にいこう!!妹を護衛するのは兄として当たり前のことだからな!!」

「ええ~!?絶対に嫌だよ!!お兄ちゃんと登校するなんて恥ずかしすぎる…」

なぜだ!?なぜ断るのだ!?そこは、『え?お兄ちゃんと一緒に学校にいくの?嬉しい…。なんだか久しぶりだね。そうだ!手を繋ぎながら行こうか?』ってはにかみながら頷くところだろ!?だが、俺がついてないと妹の命が危ないかもしれない…。ちくしょう!これだけは使いたくなかったが、こうなったら最終手段だ!!

「俺と一緒に登校したら千円やる」

「あたし、お兄ちゃんと一緒に登校するのが夢だったんだ~。玄関でまってるからね?はやく制服に着替えてきてね」

いい笑顔だ。我が妹よ…



×××



てっきり妹と手を繋ぎながら登校するものだと思っていたが現実は甘くはなかった。確かに一緒に登校してはいるが、そこにラブラブな甘い雰囲気はない。おいおい、どういうことだよ?千円払って手も繋がせてもらえないなんて…。エロマンガには千円払えば胸ぐらい触らせて貰えるって書いてあったぞ!?くそ!あの嘘つき漫画家め~!!

「お兄ちゃん。くれぐれも人前であたしに恥をかかせないでね」

「おいおいおい。何を言っているんだ我が愛しの妹は。この俺がお前に恥をかかせる訳がないだろう。なんせ、前世ではハーレムを築いていたからな。女の扱いなぞ赤子の手をひねるよりたやすいものよ!おっと、それ以上は聞いてくれるなよ」

「その口調がすでに恥ずかしいんだよ!!それにお前がハーレムだぁ?調子にのんな!!この童貞が!!」

ああ、なんて口が悪く育ってしまったんだ。育て方を間違えたのか…。童貞なのは事実なので言い返せない。だが、妹の戯言など気にする必要はない。いずれこいつは俺のハーレムに加わるんだからな。特別に現世での俺の初めてを妹に捧げてやろう。

「背中に突然怖気が走ったのはなんでだろう?それになんか気持ち悪くなってきた…」

「気分が悪いのか?背中でもさすってやろうか?」

風邪か?最近はやっているからな…。

「…もういいや。それよりお兄ちゃん!今日はクラス替えして初めての日なんだから病気は発症させちゃだめよ!!普通に自己紹介するんだからね?去年みたいに、『俺の真の名前は言えない…。なぜなら只の人間には発音できないからな』とかふざけたらだめよ?」

なんどいえば分かるんだ。俺は病気などではないし、ふざけてなどいないというのに。全く、現世に適応するのは難しいものだ。それにしても、妹と一緒に歩くのも久しぶりだな。妹は部活に入っているから下校が一緒になることはないし、朝も俺が誘わない限り妹は早く登校する。それに、最近妹は夜に出かけることが多い気がする。はっ!!ま、まさか…

「な、なあ世界ちゃん?お兄ちゃん、聞きたい事があるんだけど?」

「なによ?急にちゃんづけなんてして…」

「そ、その最近世界は夜に出かけることが多いじゃん?ひょっとしてお兄ちゃんに隠し事があったりしない?」

「な!?そ、そそそそんなことある訳ないじゃない!?あ、あたしが隠し事なんてね?もう、何言ってるのよお兄ちゃん!!変なこと聞かないでよね!!」

なんだ、そのいかにも隠し事がありますって態度は~!!嘘が下手すぎるだろ!!まさか、本当なのか?俺の妹に彼氏ができたのか!?夜に出かけているのは彼氏に会うためなのか!?認めん!認めんぞ、そんな現実~!!

「急に頭をかかえたりしてどうかしたの?いつも変だけど、今日はより一層変人っぷりに磨きがかっているね」

妹の彼氏を呪殺する計画を考えていたらいつのまに高校についていた。新学期で浮かれている愚民共を眺めていると、ものすっごいイケメンの男が俺の方に向かって歩いてきた。な、何だ!?まさか時空警察の追手か!?

「おはよう、世界ちゃん。今日から新学期だね」

うっ!爽やかな笑顔が眩しすぎる!!俺があまりの眩しさにやられている間に、妹も笑顔を作ってイケメンと話している。

「あ!おはよう、八王子くん!!」

「世界ちゃんは何組になったの?」

「1組だよ。八王子くんは何組なの?」

「残念、俺は2組だったよ。俺も1組が良かったな。なんせ可愛い世界ちゃんがいるからね」

「もうやだ~!!八王子くんったらお世辞が上手なんだから~」

「いやいや、お世辞なんかじゃないんだけどな。俺は世界ちゃんを本気で可愛いと思ってるよ!」

な、なんだこの男は!?なぜ妹と楽しそうに会話してるのだ!?なぜこんなにもバカップル臭をだしているのだ!?ま、まさかこいつが妹の彼氏なのか!?許さん、絶対に許さんぞ~!!

「まて~い!!俺の妹と会話がしたかったら俺を倒してからにして貰おうか!!俺の右手が真っ赤に燃える!お前を倒せと囁きかける!!くらえ、封印されし魔神の右腕!!」

当たればイケメンをこの世から跡形も無く消し去るはずだった俺の右腕は、イケメンに届く前に妹の左手によって受け止められた。唖然とする俺の鳩尾に妹の右手が突き刺さる。

「うぐっ!!な、何をするんだマイシスター…」

「それはこっちのセリフだ!!いきなり他人を殴ろうとしないでよ!!」

「くそ!そこのイケメンよ、命拾いしたな…。だが、ここで俺が倒れようとも第二、第三の俺が必ずや貴様を滅ぼすだろう…」

「あんたみたいなのが二人も三人もいてたまるか!!」

ナイスツッコミだ。さすが我が妹。茫然としてこちらを見ているイケメンの視線に気付いたのか妹は恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「あっ、ごめんなさい。八王子くんに怪我とかなかった?」

「いや、俺は大丈夫なんだけど…。それより、彼は?世界ちゃんと随分似ているようだけど、もしかして双子のお兄さんかな?」

「…はい。不本意ながらあたしの兄です」

イケメンが俺の方に向いて挨拶してきた。

「はじめまして。世界ちゃんと同じ部活の八王子 祐也だよ。君が世界ちゃんと双子なら俺と同学年になるのかな?仲良くしてくれると嬉しいな。君の名前はなんていうの?」

けっ!なんで俺がイケメンに名乗らなければならんのだ。俺から妹を奪うヤツに名乗る名はない!と、思ってたら妹にものスッゴく睨まれた。やっべ、超恐い。何、あの顔。あれ?俺の妹って悪魔だったけ?

「…世界の兄の宇宙
そら
だ。またの名を、魔を操る者という。おっと、この二つ名は現世の人間には通じないんだったな…。スマン、忘れてくれ」

よく考えれば相手が名乗ったんだから此方も名乗らなきゃ失礼にあたるな。俺は礼儀を大事にする人間だからな。というわけで、妹の視線にビビった訳ではない。決して妹にビビったりなんかしていない。大事な事なので2回言っておく。

「え、えっと…、随分個性的な人なんだね?世界ちゃんのお兄さんは」

「…お願いだから、お兄ちゃんについては何も言わないで…」

くそっ!二人で同じ空気を共有しおって~!!これが噂に聞くカップルのみが放てる"他者を排除する絶対空間"《シンクロディメンション》だとでもいうのか!?今の俺ではとてもじゃないが抵抗出来ない…。ここは戦略的撤退だ!!

「ちょっと、お兄ちゃん!?どこにいくのよ!?」

妹の声を泣く泣く無視して俺は戦場(教室)に行くことにした。




×××




新学期が始まって既に一ヶ月が経過した。世界は去年と同様、男女関係無く好かれていてクラスの中心人物になっている。深夜の外出も相変わらずのようで、妹に直接聞いた訳ではないがまだイケメンと付き合っているみたいだ。え?俺に彼女は出来たのかって?生憎だが、邪神を信仰する俺には常に危険がつきまとう。ゆえに、彼女はおろか、友人さえも作ることは出来ない。邪神信仰者の悲しい宿命よ…

「お兄ちゃん、何で壁に向かって喋っているの?しかも泣いているし…。辛いことでもあったの?」

「違う!これは泣いているんじゃなくてだな…、そう!小宇宙を感じていたんだ!自然のエネルギーに感動していたんだよ!!


「…教室の片隅で?」

「俺クラスにもなると小宇宙はどこだろうと感じられるんだよ」

「お兄ちゃんってさ~、あたし以外の人と喋っているの見たことないよね。もう新学期が始まって一ヶ月経つのに未だに友達が一人もいないでしょ?あんな自己紹介するからだよ」

そう、俺は新学期が始まってから妹以外と会話をしたことがない。何故だ?自己紹介の時にきちんと『趣味は邪神降臨のための儀式です!!右腕には魔神が、左腕には闘神が封じられているので絶対に衝撃を与えないようにしてください!!ちなみに前世は…、おっと、それ以上は言っても意味のないことか。とりあえず、気軽に話しかけてきてください!一緒にオーラにめざめましょう!』と敬語を使って言ったのに…

「それにさ~、お兄ちゃんが授業中に国語の先生に指された時にさ、『右目がうずく!もう一人の俺が暴走するかもしれん』とか意味がわからないこといったでしょ?先生が怖がってたよ」

この春から担任になった新人教師のことか。彼女は23歳の美人女教師なのだが、あの時以来けっして俺を見ようとはしない。他の教師達も俺のオーラに威圧されているせいか出来る限り俺と目を合わせようとしない。

「お兄ちゃん、このクラスでアンタッチャブルな存在にされてるんだからさ。これ以上変なこと言わない方がいいよ?今はいいけど、その内いじめにつながりそうだから…」

「いじめなど前世での大戦に比べたらなんでもないわ!!いざとなったら封印されし魔神の右腕があるしな!」

「本気で心配してるのに!!お兄ちゃんのバカ!!もう知らないからね!」

妹が本気で怒って俺の前から去っていく。やれやれ、あれは当分機嫌が直らなそうだな。しばらく話しかけないようにしよう。




昼休み、俺はコンビニで買った弁当を持って教室を出て行く。目指す場所は男子トイレ。普段から刺客を警戒している俺にとってトイレは唯一安心して食事が出来る場所だ。相変わらず7・11のお弁当はおいしい。俺が弁当を食べていると複数の男子生徒が入ってきた。どうやら連れションみたいだ。全く、こっちは食事中だというのに。食事中は遠慮してもらいたいものだ。

「~でさ、ナンパした女がマジで巨乳だったんだよね。Hのときもブルンブルン揺れててさ。マジで興奮したよ」

「マジかよ!お前って本当にもてるよな~。この間も後輩食ったっていってたじゃん?」

「ああ~、あの女のことな!あいつ、俺のいいなりだからよ。今は女子高生好きの変態親父相手に売春させてるわ。もちろん売上は俺が回収してるんだけどな」

「ギャハハハハ!マジで鬼畜だな!!」

チッ、DQN共か。嫌なやつらが来たものだ。やつらは俺のような邪神信仰者を見るとすぐに排除しようとするからな。出来るだけ物音を立てないようにしなければ。

「そういえば、お前が去年から狙っている女がいるだろ?あの子マジで可愛いよな。まだ犯ってないんだろ?さっさと犯っちまえよ」

「いや~、色々アプローチかけてんだけどよ。中々ガードが固いんだよね」

くそっ、羨ましい。現世では妹以外の女の子と会話すらしていないからな。リア充共め!爆発しろ!!

「まあ、そろそろ我慢の限界だしな。明日の放課後にでも体育倉庫に呼び出して無理やり犯っちまうか。お前も来るか?」

「え!?マジで!?俺にも犯らせてくれんの?」

「ああ。ハメ撮りするつもりだから写真で脅せば奴隷に出来るぜ。明日は3Pだ!」

それにしても何でDQNは女の話と犯罪行為の話しかしないんだ?まったく、聞いていて気分が悪い。狙われている女の子もかわいそうに。そういえばハメ撮りをすると言った方の声はどこかで聞いた事があるような…

「おう!!楽しみにしとくよ。チャイムが鳴る前にささっと教室に戻ろうぜ。行くぞ、八王子」

「おう」

…八王子?どっかで聞き覚えがあるぞ?ええと…………………ああ!!4月に会ったイケメンか!!うわ、もしかして俺ってとんでもない会話を聞いてしまったのではないだろうか?あいつって、あんなやつだったのかよ…。怖いね~、リア充は。裏の顔ってやつだな。ん?待てよ?そういえばあいつって世界と付き合ってるんじゃ?じゃ、じゃあ、さっき言ってた女って世界のことか!?や、ヤベエ。世界にいった方がいいよな?…いや、まだ妹のことだと決まったわけではない。とりあえず、妹に会ったらさりげなく忠告しておくか。




結局、あの後世界と会話する機会がなくて帰宅してしまった。時計を見ると針が7時をさしている。妹もそろそろ部活から帰ってくるだろう。ちなみに両親は2人とも仕事が忙しいらしく、ここ1週間ばかり姿をみていない。俺も妹も料理は出来るから、両親が居ないときは交代制で食事当番をやっている。今日の食事当番は妹だ。早く帰ってこないかな…

「ただいま~!!」

噂をすれば妹が帰ってきた。おかえりと返事をして妹の顔を見つめる。さて、どうやって八王子のことを聞けばいいのか…

「?、そんなに見つめてどうしたの?あ、お腹空いたんでしょう?今から作るからちょっと待ってて」

「あ、ああ」

妹は朝の不機嫌が嘘のように、機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら夕飯を作っている。こんな機嫌がいい妹は久しぶりだ。聞くなら今しかない。

「せ、世界?ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」

「な~に?真剣な顔しちゃってどうしたの?」

何てきりだそうか…。そういえば、八王子は放課後に体育倉庫で犯すっていってたからな。明日、放課後に俺が世界と一緒に帰ればいいんだよな。そうすれば、八王子達が言ってた女が世界だとしてもレイプされることはない。

「明日世界は部活が休みだろう?良かったら俺と一緒に帰らないか?」

「ゴメンね、お兄ちゃん。明日の放課後は予定があるんだ。ちょっと一緒に帰れそうにないかな…」

予定だと!?まさかもう八王子は世界に連絡をつけたのか!?ダメだ!後手に回っている。こうなったら直接言うしかない。

「…世界は八王子と仲が良いよな?」

「八王子くん?…まあ、部活が一緒だから仲が良いけど。二人きりではないけど休みの日に遊ぶこともあるし」

何故付き合っていると素直に言わないんだ?兄に隠したい年頃ってやつか!?ええい、こうなったら!!

「そうか…。単刀直入に言う、八王子と関わるのは止めなさい。それに明日は寄り道せずに授業が終わったら真っ直ぐ帰ってこい」

「はぁ~?意味わかんないよ。何言ってんの?」

「いいから言う通りにしなさい!!」

少し強めの口調でいう。俺の態度が気にさわったのか、妹もイライラしだした。

「だから意味がわかんないだってば!!せめて理由を説明してよ!!」

「…理由は言えない。それに聞かない方がいい」

自分がレイプのターゲットになっていたなんて知らない方がいいよな。それに可愛い妹には自分の彼氏がゲスヤローだったと知らせたくはない。

「何!?どうせお兄ちゃんの事だから邪神様のお告げがあったとかそんな下らない理由でしょ!?いい加減にしてよ!!」

せっかく俺が助けてやろうしてるのに何だその言い方は!!ムカついてきた。

「いいから言う通りにしろって!!全部お前のためなんだよ!!」

「何よその言い方は!?押し付けがましいのよ!いつも気持ち悪いことしか言わない癖に命令しないでよ!!兄貴面しないで!!」

気がつけば妹の頬を叩いていた。17年間生きてきて一度も妹を叩いたことなんてなかったのに、自分の行動が信じられない。妹も俺に叩かれたことが信じられないのか茫然としている。やがて、その大きな瞳から涙が溢れ出す。

「…もう良いよ。お前の好きすればいいだろ。どうなったて知らないからな」

罰が悪くなってその場から逃げ出し、二階にある自分の部屋に引きこもることにした。階段を昇る時にチラリと妹の方を見ると、静かに涙を流しながらその場に立ち尽くしていた。

何だよ何だよ!せっかく忠告してやったのにさ!!そりゃ、理由を言わなかったのは悪いとは思うけど仕方がないだろう?もう、あんな妹は知らん!八王子達の慰みものになればいいんだ!!もうさっさと寝ちまおう。嫌な事があった日には早く寝るに限る。その夜、普段は夢なんか見ないはずなのに妹が八王子に犯される悪夢により魘されることになった





朝起きてリビングに行くと誰もいなかった。玄関には妹の靴が無かったので先に学校に行ったのだろう。昨日の一件で気まずかったから、正直助かった。…冷静に考えると昨日の俺って理不尽だったよな。妹も叩いちゃったし、俺って最悪過ぎる。…今日の放課後か。確か八王子って空手の全国大会にも出たことがあるやつだったよな。そんなやつ相手に俺じゃ敵わないよな… 。

陰鬱な気分で登校して教室に入る。いつもは俺が登校すると笑顔で近寄ってきてくれる妹が、今日は気まずそうな顔で遠くから俺の顔を見ている。俺はどうすればいいかわからなくて、黙って自分の席に座ることにした。授業中や休み時間の間にも、妹は何か言いたそうに俺の顔を見ていたが全部無視した。

気がつけば放課後になっていた。時が過ぎるのは早いな~。ああ、俺はどうすればいいのだ。教えてください邪神様。…電波を受信中。ああ、任務なんですね。放課後は真っ直ぐ帰ることがあなた様の命令なんですね?だったら、妹がこのあと酷い目に合うってことを知っていたとしてもほっといてもいいですよね?妹も俺を許してくれますよね?

下駄箱を開けると中に一枚の手紙が入っていた。誰だよ…、こんな時に手紙なんて。誰からだ?名前は書いてないな…。取り敢えず読んでみるか。



『お兄ちゃんへ

兄妹喧嘩をするなんて初めての事だから、どうすればいいのか分からなくて手紙を書くことにしました。お兄ちゃん、昨日は酷い事を言ってごめんなさい。お兄ちゃんに叩かれた後、何であたしが叩かれなければいけないんだろうってずっと考えていました。正直、お兄ちゃんをこれからは無視しようと思ったりしました。でも、部屋に戻ってお兄ちゃんと撮った写真を見ていたらお兄ちゃんとの思い出が頭によぎりました。思い出せば、お兄ちゃんがあたしに命令したことなんて数えるほどしかありませんでしたね。そして、お兄ちゃんが命令するときは決まってあたしのためだってことを思いだしました。だから、昨日の命令もきっとあたしのためなんでしょう。でも、今日は大事な用事があるので真っ直ぐ家に帰ることは出来ません。出来るだけ早く帰るようにします。昨日はあたしが当番なのに夕飯を作らなかったので、今日もあたしが食事当番をします。お兄ちゃんの好物を作るつもりなので楽しみにしていて下さい。

                                              お兄ちゃんのことが大好きな世界より』




涙が出た。昨日の一件はどう考えても俺が悪いのに妹は許してくれている。そんな妹を俺は見捨てようとしたのだ。自分で自分が許せない!思い返せば、学校で俺に話しかけてくれるのは妹だけなのだ。妹以外のクラスメートは俺が存在していないかのようにふるまう。今日一日でそれがよくわかった。俺の存在を認めてくれているのは妹だけ。そんな大事な妹が毒牙にかかろうとしている。ああ、ごめんな世界。お兄ちゃんがバカだったよ。たった一人の妹を見捨てるなんて最悪だよな。…今ならまだ間に合うかな?

俺は全速力で走った。目指すべきは体育倉庫。全速力で走る俺に奇妙な目を向けるモブキャラがいるがそんなの気にしない。頼むよ邪神さま、俺に力をかしてくれ!妹を助けるだけの力をくれ!!



「まて!!妹をお前らの好きになんかさせないぞ!!」

体育倉庫の扉を開けて俺は叫んだ。体育倉庫の中を見渡すと八王子と知らない男しかいなかった。おそらく、こいつが昨日八王子とトイレで話していたやつなのだろう。世界は……いない。よかった、まだ来てないみたいだ。

「確か世界ちゃんのお兄さんですよね?どうしたんですか?こんなところに何か用事でも?」

八王子が人の良さそうな笑顔で俺にいう。こいつは今からレイプしようとしている女の兄貴が来てもなんの動揺もしていない。呆れるほどのクソヤローだ。

「白々しいぞ!!お前らのやろうとしていることは全部まるっとお見通しだ!!大人しく観念しろ!」

「…ええと、お兄さんは何の話をしているのですか?」

「演技はやめろ!俺は昨日お前らがトイレで話していた内容を聞いていたのだ!妹が来る前に俺がカタをつけてやる!!」

俺の言葉をきいた瞬間、八王子の笑顔が消えた。さっきまでの人のよさそうな笑顔が嘘のように、他人を見下す冷たい表情になっている。

「…んっだよ。バレてんのかよ。トイレで聞かれちゃってるとはね~。それは予想外だったわ。まさかお前にバレるとはね」

「どうする、八王子?せっかくこれから世界ちゃんを犯そうっていうのに邪魔が入っちまったな。こいつお前の本性知っちゃったみたいだし、今後も邪魔になるんじゃねえの?」

DQNの言葉に八王子は冷酷な笑みを浮かべた。

「そりゃー邪魔になるでしょ。だからさ、口封じするしかないっしょ。骨の2、3本折っとけばこいつも誰にもいわねえだろ。世界ちゃんとのHの前に軽く運動しておくか」

「黙れ!!俺がお前らの悪事は絶対に許さない!!邪神様の名前にかけてお前らを成敗してやる!!」

「お前さ、俺ら2人相手に勝てると思ってんの?俺も全国大会に出場経験あるし、素人じゃないんだぜ?勝てるはずないじゃん」

「勝負はやってみなくちゃ分からないんだよ!!」

俺は全力で八王子目掛けて突進した。突然の俺の突進に驚いたのか、八王子は受身も取らず床に転がる。俺はマウントポジションを取って八王子の顔目掛けて全力で拳を振り下ろした。

「封印されし魔神の右腕と全てを破壊する闘神の左腕の威力はどうだ!?ふはははははは!悪は必ず成敗されるのだ!!」

「てめえ、調子にのってんじゃねえぞ!?」

後頭部に衝撃を感じた後、俺の体が八王子の上から吹き飛ばされた。どうやらDQNに蹴られたみたいだ。八王子が立ち上がりポキポキと首を鳴らしながら俺に近づいてくる。全力で殴ったつもりなのにたいしてダメージをくらっている様子はない。

「やってくれたね。俺の美しい顔を殴るなんて大罪だよ?罪は償わなくちゃならないよね」

八王子が俺の胴体を全力で蹴りつけた。『ボキッ!』と肋骨が折れる音が聞こえた。

「ぐわぁぁぁぁ!!!いたい!骨が折れた!病院に連れてってくれ…」

「何言ってんの?まだ罰は終わっていないよ?」

八王子が蹲る俺をさらに蹴りつけた。DQNも俺の体を蹴り始め、俺はやつらのサンドバックにされいる。体中蹴られていない場所はないんじゃないかってぐらい痛めつけられた。しかし、俺は心配していなかった。なぜなら、ピンチは主人公にとってあたり前のことだから。こういう時こそ、真の力が目覚めて無双するはずだ。

「おら、死ねよ!こら!はははは!人を蹴るのってマジで面白れ!見ろよ、こいつ!鼻血でてるぜ」

「こいつサンドバックにピッタリだな。いい蹴りの練習台になるよ」

おいおい、そろそろ目覚めてもいいんじゃないの?俺ってもう意識を失いそうだよ?もうピンチのシーンは飽きただろ?早く目覚めてくれよ…

「お、俺の真の、ち、力が目覚めれば、お、お前らなんか…」

「ああん!?何訳わかんないこと言ってんだ?そういえば、さっきも魔神がどうたらとか意味不明なこといってたな」

八王子が俺の頭を踏みつけながらいう。倒れふす俺を見ながらDQNが思い出したかのように俺を指さした。

「ああ!お前どっかで見たことがある思ったら、一組の精神病患者か!ほら、八王子も聞いたことないか?一組で有名な厨二病だよ」

「うそっ、あの病人ってこいつだったのか?世界ちゃんもかわいそうにな…、こんな残念な兄貴を持っちまって」

また八王子の蹴りが俺に命中する。あははははははは。なんで力に目覚めないんだよ…。やっぱり漫画みたいにはいかないってことか。それにしても痛いな。こいつら滅茶苦茶やりやがって。だいたい無茶なんだよな、空手の全国大会出場者に俺みたいなのが勝てるはずないんだよ。ああ、そうだよ。俺は所詮お前らの言う通り厨二病だよ。認めるから助けてくれ。もう痛いのは嫌だよ…

「もうこいつ反応しないし蹴るのも飽きたな。そうだ!いいこと思いついた!八王子、こいつの前で世界ちゃん犯そうぜ!兄の前で妹を犯すのって興奮しね?」

「ナイスアイデア!!そのシチュエーションは興奮するな。お前って天才じゃね~の?」

…世界?そうだ、俺は世界を助けに来たんだ。可愛い妹を守るためにここに来たんだ。ごめんな、世界。お兄ちゃん、またお前を見捨てるところだったよ。確かに俺は厨二病でさ、気持ち悪い兄貴かもしれない。でもさ、妹を見捨てるような最低な兄貴にはなりたくないんだよ。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

最後の力を振り絞って八王子に全力で殴りかかる。しかし、あっさりと避けられた。

「しつこいんだよ!!」

八王子の回し蹴りが命中し、今度こそ俺は立てなくなる。ごめん、ごめん世界。俺、お前を守れなかった。ごめん、本当にごめんよ。俺じゃ勝てなかったよ…。駄目なお兄ちゃんで本当にごめん。

「お兄ちゃん!!」

意識が薄れる寸前、妹の声が聞こえた気がした…



×××



「はっ!ここはどこだ…?」

目が覚めたら知らない天井だった。な、なんだ?まさか異世界トリップしたのか?ついに俺の苦労が報われたのか!?

「ここは保健室だよ。お兄ちゃん大丈夫?何度もお世話になっているじゃない」

よく見ると確かに見慣れた保健室だった。妹がベットで寝ている俺を心配そうに見ている。世界?なんでこんなところに…?…そうだ!!

「お、おい!大丈夫だったのか!?あいつらに酷いことされてないのか!?」

「何いっているの?お兄ちゃん頭でも打った?」

世界は困惑した顔で俺を見ている。本当に意味がわからないみたいだ。どういうことだ?八王子達は世界に何もしなかったのか?

「お前、彼氏に呼び出されて体育倉庫に行っただろ?何もされなかったのか?」

「ええと、彼氏って誰のこと?」

「え?誰って、八王子のことだよ。お前ら付き合っているんだろ?」

「あたしが八王子くんと~?何いってるのよお兄ちゃん。あたしは八王子くんと付き合ったりしてないよ。何を勘違いしてたの?それに彼氏なんて欲しくないしね」

なに~!?そうだったのか!?そういえば、世界から直接聞いたことはなかったな…。それじゃあ、あれは全部俺の勘違い?いや、まてまて。八王子達が世界をレイプしようとしたことは確かだ。それにあの時確かに妹の声をきいた。

「でも、世界が八王子に呼び出されて体育倉庫に行ったのは事実だろ?何かされたんじゃないのか?」

「だ・か・ら!意味がわからないんだってば。本当に大丈夫?病院にいって検査してもらおうか?」

妹が俺と目を合わせながら言う。ああ、相変わらず世界の目は綺麗だ。まるで引き寄せられるかのようにその視線から目を離せない。なんだか眠くなってきたな。頭の中に霞がかかるような…………………あれ?俺って何で保健室にいるんだっけ?

「なあ世界。俺ってなんで保健室で寝てるんだ?」

「お兄ちゃん、校庭で転んで意識を失ったんだって。さっきまで大騒ぎだったよ?あたしも放送で呼び出されたし」

「校庭?俺って体育倉庫にいったりしなかった?」

「体育倉庫?お兄ちゃんと一番縁がない場所じゃない。校庭と体育倉庫って反対の場所にあるよ?」

世界の言う通りだ。帰宅部の俺が用もないのに体育倉庫に行くなんてありえない。でも、なんで体育倉庫に行ったなんて思ったんだ?どうも思いだせないな…。俺が悩んでいるとサイレンの音が聞こえた。窓を見るとパトカーから警察官が降りてきて学校の敷地内にはいってくる。

「学校で事件でも起こったのか?」

「内の学校に売春の斡旋をしていた人がいたんだって。多分、その人を逮捕しにきたんだと思う。それより、大丈夫ならもう帰ろう?今日は約束どおりお兄ちゃんの好きなものを作ってあげるよ」

「あ、ああ…」

なんだか納得いかないが俺の手を引っ張って帰ろうとする妹についていく。なんでだろう?何か大きな事件があったような気がするのだが思い出せない。確か世界に関係あることだと思うのだが…

「どうしたの?」

「…いや、なんでもない」

まあ、思い出せないならたいしたことではないのだろう。妹と並んで家に帰る。夕日を浴びる妹の顔は本当に美しかった。

「いつもありがとう世界。お兄ちゃんは世界を妹に持てて本当に幸せだ!!」

自然と言葉が出た。俺の中の何かが絶対に言えと命じていた。

「突然なあに?変なお兄ちゃん!!」

妹は機嫌良さそうに笑った後、俺をおいて走り出す。

「はやくしないとおいってちゃうぞ!!家まで競争だ~!!」

ああ、幸せだな。やっぱり妹は笑っているのが一番いい。いつもそんなこと思わないのに、妹が俺の隣にいることがすごく幸せに感じる。

「まてよ!邪神様の力を借りた俺に勝てると思うのか!!」

妹を追って走り出す。多分、俺の顔は笑顔だと思う。ああ、邪神様。願わくばこの何でもない日々が永遠に続きますように。今日は妹のために邪神様に祈ろう。そんなことを思いながら、俺は家に帰るのだった。

















×××




「お兄ちゃん!!」

あたしが体育倉庫の扉を開けるとお兄ちゃんが八王子くんに蹴られていた。お兄ちゃんはボロボロに痛めつけられていて意識を失っているみたいだ。

「お兄ちゃんになんてことするのよ!!ひどいわ!」

「やっときたんだね、世界ちゃん。あまりにも遅いからさ~、待ちくたびれちゃったよ」

「質問に答えて!!何でこんなことをしたのか聞いてるの!」

「あはははは!君をレイプしようと思ったんだけどさ、計画がお兄さんにばれたみたいでね。邪魔するからリンチしてやったんだ」

八王子くんともう一人の人がニヤニヤと笑みを浮かべながらあたしに近づいてくる。醜い。発情したサルのように息を荒げている。おそらく、彼らの頭の中はこの後のことで一杯なのだろう。

「…お兄ちゃん、ちょっと記憶をよませてね」

お兄ちゃんの頭を触ると記憶が流れ込んでくる。お兄ちゃんが八王子君達の話をトイレできいたこと、それを阻止しようとしたこと、一度は帰ろうとしたこと、あたしを助けるためにこの人たちと戦ったこと、その時にお兄ちゃんが見たこと、感じたことが手に取るようにわかる。

「ありがとう、お兄ちゃん。あたしのために戦ってくれて本当にありがとう…」

「あ?何言ってんだ?全く兄妹そろって頭がおかしいんじゃねえか?とりあえず、そいつが目を覚ます前に一発犯らせろや」

八王子くんが伸ばした手をはらいのけてあたしは彼らを睨みつける。

「許さない…、あなた達だけは許さない。あたしのお兄ちゃんをこんな目にあわせてタダじゃおかないわ…」

あたしは魔力を集中させて火の玉を作った。『攻撃魔法は人間に使わない』あたしが17年間守ってきた誓いを初めてやぶる。

「な、なんだよそれ…、なんなんだよ!?」

「逃げても無駄よ。あたしからは逃げられない。大丈夫。多分、死なないから」

逃げ出す彼らに両手を向ける。

「地獄の業火に焼かれよ!!『ヘル・フレイム』!!」

「「ぎゃああああああああああああ!!!!!!」」

精神にダメージを与える魔法だから死ぬ事はないだろう。まあ、しばらくは立つ事も出来ないだろうが。自業自得なので放って置くことにする。

「さてさて、お兄ちゃんは大丈夫かな?ふむふむ、骨が何本か折れてるけど、この程度なら平気でしょ。さっさと治癒魔法をかけますか」

お兄ちゃんをお姫様抱っこして保健室に向かうことにした。






お兄ちゃんをベッドに寝かせて、眠るお兄ちゃんの顔を眺める。黙っていればかっこいいのにな。まあ、厨二病になったのってあたしのせいなんだけどね。


あたしは赤ちゃんの頃から前世の記憶というやつがあった。前世のあたしは異世界の魔法使いだったようで生まれたときから魔法が使えた。でも、誰にも言い出せなかった。怖かったのだ。魔法を使えるあたしを家族はどう思うだろう。ひょっとしたら、気持ち悪く思って捨てられてしまうかもしれない。そう思うと、生まれたときから一緒で最も信頼するお兄ちゃんにさえ言うことが出来なかったのだ。

ところが12歳の時、あたしのうっかりミスによりお兄ちゃんにあたしが魔法使いだってことがバレてしまった。魔法を使うあたしのことをお兄ちゃんは呆然として見ていた。あたしはお兄ちゃんに拒絶されるのが怖くてその場で泣き出してしまった。その時は頭が恐怖で一杯だったから詳しくは覚えてないが、『魔法なんかいらない。あたしも普通の人間に生まれたかった』みたいなことを言ったと思う。その時にお兄ちゃんが言ってくれた言葉は今でも鮮明に覚えている。『大丈夫。たとえ、お前が魔法をつかえたとしても俺が大好きな妹であることは変わらない。お前が独りが嫌なら俺が一緒になってやる。同じになるって約束してやる。だからもう泣くなよ…』。泣きじゃくるあたしを抱きしめて言ってくれたのだ。

次の日からお兄ちゃんは厨二病になっていた。あまりの変わりように最初は驚いたものだがもう慣れた。なにより、あたしのためにしてくれたことが嬉しかったのだ。ただ、もしものことがあるかもしれないからお兄ちゃんの記憶から『あたしが魔法使いだ』という記憶は消す事にした。このことについてはお兄ちゃんに申し訳ないと思っていたりする。

高校2年生になってもお兄ちゃんの厨二病が治らなかったのは予想外だったけど、何気にあたしは嬉しかったりする。確かに気持ち悪いと思うこともあるが、厨二病はお兄ちゃんとあたしの約束の印なのだ。厨二病のお兄ちゃんを見ているとあの時の記憶が思い起こされて暖かい気持ちになれる。あたしは一人じゃないと思えるのだ。おかげで魔法を好きになることが出来た。最近は夜に家から抜け出して魔法の練習をしていたりする。お兄ちゃんはあたしが家から抜け出していることに気づいていないと思っていたからあの時は焦ったものだ。まったく、変なところで鋭いんだから。

起きたらお兄ちゃんに記憶操作の魔法をかけよう。さっきの出来事は無かったことにした方がいいだろう。八王子くん達は色々と悪いことをやっていたみたいだから、魔法を使って証拠と一緒に警察に知らせておいた。まもなく逮捕されると思う。普段は絶対に出来ないけど、あたしを守ってくれたお兄ちゃんのホッペにチューをして感謝の言葉をいうことにする。


「守ってくれてありがとう。お兄ちゃん、大好きだよ!!」


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