浚儀へと襲い掛かっている賊の大集団は雑多な人間の集まりであり、頭目と呼ばれ得る様な人物に率いられている訳ではなかった。
それどころか命系系統すらも無い。
数百人からの人数からなる集団が複数存在してはいるが、それらの何れかが主導権を握っているかといえば、そうではない。
ただ何となく、或いは人の動きに乗せられただけの、正に烏合の衆であった。
そもそも、賊と呼ばれているが、その大半は、村が荒廃して生活が出来なくなった者、或いは荒廃しきらずとも腐敗した官の定めた無茶な税によって生活が出来なくなった者であったのだ。
窮乏した生活の糧にと旅人を襲って暮らしていたら、手配されたような連中も居たが、それは極少数であり、今、浚儀を襲っている人間の大多数は、かつて平穏な生活をしていた、或いは善良な人間であったのだ。
そう、過去形である。
故郷を捨てての流浪の日々が、先の無い困窮した生活が、彼らから人の心を剥ぎ取り、獣が如き欲望の徒へと変貌させていたのだ。
そしてもう一つ、この生まれも育ちも違う雑多な集団に共通する事があった。
それは、体の何処かに黄色い巾を巻いていると云うものだ。
気勢を上げる為にか頭に巻きつけているものもいれば、大きな巾を羽織っているものも居た。
そしてごく一部には、救いのように、或いは縋るように巾を握るものも居た。
黄巾。
それだけがこの集団の目印であった。
手に手に粗末な武器を持ち、浚儀と云う目の前の獲物を得て欲望を満たす事だけを考えている彼らは、正に獣であった。
或いは、日本人である一刀であれば別の表現をしたかもしれない。
欲深き亡者、餓鬼である、と。
「はやく町を取りたいな。野宿はもう嫌だぞ」
「そうだそうだ! 寝床だけじゃねぇ酒に飯、女だって居るだろうさ」
「あの夏候とかいう女、いい体をしてたな。殺さずに啼かせたいものだ」
「綺麗な顔と股座をベチョベチョにしてやろうぜ」
「一夜の快楽だけ考えるな。財宝だってあるだろ。この大きさだ!!」
「楽しみじゃな」
下卑た笑いをする、欲に炙られた表情の男達は、浚儀が落城寸前と見て、益々盛んという按配である。
脳裏に浮かべた極彩色の夢。
だが、その欲望を真っ向から打ち砕かんとするものがあった。
誰あろう夏候元譲、春蘭だ。
「うぉぉぉぉおっ!!」
女性にあるまじき声を上げ、大剣である七星餓狼を掲げたまま走る春蘭の姿は、正に暴力であった。
指揮官先頭の言葉通りのその姿。
そして兵どもは、その背に寸毫と遅れる事無く、曹の旗を掲げて走る。
「なっ、官軍か!?」
鬨の声と共に駆け寄ってくる春蘭たちに慌てだす賊、逃げ出そうとするものも居る。
全くと言って良いほどに統制の取れていないその様は、正に烏合の衆であった。
「こっ、殺されるぞ!!」
「こっちが殺せば良いんじゃ!!!!」
「おっ、おたすけぇ!?」
「慌てるな! 逃げずに後ろへ備えろ!! まだ連中とは1里以上は離れているんじゃ、慌てずに向きを変えろ!!! 数は俺たちの方が多いんだ!!!」
気合の入った、凶相の男が剣を振り上げて叫ぶ。
その声に突き動かされて、浚儀へと取り付けていなかった賊達は後ろへと動こうとする。
隊形の如きものを組もうとする。
だが、遅かった。
致命的に遅かった。
「急げ急げ!! 敵が来るぞっ!!!」
誰かが急かす様に叫ぶが、賊達の動きは遅い。
兵としての訓練も受けていない、ただ、武器を持っただけの賊の集団が機敏に動ける筈もなかった。
押せや押すなの大騒動となる。
総数で1万に達しようかという大集団でなければ、或いは武器を持って無ければ話は違ったかもしれない。
だがそれは、仮定の話であり、現実ではなかった。
賊達がのろのろと後ろへと振り返りきる前に、現実が、春蘭と彼女を先頭とした兵の集団が賊達へと襲い掛かった。
そこから先は、正に阿鼻叫喚の地獄絵図であった。
真・恋姫無双
韓浩ポジの一刀さん ~ 私は如何にして悩むのをやめ、覇王を愛するに至ったか
【立身編】 その15
外からの圧力が、賊が仕掛けてくる勢いが減った。
その事に最初に気付いたのは、典甜馳であった。
短躯な外見からの印象を裏切る、その圧倒的怪力を持って東門防衛の最前線を支えていた。
東門より出ての広い空間で自らの武器、伝慈葉々を振り回していたのだ。
だからこそ、東門のみならず全域への指揮も執っていた秋蘭や、建材廃材などをかき集めて東門の修復に全力を投じていた李曼成よりも先に気付いたのだ。
「…!?」
ぐるんぐるんと伝慈葉々を振り回しながら、典甜馳はその意味を考える。
他の門が破られたという話は無い。
日暮れが近いから下がったのかとも考えられるが、新しい、そして激しい剣戟の音が浚儀の外で発生している。
この条件から、理由を考える。
最初に思いついた理由は、同士討ち。
だが、それは即座に否定する。
そもそも、この浚儀へと攻め寄せる理由は、食料と寝床の確保が第1なのだ。
であればそれらを何ら得る事も無く、味方同士で派手に撃ち合う理由は無い、と。
田舎の村で生まれ育った典甜馳ではあるが、その軍事の知識は決して子供のものではない。
華琳の軍へと参陣して以降は兗州随一の教師達 ―― 主に秋蘭であるが、手隙の際には華琳が、はたまた春蘭などからも軍学を学んでいるのだから当然だろう。
そして今回、春蘭が教えた感覚的な、或いは実技的な教えが、典甜馳に賊が浮き足立ってきている事を告げていたのだ。
戦うにせよ腰が引けており、或いはしきりに周囲を見ているのだ。
それは、浮き足立っている証拠だった。
「となると__ 」
そして何より、今日明日には華琳直率の本隊が到着する予定だったのだ。
であれば答えは一つ。
する事も一つである。
伝慈葉々を大きく振り回して、周囲の賊を一掃した典甜馳は、大きく息を吸い込んで、思いっきり大声を張り上げた。
「お味方! 到着!!」
小さな、だがまがう事なき強力無双の勇士の声は、味方を鼓舞し、賊を圧倒する。
「小勇士に遅れを取るな!!」
疲れ果てていたが、それでも典甜馳の声に触発されて大きな鬨の声を上げた浚儀守備隊に、賊達は及び腰となりはて、そこから浚儀東門の戦いの天秤は、数的不利を跳ね返して一挙に典甜馳ら防衛側に傾く事となる。
その典甜馳らの奮戦に、指揮官である秋蘭は今が好機と判断するや、残っていた最後の予備隊を率いて門を出ると典甜馳らに合流する。
指揮官であるが故に前線から一歩下がって俯瞰する形で戦局を見ていた秋蘭は、それ故に典甜馳程に前線の空気、或いは感覚に触れておらず、援軍の到着に関しては懐疑的であった。
それは華琳を信じているのとは別の意味、戦場での情報には全てを疑って掛かるべきとの教えを忠実に守っているのだった。
そんな秋蘭が出撃する理由は、援軍が着たにせよ着てなかったにせよ、この戦闘で東門の周囲から賊を遠ざけることが出来れば、門の修復がより容易となるとの判断であった。
「秋蘭様!」
「流琉、一気に行くぞ!!」
そういう秋蘭は、珍しくも剣を持っている。
この乱戦模様では常の大弓、餓狼爪ではなく剣の方が向いているとの考えである。
その剣を天に掲げて秋蘭は叫ぶ。
「曹の兵よ、浚儀の義勇の士よ! 今こそ攻め時、我に続けぇ!!」
大きな喊声が上がる。
秋蘭と典甜馳を先頭に、数で見て10倍になろうかという賊へと男たちが突撃を始める。
疲れも見せずに走り、武器を振るう様は正に怒涛である。
だが、彼らが散々に賊どもを打ち払う前に、賊は壊走を始める。
春蘭たちの突進が東門へと到達したのだ。
「姐者!!」
「秋蘭、待たせた。無事で何より! しかし話は後、一気に蹴散らすぞ!!」
「心得た!」
春蘭と秋蘭、この夏候家が姉妹が揃っての戦いは、もはや戦いでは無く蹂躙であった。
春蘭が突進し、その背を秋蘭の弓が守る。
更にはその脇を典甜馳と一刀が固め、意気軒昂となった兵が続いているのだ。
只の賊如きが対抗できる筈も無かった。
賊の集団は瞬く間に粉砕され、そして士気もまた粉砕される。
賊の大多数が、腰が引けるどころか戦えぬ、怯えだした事に気付いた春蘭は、切り捨てた賊の血によって真っ赤に染められた七星餓狼を勢い良く天にかざして声を張り上げる。
「聞け、賊よ! 我が名は夏候元譲、兗州刺史たる曹孟徳様が臣!! 汝らに我が主、曹刺史が意思を伝える!!! 武器を捨てよ!!!! 今下れば、罪一等を減じる事も考えるとの事である!!!!!」
剣を持っては悪鬼羅刹の如き春蘭の大喝に、賊たちは思わず武器を捨てていた。
否、取り落としていた。
春蘭の大喝を機に、収まった戦闘であったが、無論、それで全てがめでたしめでたしと終わる訳ではない。
特に、華琳を筆頭とした責任者達にとっては。
被害の把握や復興への手配などなど、様々な業務が山積みとなっている。
更には、逃げ散っていた賊への対応もある。
春蘭の大喝によって大多数が大人しく縛についてはいたが、それでも戦闘終結後の混乱を利用し、少なからぬ数の人間が逃げていたのだ。
その数、おおよそ3000余り。
1個の集団として動いてないにしても、それだけの凶賊が跋扈するとなると、この兗州の治安に甚大な被害が出かねず、早期の対応の必要性があった。
優先順位の高い業務は3つ。
1つ目は兗州全域への差配。
大きな賊が乱を起こし揺れた兗州の安定回復と、官軍の運用である。
2つ目は賊の追撃と捕縛。
3000人からの賊を放置しておく事は治安面での問題を呼び起こし、又、罰を与えねば兗州刺史としての華琳と、その力の背景として存在する漢帝国の権威を毀損しかねないからである。
3つ目は浚儀の復興。
防衛戦にて甚大な被害を出し、更には太守他の逃げ散ってしまった浚儀を放置する事は、新たな問題を引き起こしかねないのだ。
どれも軽視する事の出来ない事である。
そこで華琳は決断を下した。
1つ目には、刺史としての仕事でもあるので、自分自身が当たる事を。
補佐として、当然ながらも文若が就く事となる。
2つ目には、文武の才ある秋蘭が就く事とした。
官位的な面から考えると正式な漢帝国の官位を持った春蘭の方が適任であり、又、純粋な武だけで見れば春蘭が優れてもいたのだが、戦闘だけではなく、情報収集や他、様々な任をこなさねばならぬ為、との判断であった。
本来は、この武以外の面でのサポートを受けるが為に春蘭は一刀を求めたのであったが、今回は、その一刀も任に就く事となっていたのだ。
3つ目の、浚儀の復興である。
「という訳で一刀、貴方はこの浚儀の太守、その臨時代行となるわ」
「はぁ?」
主の消えた浚儀太守府を接収して作られた、臨時刺史府は華琳の執務室にて一刀は混乱した風に言葉を、否、音を吐いていた。
意味が判らない。
そんな一刀の混乱を意味する様な音は、粗末な机と椅子以外の装飾が剥ぎ取られた執務室 ―― 前太守が金目のものを一切合財持ち逃げした結果、刺史の執務室と呼ぶには余りにも殺風景な部屋の壁に吸収された。
「いや、太守って何が?」
自分は報告にきた筈なのに、何が太守の臨時代行と混乱する一刀、戦塵にまみれたままの頬を掻く。
全く理解が出来ていなかったが、それは一刀が鈍いからでは全く無かった。
浚儀の解囲を果たしてからの方が一刀は忙しく、この華琳に呼ばれるまで必死に働いていたのだから。
万が一に賊が再強襲して来た際への備えとしての城壁の応急修理や投降した賊の管理、戦死者の記録と遺体処理。
はたまた持ってきた食料や医療品などを浚儀の市民へと分けるなどの指揮を執っており、解囲戦からまだロクな休息も取らずに、である。
本来であれば文官、乃至は秋蘭が中心となって進めるべき仕事であったが、文官は別件の仕事を華琳に命じられた文若しかおらず、又、秋蘭に関しては過酷な篭城戦を経た後だったのでと華琳が休息を命じていたのだ。
その結果、一刀は浚儀の住民と官軍への責任を双肩に乗せて駆け回っていたのだ。
そして、同じように働いていた部下達 ―― 浚儀に残っていた文官たちに休息を取らせようと思い、一刀は現時点での報告をまとめた竹簡を持って華琳の執務室を訪れたのだ。
上司が居ない方が息は抜けるだろうとの配慮であった。
であればこそ、唐突に言われた太守臨時代理就任言葉が、しかも “という訳で” の前に、一切の説明が無ければ、一刀の脳ミソが処理能力が追いつけないのも当然であった。
対する華琳だが、此方は実に明快な理由があった。
一刀を弄って気分転換をしよう、という。
机の上に乗せられた大量の竹簡、そして室内に充満している墨の匂い。
刺史としての立場から行わねば成らぬ諸々の仕事、州全域への指示や、浚儀の統治に関する懸案の処理を行っていた為、一刀の来室を、是好機と捉えたのだ。
「何がって、何よ?」
疑問系の言葉ではあるが、実に楽しそうに笑う華琳。
「それとも、臨時であったのが不満だったのかしら?」
「いや、本気で言葉の意味が理解出来ないんだが」
降参だと手を上げた一刀に、華琳はあら残念と笑った。
それから椅子に座る用に告げると、自ら茶の準備にと立つ。
程なくして、室内にお茶の香り加わる。
「この私自ら淹れたご褒美よ。貴方も頑張っているみたいだから、有難く飲みなさい」
程よい温度と香りの感じられるお茶は、確かに褒美の名に相応しいものがあった。
腹に降りた温かさに、一刀は己の疲れが少しだけ癒されるのを感じた。
それが顔に出て、華琳は柔らかく笑った。
「人心地がついたみたいね」
「ああ。そんなに疲れて見えてたかな?」
「それなりだったかしら」
「それで太守か、冗談がキツイよ」
「あら、それは本当よ」
華琳は笑って引き出しから浚儀太守の印綬を取ると、一刀に握らせる。
「ゑ!?」
そこから種明かしが、先ほどの役割分担に関して説明した。
一刀が臨時に、華琳の代理として浚儀の大使に就いてその復興を指揮する。
これは秋蘭以上に文武の才、そのバランス感覚が重視されての事であった。
義勇軍を統括する為の武、そして復興に携わる文官を統制するだけの文(知)であり、そして独善で物事を決めるのではなく、周囲の人の意見も良く聞いて判断し、実行する事が評価されていたのだ。
又、裏には華琳の、一刀の才に対する思いがあった。
補佐ではなく主軸として任に就けた場合どれだけの事が出来るのか、才の底はどこにあるのかを知りたがっていたのだ。
遠眼鏡を生み出した知、或いは知識を持っていたのだ。
これ以外にも引き出しがあるのではとの思いだ。
そしてもう一つ、主軸として使われる事によって一刀が才を磨こうとの思惑もあった。
文官として、文若の下に就いてからの一刀の働きも、中々のものがあったのだ。
であれば、一度、一人で仕事を与えてみようと華琳が思うのも道理であった。
「補佐の人間は刺史府からも出させるわ。頑張ってみなさい」
「頑張ります」
朗らかに笑う華琳に対して、一刀は降って湧いた大責に苦笑気味に笑っていた。
さて賊への対処に際し、華琳子飼いの4人で唯一名前の出なかった春蘭であるが、彼女とて暇となる訳ではない。
後続の各太守が派遣してくる兵たちを統括するという仕事があった。
賊の大本を討伐したにも関わらず、官軍を解散させない理由は、表向きは逃げ散った賊への対応であったが、正確には再訓練が目的であった。
兵ではなく、中堅指揮官達の。
浚儀の兵。その中堅指揮官の多くが逃げ散った事に華琳が、他の中堅指揮官の資質に関して懐疑を抱いた事が原因であった。
翌朝、自分の腹心を集めた華琳は、その前で今後の方針を、各人への指示を出した。
それぞれがその指示を全うせんと表情を引き締めたが、そうでない者も居た。
春蘭である。
「華琳様ぁ~」
自分が陳留に戻るのに、一刀は浚儀太守臨時代行に就く事となったと聞いた春蘭は、凄く悲しげに華琳の名を呼ぶ。
一刀が取られる ―― 春蘭視点では、そう以外にはとれないから仕方が無い。
対して文若は、すわ一刀の文官化かと理解して笑う。
如何にこき使ってやろうかと、大事だけれども圧倒的に効率の悪い仕事の幾つかを押し付けてやろうとの算段を始める。
正式な文官になったら、自分を上司として敬い、崇めるように仕込んでやろうとも。
「残念だったわね」
自らの勝利を確信して加虐的な笑みを浮かべた文若だが、それは華琳が否定した。
大丈夫よ、と。
「現時点での人材的な問題から一刀を浚儀に配するけど、それ程に長くするつもりは無いわ」
そう言って華琳は、長くても1年と年限を切った。
何故なら華琳が一刀の才で一番評価しているのが、先ずは春蘭の補佐役として軍を纏め上げている事だからだ。
今までは秋蘭が支えていたが、一刀のお陰で支える必要が無くなった為、秋蘭を多様な仕事へと就ける事が可能となったからだ。
信頼できる相手であり、武の才があり、情報の収集と分析が出来、更にはある程度の独自の判断も、華琳の意向に沿って下せるのだ。
華琳の名代的に動くには、正にうってつけの人材なのだ。
そのお陰で華琳の兗州統治は一刀の参陣以降、更に効率的効果的になったのだ。
であればこそ、その原動力となった春蘭と一刀の組み合わせを解体するという選択肢は、華琳は持たなかった。
少なくとも現時点では。
遠くない時間には、一刀は自分の下に戻ってくる。
その事を知った春蘭は、それまでの萎れた表情から一挙に生気を取り戻した。
が、そうでないものも居る。
当然ながらも文若だ。
その様は、正に青菜に塩という按配であろうか。
「華琳様ぁ~」
悲しげに華琳の名を呼ぶ文若。
ただしソレは、美味しそうな餌のお預けを食らった猫の様な声であった。
兗州刺史府が文武の両傑は、ある意味で実に似ていた。
その事を華琳と秋蘭は笑って楽しんでいた。
そして肝心の一刀は、戦塵を落とす事なく夜を徹して仕事を行っていた為、華琳の指示を聞き終わると、椅子に座り込んで寝込んでしまっていたのだった。
その事が幸いであるか否かは当人たちにしか判らないであろう。
只、今の一刀は幸せそうに寝ているのだった。