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No.31399の一覧
[0] 西部戦線異常しか無し! 【オリジナル架空戦記・微ファンタジーモノ】[甘露](2012/02/05 18:47)
[1] 戦記1[甘露](2012/04/06 17:11)
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[31399] 戦記1
Name: 甘露◆0560a800 ID:7e29cfb0 前を表示する
Date: 2012/04/06 17:11
 

シュリエ・ハーブーン軍曹の生まれは極々普通のパン屋だった。
幼いころこそはやたらと数学や語学が“年齢の割に”堪能だったため神童なんて言われもてはやされもしたがソレは精々12歳まで。
15歳で父親に無理やり士官学校を受験させられるも滑り普通にパン屋を継ぐことを決意。
 
因みにペーパーテストは平均並み以上に、つまり十分な点数はとれていた。
なのに落ちた理由、それは極めて簡単で“魔法の適性が皆無だった”からだ。 
勿論そう言う人物へ向けた幹部養成学校も存在する。が、それはあくまでも士官学校を落ちた人間の受け皿でしかなかったので、それへ進学する人間はごく稀であった。
そしてシェリエ軍曹はもちろん一般大多数と同様の感性『受け皿学校はダサいよなぁ』であった。
もし彼が家業を継ぐと言う選択肢を持っていなかった場合は話が別だったかもしれないが、彼にはパン屋という就職口があった。

賢かったのは一過性のモノだったのか、とか将来は安泰だと思ってたのに、なんて偶にぼやかれながらも普通に親の愛を注がれる日々を過ごした。
その生活ががらりと変わったのは2年前、18歳の冬。
 
突如列強の一翼を担っていた帝国に、新興国である通商諸国同盟が宣戦布告した事だった。
当初帝国首脳陣はその動きにタカをくくっていた。
以前からあった大規模な貿易摩擦の軋轢が原因で、一部の過激派が強引に起こした事だろう、と。
初戦で叩きのめし講和に持ち込んで州の一つ二つでも賠償に貰い受けられれば十分元は取れる。まさに棚からぼた餅だ、と。

ところが、結果は帝国首脳陣の予想に反し、そうなる事は無かった。
両国の堺目であるライル川で起きた初戦『ライルの戦い』で、帝国は惨敗した。

通商連合側 外征歩兵師団2個総勢2万2千。
それに対するは帝国近衛師団1個7千と第2~4歩兵師団計3万。
倍以上の兵力差、その上進行する連合側は対岸に渡る必要がある分不利だというオマケつきでの戦いだった。

しかし、帝国は敗北した。
近衛師団7千名中負傷3000、死者1,400。歩兵師団3万中負傷者13000、死者8000。損耗率は合計で60%を超える歴史稀に見る大敗だった。
 
もちろん帝国が舐めてかかったというのも敗因の一因であろう。
しかし、それだけでは兵力差2倍という状況で損耗率60%などという数字は到底出す事は叶わない。
では、何が敗因となったのか。

後世の歴史家は、皆口をそろえてこう言う。
『あの戦いは、史上初めて魔道結晶を導入した戦いだった』
と。

それまでの戦場での魔導師とは、多人数で召喚と構成を行い、後方から大規模魔法を打ち出す所謂砲兵と同じ役割をしていた。
ソレには様々な理由があり、一番大きな理由だったのは、魔術の構成には極めて時間が掛る、という事であった。
鉄砲の登場以前には前衛に魔導師を送り込み、敵と衝突するまでに術式を完成させ敵の先陣ごと殲滅、等という戦闘法も無い訳では無かった。

しかし、鉄砲が登場したことで魔術師は後方からの支援砲撃に徹することとなる。

理由は簡単だ。戦場で距離が無くなったのだ。
鉄砲登場以前ならば、遠距離兵器は精々弓、稀に投石機程度で、弓矢ならば術式の片手間で行う障壁展開で防ぐ事が出来た。
仮に敵陣との距離が100mあったとしよう。するとどれだけ急いでも馬で7秒弱。歩兵ならば15秒は接近されるまでに時間が出来る。その隙で広域魔法を展開すれば良かった。
しかし、音速にさえ迫る速度で到来する銃弾には障壁も効かず、10秒もの隙もない。
ぱぁん、と100m向こうで銃声がすれば、1秒後には自分の脳味噌をぶちまけているかもしれない。

その転換期となった戦いは実際に過去に起こり、
当時大陸最強と言われた某国の魔道軍団が損耗率99%で壊滅し国が傾く原因にもなったのだが、今回は直接関係ないので割愛する。
そう言った経緯もあり、非常にコストのかかる魔法使いの兵士は後方へ。戦場の花は次第に歩兵へ。大兵力対大兵力のぶつかり合いが主流となっていった。

そして、その歩兵主流の流れも、ライルの戦いで変わった。
連合が実戦投入した兵器、魔道結晶だ。最初期の結晶には一種類の魔法陣が、ライルの戦いで実戦使用された結晶には3~7種類の魔方陣が。
無詠唱、規定量の魔力を注ぎ込むだけでタイムラグ無しに発動するという代物であった。

コストが高い、必要魔量が膨大等といった欠点こそあったものの、ソレは歴史を変えるのには十分過ぎる発明品であった。
広域に被害を及ぼし、ほぼ防ぎようのない攻撃がぽん、と突然前線で発生する恐ろしさ。
敵味方入り混じる最前線では魔法は使われないという暗黙の了解があった故に、そして常識のフィルターがあった所為で。
帝国軍歩兵師団は士気と伝達系統をボロボロに破壊され壊滅的な被害を受けた。

元々魔道結晶とは、一般上流家庭でガスや水道などの代わりとして使用されているものであった。
微量な魔力を通す事で炎や水を発生させるという、人々の生活に大きな変革をもたらした品であった。
もちろん、ソレに注目しない程間抜け揃いの帝国軍ではない。

直ぐ様有用性に目を付けると、軍事転用出来ないものかと思案した。
結果は、コストパフォーマンスの余りの悪さと研究自体が途方もない大金喰いだったと言う事もありとん挫。
帝国首脳陣は、ここまで素晴らし過ぎるコストパフォーマンスなら、──当時大陸随一の税収と国庫のうるおいを誇っていた帝国が難色を示す程の──到底実用化は現実的でないと判断された。

それがあだとなった。
良くある話であった。とある無名の魔術研究家が高圧縮の魔道結晶を開発、意気揚々と帝国軍へ持ち込み、そして一蹴された。
帝国は丁度時期的に莫大な予算を吹き飛ばされ強酸を嘗めさせられた直後という事もあり、その研究家の話をまともに取り合おうとしなかった。

そうしてソレは、帝国から連合へ流出した。
連合は商業国家の限界までソレに予算をつぎ込むと言う一見すると愚考極まりない行いをし──結果、歴史的な大勝を連合に齎した。

それから、戦争はずぶずぶと泥沼へ沈むように長期化していった。
技術で勝る連合と、根本的な国力と物量で勝る帝国。連合の敗北は長い目で見れば必須であったが、国は、国民は、連合商会はそれを許さなかった。
商業国家ゆえなのか、損をして終わる事は許されないとでも言わんばかりに総力戦へもつれ込んだ。

帝国は有数の列強国家。同時ににらみを利かさなければならない様な相手が山ほど居る。下手に連合へ列強の内のどれかが援助に走られたりしても困るので対外政策も欠かせない。詰まり国力と圧倒的な物量を連合に裂く事が出来ないでいた。尤も、連合に全てを裂く気など元々無いのだが。
連合は国家の威信をかけた戦い。国家総動員法なんぞを施行すると昼も夜も持てる国力を使い増産体制へ。弾薬銃戦艦航空機魔道結晶兵糧医療物資何もかもが足りないずくめでの戦争は確実に国力を疲弊させながらも、もう後には引けないという鬼気迫る想いの中抵抗を続けさせていた。


──そういう経緯を経て、漸く話題はシェリエ軍曹の元へと戻る。
損耗した軍隊を回復、欲を言えばこれを機会に増強したい。そう願う帝国首脳陣がまず目を付けたのは、魔力不足により士官学校を不合格とさせられた受験者だった。
尤も、不合格者の中でもそれなりの点数をとった者に限る話ではあるが。
物量にまさる帝国故の発想だろう。兵士の補充は効くが、それを指揮する人間が不足するであろう、なら今の内に増やしちゃえ。

そうして、シェリエ軍曹の元へ、出頭要請という名の強制出頭命令が届く教会歴1933年12月24日。
ある小雪の舞う日から、物語は始まる。


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超お待たせしました。
不定期ですが此方もぼちぼちと更新します


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