あなたがシーフのソアラと話していると、彼女の背後に一人の人物が立った。
「ソアラ! あなたはまた、未来ある若者を悪の道へと誘い込もうとしているのですか!?」
「あら、ミーシャちゃん。人聞き悪いこと言わないでよう」
現れたのは、神官の法衣に身を包んだ女性だった。
しかし首元や袖からはチェインメイルが覗いており、腰には凶悪な棘を生やした鈍器が吊されていた。
「あたしはこっちの新人さんに、シーフの素晴らしさを教えてあげてただけなんだから」
「本当にあなたは、私の言うことをひとかけらも聞いてはいないのですね……」
神官はあなたに視線を向けた。
「初めまして。私は正義と秩序の神に仕える神官、ミーシャと言います。いいですか? くれぐれも悪の道になど走らぬよう。神はいつもあなたを見て、そして試していらっしゃるのですよ?」
ミーシャは胸元の聖印を握りしめて、次第に恍惚とした表情になっていった。
「そうです、これも試練なのです。おぞましき盗賊の魔の手から、無垢なる魂を救ってみせろと。さあ、あなたにも試練を与えましょう。この問題を解いて、共に正しき道を歩むのです!」
○問題○ 『早いのは駄目?』 出題者:神官戦士ミーシャ
ひとたび戦闘が始まれば、私たち神官の仕事は様々です。武器を手にとっての戦いは言うに及ばず、傷の回復、精神力の譲渡と、常に目まぐるしく動かなければなりません。
ここである状況を想定しましょう。
こちらはパーティ、敵はやはり複数の山賊。
敵も味方も動きが遅く、私が真っ先に行動を起こせるようです。
さて、私はまず何をしたでしょうか?
●解答●
『行動を遅らせて、一番最後に動いた』
敵の戦力も分かりませんし、思わぬ被害を被る可能性もあります。ここは状況を見て、仲間の傷をすぐさま癒せるようにするべきですね。
あら、意外という顔をされていますね。
それも仕方ありません。なにしろ折角の素早さを、無駄にしているように見えますから。
でもそうではないのですよ? 考えて見てください。最も早く動ける者が、あえて一番最後に動く。では次にその者が動けるようになるのはいつでしょう?
そう、次の頭。つまり続けて二度行動できるという事なのです。
もし運悪く重傷を負った仲間がいたとしても、これならばほぼ助けることができるでしょう。
回復魔法はパーティの要。
いま傷を負った仲間がいないからと言って、安易に行動すると思わぬ危機を招いてしまうのですよ。
どうですか? これで分かったでしょう。早ければそれでいいと言うどこぞのシーフのような考えでは、いけないと言うことが。
もしあなたがより深く神官について学びたいというのであれば、ぜひ神殿へといらして下さい。神は迷える者全てに導きを与えて下さるのですから。
※用語説明※
『正義と秩序の神』
この神の信者がNPCとして登場すると大概プレイヤーの邪魔をする。プレイヤーの場合は暴走する。割を食うのはパーティメンバーばかり。
『回復魔法』
最大体力以上に回復されたら鼻血を出すのが礼儀。